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イオン化傾向 1
▲イオン化傾向
金属の単体はいずれも酸化されて陽イオンになりうる。金属のイオンのなりやすさを表したものをイオン化傾向という。
金属のイオン化列
イオン化傾向
K、Ca、Na、Mg、Al、Zn、Fe、Ni、Sn、Pb、(H)、Cu、Hg、Ag、Pt、Au
イオン化傾向
大
小
e-を出してイオンになりやすい
酸化されやすい
イオンになりにくい
酸化されにくい
イオン化傾向の覚え方
Kかそう Caか Naな Mgま Alあ Znあ Feて Niに Snすん Pbな
H2ひ Cuど Hgす Agぎる Ptしゃ Auきん
イオン化傾向より、カリウム K やナトリウム Na は容易に酸化されやすいことがわかる。一方、金やプラチナ(白金)は
酸化されにくいことがわかる。確かに、金やプラチナの指輪が簡単に酸化されてさびてしまってはさびしいかぎりであ
る。
M
金属の陽イオンは還元されうる →
Mn+ + ne- → M
酸化剤になりえる
→
Mn+ + ne-
金属の単体は酸化されうる → 還元剤になりえる
半反応式の例
金属単体
① Ca → Ca
+ 2e
起こりやすい
+
+ e-
還元力大
② Na → Na
-
2+
+ 2e- →
Ca
+
② Na
+ e-
→
Na
① Ca
③ Zn → Zn2+
+ 2e-
③ Zn2+
+ 2e- →
Zn
④ Fe → Fe2+
+ 2e-
④ Fe2+
+ 2e- →
Fe
2+
⑤ Cu → Cu
⑥ Ag → Ag
注
金属イオン
2+
+
-
+ 2e
-
+ e
2+
⑤ Cu
⑥ Ag
+
-
+ 2e
→
Cu
酸化力大
-
→
Ag
起こりやすい
+ e
鉄は酸化されると 2 価のイオンになるが、2 価の鉄はさらに酸化され 3 価になる。
Fe2+ → Fe3++e-
1
イオン化傾向 2
酸との反応による金属の溶解
1
K
Ca
Na Mg Al Zn Fe Ni
H2
Sn Pb
Cu Hg Ag Pt
Au
酸化力のある酸以外(塩酸など)
と反応してH2を発生して溶ける
酸との反応
酸化力のある酸(硝酸・熱濃硫酸)と反応して溶ける
※
王水に
溶ける
Pb は塩酸および、希硫酸には溶けない。Pb は表面のみ反応し、そのとき水に丌溶性の PbCl2 および PbSO4 が Pb 表
面を覆うからである)
※
Al、Fe、Ni は濃硝酸および熱濃硫酸には溶けない。表面のみ反応し、そのときに表面にち密な酸化被膜を形成し、そ
れが反応をストップさせるからである。
(塩酸などには溶ける) 酸化被膜を形成し安定した状態を丌動態という。
※
硝酸と塩酸の混合物(1:3)は王水と呼ばれ、Pt や Au をも溶解する。
水との反応による金属の溶解
2
水 H2O はごくわずかであるが、電離して H+を生じている。
H2O →
H++OH- (①式)
そのため、還元力の強い金属(イオン化傾向が大きい金属)であるならば無理やり水から H+を引き出し還元して水素を発生
させる。 2H++2e- → H2 (②式)
①式×2+②式
2H2O+2e- →
K
H2+2OH- (この半反応式は覚える)
Ca
Na Mg Al Zn
Fe
Ni
Sn
Pb
H2
Cu Hg Ag Pt
Au
常温で反応
水との反応 熱湯と反応
高温の水蒸気と反応
例
水 H2O とナトリウム Na との反応
まとめると、 (金属)+(水) →
2Na+2H2O → H2+2NaOH
(水素)+(水酸化物)
イオン化傾向で Na までの金属ならば、水を還元して水素を発生することができる。Mg は熱湯ならば反応する。Mg 以降
の Al、Zn、Fe については高温の水蒸気と反応する。ただし、生じた水酸化物が脱水されて酸化物となる。Fe よりイオン
になりにくい Ni 以降の金属では逆反応が大きくなり(注)、水の還元反応は全く進まなくなる。逆に酸化物が水素で還元さ
れて単体になる。
(注)Fe と水蒸気の反応では平衡反応になる。 3Fe+4H2O
Fe3O4+4H2
高温の水蒸気となら
金属(Mg or Al or Zn or Fe)+水蒸気 → 酸化物+水素
