物理数学 3 homework8 2014/12/22 1 有限群の計算 (2) (1) D2n :2 面体群 D2n は行列群 GL(2, R) の部分群であり、その位数は 2n である。D2n は 3 次元空間中の正 n 角形 のもつ対称性を表す群である。 D2n = {E, A, A2 , · · · , An−1 , B, BA, BA2 , · · · BAn−1 } n 2 A = B = E, AB = BA n−1 (1) (2) 但し、E は単位行列である。 (1.1) D2n の共役類を求めよ。 (1,2) D2n の既約表現は 1 次元表現と 2 次元表現のみである。これをもとに、1 次元既約表現の 数 n1 と 2 次元既約表現の数 n2 を求めよ。 (1,3) D2n の忠実な表現を一つ構成せよ。 (2) Q4n :四元数型の群 Q4n は行列群 GL(2, C) の部分群であり、その位数は 4n である。 Q4n = {E, H, H 2 , · · · , H 2n−1 , F, F H, F H 2 , · · · F H 2n−1 } H = F = −E, HF = F H n 2 2n−1 (3) (4) (2.1) Q4n の共役類を求めよ。 (2,2) Q4n の既約表現は 1 次元表現と 2 次元表現のみである。これをもとに、1 次元既約表現の 数 n1 と 2 次元既約表現の数 n2 を求めよ。 (2,3) Q4n の忠実な表現を一つ構成せよ。 2 su(3) リー代数の表現とカルタン標準形の構成 一般に次元が大きくなっていくほど、リー代数の構造は複雑になっていく。N が大きいところで の su(N ) や so(N ) を統一的に扱い、それらの表現とその性質を分類し、解析するのに便利な基底 がカルタン標準形である。カルタン標準形とは、平たく言えばリー代数の基底を同時対角化でき る生成子と昇降演算子のペアに分解するものである。su(N ) や so(N ) などコンパクト単純リー代 数に対してはカルタン標準形が構成できることが知られている。物理でもカルタン標準形は幅広 く応用されており、バリオンの分類や大統一理論の構築の基礎となるものである。 (1) リー代数の表現とは何か。抽象リー代数自体とどう違うのか。また、表現を考えるのはどう してか。 (2) リー代数の随伴表現とは何か。su(3) リー代数の随伴表現の次元を答えよ。 su(3) リー代数の 3 次元表現に対して、カルタン標準形を構成してみよう。 1 0 −i 0 0 1 0 λ1 = 1 0 0 , λ2 = i 0 0 , λ3 = 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 −i λ4 = 0 0 0 , λ5 = 0 0 0 , λ6 = 1 0 0 i 0 0 0 0 0 1 0 0 1 λ7 = 0 0 −i , λ8 = √ 0 1 0 ., 3 0 i 0 0 0 −2 1 0 0 0 −1 0 , 0 0 0 0 0 0 0 0 1 , 0 1 0 (5) をゲルマン行列と言う。su(3) リー代数の基底を Fi = λi (i = 1, 2, · · · 8), 2 (6) にとる。 同時対角化できる生成子 F3 , F8 F3 , F8 は {Fi }8i=1 のうち同時対角化できる最大の組であり、ともに対角成分のみ行列要素を持つ。 (3) (1, 0, 0) は F3 , F8 の同時固有ベクトルである。(1, 0, 0) の F3 , F8 に対する固有値をそれぞ れ (µ1 )1 , (µ1 )2 と書くとき、µ1 = ((µ1 )1 , (µ1 )2 ) を求めよ。同様に、(0, 1, 0) の F3 , F8 に対する固 有値のなすベクトルを µ2 、(0, 0, 1) の F3 , F8 に対する固有値のなすベクトルを µ3 と書いた時の µ2 , µ3 を求めよ。 (1, 0, 0), (0, 1, 0), (0, 0, 1) を同時固有値でラベルし、それぞれ |µ1 ⟩ , |µ2 ⟩ , |µ3 ⟩ と書くことにする (図 1)*1 。 昇降演算子の構成 F1 , F2 , F4 , F5 , F6 , F7 F3 , F8 以外の 6 つの生成子も適当な線形結合をとることにより、「昇降演算子」的なものを作るこ とができる。 (4) ad(F3 ) と ad(F8 ) を求めよ。 ヒント:ad(F3 ) と ad(F8 ) のほとんどの行列要素は消える。 (5) 1 v±α = √ (1, ±i, 0, 0, 0, 0, 0, 0) 6 1 v±β = √ (0, 0, 0, 1, ±i, 0, 0, 0) 6 1 v±γ = √ (0, 0, 0, 0, 0, 1, ±i, 0), 6 *1 (7) (8) (9) su(3) リー代数の物理への応用例としてクォークとハドロンの分類がある。特に (u,d,s) クォークは su(3) リー代数の 3 次元表現に属し、 √ √ |µ1 ⟩ = |u⟩ , |µ2 ⟩ = |d⟩ , |µ3 ⟩ = |s⟩ という対応関係がある。F3 , 2F8 / 3 はアイソスピン、ハイパーチャージに対応し、F3 + F8 / 3 は 電荷である。 2 が行列 ad(F3 ), ad(F8 ) の同時固有ベクトルになっていることを確かめよ。v+α の行列 ad(F3 ), ad(F8 ) に対する固有値を α1 , α2 と書いたときの α = (α1 , α2 ) を求めよ。同様にして、v+β , v+γ の行列 ad(F3 ), ad(F8 ) に対する固有値のなすベクトル β, γ を求めよ。また、µ1 − µ2 = α, µ1 − µ3 = β, µ2 − µ3 = γ を示せ。 E±α = ∑8 i=1 (v±α )i Fi , E±β = ∑8 i=1 (v±β )i Fi , E±γ = ∑8 i=1 (v±γ )i Fi , により 3 つの「昇降演算子」 の組を定義する。 (5) |µ1 ⟩ に E−α を作用させてできるベクトル E−α |µ1 ⟩ が |µ1 − α⟩ = |µ2 ⟩ に平行である ことを示せ。また同様にして、E−β |µ1 ⟩ ∝ |µ3 ⟩ , Eα |µ2 ⟩ ∝ |µ1 ⟩ , E−γ |µ2 ⟩ ∝ |µ3 ⟩ , Eβ |µ3 ⟩ ∝ |µ1 ⟩ , Eγ |µ3 ⟩ ∝ |µ2 ⟩ , を証明せよ。これから、{E±α , E±β , E±γ } が 3 つの固有ベクトルの間の行 き来を表す演算子であることが分かる (図 1)。 ∑8 ヒント:行列 E±α = i=1 (v±α )i Fi を 3 × 3 の行列として具体的に書き下すと分かりやすい。 以上の計算により su(3) リー代数は同時対角化できる F3 , F8 と 3 つの「昇降演算子」の組 {E+α , E−α }, {E+β , E−β }, {E+γ , E−γ } に分解できることが分かった。各生成子の間の関係は 2 次元平面内に簡単な図 (ウェイト図という) として表現することができる。この su(3) リー代数の 基底の取り方 {{F3 , F8 }, {E±α , E±β , E±γ }} をカルタン標準形という*2 。 su(N) や so(N) など一般のコンパクト単純リー代数に対するカルタン標準形やその表現の構成に ついては講義ノートの第 5 章と第 6 章や講義ノートに挙げてある参考文献を参照せよ。 6 F8 µ2 µ1 α w - w AKA A A γ A β A A 3 Awµ 図1 *2 F3 su(3) の 3 次元表現 上で考えたものだと、3 つのクォークの分類でトリビアルな感じがあるが、クォークの複合粒子であるメソン 8 重項やバリオン 8 重項、バ リオン 10 重項の分類もカルタン標準形を用いて 2 次元平面上に規則的に各粒子を規則的に配置することによりできる。 3
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