今日の目標 今日の目標 離散最適化基礎論 第 11 回 整数性ギャップ:下界 整数性ギャップについて,次を理解する 岡本 吉央 [email protected] I 整数性ギャップの定義 I 整数性ギャップの重要性 I 整数性ギャップに対する下界の導出法 電気通信大学 2015 年 1 月 9 日 最終更新:2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 10:44 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 1 / 43 ここまでのまとめ と ここからの話 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 2 / 43 ここまでのまとめ と ここからの話 目次 この講義のねらい:流れ solution 1 2 ここまでのまとめ と ここからの話 整数性ギャップ:定義 3 6 3 5 3 4 integer program combinatorial optimization problem 4 6 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題 最小重み頂点被覆問題 1 x2 2 2 8 1 3 2 4 2 1 1 x2 2 x1 −2x2 =−2 2 −2x1 −3x2 =−6 x1 −2x2 =−2 1 −2x1 −3x2 =−6 x1 7 8 good linear program+ structure O x1 O 3 formulation 3 relaxation ■ 組合せ最適化問題を整数計画問題として定式化 今日のまとめ ■ 整数計画問題を線形計画問題として緩和 ■ 線形計画問題の「よい」構造を観察 ■ 線形計画問題を用いて組合せ最適化問題の解決 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 3 / 43 ここまでのまとめ と ここからの話 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 4 / 43 ここまでのまとめ と ここからの話 この講義のねらい 整数計画問題の線形計画緩和 x ∈ Rn , y ∈ Rm は変数,A ∈ Rm×n , b ∈ Rm , c ∈ Rn は定数 解きやすい問題 解きにくい問題 多項式時間解法が存在する NP 困難性が証明されている (DLP) + 整数制約:(D) 整数計画問題:(P) 疑問 どうしてそのような違いが生まれるのか? maximize c >x subject to Ax ≤ b, minimize subject to b> y A> y = c, y ≥ 0, y ∈ Zm x ∈Z n 解きやすい問題が持つ「共通の性質」は何か? (P) の線形計画緩和:(LP) 部分的な回答 問題の持つ「多面体構造」が「美しい」と解きやすい maximize c >x 「多面体構造」が「美しい」 subject to Ax ≤ b 凸多面体の整数性 (LP) の双対問題:(DLP) minimize subject to b> y A> y = c, y ≥ 0 観察 (P) の最適値 ≤ (LP) の最適値 = (DLP) の最適値 ≤ (D) の最適値 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 5 / 43 ここまでのまとめ と ここからの話 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 6 / 43 ここまでのまとめ と ここからの話 整数計画問題の線形計画緩和 この講義のねらい:再考 観察 (再掲) (P) の最適値 ≤ (LP) の最適値 = (DLP) の最適値 ≤ (D) の最適値 解きやすい問題 解きにくい問題 多項式時間解法が存在する NP 困難性が証明されている 特に, 疑問 (P) の最適値 = (LP) の最適値 かつ (DLP) の最適値 = (D) の最適値 ⇒ どうしてそのような違いが生まれるのか? (P) の最適値 = (LP) の最適値 = (DLP) の最適値 = (D) の最適値 解きやすい問題が持つ「共通の性質」は何か? 部分的な回答 つまり,次の 2 つが成り立つ場合が重要 I (P) の最適値 = (LP) の最適値 I (DLP) の最適値 = (D) の最適値 問題の持つ「多面体構造」が「美しい」と解きやすい 部分的な回答:言い換え 解きにくい問題の持つ「多面体構造」は「美しくない」 凸多面体に整数性がない 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 7 / 43 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 8 / 43 ここまでのまとめ と ここからの話 整数性ギャップ:定義 ここからの話 目次 部分的な回答:言い換え 解きにくい問題の持つ「多面体構造」は「美しくない」 1 ここまでのまとめ と ここからの話 2 整数性ギャップ:定義 3 