データ分析に関するモデル事業の実施を契機に 効果的

シリーズ
データヘルス最前線
( 保険局)
データ分析に関するモデル事業の実施を契機に
効果的・効率的な保健事業に取り組む
(宮城県富谷町)
© bigfoot - Fotolia.com
題の把握に努めながら、 効果的かつ
タをもとに分析を行い、 町の健康課
年度から特定健診とレセプトのデー
宮城県黒川郡富谷町では、2012
こそ、効果的な取り組みを始めれ
年齢が若く医療費が低い今だから
という疑問があったこと、④平均
を上回っており、その要因は何か
維持できるのではないかと考え、そ
20
年後も現在の水準を
に取り組んでいます。 その結果、 特
のためにどうすればよいのかを検
10
年後、
定健診受診率や特定保健指導実施
証する良い機会だと捉えたことで
ば
率、 生活習慣病有病者割合、メタボ
す。こうした理由から、分析手法
効率的な保健事業や健診事業の推進
該当者等の割合にも変化が現れはじ
を学ぼうと応募に至りました。
具体的には、 どのような取り
めています。 その取り組みと効果等
について、 富谷町福祉部健康増進課
―
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長の奥山育男さんにうかがいました。
※宮城県国保連の全疾病分析システムにより抽出
組みを行ったのでしょうか?
(※1)
高血圧症、糖尿病、
高脂血症、高尿酸血症
(※2)
虚血性心疾患、
大動脈疾患、脳血管疾患、
動脈閉鎖
奥山●モデル事業では、本町の被
●抽出対象:1件100万円以上のレセプト(2011年5月診療分)
●抽出件数:21件 ●男女別:男性 14名,女性 7名 ●年齢別:50代以下 5名,60代 7名,
70代 9名
●入院外来別:入院 20名,外来 1名
●何らかの基礎疾患(※1)あり:16名 ●何らかの循環器疾患(※2)あり:11名
●2009年度以降特定健診受診者:6名(うちBMI判定肥満は3名)
●要介護・要支援認定者:7名 ※7名のうち4名が既に死亡
●最高額レセプト:3,072,260円(脳血管疾患・入院19日・手術)
●1件100万円以上レセプトが1カ月全体に占める影響 当該件数が5月全体に占める割合:0.2%
当該合計費用額が5月全体に占める割合:16.4%
レセプト等によるデータ分析に
図表2 分析結果② 高額レセプトの状況
―
ト デ ー タ を 用 い て 分 析 し ま し た。
保険者の健康状態や医療費の構造
度市町村保健事業支援モデル事業に
次に、どんな病気が高額な医療費
取 り 組 むきっか けは 何 だったのです
ついて、宮城県国保連(国民健康保険
につながっているのか、その背景
などを把握するため、県国保連の
団体連合会)
からご案内があり、
「レセ
には何があるのか、などについて
か?
プトデータ利活用に関するモデル事
分析を行いました。また、健診未
全疾病分析システムによりレセプ
業」
に応募したことがきっかけです。
クを行い、その関係性などの分析
奥山●2011年 月に、2012年
応募の動機は、①特定健診開始以
来、受診率が伸び悩んでいたこと、②
にも取り組みました。
受診者の状況やレセプトとのリン
年々増加し続けている生活習慣病に
対し、本町では効果的な保健事業が
な課題が見えてきましたか?
データ分析の結果、 どのよう
国保1人あたりの医療費は全国およ
奥 山 ● 分 析 の 結 果( 図 表 1、2、
―
び県平均を下回っているが、後期高
3)、 ま ず 生 活 習 慣 病 予 防 事 業 に
できているのか疑問があったこと、③
齢者については制度開始以降県平均
11
図表1 分析結果① 疾患合併の状況
◆2008年5月診療分
(受診件数:2,562件 受診率:27.87%)
糖尿病
高血圧性疾患
181件
194件
647件
(1.97%)
(2.11%)
(7.04%)
448件
150件 (4.87%) 552件
(1.63%)
(6.00%)
390件
(4.24%)
( )は受診率
その他の内分泌、栄養および代謝疾患
3疾患合併 性・年代別受診件数
(件)
(2012年5月診療分)
200
160
120
男
80
40
女
0
40歳未満 40歳代 50歳代 60歳代 70~74歳代
その他の内分泌、栄養およ
び代謝疾患との2疾患合併と
3疾 患 合 併 が 増 加しており、
重症化のリスクが高い被保険
者が増加している。
◆2012年5月診療分
(受診件数:3,211件 受診率:32.57%)
糖尿病
高血圧性疾患
186件
682件
(1.89%)
(6.92%)
614件
193件 (6.23%) 807件
(1.96%)
(8.18%)
251件
(2.55%)
487件
(4.85%)
( )は受診率
その他の内分泌、栄養および代謝疾患
※宮城県国保連の全疾病分析システムにより抽出
2014.12 厚生労働
44
図表3 分析結果③ 富谷町の脳血管疾患関連図
積極的に取り組んできたにもかかわ
も見えてきました。また、100万
円以上のレセプトがひと月全体に占
・4%を占
め る 割 合 は、 件 数 で は 0・2 % で し
たが、合計費用額では
めていました。
データ分析により実態と課題が
しょうか?
