Title ホルモン療法の位置づけ Author(s) 並木, 幹夫 Citation

Title
ホルモン療法の位置づけ
Author(s)
並木, 幹夫
Citation
泌尿器外科 = Japanese journal of urological surgery, 18(増刊): 435-436
Issue Date
2005
Type
Journal Article
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URL
http://hdl.handle.net/2297/40228
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http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/
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早期前立腺癌は切らずに治せるか?
泌尿器外科 2005年
18(臨増),435~436
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l 並木幹夫 l
l 金沢大学大学院医学系研究科鱗治療学(泌尿器科学)。 1
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た199例の疾患特異的生存率を後向きに比較し
早期前立腺癌に対する治療方針として,欧米で
は前立腺全摘術,放射線療法および無治療経過観
た。治療後10年の疾患特異的生存率は両下間で
察が標準的方法として認められている。1941年
有意差を認めなかったが,低分化癌でホルモン療
にHuggins博士に始められたホルモン療法は,
法単独群では治療成績は不良であった。高分化癌
現在も進行性前立腺癌に第一選択として用いられ
のホルモン療法単独群での疾患特異的生存率は
ており,高齢者にとって忍容性も高い治療法であ
100%と非常に良好であった(図1)。
る。このため,わが国では早期前立腺癌に対して
2.ネオアジュバントホルモン療法後の摘出前
も,ホルモン療法は主に高齢者を中心に用いられ
立腺癌組織の病理学的検討
ており,比較的良好な成績を得られることも経験
ネオアジュバントホルモン療法後前立腺全摘術
的に知られている。しかし,早期前立腺癌に対す
を受けた108例の術後病理学的治療効果と術後生
るホルモン療法の有効性に対し,エビデンスを示
化学的再発率および術前因子との関連を比較し
すことを目的とした臨床試験:が極めて少なく,こ
のことがホルモン療法が欧米では早期前立腺癌に
た。病理学的治療効果Grade3または2を示した
症例は44.4%認め,これら著効例では術後生化
対する治療法の選択肢として認められていない理
学的再発率は低かった(図2)。治療効果を予測
由となっている。
する術前因子として,生検組織像,ホルモン治療
われわれは3つの臨床的検討をもとに,早期前
後のPSA下降率,ホルモン療法の期間などがあ
立腺癌に対するホルモン療法の位置付けを考察し
げられた。
た。
3.TIc-T3前立腺癌に対するホルモン療法の有
効性に関する臨床的検討
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1.方法と締果 灘
全国7施設においてホルモン療法で治療された
Tユ。-T3前立腺癌980症例について臨床的検討を
1.北陸地区におけるステージB前立腺癌に対
行った。全体の疾患特異的5年および10年生存
する手術療法およびホルモン療法の臨床的検討
率は,それぞれ92.9%と88.1%で比較的良好で
北陸地区でステージB前立腺癌でホルモン療
あった。特にGleason scoreが7以下かつ治療前
法単独で治療された248例と前立腺全摘術を受け
PSAが20以下で,ホルモン療法開始後6ヵ月以
内にPSAが0.2未満まで下降した症例では,疾
Role of hormonal therapy
患特異的10年生存率は99.0%と極めて良好であ
Mikio Namiki
Department of lntegrative Cancer Therapy and Urology,
り,その内CAB療法が施行された症例に限ると
疾患特異的10年生存率はユ00%になった(図3)。
Kanazawa University Graduate School of Medical Sciences
これらの症例のようにほぼ根治が期待出来る症例
key words=前立腺癌,ホルモン療法
は,Tlc-T3症例全体の約3分の1を占めていた。
*金沢市宝町13-1(076-265-2390)〒920-8640
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泌尿器外科 2005年臨増号
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Date
図1 分化度別の疾患特異的生存率
高分化癌のホルモン療法単独群での疾患特異的生
存率は100%と非常に良好であった。
図3 Gleason scoreが7以下かつ治療前PSAが20以下
で,ホルモン療法開始後6ヵ月以内にPSAがO.2
未満まで下降した症例での疾患特異的生存率
CAB療法が施行された症例に限ると疾患特異的
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10年生存率は100%になった。
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せることが判明した。ただし,無治療経過観察と
(Kitagawa, et al, lnt J Urol, 2003)
の比較における症例の選択,治療薬剤の選択,治
図2 病理学的治療効果別の再発率
療期間,QOLへの影響等,検討すべき課題も多
病理学的治療効果Grade3または2を示した症例
い。
では術後生化学的再発率は低かった。
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