PDFファイルにしています。

学校環境衛生検査は
誰のためにするの?
~完全実施に向けて~
第47回 山口県学校保健研究大会
平成27年 1月 15日
山口県学校薬剤師会
副会長 河添 真一
<本日の内容>
1.学校安全保健法について
2.学校環境検査の項目について
3.全国と山口県の実施状況
4.完全実施とは
5.誰のために
1.学校安全保健法について
平成21年4月1日施行
「学校保健法」→「学校安全保健法」へ
・学校環境衛生基準の法制化
・保健室と養護教諭の役割の明確化
・災害や不審者の侵入事件等への
対処要領の策定
・学校安全体制の強化 などが追加
1.学校安全保健法について
第二十三条
・1 学校には、学校医を置くものとする。
・2 大学以外の学校には、学校歯科医及び
学校薬剤師を置くものとする。
・3 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、
それぞれ医師、歯科医師又は薬剤師の
うちから、任命し、又は委嘱する。
・4 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、
学校における保健管理に関する専門的
事項に関し、技術及び指導に従事する。
1.学校安全保健法について
第五条
学校においては、児童生徒等及び
職員の心身の健康の保持増進を
図るため、児童生徒等及び職員の
健康診断、環境衛生検査、児童生
徒等に対する指導その他保健に関
する事項について計画を策定し、
これを実施しなければならない。
1.学校安全保健法について
第6条
・2
学校の設置者は、学校環境衛生基準に
照らしてその設置する学校の適切な環境の
維持に努めなければならない。
・3
校長は、学校環境衛生基準に照らし、
学校の環境衛生に関し適正を欠く事項が
あると認めた場合には、遅滞なく、その
改善のために必要な措置を講じ、又は当
該措置を講ずることができないときは、
当該学校の設置者に対し、その旨を申し
出るものとする。
環境衛生検査
1.定期環境衛生検査(定期検査)
主に学校薬剤師が行う
2.日常における環境衛生(日常点検)
毎授業日に教職員が行う
3.臨時環境衛生検査(臨時検査)
伝染病・食中毒等発生時
2.学校環境検査の項目について
第1 教室等の環境に係る学校環境衛生基準
1.換気及び保温等
(1)換気
(2)温度
(3)相対湿度
(4)浮遊粉じん
(5)気流
(6)一酸化炭素
(7)二酸化窒素
※(1)~(7)
毎学年2回
二酸化炭素は
1500ppm以下が望ましい
10℃以上~30℃以下が望ましい
30%以上~80%以下が望ましい
0.10mg/㎥以下
0.5m/秒以下が望ましい
10ppm以下
0.06ppm以下が望ましい
2.学校環境検査の項目について
※(8)、(9)
(8)揮発性有機化合物
ア.ホルムアルデヒド
イ.トルエン
ウ.キシレン
エ.パラジクロロベンゼン
オ.エチルベンゼン
カ.スチレン
(9)ダニ又は
ダニアレルゲン
毎学年1回
100μg/㎥以下
260μg/㎥以下
870μg/㎥以下
240μg/㎥以下
3800μg/㎥以下
220μg/㎥以下
100匹/㎡以下又は
同等のアレルゲン量以下
・二酸化窒素(NO2)は大気汚染の原因物質の
ひとつで、物が燃えて高温になったとき、
空気中の窒素や物に含まれる窒素が酸素と
結合して、一酸化窒素とともに生成します。
・工場や自動車、家庭では石油ストーブやガス
コンロなどの使用によっても発生します。
・二酸化窒素は大気中で化学反応によって硝酸と
なり、強い酸化力をもちます。人が呼吸によって
高濃度の二酸化窒素を吸い込むと、気管支炎や
ぜんそくの原因になったりします。
・また、光化学オキシダントや酸性雨の主な原因
物質の一つでもあります。
2.学校環境検査の項目について
2.採光及び照明
※(10)、(11) 毎学年2回
(10)照度
・教室等の照度の下限値は、300lx
・教室及び黒板の照度は500lx以上が望ましい
・教室及び黒板;最大照度と最小照度の比は
20:1を超えない
10:1を超えないことが望ましい
・コンピュータ教室等の机上の照度は、
500~1000lx程度が望ましい
・テレビ等の画面の垂直面照度は、
100~500lx程度が望ましい
・その他の学校施設の照度は、
Z9110(日本工業規格)の照度基準に適合
2.学校環境検査の項目について