Ni 以降の金属では
金属+水蒸気
← 酸化物+水素
[酸化物+水素 → 金属+水蒸気]
例
CuO+H2 →
Cu+H2O
2
イオン化傾向 3
イオン化傾向 演習その 1
1
次の
ア
~
キ
にもっとも適切なものを一つ各解答群から選び番号で答えよ。
金属元素の単体は酸化されて陽イオンになる性質がある。金属が水溶液中で電子を放出して陽イオンになろうとする傾
向をイオン化傾向という。金属のイオン化傾向の違いにより,水や酸などとの反応性が異なる。
イオン化傾向の大きい
ア
,Na,
イ
は冷水と反応し(ここで,
ア
,Na,
イ
のなかで,
イ
のみがア
ルカリ土類金属である),水素を発生する。
一方,
ウ
生するが,特に
オ
オ
,Zn,Fe,
ウ
エ
は冷水とは反応しない。
ウ
,Zn,Fe,
エ
は高温の水蒸気と反応して水素を発
は熱水とも反応し水素を発生する。
よりイオン化傾向が大きい金属は,一部の例外を除き,塩酸や希硫酸などの酸と反応し,水素を発生する。一方,
よりイオン化傾向の小さい
カ
,Cu,Ag は塩酸や希硫酸などの酸とは反応しないが,硝酸や熱濃硫酸のような
強い酸化力を有する酸とは反応し溶ける。Au や
キ
は硝酸でも酸化されないが王水には酸化され溶ける。
ア~キの解答群
(0) H2
(1) K
(2) Al
(3) Pt
(4) Ca (5) Mg (6) Hg (7) S
(8) P
2
4 種の金属 A,B,C,D がある。これらは,Fe,Au,Cu,Zn のうちのいずれかである。A~D に関する次の記述(1)~
(3)を読み,下の問いに答えよ。
(1) A~D に希硫酸を加えると,A と B が気体 X を発生しながら溶解した。
(2) C と D に濃硝酸を加えると,C だけが気体 Y を発生しながら溶解した。
(3) A の硝酸塩の水溶液に B を加えると,A が析出した。
1 金属 A,B,C,D はそれぞれ何か。化学式で記せ。
2 気体 X,Y それぞれ何か。化学式で記せ。
3
次の(1)~(3)では酸化還元反応が起こる。( a
)~(
j
)をうめて化学反応式を完成させよ。また,各反応における酸化
剤の化学式を記せ。
(1) 硫酸銅(Ⅱ)水溶液によく磨いた鉄片を浸す。( a ) + Fe
(
b
)
(2) 硫化水素水溶液に二酸化硫黄を吹き込む。( c
(
d
)
(3) ナトリウムの単体を常温の水に加える。
) + SO2
( g ) + 2H2O
3
(
h
)
イオン化傾向 4
イオン化傾向 演習その 2
1
8 種類の金属の単体 a~h があり,これらは以下の金属のいずれかである。
アルミニウム
ナトリウム
マグネシウム
銅
銀
白金
金
水銀
a~h のうち,室温において a のみが液体であり,その他の金属はすべて固体である。また,b と c 以外の金属は銀白色
である。ア)d は常温の水と激しく反応して水素を発生する。e および f は常温の水とは反応しないが,e は熱水と,f は高温
の水蒸気と反応する。d,e および f は希塩酸や希硝酸に水素を発生しながら溶解するが,イ)f は濃硫酸や濃硝酸にはほとん
ど溶解しない。c と g は希硝酸や濃硝酸には溶解しないが,王水には溶解する。
a,b および h は希塩酸とは反応しないが,希硝酸や濃硝酸とは反応して窒素酸化物の気体を発生する。たとえば,ウ)b
と希硝酸の反応では,無色の気体を発生しながら溶解する。
1 a~h に該当するものを上の 8 種類の金属から選び,元素記号で答えよ。
2 下線部ア)について,以下の問いに答えよ。
1) この反応の化学反応式を記せ。
2) d を保存する場合の保存方法について簡潔に記せ。
3 下線部イ)のように,f は酸化力の強い酸の中では,表面にち密な酸化被膜が形成され,内部が保護されている。この状
態を何というか。その名称を記せ。
4 下線部ウ)の化学反応式を記せ。
2
7 種の金属 Zn、Mg、Fe、Na、Ag、Cu、Pt がある。
1
①A
のみ室温で、はげしく水と反応して溶けた。D は熱湯中では反応して溶けた。
2 F のイオンを含む溶液に G を入れると、F が析出した。
3
