PDF - 富山大学

アミノ酸の冷却晶析プロセスにおける
超音波の利用に関する研究
富山大学
大学院理工学研究部(工学) 助教 山本辰美
背 景
従来研究との比較
晶析操作は医薬品や化成品の製造工程における重要
な分離精製法のひとつであり,同時に結晶の多形や粒
径の制御も、それに続く造粒プロセスなどの成否を決定
づける重要な要素技術になっている。特に医薬品製造
分野では貧溶媒晶析や冷却晶析をよく用いるが,生成
される結晶形は薬本来の薬効や結晶粉体のハンドリン
グ特性に大きく影響を及ぼす。
 晶析における超音波の利用については、超音波照射により
準安定域の幅が減少し、核化の制御が容易になる利点は 知
られているが、超音波による結晶形や形態の変化について
の研究報告はまだ限られている。
 L-アスパラギン酸を例にとれば、水溶液からの晶析で通常
得られる結晶は板状α形(単斜晶)であるが、板状晶は柱状晶
に比べ固液分離した際に結晶に付着残留する母液量が多く、
結晶粉体の純度を高くするのに手間がかかる。晶析時の結晶
粒子形状としては板状よりも柱状が望まれており、溶解度など
で望ましい特性を有する α形のままで柱状の結晶粒子を得る
ためにリンゴ酸、マレイン酸などを添加してpHを調整しながら
晶析を行う方法などが特許公開されているが、どれも目的成
分以外の有機酸などを適量添加する必要があり、最適操作条
件の設定も極めて煩雑である。
実 験
モデル物質としてL-アスパラギン酸
を選び、その水溶液からの冷却晶析
過程において、20kHzの超音波照射
を試み、照射条件が生成された結晶
粒子の形状や結晶構造に対する影響
について実験的に検討した。
 本研究では、添加物などを用いずに、超音波を利用して簡
便に結晶形を制御する方法の開発を目指した。
実験結果
集片双晶イメージ
超音波を照射せず
擬4角箔板状晶
過飽和状態で24時間放置して (気泡塔超音波晶析(2))
得られた通常のα形結晶
10μm
150μm
超音波晶析で得られた 柱状集片双晶粒子の
柱状集片双晶粒子の
光学顕微鏡写真
電顕写真(1)
本研究における晶析操作条件で生成された結晶は通常のα形板状晶であったが、超音波照射条件を適切に選
べば小さな板状α形晶が積層した「集片双晶」である柱状粒子が得られることが示された。
(1) 山本ら, “L-アスパラギン酸の冷却晶析に及ぼす超音波照射の影響”,粉体工学会誌,Vol.51, No.3, pp.124-130 (2014)
(2) T. Yamamoto et al., “Effects of ultrasound irradiation on cooling crystallization of L-aspartic acid using a standard type
bubble column”, Proc. Joint Congress of ACTS-2014 and CGOM11, PA-51, (2014)
まとめ・今後の展望
 本研究では、結晶形の制御が従来の方法ではプロセスが煩雑になるL-アスパラギン酸の晶析をとりあげ、超音
波照射を併用して、簡便に結晶粒子の形状を制御できる可能性が示された。
 超音波支援で連続操作を行った場合、より短時間で結晶粒度分布が安定し、かつ凝集も減らせるという利点など
も既に報告されている。しかし、超音波照射が結晶形や結晶の粒子形状などに及ぼす影響についての明確な指針
は、未だまとめられていない。
 今後は、応用事例の蓄積と超音波の周波数や強度・照射法などの影響についての系統的な検証が急務である。
【地域社会や産業界での応用分野・活用方法 等】
超音波の化学プロセス分野への応用は比較的新しい研究領域であり、系統的な検証も他の分野に比べて遅れ気味
であった。しかし、同じく最近注目を集めている電磁波の応用と並んで、今後大きな発展が期待される分野である。
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