※(10)、(11) 毎学年2回
(11)まぶしさ
・黒板の外側15°以内に強い光源がないこと、
黒板面及び机上面に光沢がないこと
・電灯、明るい窓等がテレビ等の画面に
映じていないこと
「判定基準」につい
て、「教室及びそれ
に準ずる場所の照
度」の下限値を
「300ルクス」とし、
「教室及び黒板の照
度」は「500ルクス
以上であることが望
ましい」とした。
(ポイント:洋服は黒っぽいものを着用)
作業面の推奨照度と照度範囲及び作業への適用の関係
作業面
推奨照度
照度範囲
(lx)
作業または行動の例
防犯(最低)、深夜の病室・廊下
1~5
2
歩行(最低)
2~10
5
歩行
5~20
10
屋外(通路、構内警備用)
10~30
20
荷積み、荷降ろし
20~50
30
収納庫
30~75
50
車庫、非常階段
50~100
75
ごく租な視作業、時折の短い訪問、倉庫
75~150
100
100~200
作業のために連続的に使用しない所
150
租な視作業、継続的に作業する部屋(最低)
200 150~300
やや租な視作業
200~500
300
普通の視作業
500
300~750
500~1,000 やや精密な視作業
750
1,000
750~1,500 精密な視作業
学校環境衛生マニュアル23頁
1,500
1,000~2,000 非常に精密な視作業
1,500~3,000 超精密な視作業
2,000
照度範囲300~750は300以上750以下を示す(lxはルクス)
2.学校環境検査の項目について
<照度不足時の対応>
・ランプの手入れ(ヨゴレを拭き取る)
・新しいランプに交換(寿命)
点灯しなくなった時
明るさが初期の約70%に減少した時
・反射板の使用を検討する
(効果は1.5~1.7倍)
・増設
2.学校環境検査の項目について
3.騒音
※(12)
毎学年2回
(12)騒音レベル
・等価騒音レベル
LAeq50dB以下
閉窓時
LAeq55dB以下
開窓時
2.学校環境検査の項目について
※測定結果が著しく基準値を
下回る場合には、以後
教室等の内外の環境に
変化が認められない限り、
次回からの検査を省略する
事が出来る
2.学校環境検査の項目について
第2
飲料水等の水質及び施設・設備に係る学校環境衛生基準
1.水質
※(1)(3) 毎学年1回、(2) 水道法の検査回数、(4) 毎学年2回
(1)水道水を水源とする飲料水(専用水道水を除く)の水質
ア.一般細菌
集落数 100/ml以下
イ.大腸菌
検出されないこと
ウ.塩化物イオン
200mg/l以下
エ.全有機炭素(TOC) 3mg/l以下であること
(又は過マンガン酸カリウム消費量 10mg/l以下)
オ.pH値
5.8~8.6
カ.味
異常でないこと
キ.臭気
異常でないこと
ク.色度
5度以下
ケ.濁度
2度以下
コ.遊離残留塩素
給水栓で0.1mg/l(病原生物の汚染
又はその疑いのある場合は0.2mg/l)
以上とする
2.学校環境検査の項目について
※ (2)
水道法の検査回数、(4)
毎学年2回
(2)専用水道に該当しない井戸水等を水源とする
飲料水の水質
(3)専用水道及び専用水道に該当しない井戸水等を
水源とする飲料水の原水の水質
(4)雑用水の水質
2.学校環境検査の項目について
2.施設・設備
※(5)水道水;毎学年1回・井戸水;毎学年2回
(6)毎学年2回
(5)飲料水に関する・施設・設備
給水源の種類、維持管理状況、
貯水槽の清潔状態、機能の維持、
故障、浄化設備、塩素消毒設備
(6)雑用水に関する・施設・設備
雨水等の表示、誤飲防止構造・表示、
逆流防止構造、清潔、異常
2.学校環境検査の項目について
第3 学校の清潔、ネズミ、衛生害虫等及び
教室等の備品管理に係る学校環境衛生基準
1.学校の清潔
※(1) 毎学年3回、(2)~(6) 毎学年1回
(1)大掃除の実施
大掃除は、定期に行われていること
(2)雨水の排水溝等
屋上等の雨水排水溝に泥や砂等が
堆積していないこと
雨水配水管の末端は、砂や泥等により
管径が縮小していないこと
2.学校環境検査の項目について
(3)排水の施設・設備
汚水槽、雑排水槽の施設・設備は、
故障等がなく適切に機能していること
2.ネズミ、衛生害虫等
(4)ネズミ、衛生害虫等
校舎、校地内にネズミ、衛生害虫等の
生息が認められないこと
2.学校環境検査の項目について
