今日のテーマ「三角比っておもしろい」

カズ池田の出張講義へようこそ
今日のテーマ「三角比っておもしろい」
平成 24 年
○月○日 (○)
カズ池田 ○○高校 1 年生の皆さん,おはようございます.まずは,次の問題に挑戦してください.こ
の問題の解説と関連した事柄は○日にお話ししましょう.
番号
氏名
得点
¶Exercise 1
次の
³
に適当な値を書き入れなさい.
4ABC において,sin A : sin B : sin C = 8 : 7 : 5 のとき,
(1) a : b : c をもっとも簡単な整数比で表すと
:
(2) ∠B の大きさは
◦
である.
:
である.
µ
¨
¥
§Solution ¦
´
¶Exercise 2
³
次の
に適当な値を書き入れなさい.
4A0 B0 C0
において,(a0 + b0 ) : (b0 + c0 ) : (c0 + a0 ) = 12 : 8 : 10 のとき,
(1) a0 : b0 : c0 をもっとも簡単な整数比で表すと
(2)
∠A0
の大きさは
◦
:
:
である.
である.
µ
¥
¨
§Solution ¦
´
1
カズ池田の出張講義へようこそ
今日の話のまとめ
平成 24 年
○月○日 (○)
カズ池田 皆さん,今日の出張講義はいかがでしたか? 役に立ちましたか? いろんな事柄と関連付け
て勉強すれば,面白みも倍増します.1 つの問題を解いたら,
「公式はどうだったか」
「他の問題と関連付
けられないか」など,いろいろ発展させてみましょう.そうすればどんどん実力がついてきます.
今日は黒板を写さずに,聞くことが中心でした.そこで皆さんは,このまとめを見ながら,もう一度
問題と発展を考えてみましょう.
¶Exercise 1
次の
³
に適当な値を書き入れなさい.
4ABC において,sin A : sin B : sin C = 8 : 7 : 5 のとき,
(1) a : b : c をもっとも簡単な整数比で表すと
:
(2) ∠B の大きさは
◦
である.
:
である.
µ
¨
¥
§Solution ¦
´
a
b
c
=
=
= 2R より a : b : c = sin A : sin B : sin C = 8 : 7 : 5 である.
sin A
sin B
sin C
a2 + c2 − b2
82 + 52 − 72
64 + 25 − 49
40
1
(2) 余弦定理 cos B =
=
=
=
=
より ∠B=60◦ .
2ac
2·8·5
2·5·8
2·5·8
2
(1) 正弦定理
¶Exercise 2
次の
4A0 B0 C0
³
に適当な値を書き入れなさい.
において,(a0 + b0 ) : (b0 + c0 ) : (c0 + a0 ) = 12 : 8 : 10 のとき,
(1) a0 : b0 : c0 をもっとも簡単な整数比で表すと
(2) ∠A0 の大きさは
◦
:
:
である.
である.
µ
¨
¥
Solution
§
¦
´

0
0

 a + b = 12k
(1) (a0 + b0 ) : (b0 + c0 ) : (c0 + a0 ) = 12 : 8 : 10 より
b0 + c0 = 8k

 c0 + a0 = 10k
とおける. 辺々を足して 2 で割ると a0 + b0 + c0 = 15k
これより a0 = 7k, b0 = 5k, c0 = 3k となる. よって a0 : b0 : c0 = 7 : 5 : 3 である.
b0 2 + c0 2 − a0 2
52 + 32 − 72
25 + 9 − 49
15
1
(2) 余弦定理 cos A0 =
=
=
=−
=−
より
0
0
2b c
2·3·5
2·3·5
2·3·5
2
∠A0 =120◦ .
2
a
b
c
=
=
= 2R
sin A
sin B
sin C
余弦定理 a2 = b2 + c2 − 2bc cos A, b2 = a2 + c2 − 2ac cos B,
【公式】正弦定理
cos A =
b2 + c2 − a2
,
2bc
cos B =
a2 + c2 − b2
,
2ac
余弦定理は c2 = a2 + b2 − 2ab cos C の形だけではなく,cos C =
c2 = a2 + b2 − 2ab cos C
cos C =
a2 + b2 − c2
2ab
a2 + b2 − c2
の形でも覚えておきま
2ab
しょう.
