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2015年1月号 No.165
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Topics|トピックス
「定例会長記者会見」
を開催
2014年11月20日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントにおいて製薬協定例会長記者会見が開催されまし
た。2014年7月に改めて閣議決定された「健康・医療戦略」の中には、かねてより製薬協が提言してきたいくつかの主
要な施策が盛り込まれていることから、製薬産業に対する、国の経済成長を支える戦略産業としての大きな期待がう
かがえます。また、製薬産業に対しては、2015年4月発足予定の日本医療研究開発機構(以下、AMED)の仕組みや
成果を最大限に活用し、最新のテクノロジーを優れた医薬品の創出に確実につなげていくことを、今後いっそう求めら
れるようになると思います。今回は、50名を超える報道関係者に向けて、多田会長から2014年度事業方針について
の取り組みが説明されましたので、その概要を紹介いたします。
製薬協 多田 正世会長
登壇者
2014年度事業方針について
「イノベーションの促進による医療の質の向上・経済発展への貢献」、「コンプライアンスの徹底と企業活動の透明性の向
上」、「国際連携の推進とグローバルヘルス改善への取り組み」、「積極的な情報発信とステークホルダーとの相互理解の推
進」の4項目を事業方針に掲げ、各項目の事業計画に基づいて、製薬協の会員会社・関係委員会などが一体となった取り組
みを展開しています。
今回は、
「イノベーション」、
「コンプライアンス」、
「国際連携」の3点について、この半年の取り組みを中心に、業界を取り巻
く環境変化も含めて、説明します。
イノベーションの促進による医療の質の向上・経済発展への貢献について
(1)日本の創薬力
新薬を創出できる国は世界で数ヵ国しかなく、アメリカとは依然差があるものの、日本は、世界第3位の新薬創出国です。
革新的医薬品の創出が使命である製薬産業では、ほかの産業と比べても極めて高い比率の研究開発投資を継続的に行い、
医療の質の向上および経済発展に貢献しています。
また、創薬研究のベースとなる科学技術の発展は、世界におけるわが国製薬産業のプレゼンスを向上させ、ひいては大
きな国益につなげる原動力となります。
今後もさらなる科学技術の発展に寄与し、その成果を取り入れて、革新的な新薬を創出していきます。
新薬創出を促進する環境についてみてみます。最近10年間にFDAに承認された新薬の数を、国ごとにその発明の起源を
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組織の種類で分類すると、日本の場合は、ほとんどが大規模企業で発見された薬剤でした。それに対し、アメリカの場合
では、約60%が大学あるいはバイオテク企業を起源としていたことがわかりました。
日本発の新薬数をさらに増加させるためには、アメリカで行われているように、高いレベルにある日本のアカデミアの基
礎研究力を創薬シーズの創出に活かし、それを実用化していく取り組みが、今後ますます重要になってきていると考えてい
ます。
(2)アカデミア発創薬への期待
アカデミアの基礎研究の成果を、製薬企業が革新的な医薬品として実用化へつなげていくためには、1プロジェクトにつ
いて、知的財産面も含め10年前後もの長期間にわたる一貫した取り組みが必要となります。
このような課題に対応するため、政府は、「創薬支援ネットワーク」を構築しました。そこでは理化学研究所、医薬基盤研
究所、産業技術総合研究所が中心となって、国内の大学や公的研究機関などで生み出された優れた基礎研究の成果を、
医薬品として実用化につなげるために、オールジャパンの創薬支援体制による活動が進められています。
2015年4月には、創薬支援ネットワークの本部機能を担う創薬支援戦略室が、AMEDへ移管される予定で、企業ニーズ
に対応したシーズの発掘・育成ならびにそれらシーズの早期企業導出など、製薬企業が望む点について、支援内容がさら
に充実・強化されることを期待しています。
(3)AMEDへの期待
AMEDは、政府の健康・医療戦略推進本部によって策定された戦略・計画を具体的に推進する機構であり、医療分野の研
究開発における司令塔の実務部分を担う組織となります。
従来、医療分野の研究開発支援は、基礎研究を文部科学省、臨床研究を厚生労働省、実用化を経済産業省というように、
各省がそれぞれ別々の役割を担っている状況でした。しかしながら、効率的な創薬には、実用化をにらんだ研究を基礎段
階から切れ目なく行うべきであり、これに沿った開発支援が求められていました。
この観点に基づき、医療分野の研究開発支援の一体的な実行を図るというのが、AMEDの大きな役割であるとされてい
ます。AMEDの誕生で、国が定めた戦略・計画に基づき決定した研究を行う研究者は基礎段階から実用化までシームレスに
研究開発の進捗に応じ研究費を確保することができ、また、複数省庁による重複投資は避けられ、国全体を俯瞰した最適
な政府の投資が行われることが期待されます。
製薬協は、AMEDの設立を大いに歓迎するとともに、このたび、初代理事長に指名された慶應義塾大学 医学部長の末松