3.教室等の備品の管理
(5)机、いすの高さ
机面の高さは、座校/3+下腿長、
いすの高さは下腿長であることが望ましい
(6)黒板面の色彩
ア.無彩色の黒板面の色彩は、
明度が3を超えないこと
イ.有彩色の黒板面の色彩は、
明度・彩度が4を超えないこと
2.学校環境検査の項目について
第4
水泳プールに係る学校環境衛生基準
1.水質
※(1)~(6)については、使用日の積算が30日以内ごとに1回 毎学年1回
(1)遊離残留塩素
0.4mg/l以上であること、1.0mg/l以下が望ましい
(2)pH値
5.8以上8.6以下であること
(3)大腸菌
検出されないこと
(4)一般細菌
1ml中200コロニー以下であること
(5)有機物等
過マンガン酸カリウム消費量として12mg/l以下
(6)濁度
2度以下であること
(7)総トリハロメタン 0.2mg/l以下が望ましい(使用期間中1回以上)
(8)循環ろ過装置の処理水 循環ろ過装置の出口における濁度は
0.5度以下であること、0.1度以下で
あることが望ましい
2.学校環境検査の項目について
2.施設・設備の衛生状態
※(9)~(12) 毎学年1回
(9) プール本体の衛生状況等
(10)浄化施設及びその管理状況
(11)消毒設備及びその管理状況
(12)屋内プール
ア.空気中の二酸化炭素
1500ppm以下が望ましい
イ.空気中の塩素ガス
0.5ppm以下が望ましい
ウ.水平面照度
200lx以上が望ましい
2.学校環境検査の項目について
第5.日常点検
※毎授業日
1.教室の環境
2.飲料水
3.学校の清潔及びネズミ、衛生害虫等
4.水泳プールの管理
2.学校環境検査の項目について
第7.理科薬品の管理
(1)管理
(3)保管庫
(5)容器
(7)廃棄
※毎学年1回
(2)保管場所
(4)保管方法
(6)帳簿
※ 「適正な理科薬品の管理と安全な理科実験の手引」
http://yama-yaku.or.jp/gakuyaku/Q&A/rikatebiki.pdf
2.学校環境検査の項目について
<記録保管期間>
・定期検査
・日常点検
5年間
3年間
2.学校環境検査の項目について
その他
・薬物乱用防止教室
・たばことがんに関する出張講座
・アンチドーピング
・くすりの正しい使い方授業
3.全国と山口県の実施状況
<全国学校保健調査集計結果(H23年度)>
4.完全実施とは
○1年に1回
・揮発性有機化合物
・ダニ又はダニアレルゲン
・水道水の水質、施設・設備
・排水の施設・設備
・ネズミ、衛生害虫等
・机、いすの高さ
・黒板面の色彩
・プールの施設・設備,総トリハロメタン
・理科薬品管理状況
4.完全実施とは
○1年に2回
・空気検査
・照度
・騒音
(※周りの環境に変化が無ければ省略できる)
・井戸水の施設・設備
4.完全実施とは
○1年に3回
・大掃除の実施
・給食(自校式のみ)
○使用日30日毎に1回
・プール水の水質
○1ヶ月に1回
・井戸水の水質
4.完全実施とは
やらなければいけないと分かっている
はずなのに・・・なぜ出来ていないのか?
・学校薬剤師の認識不足?
・学校側の認識不足?
・検査機器の不足?
4.完全実施とは
の正しい使い方
・気になる事があれば、遠慮せずに気軽に
学校薬剤師に相談を
・電話がかけにくければ、メールでやりとり
・担当の学校薬剤師が対応してくれなければ、
地域薬剤師会で対応してもらう
5.誰のために
○児童・生徒のために
・教室内の環境
照度,騒音,黒板→学習能率↑
換気(CO2),揮発性有機物質→体調不良↓
・プール水の水質
遊離残留塩素の維持→感染症↓
・日常点検
環境衛生に対する意識↑
5.誰のために
○学校(校長,教職員)のために
・教室内の環境
騒音→ストレス↓
換気,揮発性有機物質→体調不良↓
・施設,設備,排水
児童,生徒のけが↓
・学校環境衛生優良校の候補に
環境衛生に対する意識↑
5.誰のために
○保護者のために
・子供の健康維持
→通院,医療費↓
・安心して通わせられる学校に
→信頼度↑
5.誰のために
○検査時の注意
・検査はいつもと同じ状況で行う事
・環境が適正かどうかを確認する検査
<まとめ>
学校環境衛生検査は、
のために
環境衛生検査の100%実施を目指し、
教師の授業の妨げにならないような、
また児童・生徒が学習しやすい学校環境を
保持してあげましょう
↓
学校薬剤師
学校(養護教諭)の共通目標