以上で問題は解けましたが,これで終わったのではもったいないですよ.これからいろいろ発展させ
ていきましょう.そこで 2 つの問題に出てくる三角形を描いてみると
ᵟ
ᵠ’
ᵟ’
α㻓
㻟
㻝㻞㻜
㻡
ᵠ
䚹
㻢㻜
㻣
㻣
㻤
䚹
α
㻡
ᵡ
ᵡ’
[ I ] ではまず,2 つの三角形の面積を求めてみましょう.
√
√
1
1
3
◦
· 5 · 8 sin 60 =
·5·8
= 10 3
4ABC=
2
2
2√
√
1
3
15 3
1
◦
0
0
0
· 3 · 5 sin 120 =
·3·5
=
4A B C =
2
2
2
4
1
[II] 2 つの三角形の内接円の半径 r, r0 を求めてみると, (a + b + c)r = S より
2
√
√
1
(5 + 7 + 8)r = 10 3 =⇒ r = 3
2
√
√
1
15 3
3
0
0
(3 + 5 + 7)r =
=⇒ r =
2
4
2
カズ池田 内接円の半径がちょうど 2 倍になっとるのも,おもしろかっちゃなかとね.
(ワシ,博多弁に
なっとー)
[III] 外接円の半径 R, R0 はいくらになっているでしょうか?
√
7
7 3
= 2R =⇒ R =
sin 60◦
3√
7
7 3
= 2R0 =⇒ R0 =
sin 120◦
3
おやおや,R = R0 になりました.これは偶然でしょうか? それとも・
・
・
3
[IV] 辺の長さ 7 が両方の三角形に共通していますから,これらを重ね合わせてみましょう.
ᵟᵠ
’
α㻓
㻟
㻝㻞㻜
䚹
㻢㻜
ᵟ’
㻣
㻣
㻡
䚹
㻡
㻤
ᵠ
α
ᵡ’
ᵡ
四角形 ABCA0 が出来上がりました.この図を見て気がついたことを次々と書き出してみましょう.
°
1 四角形 ABCA0 は台形になっているのではないか.台形だということを示すためには何が言えれば
よいか.AA0 と BC が平行であることを言えばよい.AA0 と BC が平行だということを言うために
は α = α0 を言えばよい.
そこで次を計算しましょう.
72 + 82 − 52
49 + 64 − 25
88
11
cos α =
=
=
=
2·7·8
2·7·8
2·7·8
14
2
2
2
9 + 49 − 25
33
11
3 +7 −5
=
=
=
cos α0 =
2·3·7
2·3·7
2·3·7
14
0
やったあ.cos の値が等しいということは α = α が言えたことになりますね.ついでに sin も計算
しましょう.
5
7
=
sin α
sin 60◦
5
7
=
0
sin α
sin 120◦
0
0
α,α ともに鋭角なので,α = α です.
=⇒
=⇒
√
5 3
sin α =
14√
5 3
sin α0 =
14
°
2 四角形 ABCA0 は台形だから,円に内接します.この円は 4ABC の外接円でもあり,4A0 B0 C0
の外接円でもあります.[III] で R = R0 を得たのは妥当なことだったんですね.
[V] 4A0 B0 C0 を 180◦ 回転して,辺の長さ 7 を次のように重ね合わせてみましょう.
ᵟ ᵡ’
㻝㻞㻜
䚹
ᵟ’
㻟
㻤
α㻓
ᵠ
㻡
䚹
㻢㻜
㻣
㻣
㻡
α
ᵡ
ᵠ’
°
1 α = α0 なので頂点 A0 は辺 AB 上にあり, 三角形 ABA0 は正三角形になりそうですね.
これをヒントにして考えると [IV] における α = α0 は次のように簡単に導くことができます.
4ABC の辺 AB 上に,A から長さ 5 の点をとり A0 とします.すると三角形 ABA0 は 1 辺の長さ 5
の正三角形になります.よって,AA0 =5 となり,三角形 A0 CA は最初の三角形 A0 B0 C0 と合同にな
り,α = α0 が成り立ちます.
