「災害時の住宅供給方策に関する研究」 専任研究員 1 越山 健治 研究の背景と目的 今後日本の大規模災害時に行われる住宅再建計画のあり方や考え方を組み立てる上で、 兵庫県の復興公営住宅の現状についてその供給過程を含めて把握し、居住者が抱えてい る課題・問題を分析し、現在までの復興感の変化と住環境との関係性を明らかにする。 2 復興公営住宅団地居住者の復興感 2002 年の兵庫県災害復興公営住宅団地コミュニティ調査の結果を分析したところ、以 下のような事項がわかった。 The Great Hanshin-Awaji Earthquake Memorial Disaster Reduction and Human Renovation Inst. ・ 公営住宅団地居住者の復興感は、 「生活 復興感を高めていく過程 に再適応した」という気持ちと「生活 再適応した に満足している」という気持ちの相互 復興した( 自立した) 作用によって形作られている。 ・ 「生活に再適応した」気持ちを高める 因子として、 「人と出会い」や「近所づ もはや被災者 だと感じていない 日常的 な生活だと感じる 復興に踏み出し始めた 震災を積極的に意味づけている 現状改善 に働きかけている 満足でない きあいの活発さ」や「地域活動への参 加」といった居住コミュニティ関係が 復興に踏み出せてない 強いのに対して、 「生活に満足してい 震災経験を記憶から消し去りたい 今の住環境に不満がある 再適応できてない る」気持ちを高める因子は、 「ストレス がない」や「経済的に不満がない」といった個々人を取り巻く状況に関する内容が 強い。 ・ 人々は、災害によって被害を受けた状態の中で、新しい環境に適応する過程を経て、 その後自己の満足度を高めていく、という段階を踏んでいくと仮定できる。 3 災害時の住宅復興を考える上でわかったこと ・ 「生活に再適応する」環境作りと「生活に満足する」状況作りは異なった政策内容 となることが求められる。コミュニティ復興は、「生活に再適応する」気持ちの高 まりに強く関係する。災害復興には重要な要素であることが再認識できた。 ・ 災害は、従前の空間環境を破壊するだけでなく、公共サービスや人的交流を含めて ほとんどの社会的ネットワークを一時的に遮断するものであり、災害復興とはそれ らを0から再構築または再生するものである。その中で家族関係・友人関係や近隣 関係といった日常時の人的なつながりは、災害直後にも維持される数少ないネット ワークであり、災害復興ではその継続や再構築に際し、優先的に考慮すべき課題で ある。 満足である
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