6 月 24 日 定義 7.20 1. 可換環 R の零でも可逆元でもない元 x が性質「x = yz なら y または z は R の可逆元」を有するとき, x は既約元であるという. 2. 零でも可逆元でもない元 x が性質「yz ∈ (x) なら y ∈ (x) または z ∈ (x)」を有するとき, x は素元であるという. 定義 7.21 可換な整域 R が一意分解整域 (UFD:Unique Factorization Domain) であるとは, 零でも可逆元でもな い元 x ∈ R に対し, x = p1 · · · pn なる既約元 p1 · · · pn が存在して,これらの既約元は, 並べ替えと可逆元倍を除いて一意的であることをいう. 我々が知っている UFD の例は, 有理整数環 Z と体 K 上の多項式環 K[X] であり, 本質的に除法の原理から得られた. 除法の原理を有する整域は UFD だが, 逆は成り立たない. つまり除法の原理は UFD 性の本質ではない. 定理 5.21(再掲)有理整数環 Z 上の多項式環 Z[X] は UFD である. Z[X] で除法の原理が成立しないことは後で学ぶ. 定理 5.21 の内容は, 本質的には以下を述べている. 定理 7.22 R が UFD なら R[X] も UFD である. 定義 7.23 整域 R に対して, Q(R) = { a | s ∈ R − {0}} s に和と積を at + bs ab ab a b + = , = s t st st st a と定義すれば Q(R) は体となる. R → Q(R) を a 7→ 1 で定義すると,単射かつ準同型(演算を保つ)ので, R は Q(R) の部分環であり, R を含む最小の体が Q(R) である. Q(R) を R の商体と呼ぶ. 定理 7.22 の証明の方針: 7.17- 7.19 の主張および証明において, Z を R, Q を Q(R) に置き換えて, R および Q(R)[X] が UFD であることを利用すればよい. 補題 7.24 1. R が整域のとき, 素元は既約元である. 2. R が UFD のとき, 既約元は素元である. 宿題は裏にあります. 25 1. 体 K 上 n 変数の多項式環 K[X1 , X2 , · · · , Xn ] が UFD であることを示せ. (ヒント:定理 7.22) 2. R は UFD とする. p ∈ R が規約元なら, 素元であることを示せ. (ヒント:px = yz となるとき, 両辺の既約元分解 はどのようになるか.) √ √ √ √ 3. 環 Z[ −5] = {a + b −5 | a, b ∈ Z} から環 Z への写像 ν : Z[ −5] → Z を ν(a + b −5) = a2 + 5b2 と定義する. √ (1) x, y ∈ Z[ −5] に対して, ν(xy) = ν(x)ν(y) が成り立つことを示せ. (2) 写像 ν は全射ではないことを示せ. √ (3) x ∈ Z[ −5] が可逆元 ⇔ ν(x) =?. √ (4) ν(2), ν(1 + −5) を計算せよ. √ (5) 2 は Z[ −5] の既約元であることを示せ. √ √ √ √ (6) (1 + −5)(1 − −5) ∈ (2) かつ 1 + −5, 1 − −5 ̸∈ (2) であることを示せ. √ (7) 前問の結果から環 Z[ −5] について何がわかるか. 26
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