「第2回 日・タイ合同シンポジウム」開催される

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「第2回 日・タイ合同シンポジウム」開催される
医薬品の研究開発、製造、販売のグローバル化に伴い、とりわけ近年、医薬品の臨床開発・製造の現場としてのアジ
ア諸国と、さらに連携を深めていく医薬品医療機器総合機構(PMDA)の方針に基づき、2013年10月に開催された第1
回シンポジウムに引き続き、日・タイ両国の規制当局であるPMDAとThaiFDAとの共催で、去る10月15日
(水)、16日
(木)に、産業界も参加したオープンセッションとして、第2回日・タイ合同シンポジウムがバンコクFour Wings Hotelで
開催されました。
このシンポジウムは、日・タイの産業界薬事関係者の相互理解を深め、両国の医薬品規制や開発のための協力体制の基
盤形成を図っていくことを目的としています。
さらに、17日には、日・タイの官官のクローズドミーティングも開催され、より踏み込んだ議論も交わされました。
左からThaiFDA 長官 Boonchai Somboonsook氏、
駐タイ日本大使館 経済部公使 内川昭彦氏、PMDA 理事 重藤和弘氏
シンポジウムの概要
日本からは、PMDA 理事 重藤和弘、審議役 鹿野真弓、調整役 三澤馨、審査役 野中孝浩、調査役 角井一郎、調査専門
員 山田香織、調査役 古賀大輔、国際部課員 羽田幸祐、国際部課員 横田亜砂子の9氏、駐タイ日本大使館から経済部公使
内川昭彦、一等書記官 唐木啓介の両氏が参加しました。また、JPMAからは国際部長 赤坂光三、国際委員会幹事 赤田幸雄、
国際委員会幹事 長岡秋広、アジア部会長 堀江清史、薬事Gリーダー 佐々木功の5氏のほか6名のアジア部会員がシンポジ
ウムに参加しました。
タイ側は同国の製薬企業とThaiFDA(TFDA)から総勢227名が集まりました。まず、重藤、内川、TFDA長官 Boonchaiの3
氏 が 開 会 の あ い さ つ を 行 い、 続 い て「New Drug Review and Pharmaceutical Affairs Act」 /「GMP Inspection」 /
「Pharmacovigilance」の3つのセッションで日・タイ両国の発表ならびに質疑応答があり、最後に次回の開催が会全体で確
認されました。最後にTFDA副長官のPathom Sawanpanyalert、鹿野両氏による閉会あいさつで、盛会のうちに幕を閉じま
した。
(日・タイ合同シンポジウム:http://www.pmda.go.jp/kokusai/2014thailand_sympo.html)
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講演者と講演要旨
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Session1
New Drug Review and Pharmaceutical Affairs Act
● Tharnkamol Chanprapaph 氏 (Bureau of Drug Control, ThaiFDA)
「New Drug Review System of ThaiFDA」のテーマで、現在のタイにおける新薬申請
制度の概要と審査期間に関する状況、ASEAN薬事規制のハーモナイズの進捗、迅速
審査制度の導入、e-CTD申請制度の導入などについて発表がありました。
特に迅速審査制度の導入においては、抗がん剤など生命にかかわる新薬に対して、
日本を含む先進国で2年以内に承認された医薬品が対象となり、現在意見聴取稿の段
階で、本年末を目途に公布される見通しとのコメントがありました。
また、e-CTD申請制度については、「ヨーロッパと同様のフレームを使用して、これ
から2015年末を目途に試行し、2016年以降に正式導入することを目指している」
との
Tharnkamol Chanprapaph 氏
コメントもありました。
● 三澤 馨 氏(PMDA 調整役)、野中 孝浩 氏(PMDA 審査役)
三澤氏から、「Recent Update of Medical Product Regulation in Japan」のテーマで、直近における細胞/再生医療技術の
進展などを踏まえた、日本の薬事規制の改定や先進的医療をいち早く普及させて行くための「さきがけ戦略」
、またそれに基
づくPMDAの第三次中期計画、および国際連携の今後の取り組みについて発表がありました。
引き続き野中氏からは、「NDA Review of Anticancer Drug in
Japan」のテーマで、現在の国際共同治験も含む、日本の新薬
審査の概要について発表があり、特に抗がん剤の審査に関して
例示しながら、国際共同治験を利用して、民族差における安全
性/有効性にも配慮して、いかにドラッグラグを解消してきた
かについて説明がありました。
質疑応答では、TFDAより細胞/再生医療における加速暫定
承認体系の詳細や、国際共同治験において、日本人の登録割
合の必要条件などの質問がなされ、いかに安全性を担保しな
がら効率的に審査を行い、ドラッグラグを解消するかに対して
左:野中 孝浩 氏、右:三澤 馨 氏
■
関心が高いことが示されました。
Session2
GMP Inspection
● Thitiporn Tanratanawongs 氏 (Bureau of Drug Control, ThaiFDA)
「ThaiFDA and PIC/S Membership」のテーマで、現状のGMP管理の概要の説明と、
現在PIC/S加盟の申請に向けてのTFDAでの取り組みについて紹介がありました。