誠氏がリーダーシップを余すところなく発揮されることを大変期待しています。
司令塔機能のより高い実効性が発揮されるためには、プログラムディレクター、プログラムオフィサーなどにより基礎か
ら実用化まで一貫してマネジメントされることと、優先順位やメリハリを付けた資源配分がなされることが重要だと考えま
す。また、アカデミアで見出されたシーズがスムーズに製薬企業へ導出されるように、知的財産の確保に関する支援の強
化も必要です。
そして、臨床研究中核病院など、臨床研究推進の拠点がさらに充実・強化されることにより、各施設が連携して症例の集
約化を図るなど、質の高い臨床研究や治験がいっそう効率良く実施されることを期待しています。
今後も製薬産業としての意見を積極的に発信するとともに、政府やアカデミアの方々と対話させていただきながら、実効
性が一段と高まるよう努力を続けたいと考えております。
(4)税制
医薬品の研究開発を促進し、国際競争力を強化するための税制について触れます。
長期間にわたり巨額の研究開発投資を要するハイリスクな製薬産業において、その投資活動を支援する研究開発費の税
額控除制度は、イノベーションの促進と国際競争力の強化を図るうえで不可欠な税制措置です。
研究開発税制は、研究開発投資額に応じて一定割合を税額控除できる制度ですが、「本体」
と
「上乗せ措置」から構成され
ており、いずれも控除限度額が定められています。
本体部分である
「総額型」の30%控除については、2014(平成26)年度が期限となっており、上乗せ措置についても、2016
(平成28)年度までの時限措置となっています。
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研究開発税制について、今年度末で期限を迎える総額型の30%控除を維持し、また、研究開発税制のいっそうの拡充を
図っていくことが不可欠です。
現在、与党税調で来年度の税制改正について議論が行われていますが、特に総額型30%控除がされるよう要望を行って
いるところです。
コンプライアンスの徹底と企業活動の透明性の向上について
(1)透明性ガイドライン
革新的な新薬の創出には、膨大な研究開発費が必要となり、その額は毎年増加し続けている状況です。しかしながら、
このような研究開発活動は製薬企業単独で行うことはできず、各種医療機関や大学などの研究機関と連携協力しなければ
実現することはできません。一方で、これらの連携活動が盛んになればなるほど、医療機関・医療関係者の判断に製薬企業
がなんらかの影響を及ぼしているのではないかとの疑念をもたれる可能性が高まります。
その疑念を払拭するため、さらには企業の活動が高い倫理性を担保したうえで行われていることに広く理解を得るために
も、透明性を高めることが不可欠と判断し、昨年度より透明性ガイドラインに沿った情報公開を実施しています。
なお、昨年度の情報公開に関して、一部の公開方法に閲覧し難いといった意見があったことから、今年度は、公開方法
をより納得性の高いものにするよう、会長名で声明を発出するなど、改善を会員会社に要請しました。
そして、今年度は、「原稿執筆料等」(C項目)の詳細公開も実施しましたが、来年度からは「原稿執筆料等」の詳細公開を
WEB方式に統一することを協会として決定しています。
今後の予定として、2016年度分の「研究開発費等」
(A項目)の詳細公開を2017年度から実施します。
(2)臨床研究支援のあり方に関する取り組み
臨床研究は、薬の有効性や安全性の向上、使い方の改善など、患者さんの生活の質の向上のために重要です。しかし
ながら、昨年来、高血圧症治療薬の医師主導臨床研究への不適切な関与などの事案に端を発して、臨床研究支援のあり方
において、その透明性・中立性が課題になっています。
製薬協では、
「自社医薬品に関する臨床研究に対する資金提供等は契約により実施すること」、
「自社医薬品の臨床研究に
関する資金提供に奨学寄附金は用いないこと」などを「業界としての支援の在り方」
として取りまとめ、2014年4月、会員企業
に発信し周知徹底を図っています。今後も引き続き、奨学寄附金および労務提供の適正化に取り組んでいきます。
また、医療用医薬品の広告のあり方についても、これまで協会として発出してきた「通知」が徹底されるよう、再度、会員
会社に向けて遵守を要請しました。
製薬協としても、再発防止のために、広告審査の見直し・強化に取り組み、今後いっそう、周知・徹底されるよう活動して
いきます。
周知・徹底されるためには、会員各社の代表者自らが、自社の営業や研究開発に従事する従業員のコンプライアンスに
対する認識・行動や違反防止のための社内システムを確認し、不適切と思われる点があるようなら、是正・指導することが
なにより重要であると考えます。
今後も、コンプライアンスへの取り組みを製薬業界における最重点課題に掲げ、社会ならびに国民の期待と信頼にいっ
そう応えていきたいと考えています。
国際連携の推進とグローバルヘルス改善への取り組みについて
アジア製薬団体連携会議(APAC)は、「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」をミッションとして、IFPMA(国
際製薬団体連合会)傘下のアジア各国の業界団体で構成しています。現在も継続して、
「創薬連携」、
「規制・許認可」の2つの
ワーキンググループを中心に活動しています。