〜
%台で推移していた
いですが、特定健診の受診率は制度
開始以来
%台に上昇しまし
連携しさまざまな健康事業に取り組
康づくりのリーダー役として、町と
進員(1〜2名)を委嘱し、地区の健
政区があり、それぞれに地区健康推
年度から開催するとともに、健診事
防対策として、脳血管元気教室を昨
また、本町の重点健康課題の一つ
に位置づけた脳血管疾患等重症化予
も好評を得ています。
分析に取り組みやすい環境が整いつ
ベース)システムが稼働し、データ
今年
結びつけ、町民の健康づくりに寄与
月 か ら K D B( 国 保 デ ー タ
していけるかです。幸い、本県でも
んでいただいています。その代表的
歳 に 引 き 下 げ、
つありますので、本町の事業として
歳から
業において、町の脳検診助成事業対
さらには男女別、年代別、地域ごと
確実に定着させていきたいと考えて
います。また、今年度中に策定が求
められている「データヘルス計画」に
で問題を共有し、理解を深めてもら
奥山●まだ取り組んで間もないた
題等について教えてください。
でいきたいと思います。
受けながら、策定に向けて取り組ん
健事業支援・評価委員会」の支援を
ついても、県国保連が設置する「保
う取り組みを行っています。客観性
め、一概に効果が表れたとはいい難
最後に、 事業の効果と今後の課
があるため説得力が増し、町民から
―
な事業に地区健康教室(図表4)があ
最後に課題ですが、この取り組み
をいかに継続し効果的な保健指導に
ないかと感じています。
がら効果が見えはじめているのでは
してきていることからも、わずかな
おいて、すべての検診で上位に位置
全国的に上位にある宮城県のなかに
ま す。 ま た、 が ん 検 診 受 診 率 で も、
横ばい、またはやや減少となってい
したが、昨年度は2012年度比で
ポイントを超える増加となっていま
年度は2008年度比でいずれも5
該当者等割合についても、2012
た。生活習慣病有病者割合とメタボ
のが昨年度には
56
58
55
象年齢を
従来の教室内容に加え、レセプト分析結果や国保の
医療費の状況等を切り口に、特定健診受診、特定保
健指導参加の必要性や、ジェネリック医薬品の活用等
についても説明。
り、そのなかで、データ分析で得た
奥山●富谷町は現在、町内に
49 9.9 13.7 13 49.4
26.3 21.1 15.8 21.1 89.5
早期発見に努めています。
図表4 「地区健康教室」の活用
町 民 の 健 康 の 実 態 や 医 療 費 の 状 況、
の行
形で保健事業等に活かしているので
見えてきたようですが、 どのような
―
ことを改めて認識させられました。
は、高額となる疾病対策が欠かせない
題であるとともに、医療費の適正化に
策、基礎疾患の重症化対策が重要な課
これらのことから、より効果的な生
活習慣病予防対策と健診未受診者対
16
の課題等をフィードバックすること
10
らず、有病者数およびその割合が男
女ともにほとんどの年代で増加して
い た こ と が わ か り ま し た。 1 件
100万円以上のレセプト分析で
Hb
中性
HLD LDL AST ALT Y-GT
A1c
脂肪
血圧
5.2
0
富谷町 39.4 20.8
A地区 63.2 21.1
40
は、がんのほか、脳血管疾患、虚血
性心疾患などが高額な医療費につな
がっていて、要介護や死に至るケー
スもありました。これらの疾患を抱
える方は、高血圧症や糖尿病などの
予防可能な基礎疾患を持ち合わせて
45
2010年の国民健康生活基礎調査
より介護が必要になる原因のトッ
プは脳血管疾患
(21.5%)
いるとともに、合併による重症化リ
この地区の
健康教室のテーマは
『高血圧予防と適塩』
地 区 の 健 康 課 題を
健康推進員とともに
把握し、地区健康教
室 の 実 施 内 容を協
同企画。
(脳塞栓)
スクの高い方が増えてきていること
2012年度有所見者の割合
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
■新たな取り組み
▶ FREE ▶ COPY
厚生労働 2014.12
45
45
※宮城県国保連全疾病分析事業、
厚生労働省HPより引用
富谷町の三大死因別標準化死亡比
【全国の値は100】
男性 118.28(県内11位)
女性 100.77
(県内26位)
宮城県の平均
男性 113.28 女性 117.48
心臓内血栓がはなれて
脳血管に詰まる
心臓病
(心房細動)
〈心疾患〉
男性 2.16%
(県内第29位)
女性 1.55%
(県内第32位)
退院
入院
脂質異常症
(鈴木専門員資料より)
喫煙
リハビリの
継続
緊急治療
↓
治療・リハビリ
脳梗塞
一過性
脳虚血発作
男性 7.52%
(県内第1位)
女性 8.97%
(県内第10位)
動脈硬化
富谷町国保診療分
(2011年5月)最高額医療費
脳血管疾患(入院19日・手術)
3,072,260円
脳出血
高血圧
血管壊死
男性 11.26%
(県内第14位)
女性 10.65%
(県内第23位)
高血圧・脂質異常症・
糖 尿病を合併した場
合の脳血管疾 患のリ
スクは3.75倍
糖尿病
男性 6.29%
(県内第14位)
女性 4.71%
(県内第28位)
脳血管疾患 男性1.84%
(県内第12位)
女性0.96%
(県内第28位)
2010年度国保
年齢調整受療率