タイではいろいろな歴史を背景にした医薬品を抱える中、伝統薬と一般薬、また地
方と中央とで、PIC/S標準を念頭に置いた規制レベルの標準化に苦慮しており、過去
2006年に加盟申請を行ったものの加盟承認を得ることができなかった経緯がある中、
現在においてもTFDAとしてPIC/S加盟は最重要課題の1つとして考えており、再度加盟
に向けて、薬事規制やリソースの整備などを行っているとの発表がありました。
一方、質疑応答の中で、今年7月に日本はすでにPIC/Sに加盟しているが、TFDAと
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して
「日本で発行されるGMP証明についてはPIC/Sに準拠しているとみなす」
とのコメントもありました。なお、原薬に対する
PIC/S適応についても質問がありましたが、「まだまだ非公式な申請の段階であり、現状の課題を整備したうえで次の段階で
の検討課題と考えている」
とのコメントがありました。
● 角井一郎 氏(PMDA調査役)
「Participation in PIC/S」のテーマで、加盟のための課題となるポイントについて、
日本での経験も踏まえ、具体的事例も含めて発表がありました。その中には、
「加盟に
際しては、当該国の規制当局が熱意をもって課題克服のために自ら努力していくこと
が重要である」
とのコメントがありました。
質疑応答においては、TFDAより、厚労省やPMDAといった中央の規制当局とは別
に日本独特の47都道府県の規制当局を抱えていることに対して、どのようにして査察
レベルの標準化を行ったかという質問がありました。これは、前セッションで発表が
あったように、現在TFDAでは、中央と地方のギャップの課題克服に苦慮している現状
角井 一郎 氏
■
もあり、日本での対応について関心を示したものです。
Session3
Pharmacovigilance
● Wimon Suwankesawong 氏
(Head of Health Product Vigilance Center, ThaiFDA)
● Sareeya Wechwithan 氏
(Health Product Vigilance Center, ThaiFDA)
「Data Management and Utilization of Pharmacovigilance」
のテーマで、Wimon氏から、タイにおけるPVの概況説明とと
もに、データの品質管理、シグナルマネージメント、リスクマ
ネージメントについて説明があり、Sareeya氏から、安全性情
報データベースからみられるタイにおける副作用情報の統計的
左:Sareeya Wechwithan 氏、
右:Wimon Suwankesawong 氏
な特徴や、シグナルマネージメントの詳細な方法、またそれを踏まえた安全対策について発表がありました。
質疑応答の中で、今後タイとしてRMPを取り入れていくのかという質問に対して、
「現時点では今後の検討課題で具体的な
予定はないが、もし導入するとしても生物製剤からの導入になる」
とのコメントがTFDAからありました。
また、PVにおける海外当局との連携についての質問については、
「APECでのPVに関する検討チームへの参画やASEANで
のハーモナイゼイションでの連携を行っている」
とのコメントがありました。
● 山田 香織 氏(PMDA 調査専門員)
「Present and Future of Drug Safety Measures in Japan」のテーマで、現在日本で
のPVにおける取り組みの紹介とともに、より網羅的に安全性情報が収集できるように
するための「MIHARIプロジェクト」の紹介、RMP導入の取り組みについて発表がありま
した。
質疑応答においては、TFDAから、RMPについて後発品に対する制度の詳細や、
RMPのフォローアップについてなど、多数の質問が寄せられ、前セッションでRMPを
今後の検討課題としたTFDAもRMPに高い関心を寄せていることがうかがえました。
また、PMDAより
「MIHARIプロジェクト」紹介の一つとして、電子カルテから情報を
山田 香織 氏
収集する取り組みについて紹介があり、それに対して、網羅的な安全性情報の収集
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を検討しているTFDAは、この点についても関心を示し、具体的なシステムの仕組みなどいくつか質問が寄せられました。
最後に
今回のシンポジウムの前段に、現在JPMAアジア部会が抱えるタイにおける薬事行政に関する課題について、事前に
PMDAと共有してシンポジウムに臨みました。
その一つとして、昨年のシンポジウムでも取り上げた、日本薬局方をタイでの公的規格として認定していく取り組みの進
捗や、それ以外にも事前共有した課題も含め、翌17日に開催される官官のクローズドミーティングで議論することを確認し
ました。また、このクローズドミーティングの成果についても、可能な範囲で産業界と共有することを合意しました。
さらに、日・タイ両者の産官からは、このシンポジウム自体が大変意義があるものとの意見も出され、シンポジウムの最
後に、3回目の開催が参加者の総意として確認されました。
本シンポジウムは、当初目的のとおり、これを一つの機会として、両者の相互理解が進み、協力体制の基盤構築に向け
た成果が挙げられたものと考えます。本シンポジウムの基本は官主催のものですが、、第3回以降についても、JPMAとして
全面的にサポートしていきたいと思います。
パネリストの皆さん
(国際委員会 アジア部会 情報G東南アジアチームリーダー 大野木 毅)
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