2014年4月に開催した第3回APACには、アジア各国の製薬協会、各国政府、アカデミアなど、総勢304名が参加しました。
創薬連携、規制・許認可の話題以外にも、知的財産や医療技術評価(HTA)に関するアジア各国の現状や課題について情報
共有しました。次回、第4回の開催も決定しており、2015年4月に東京で開催する予定です。
APACのミッション実現のため、ワーキンググループごとに長期目標、短期目標を設定し、積極的な活動を展開していま
す。創薬連携グループは、アジア発創薬実現のために必要なオープンイノベーションの基盤を構築することにより、アジア
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の産学官連携を促進していきます。規制・許認可グループに関しては、長期的目標を念頭に、今後、承認審査に関するアジ
アの共通課題についてポジションペーパーや提言文書を作成するとともに、PMDAなど、政府機関の活動を補佐し、各国規
制当局との対話や意見交換を積極的に行っていく予定です。次回4月のAPACの記者会見にも、ぜひ出席してください。
主な質疑応答
Q
今回の衆議院解散および消費税10%増税の先送りについて、製薬協会長としてどのように考えているのか。
A
解散については首相が決めることであり、どのような影響があるかなどは政治的課題であり、コメントは差し控えた
い。消費税の先送りの影響についても、会員各社が置かれている状況はそれぞれ異なり、受ける影響も異なる。製
薬協として業界を一括りにして影響を云々するのは難しい。
消費税増税先送りの影響について、製薬協会長としてコメントは難しいとの話ではあるが、消費税増税が社会保障費
Q
ひいては医療費や薬剤費に影響があるのは事実である。その先送りの影響をどのようにみているのか。
2014年4月の薬価改定も含め薬価制度にかかわる種々の問題や消費税増税の影響などについて、製薬協として検討
A
を続けてきた。今回の消費税増税先送りにより、さらに検討期間をいただけたと思っている。現在も検討を進めてい
る最中であり、コメントは差し控えたい。ただ、先々どのようなことが起きるかも想像しがたい状況と認識しており、厳しい
状況が続く流れは変わっていない。
透明性ガイドラインによる開示が進み透明性が向上してきたと思うが、医師によっては開示に難色を示す方もいると
Q
聞いている。そのあたりはどのように考えているのか。
医学会・医師会と十分協議したうえで開示を推進している。C項目詳細開示についても、その認知・理解促進のため開
A
示を1年延期し浸透を図ってきた。医師には十分理解いただいたという前提で開示を推進しているという認識である
(2014年度からC項目詳細開示を始めたが、医師から問題を指摘されたことや苦情を受けたことはない)。
透明性ガイドラインのC項目について詳細を確認しているが、講演会の回数も多くそれが一部の演者に集中している
Q
A
傾向がみて取れる。この点についてどのように考えているのか?
講演会の回数や金額などの情報が開示されたことにより、製薬企業および医師にどのような行動変化が出てくるのか、
たとえば、全体のコストが下がっていく可能性もあるだろうことなど、十分注視していく必要があると思う。また、講
演のもつ意味については、新しい医療技術について知見・経験をもつ演者がそれを広めていく活動と理解すべきである。
(一
概に)講演料を貰うからそれが悪い、といった見方はしないほうがいいと考える。
薬価の毎年改定について、コスト面など技術論がクリアできれば毎年改定OKという考えなのか。
Q
A
原則は全体のバランスの中で薬価を考えるべきであり、これまでは全体のバランスの中で2年に1回の改定がふさわし
いという流れでやってきている。一番困るのは、毎年改定だと経営に予見性がもてないことである。成長産業といい
ながら製薬企業の経営の根幹である薬価を毎年下げるというのはおかしな話である。2年に1回の改定というルールは、医
療界全体で支援いただけるものと思っている。
Q
アカデミア発の創薬に期待されているが、知的財産面など整備すべき点があろうかと思う。アカデミアとの連携の際
に、支援するポイントがあれば教えてほしい。
各社ごと置かれている状況が異なり対応もそれぞれであるが、全体としては、まずはアカデミアのシーズを拾い上げ
A
ることからスタートするという話である。また、公平性確保という視点では、情報公開が最初にありきという話である。
これらを含め創薬支援ネットワークとの連携強化に取り組みつつある。
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まとめ
創薬型企業は、生命関連産業としての使命を果たすべく、自らのリスクで大きな研究開発投資を行い、
「科学技術の発展・
波及」、
「健康長寿社会の実現」、
「経済成長への寄与」
といった社会的貢献を目指し、各種の課題に取り組んでいます。
私達は、日本再興戦略、健康・医療戦略、そしてAMEDの発足など、成長戦略として示された政府の取り組みと効果的に
連携し、創薬活動を促進しなければなりません。そのため、学・官との連携をさらに深め、政策提言機能を強化し、適切な
広報活動を引き続き行っていきます。
今後も、社会や国民の信頼と期待に応えるべく、製薬協として、最善の努力を重ねていきます。
(広報委員会 政策PR部会 渋川 勝一)
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