カズ池田 ひゅひゅう,いろんなことが出てくるのう.助さん!
4
[VI] 2 つの三角形を次の図のように並べてみましょう.
ᵡ’ ᵟ
㻡
㻣
㻟
α㻓
㻝㻞㻜
ᵠ’
120◦
+
60◦
=
180◦
なので,B0 ,B,C
䚹
㻣
㻡
䚹
㻢㻜
㻤
α
ᵡ
ᵟ’ ᵠ
は一直線上にあります.しかも 4AB0 C は二等辺三角形であ
り,低角が等しいので α = α0 となります.意外な方法で α = α0 が証明されましたね.
[VII] 4A0 B0 C0 と 4 ABC において,辺の長さ 5 が共通しているので,これを次のように重ね合わせ
ましょう.
ᵟ ᵡ’
㻡
䚹
㻢㻜
㻤
α
ᵡ
α㻓
㻟
㻝㻞
䚹
㻜
ᵠ
ᵟ’
㻣
㻡
㻣
°
1 B0 ,C
を結んでみました.4AB0 C
ᵠ’
は正三角形になっているようです.それを示すためには ∠B0 AC が
60◦ であることを言えばよいでしょう.4A0 B0 C0 と 4ABC において
∠C0 =180◦ − 120◦ − α0 = 60◦ − α0
∠A=180◦ − 60◦ − α = 120◦ − α
α = α0
=⇒
∠A−∠C0 =60◦
∴ ∠B0 AC= 60◦
このことは実は,[V] において ∠BAC−∠A0 C0 B0 =60◦ を示していることからも分かります.
°
2 四角形 ABB0 C は円に内接しています.これは先ほどと同じですね.
°
3 さあて皆さん! この中に相似な三角形が何組か隠れています.それを全部探し出しましょう.
°
4 対角線の交点を P とするとき,AP,BP,B0 P,CP の長さはいくらになっているでしょうか? 考
えてみましょう.
カズ池田 ここで,ちょっとコーヒーブレイク.
7,5,3(七五三)や 8,7,5(花子)あるいは 8,7,3(花見)のように,3 辺の長さが整数で,内角
の 1 つが 60◦ または 120◦ となる三角形はよく入試でも利用されるっちゃから,他の例を挙げとくばい.
図を描いて確認してくれんね.
a b c
angle
13 8 7 ∠A = 120◦
15 13 7 ∠B = 60◦
15 13 8 ∠B = 60◦
a b
c
angle
19 16 5 ∠A = 120◦
21 19 5 ∠B = 60◦
21 19 16 ∠B = 60◦
5
[VIII] 4A0 B0 C0 を裏返して,辺の長さ 7 を重ね合わせましょう.
ᵟ ᵡ’
㻡
㻟
ᵮ
ᵟ’
䚹 㻞㻝
㻜
㻓α
ᵠ
䚹
㻢㻜
㻣
㻣
㻡
㻤
α
ᵠ’
ᵡ
四角形 ABCA0 が出来ました.2 つの対角線の交点を P とします.
°
1 ∠A0 +∠B=120◦ + 60◦ = 180◦ ですから,この四角形は円に内接することが分かりますね. °
2 円に内接しているので円周角が等しい.
∠AA0 B=∠ACB= α,
∠ABA0 =∠AB0 A0 =α0
このことと AB=AA0 =5 から,同じ長さの弦の上の円周角は等しいので,α0 = α を導くこともでき
ます.
°
3 AB=AA0 =5 なので,4ABA0 は二等辺三角形になっています.したがって底角は等しく
∠ABA0 =∠AA0 B=α
°
4 対角線 A0 B の長さはいくらになっているでしょうか? 4A0 BC に余弦定理を使って
A0 B2 = 82 + 32 − 2 · 8 · 3 cos 2α = 64 + 9 − 2 · 8 · 3(2 cos2 α − 1)
{ (
}
)
11 2
55
3025
= 73 − 2 · 8 · 3 2
=⇒
A0 B=
−1 =
14
49
7
°
5 四角形 ABCA0 の面積は,2 つの三角形 4ABC,4A0 B0 C0 の面積の和なので [ I ] より
√
√
√
15 3
55 3
+ 10 3 =
4
4
°
6 さあて皆さん! 上の図にも相似な三角形が何組か隠れています.それを全部探し出しましょう.そ
の中に 4ABC ∽ 4A0 PC はありますか? 2 組の角がそれぞれ等しいことから,すぐに分かります
ね.これより ∠A0 PC=60◦ が得られます.つまり 2 つの対角線のなす角が 60◦ です.