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題 最小重み頂点被覆問題 4 今日のまとめ 凸多面体に整数性がない 今回と次回の目標 I 多面体構造の「美しくなさ」を定量化する I 整数性ギャップの解析法を見る 岡本 吉央 (電通大) 整数性ギャップ 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 9 / 43 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:定義 2015 年 1 月 9 日 整数性ギャップ:定義 整数計画問題の線形計画緩和:再掲 整数性ギャップ:最大化問題 x ∈ Rn , y ∈ Rm は変数,A ∈ Rm×n , b ∈ Rm , c ∈ Rn は定数 x ∈ Rn は変数,A ∈ Rm×n , b ∈ Rm , c ∈ Rn は定数 c >x maximize Ax ≤ b, subject to 整数計画問題:(P) (DLP) + 整数制約:(D) 整数計画問題:(P) minimize b> y subject to > A y = c, y ≥ 0, c >x subject to Ax ≤ b, (P) の整数性ギャップとは次の量 x ∈Z n y ∈Z x ∈ Zn 整数性ギャップとは? maximize m max c≥0 (P) の線形計画緩和:(LP) maximize c >x subject to Ax ≤ b 10 / 43 (P) の線形計画緩和:(LP) (LP) の双対問題:(DLP) minimize subject to (LP) の最適値 (P) の最適値 これは (P) が 最大化問題であるときの定義 b> y maximize c >x A> y = c, y ≥ 0 subject to Ax ≤ b 観察 観察 (P) の整数性ギャップ ≥ 1 (P) の最適値 ≤ (LP) の最適値 = (DLP) の最適値 ≤ (D) の最適値 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 整数性ギャップ (integrality gap) は整数ギャップとも呼ぶ 11 / 43 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:定義 整数性ギャップ:例 (1) x ∈ Rn は変数,A ∈ Rm×n , b ∈ Rm , c ∈ Rn は定数 整数計画問題:(P) 整数計画問題:(P) 整数性ギャップとは? > c x x ∈Z n x1 + 2x2 ≤ 2, x2 2x1 + x2 ≤ 2, x1 , x2 ∈ Z (P) の線形計画緩和:(LP) Ax ≥ b subject to subject to x1 ≥ 0, x2 ≥ 0, これは (P) が 最小化問題であるときの定義 c >x minimize c >x (P) の最適値 max c≥0 (LP) の最適値 (P) の線形計画緩和:(LP) x ∈ R2 は変数,c ∈ R2 は定数 maximize (P) の整数性ギャップとは次の量 Ax ≥ b, subject to maximize c >x subject to x1 + 2x2 ≤ 2, 観察 2x1 + x2 ≤ 2, (P) の整数性ギャップ ≥ 1 x1 ≥ 0, x2 ≥ 0 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 13 / 43 岡本 吉央 (電通大) 整数性ギャップ:定義 subject to x1 + 2x2 ≤ 2, 離散最適化基礎論 (11) x ∈ R2 は変数,c ∈ R2 は定数 x2 14 / 43 x2 (1) (1) (2) (2) 2x1 + x2 ≤ 2, x1 ≥ 0, x2 ≥ 0, (3) x1 , x2 ∈ Z x1 (3) (P) の線形計画緩和:(LP) c ∈ 法錐 (2) のとき, つまり,ある 0 ≤ λ ≤ 1 に対して c > = (2 − λ, 1 + λ) のとき, x1 > maximize c x subject to x1 + 2x2 ≤ 2, c ∈ 法錐 (1) ∪ 法錐 (3) のとき, 2x1 + x2 ≤ 2, x1 ≥ 0, x2 ≥ 0 岡本 吉央 (電通大) 2015 年 1 月 9 日 整数性ギャップ:例 (3) 整数計画問題:(P) c >x x1 整数性ギャップ:定義 整数性ギャップ:例 (2) maximize 12 / 43 整数性ギャップ:定義 整数性ギャップ:最小化問題 minimize 2015 年 1 月 9 日 離散最適化基礎論 (11) (LP) の最適値 =1 (P) の最適値 2015 年 1 月 9 日 15 / 43 (2 − λ) 23 + (1 + λ) 32 (LP) の最適値 2 = = (P) の最適値 max{2 − λ, 1 + λ} max{2 − λ, 1 + λ} 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 16 / 43 整数性ギャップ:定義 