新製品情報 材料設計支援統合システム MedeA:最新版2.15リリース MedeAは原子・分子レベルのシミュレーション技術を基に様々な材料の物性評価を行うための統合環境 です。MedeAの最新版(バージョン2.15)がリリースされましたので、その新機能や改善点等を紹介します。 今回のバージョンアップでは、MedeAの基盤となるシステム(データベース管理システムや並列ライブラリー 等)の改善が図られ、より安定に動作し、より高速な計算を実行できるようになりました。また、新モジュール として定量的構造物性相関ツール「P3C」が追加されました。 ■ 基盤システムの改善 ■ SQLiteの採用 VA SPの最 新リビジョンである5.3.5への対応は、現 在開発が進行中です。次期バージョンのMedeAにて、 MedeAはデータベース技術を活用し、計算結果やモ VASP 5.3.5がリリースされる予定です。 デル構造を一元的に管理することができます。これまで、 ■ Phonon データベース管理システムは、Microsoft SQL Serverや IR/Ramanスペクトルを計算し、MedeA上で描画でき MySQLといったサーバー・クライアント構成のものを採 るようになりました(図1)。 用していました。 今回、SQLiteに対応することで、サーバー・クライアン ト間での通信がなくなり、より軽量で高速な動作が実現 しました。また、サーバーが停止するといった心配もあり ませんので、安定して利用できます。 ■ httpsへの対応 MedeAはネットワーク技術を活用したJob Server/Task Serverシステム(独自のキューイングシステム)を実装し 図1 PhononでのIRスペクトル計算例 ています。これにより、リモートマシンへの計算を簡便に 制御することができます。これまで、httpプロトコルを ■ フローチャート ベースにした通信を行っていましたが、本バージョンで MedeAではフローチャート機能により、計算内容をフ は、SSL / T L Sプロトコルに対応し、ht tps( Hy p er te x t ロー形式で構築し実行することができます。多くの改良 Transfer Protocol Secure)通信が可能になりました。こ がなされている他、利便性を向上させる機能も追加され れにより、Job ServerとTask Server間での通信内容が ています。 暗号化され、セキュアな運用が可能です。 フローチャートライブラリーが作成され、テンプレー ■ Intel MPI 4.1への対応 トとなるフローチャートが用意されました。テンプレート MedeAに搭載される計算モジュール(VASP、LAMMPS を基にして計算構築することができます。ライブラリー 等)は、Intel MPIライブラリーを利用した並列計算を は今後さらに充実される予定です。 行っています。今回、Intel MPIのバージョン4.1に対応し その他に、structure list file機能を利用した構造一括計 ました。これにより、並列処理がより高速になりました。 算に対応しました。structure list fileに登録した構造をフ 特にノード間並列では、Infinibandを利用した高速通信 ロー内で読み込み、ループ処理で各構造を逐次計算する の並列処理を行うことができるようになり、計算資源を ことができます。また、ループ毎の処理を一括して実行す 有効に活用できます。 ることもでき、すべての構造に対して同時実行も可能です。 ■ 各モジュールの改善点 ■ 新モジュール 現在、VASP 5.3.3をサポートしており、Van der Waals 新モジュールとして、 P3C (Polymer Property Prediction densit y func tional(optPBE-vdW等)やmeta- GGA using Correlations)がリリースされました。P3Cは、 (TPSS等)に対応した設定をインターフェース上で行うこ Biceranoの方法論 1 )に基づいた定量的構造物性相関 ■ VASP 5.3.3 とができます。また、よく利用されるパラメーターとして、 ■ P3C (QSPR)ツールです。MedeAがもつ単量体のライブラ 対称性考慮オプション(ISYM)や電子数指定オプション リーから、高分子の各種物性(ガラス転移点、凝集エネ (NELECT)もインターフェース上で設定できるようになり、 ルギー、表面張力、誘電率、ヤング率等)を推算すること 利便性が向上しました。さらに、上記の通り、Intel MPI 4.1 ができます。 に対応してInfinibandを利用した並列処理計算を実行 1)J. Bicerano, Predic tion of Polymer Proper ties, できるようになりました。 rev is e d and e x p an d e d third e dition, Marcel Dekker, New York, 2002. 11 セミナー 情 報 材料設計支援統合システム MedeA:ユーザー会報告 MedeAのユーザー会が10月21~23日の日程で、米国フィラデルフィアで開催されました。