ここで,次の命題を思い出すことができれば,話はずいぶん発展します.
¶Exercise 3
³
四角形の 2 つの対角線の長さが p,q で,そのなす角が θ であるとき,この四角形の面積 S は
1
S = pq sin θ
2
であることを示しなさい.
(四角形は必ずしも円に内接しなくてもよいことに注意しよう)
µ
¨
¥
Proof
§
¦
´
四角形を ABCD とし,2 つの対角線の交点を P とします.AP=a,BP=b,
CP=c,DP=d,AC=p,BD=q とするとき,
1
1
1
4ABP= ab sin(π − θ) = ab sin θ, 4BCP= bc sin θ,
2
2
2
1
1
1
4CDP= cd sin(π − θ) = cd sin θ, 4DAP= da sin θ
2
2
2
a + c = p, b + d = q
6
‶
″
θ
d
a
⁂
b
‴
c
‵
が成り立ちます.したがって,
1
1
1
1
ab sin θ + bc sin θ + cd sin θ + da sin θ
2
2
2
2
1
1
1
= (ab + bc + cd + da) sin θ = (a + c)(b + d) sin θ = pq sin θ
2
2
2
√
55 3
0
°
7 この命題を適用してみましょう.°
5 より四角形 ABCA の面積は
でした.対角線の長さ
4
55
4 より A0 B=
6 より 60◦ でした.したがって
はそれぞれ AC=7,°
であり,そのなす角は °
7
√
√
55 3
3
1
55
1
55
◦
=
·7·
sin 60 =
·7·
·
4
2
7
2
7
2
確かに等式は成り立っています.
15
°
8 4ABC ∽ 4A0 PC なので A0 P : A0 C = AB : AC.よって,A0 P : 3 = 5 : 7.したがって A0 P=
.
7
15
CP は ∠BCA0 を二等分しているので,BP : A0 P = BC : CA0 = 8 : 3.よって A0 P=
より
7
8 15
40
BP= ·
=
.
3
7
7
24
4ABC ∽ 4A0 PC なので CP : CA0 = BC : CA.よって,CP : 3 = 8 : 7.したがって CP=
.
7
24
25
これより AP=7 −
=
.
7
7
ところで,
25
40
24
15
AP : BP : CP : A0 P =
:
:
:
= 25 : 40 : 24 : 15
7
7
7
7
となっていますが,これについては,次の命題が成り立つことも押さえておきましょう.
S = 4ABP+4BCP+4CDP+4DAP=
¶Exercise 4
³
円に内接する四角形 ABCD がある.2 つの対角線の交点を P とし,
AB=a,BC=b,CD=c,DA=d とするとき,
AP : BP : CP : DP = ad : ab : bc : cd
が成り立つことを示しなさい.
″
a
‴
‶
d
c
⁂
b
‵
µ
¨
¥
Proof
§
¦
´
四角形 ABCD は円に内接するので,4ABP ∽ 4DCP,4BCP ∽ 4ADP.したがって
AP : BP = d : b,
BP : CP = a : c,
CP : DP = b : d,
DP : AP = c : a
これより AP : BP : CP : DP = ad : ab : bc : cd が成り立ちます.
4 が求まるよ)
(この命題を使えば,[VII] の °
カズ池田 高校 1 年生の皆さん,今日の話はいかがでしたか? 1 つの問題を解いたら,想像力を働か
せて,いろんな問題へと発展させてください.点が線となり面となって,面白さも一段と高まります.一
言で言えば「問題と遊ぶ心」が大切なのです.想像力は創造力へと通じていることを確信しましょう.
7