整数性ギャップ:定義 整数性ギャップ:例 (3) 整数性ギャップ:重要な性質 x2 (1) 命題 (LP) の許容領域が整凸多面体 ⇒ (2) 証明:(LP) の許容領域が整凸多面体であると仮定する I このとき,任意の c ≥ 0 に対して,(P) の最適値 = (LP) の最適値 I したがって,((P) が最大化問題のときは) (3) x1 ここで,max{2 − λ, 1 + λ} は λ = 1 2 (P) の整数性ギャップ = max c≥0 のとき最小となり,そのとき, I 2 4 2 = 3 = max{2 − λ, 1 + λ} 3 2 (P) が最小化問題であるときも同様 この意味で,整数性ギャップは (LP) の許容集合が整凸多面体であることからどれだけ離れているか という量を表している 4 (P) の整数性ギャップ = 3 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 17 / 43 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 18 / 43 2015 年 1 月 9 日 20 / 43 整数性ギャップの解析 1 ここまでのまとめ と ここからの話 2 整数性ギャップ:定義 4 2015 年 1 月 9 日 整数性ギャップ:下界 目次 3 (LP) の最適値 = max 1 = 1 c≥0 (P) の最適値 整数性ギャップの重要性 したがって, 岡本 吉央 (電通大) (P) の整数性ギャップ = 1 いろいろな組合せ最適化問題の整数計画定式化 (P) と その線形計画緩和 (LP) を考えて, 整数性ギャップが何であるか,解析したい 例とする問題 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題 最小重み頂点被覆問題 I 最大重みマッチング問題 I 最小重み頂点被覆問題 I 今回は下界を証明する I 次回は上界を証明する 今日のまとめ 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 19 / 43 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 最大重みマッチング問題 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題 グラフにおけるマッチング 最大重みマッチング 無向グラフ G = (V , E ) 無向グラフ G = (V , E ) 各辺 e ∈ E に対する非負重み w (e) ≥ 0 (辺重み関数 w : E → R) マッチングとは? 最大重みマッチングとは? G のマッチングとは辺部分集合 M ⊆ E で, M のどの 2 辺も同じ頂点に接続しないもの v2 v2 v6 v4 v6 e∈M e∈M 0 v4 v1 v1 v8 v8 v5 v3 w に関する G の最大重みマッチングとは G のマッチング M ⊆ E で, ∑ ∑ G の任意のマッチング M 0 に対して w (e) ≥ w (e) を満たすもの v2 v5 v3 v7 4 v7 v1 {{v1 , v3 }, {v2 , v5 }, {v2 , v6 }} は マッチングではない 4 v4 v6 2 2 v8 5 {{v1 , v2 }, {v4 , v7 }, {v6 , v8 }} は マッチングである 3 2 2 1 1 v5 5 v3 3 1 v7 マッチングの辺 e ∈ M は e の端点を飽和する 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 21 / 43 岡本 吉央 (電通大) 最大重みマッチング問題 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 最大重みマッチング問題 最大重みマッチング問題 最大重みマッチング問題の定式化 最大重みマッチング問題とは? 最大マッチング問題:01 整数計画問題としての定式化 I 入力:無向グラフ G = (V , E ),非負辺重み関数 w : E → R I 出力:G のマッチングで,重みが最大のもの x ∈ RE は変数 (P) maximize v2 3 2 4 2 1 v3 5 subject to 2 2 ∑ xe ≤ 1 (∀ v ∈ V ), e∈δ(v ) v8 1 v5 w (e)xe e∈E v6 5 v1 4 v4 ∑ 22 / 43 xe ∈ {0, 1} 3 1 (∀ e ∈ E ) 記法:δ(v ) = v に接続する辺全体の集合 v7 事実 最大重みマッチング問題は効率よく解くことができる (Edmonds, ’65) 効率よく = |V | と |E | に関する多項式時間で 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 23 / 43 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 24 / 43 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題の線形計画緩和 