山口FPの 知っておきたい お金の話

山口FPの
知っておきたい
お金の話
To p i c A b o u t M o n e y
山口大介、56歳。証券会社に勤務後、
ファイナンシャル・プランナーとして独立。
ファイナンシャル・プランナー
山口 大介
相続・事業承継から資産運用まで、
多様な相談業務に携わっている。
遺産の分け方は2次相続まで考えて
て計算)
。ケース1は法定相続分通りの遺産の分け方
基礎控除額が縮小
による試算結果。1次相続の納付税額は2人の子供の相
明けましておめでとうございます。山口大介です。
続税の和である860万円で、2次相続の470万円を加え
昨年は株価は上がりましたが、景気の本格回復には至
た1,330万円が相続税の合計額となる計算です。
らなかった印象があります。2015年は飛躍の年にな
一方、ケース2と3は、1次相続で妻の相続遺産を最
るといいですね。
大・最小にした試算結果。ケース1に比べ、相続税が発
さて、2015年1月からある税制が改正されたのをご
生するタイミングや合計額がずいぶん変わってくるこ
存じでしょうか。相続税制です。図表1に概要を示し
とが分かるでしょう。こうした違いが発生する背景に
ましたが、基礎控除額が「3,000万円+600万円×法定
あるのが、
「配偶者の税額軽減」という特例です。配偶
相続人の数」に縮小されたのと税率の変更が改正点で
者の遺産相続は1億6,000万円までか、1億6,000万円
す。もちろん、
「それは知っている」
という方も多いでし
を超えても法定相続分までは税額控除されます。
ょう。では、遺産の分け方で最終的な納税額が異なるこ
この3つの試算結果を見て、相続税の合計額が最も少
とはご存じでしょうか。
ないケース1の法定相続分通りが一番合理的だと思わ
れた方もいるかもしれません。しかし、注意したいの
配偶者の税額軽減を視野に入れる
が、相続は決して税金だけの問題ではないことです。
図表2は、遺産総額が1億6,000万円として、遺産の
残された妻の生活の安定を最優先に考えるなら妻に全
分け方による2次相続までの相続税の合計額を試算し
額相続させるケース2も有効ですし、将来のトラブルを
たもの(夫が亡くなった際の1次相続は妻と2人の子供
避けるために1次相続で子供に全額相続させるケース3
で遺産を分け、妻が亡くなった2次相続の遺産額は1次
も1つの選択肢です。いずれにしても、相続は2次相続
相続と変わらず、2人の子供は均等に相続したと仮定し
を踏まえて考えることが欠かせません。
■
図表1/2015年1月~の相続税制の概要
●基礎控除
=3,000万円+600万円×法定相続人の数
■
図表2/遺産の分け方による税額の違い
●遺産総額=1億6,000万円の場合(相続人が妻と子供2人の場合の例)
相続する人と金額
●税率
課税対象額
税率
控除額
1,000万円以下
10%
-
1,000万円超3,000万円以下
15%
50万円
3,000万円超5,000万円以下
20%
200万円
5,000万円超1億円以下
30%
700万円
1億円超2億円以下
40%
1,700万円
2億円超3億円以下
45%
2,700万円
3億円超6億円以下
50%
4,200万円
6億円超
55%
7,200万円
ケース
相続税
(夫死亡時・
1次相続)
相続税
(妻死亡時・
2次相続)
妻:8,000 万円
妻:0 円
子:8,000 万円
子:860 万円
2
妻:1億 6,000 万円
妻:0 円
子:0 円
子:0 円
子:2,140 万円
ケース
妻:0 円
妻:0 円
子:1億 6,000 万円
子:1,720 万円
-
1
ケース
3
子:470 万円
*2次相続の妻の遺産額は1次相続で受け取った額と変わらず、
2人の子供は均等に相続したとして計算。
合計
1,330 万円
2,140 万円
1,720 万円