②A、C、D、F
は濃硝酸に溶けたが B と E が溶けなかった。
4 A、B、C、D は希硫酸に溶けて水素を発生したが、E、F、G は溶けなかった。
問 1 A~G に当てはまる金属を選び、元素記号で記せ。
問 2 下線部①において A と水との反応式を記せ。
問 3 下線部②において F と濃硝酸との反応式を記せ。
4
イオン化傾向 5
イオン化傾向 演習その 3
1
O=16
Na=23 Ca=40
[10 東邦(医)]
少量の塩化カリウムを含むナトリウムの固体試料がある。この固体試料 5.00g を 50mL の水に入れると激しい反応が起
こり(1),気体(2)とアルカリ性物質 A が生成した。反応終了後,この水溶液を 100mL のメスフラスコに入れ,蒸留水を加え
100mL にした。この溶液を B とする。溶液 B の 10mL をホールピペットでとり,100mL のメスフラスコに入れた後,蒸
留水を加え 100mL にした。この溶液を C とする。次に 0.1000mol/L のシュウ酸水溶液 20.00mL をコニカルビーカーに入
れ,フェノールフタレインを指示薬として溶液 C で滴定したところ 20.00mL 加えたところで溶液の色が変化(3)した。
1 下線(1):化学反応式で示せ。
2 下線(2):生成した気体は標準状態で何 L になるか。
3 下線(3):溶液の色は何色から何色に変化したか。
4 固体試料中のナトリウムの質量パーセント濃度[%]を求めよ。
2
酸化カルシウムとカルシウムの混合物 0.53g を水に溶解させた。反応後の溶液に蒸留水を加えて 500mL の溶液とした。
ここから 10mL をとって 0.10mol/L 塩酸で滴定したところ、中和するのに 4.9mL を要した。
1 混合物中の酸化カルシウムの質量を求めよ。
2 下線部で発生する気体の体積は、標準状態で何 L か。
3
(a) 銅に濃硝酸を加えて完全に反応させたところ,赤褐色の気体 A の発生とともに,銅の化合物 B が生成した。気体 A
の分子式を書け。
(b) 化合物 B の水溶液に亜鉛を加えた。どのような変化が観測されるか。また,このときの化学反応式を書け。
5
イオン化傾向 6
イオン化傾向 演習その 4
1
銅と鉄からなる粉末 0.60gに希硫酸を加えたところ気体が発生した。反応後の溶液をにろ過したのち、ろ液を蒸留水でう
すめて 100mL とした。この溶液から 10mL 取って 0.010mol/L の KMnO4 で滴定したところ、20mL を要した。ろ過、およ
び希釈の段階では反応は起こらないものとする。
1 下線部の反応を化学反応式で記せ。
2 滴定における反応をイオン反応式で記せ。
3 下線部で生じる気体は標準状態で何 L か。
4 0.60g の中の鉄の純度は何%か。Fe=56
5 下線部において希硫酸のかわりに希塩酸を用いると KMnO4 での滴定において正しい結果が得られない。この理由を説
明せよ。
2
ヨウ化カリウム 8.30g とヨウ素 1.27g を水に溶解させて 100mL の溶液とした。この水溶液を A 液とする。次に,(1)銅の
小片に濃硫酸を注いで加熱し完全に溶解させ,このとき(2)発生した気体を全て A 液に通じて吸収させた。吸収後の水溶液
からホールピペットで 20.0mL はかりとってコニカルビーカーに入れ,ビュレットから 0.10mol/L のチオ硫酸ナトリウム
を滴下した。ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムは,次の化学反応式に従って反応する
I2+2Na2S2O3 → 2NaI+Na2S4O6
終点付近で指示薬としてデンプン水溶液を加えてさらに滴下を続けたところ,8.0mL で終点となった。
原子量:K=39 Cu=64
I=127
1 下線部(1)で起こる反応を化学反応式で記せ。
2 下線部(2)で起こる反応を化学反応式で記せ。
3 発生した気体(吸収された気体)の物質量(mol)を記せ。
4 初めにあった銅の小片の質量(mg)を記せ。
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