最大重みマッチング問題の定式化 (P) を考える (P) の線形計画緩和 x∈ RE 最大重みマッチング問題 最大重みマッチング問題の整数性ギャップ (下界) 命題 は変数 (LP) ∑ maximize (P) の整数性ギャップ ≥ w (e)xe e∈E ∑ subject to xe ≤ 1 を満たすようなグラフが存在する (∀ v ∈ V ), 証明の方針 e∈δ(v ) 0 ≤ xe ≤ 1 (∀ e ∈ E ) (P) の整数性ギャップ = max (LP) の最適値 (P) の最適値 3 2 I そのようなグラフを構成すればよい このとき, w ≥0 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 整数性ギャップ:下界 1 (P) の最適値 = 1 2 (LP) の最適値 ≥ 3/2 2015 年 1 月 9 日 26 / 43 2015 年 1 月 9 日 28 / 43 2015 年 1 月 9 日 30 / 43 最大重みマッチング問題 最大重みマッチング問題の整数性ギャップ (下界):証明 (2) 証明:頂点数 3 の閉路を考える I すべての辺 e ∈ E に対して w (e) = 1 のときを考える 次の 2 つを証明する 離散最適化基礎論 (11) 最大重みマッチング問題 最大重みマッチング問題の整数性ギャップ (下界):証明 I 岡本 吉央 (電通大) 25 / 43 示したいこと (1) :(P) の最適値 = 1 I すべての辺 e に対して w (e) = 1 なので, (P) の最適値は最大マッチングの要素数に等しい I したがって,(P) の最適値 = 1 このとき, (LP) の最適値 (P) の最適値 w = 1 のときの (LP) の最適値 w = 1 のときの (P) の最適値 3/2 3 = 1 2 (P) の整数性ギャップ = max w ≥0 ≥ ≥ 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 27 / 43 離散最適化基礎論 (11) 最大重みマッチング問題 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題の整数性ギャップ (下界):証明 (3) 最大重みマッチング問題 目次 示したいこと (2) :(LP) の最適値 ≥ 3/2 I (∀ e ∈ E ) xe = 1/2 I 1 ここまでのまとめ と ここからの話 2 整数性ギャップ:定義 3 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題 最小重み頂点被覆問題 4 今日のまとめ (LP) に対する次の許容解 x を考える これが本当に許容解であることを確認する I 頂点 v に接続する 2 辺が e1 , e2 であるとき ∑ xe = xe1 + xe2 = 1/2 + 1/2 = 1 ≤ 1 e∈δ(v ) ∑ I この許容解 x の目的関数値 = I したがって,(LP) の最適値 ≥ 許容解 x の目的関数値 = 3/2 岡本 吉央 (電通大) e∈E xe = 3/2 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 29 / 43 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 最小重み頂点被覆問題 整数性ギャップ:下界 最小重み頂点被覆問題 頂点被覆 最小頂点被覆 無向グラフ G = (V , E ) 無向グラフ G = (V , E ) 頂点被覆とは? 最小頂点被覆とは? G の頂点被覆とは頂点部分集合 C ⊆ V で, G のどの辺もある C の頂点に接続しているもの G の最小頂点被覆とは頂点被覆 C ⊆ V で, G の任意の頂点被覆 C 0 に対して |C | ≤ |C 0 | を満たすもの v2 v2 v6 v4 v1 v8 v2 v8 {v2 , v3 , v4 , v5 , v6 , v7 } は 頂点被覆である v7 v3 {v1 , v2 , v3 , v5 , v8 } は 頂点被覆ではない 離散最適化基礎論 (11) v1 v8 2015 年 1 月 9 日 v5 v3 v7 {v2 , v3 , v4 , v5 , v6 , v7 } は 最小頂点被覆ではない 頂点被覆の頂点は,それに接続する辺を覆う (被覆する) 岡本 吉央 (電通大) v8 v5 v3 岡本 吉央 (電通大) v7 {v1 , v2 , v5 , v7 , v8 } は 最小頂点被覆である 最小頂点被覆問題は NP 困難問題 31 / 43 v6 v4 v1 v5 v7 v2 v6 v4 v1 v5 v3 v6 v4 離散最適化基礎論 (11) (Karp 1972) 2015 年 1 月 9 日 32 / 43 整数性ギャップ:下界 最小重み頂点被覆問題 整数性ギャップ:下界 最小重み頂点被覆問題の定式化 最小重み頂点被覆問題 最小重み頂点被覆問題の線形計画緩和 無向グラフ G = (V , E ),非負頂点重み関数 w : V → R 無向グラフ G = (V , E ),非負頂点重み関数 w : V → R 最小重み頂点被覆問題の定式化 (P) の線形計画緩和 (P) minimize ∑ w (v )yv ∑ (LP) minimize v ∈V subject to ∑ w (v )yv v ∈V yv ≥ 1 (∀ e ∈ E ), ∑ subject to v ∈e yv ∈ {0, 1} yv ≥ 1 (∀ e ∈ E ), 0 ≤ yv ≤ 1 (∀ v ∈ V ) v ∈e (∀ v ∈ V ) このとき, (P) の整数性ギャップ = max w ≥0 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 33 / 43 最小重み頂点被覆問題 (P) の最適値 (LP) の最適値 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 最小重み頂点被覆問題 最小重み頂点被覆問題の整数性ギャップ (下界) 最小重み頂点被覆問題の整数性ギャップ (下界):証明 最小重み頂点被覆問題の定式化 (P) を考える 証明:すべての 2 頂点間に辺があるグラフ (完全グラフ) を考える I すべての頂点 v ∈ V に対して w (v ) = 1 のときを考える 命題 任意の n ≥ 2 に対して (P) の整数性ギャップ ≥ 2 − 2 n I 次の 2 つを証明する 1 (P) の最適値 = n − 1 2 (LP) の最適値 ≤ n/2 34 / 43 を満たすような頂点数 n のグラフが存在する このとき, 証明の方針 I そのようなグラフを構成すればよい w ≥0 ≥ ≥ 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 岡本 吉央 (電通大) 35 / 43 最小重み頂点被覆問題 離散最適化基礎論 (11) 整数性ギャップ:下界 最小重み頂点被覆問題の整数性ギャップ (下界):証明 (2) 36 / 43 最小重み頂点被覆問題 示したいこと (2) :(LP) の最適値 ≤ n/2 I (P) の目的関数値は必ず整数であり,それは頂点被覆の要素数 I 要素数が n − 2 以下の頂点部分集合 S を考えると, S に端点を持たない辺が存在する I つまり,S は頂点被覆ではなく,(P) の最適値 ≥ n − 1 I 一方,要素数 n − 1 の頂点被覆は存在するので,(P) の最適値 ≤ n − 1 I したがって,(P) の最適値 = n − 1 I (LP) に対する次の許容解 y を考える yv = 1/2 I I 辺 e ∈ E の端点が a, b ∈ V であるとき, ∑ yv = ya + yb = 1/2 + 1/2 = 1 ≥ 1 v ∈e 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 (∀ v ∈ V ) これが本当に許容解であることを確認する S 整数性ギャップ:下界 2015 年 1 月 9 日 最小重み頂点被覆問題の整数性ギャップ (下界):証明 (3) 示したいこと (1) :(P) の最適値 = n − 1 岡本 吉央 (電通大) (P) の最適値 (LP) の最適値 w = 1 のときの (P) の最適値 w = 1 のときの (LP) の最適値 n−1 2 =2− n/2 n (P) の整数性ギャップ = max ∑ I この許容解 y の目的関数値 = I したがって,(LP) の最適値 ≤ 許容解 y の目的関数値 = n/2 岡本 吉央 (電通大) 37 / 43 最小重み頂点被覆問題 v ∈V yv = n/2 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 38 / 43 2015 年 1 月 9 日 40 / 43 今日のまとめ 目次 最小重み頂点被覆問題の定式化 (P) を考える いま証明した命題 任意の n ≥ 1 に対して 2 (P) の整数性ギャップ ≥ 2 − n 1 ここまでのまとめ と ここからの話 2 整数性ギャップ:定義 3 整数性ギャップ:下界 最大重みマッチング問題 最小重み頂点被覆問題 4 今日のまとめ を満たすような頂点数 n のグラフが存在する 次回証明する命題 任意のグラフに対して (P) の整数性ギャップ ≤ 2 つまり,完全グラフが最も整数性ギャップの大きい例となっている I この意味で, 「最小重み頂点被覆問題の整数性ギャップは 2 に等しい」 ということがある 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 39 / 43 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 今日のまとめ 今日の目標 今日の目標 整数性ギャップについて,次を理解する I 整数性ギャップの定義 I 整数性ギャップの重要性 I 整数性ギャップに対する下界の導出法 岡本 吉央 (電通大) 離散最適化基礎論 (11) 2015 年 1 月 9 日 41 / 43
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