MedeA最新版の ハンズオンを中心としたトレーニングセッションが1日、ユーザーならびに開発者からの発表が行われるサイ エンティフィックセッションが2日間開かれ、世界各地から60名あまりが参加しました。 ■ 新モジュールUNCLE、FFOの発表 本ユーザー会の開催にあわせ、2つの新モジュールの リリースが発表されました。 M e d e A - U N C L Eはクラスター展 開 法を搭載した 新モ ジュールです。配置のエントロピーの考慮が重要となる 合金や固溶体の取り扱いをより高精度に行うことがで きます。ユーザー会ではベータ版がお披露目されました。 正式リリースは来年春に予定されており、日本では紹介 “Current challenges to density-functional calculations: complexity, correlations and dynamics” ・Gus Hart - Brigham Young University “Building alloy models with compressive sensing” ・Tobias Kerscher - Hamburg Univ. Technology “Applications of UNCLE” ・Martijn Marsman - University of Vienna “VASP: Past, Present, Future” セミナーを開催する予定です。 共同研究先からの発表 ‒ Thermo-Calc もう一つは、力場パラメーター開発ツールのFFO(Force ・Paul Mason - Thermo-Calc Software Field Optimizer、仮 称)です。現在は、酸 化物向けの “ The application of CALPHAD based tools to the Buckinghamポテンシャルと金属向けのEAM(Embedded Materials Genome Initiative and ICME and the Atom Method)ポテンシャルの2タイプの力場関数に 対応しています。Buckinghamポテンシャルについては Li酸化物に対する適用事例が報告されています1)。 ■ サイエンティフィックセッションでの 広範な発表 corresponding needs for data” ・Chao Jiang - Thermo-Calc Software “ Thermophysical Proper ties of Liquid Al Alloys Using Molecular Dynamics” ユーザーからの発表 ・Fabio Rosciano - Toyota Motors Europe “Computational Design and Experimental Verification of Zero - and Low-strain Cathode Materials for Solid-State Li-Ion Batteries” ・Phuti Ngoepe - University of Limpopo “Simulation of nano-architectured electrodes for energy materials” 図1 ユーザー会風景 (演者はMD社CSOの Wimmer氏) ・Hiroki Moriwake - Japan Fine Ceramics Center “First-principles Calculations at Japan Fine Ceramics Center” MedeAモジュール開発元(VASP、UNCLE)からの発表 ・Jürgen Hafner - University of Vienna ・ 弊社 Web サイトには、取り扱い製品、最新のニュース、お客様向けサポート情報、 他のサイトへのリンクなどを掲載しております。 ・ 電子媒体でのニュースレターおよびバックナンバーは下記 URL をご利用下さい。 http://www.rsi.co.jp/kagaku/cs/news/newsletter.html ・ 本ニュースレターは、弊社取り扱い製品をご購入いただきましたサイトのご担当 者様にお送りしています。 その他に発送のご希望がございましたら弊社までご 連絡ください。 各社の商標または登録商標です。 ・ 記載されている会社名及び商品名は、 1)Ryoji Asahi, Clive M. Freeman, Paul Saxe and Erich Wimmer, Modelling Simul. Mater. Sci. Eng. 22 (2014)075009. RSI ニュースレター Vol. 22, No. 1, 2015 2015 年 1 月 1 日 発行 発行人 後藤 純一 発行所 株式会社菱化システム Copyright © 2015 Ryoka Systems Inc. TEL: 03-6830-9724 FAX: 03-5610-1161
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