実験室① MOSFETの ゲート抵抗の最適値

特集 電流ドバッ! 電源・パワエレ実験室
ダメ
実験室① MOSFET の
ゲート抵抗の最適値
山本 真義
第 1 章で解説したように,電源回路やパワー回路
を作るときに目指すべきものは次の 3 点です.
Masayoshi Yamamoto
直列抵抗の値を最適化することです.
ゲート抵抗が大きすぎると,損失
(スイッチング
損失)が増して,性能が低下したり素子が異常に発
熱したりします.小さ過ぎるとサージ電圧が大きく
なったり誤 ON が発生したりして故障や誤動作の原
因になるので,大きすぎず小さすぎない値に調整し
なければなりません.また,ゲートを駆動する信号
の タ イ ミ ン グ が 適 切 で な い と 過 電 流 が 流 れ て,
MOSFET が壊れることがあります.
本章では,ゲート抵抗値の決め方とその理由を説
明します.
(1)熱を出さない
(2)過電圧,過電流を発生させない
(3)ノイズを出さず伝わらせない
多くの電源回路やパワー回路には,MOSFET な
どのパワー・トランジスタがスイッチングしていて,
数 A ∼数十 A の大電流を ON/OFF しています.こ
のスイッチング回路部は,熱やノイズ,過電圧,過
電流の発生源になっています.まずはこの回路を良
好な状態にする必要があります.第 1 歩はゲートの
評価対象の
パワー MOSFET
実験の準備
本章の実験回路を図 1(a)に示します.これをダブ
ル・パルス回路と呼びます.
モータ・インバータのような典型的なパワー回路の
スイッチング特性
(損失)を把握できます.しかも,パ
▶写真 1 パワー MOSFET のスイッチング特性評価に使うダブ
ル・パルス回路基板
ゲート抵抗は 0Ω,10Ω,1000Ω の 3 種類用意した
VDD
ダブル・パルス信号は
この端子から入力
IRF740LC
(ビシェイ)
ゲート抵抗を0Ω,10Ω,
1000Ωの3種類で測定
100μH
VGS
Vin
(400V)
IRF740LC
(ビシェイ)
RG
時間[s]
2.5μ∼2.6μ
VDS
VDS(Tr2)
VGS
ID
ID(Tr2)
時間[s]
0.15
このターン・オフ直前のドレイン電流が10Aになるように調整する
(a)実験回路
(b)各部の電圧・電流
図 1 ゲート抵抗の最適値を求める実験回路
(ダブル・パルス回路と呼ぶ)
ゲート抵抗変化の影響実験は,ダブル・パルス回路の ON/OFF 時間を設定して 10 A 電流値でのターン・オン / ターン・オフ波形を確認する
2015 年 1 月号
95
イントロダクション
第2章
元から
熱とノイズが一番出やすい大電 断たなきゃ
流ON/OFFスイッチを最適化!
1
2
3
4
5
6