米ドル高局面での米国株投資を考える

<マーケット・レター>
2015年2月9日
レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社
米ドル高局面での米国株投資を考える
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1月雇用統計は米国経済の底堅い回復を裏付ける。米ドル高と株高の共存ができるかが2015年の米国株の焦点に。
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米主要企業の売上高の約7割は米国内売上高であり、海外売上高比率は約3割程度に留まる。
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米国景気回復の恩恵を受けやすい内需型米国企業ほど、2015年には堅調な収益回復が予想される。
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米ドル高は海外投資家による米国株投資の追い風に。低金利環境から米国株の配当への注目が高まる可能性も。
底堅い米景気を受け、米ドル独歩高の様相強まる
図1:主要通貨に対する米ドル相場と米国株の推移
2015年1月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が
前月比25.7万人増と市場予想(22.8万人増)を上回り、
米国経済の底堅い回復を裏付ける内容となりました。欧
州や日本、中国など世界的に金融緩和の動きが拡大す
(ポイント)
2,400
米ドル独歩高の様相が強まっています。
2008年
リーマン・ショック
世界的金融危機
(1973年3月
=100)
120
米ドル高
2,000
1,600
(図1)。米ドル相場は依然として1990年以降の長期平均
86.8
80
800
米ドル安
共存」が大きな注目点となりそうです。1990年以降の米ド
ル相場と米国株の関係を見ると、金融市場の大きな混乱
を伴った2000年代初めや2008年のリーマン・ショック前
後の局面を除くと、1990年代後半には米ドル高と株高が
70
0
60
90
92
94
96
98
米ドル高
株高
「米ドル高と株高の共存」が米国株市場の注目点
2015年の米国株式市場にとっては、「米ドル高と株高の
米ドル相場
(対主要通貨、右軸)
400
並みの水準にあり、今後も米ドル高が進行する余地が残さ
れていると考えられます。
100
90
1,200
主要通貨に対する米ドル相場の動きを見ると、2014年
後半以降は米ドル高の勢いが一段と加速傾向にあります
110
S&P500指数
(左軸)
1990年以降の
米ドル相場
の長期平均
る中でも、米連邦準備制度理事会(FRB)が2015年央前
後にも利上げを開始するとの観測は根強く、為替市場では
2000年
ITバブル崩壊
同時多発テロ
00
02
04
米ドル高
株安
06
08
10
米ドル高
株安
12
14
(年)
米ドル高
株高
(出所)FRB、CEIC (期間)1990年1月~2015年1月
(注)グラフ中のシャドーは主な米ドル高局面。米ドル相場は貿易比率に
応じて加重平均した実効為替レート。
図2:米主要企業(除くエネルギー企業)の
地域別売上高の構成比(2013年)
共存した局面がありました。当時の経験からは、米ドル高
米ドル高
局面で米企業が収益改善を維持できれば、米株高持続
のための条件のひとつとなると考えられます。
米主要企業の売上高の約7割は米国内売上高
海外売上高
32.3%
一般的に、米ドル高の米企業収益へのマイナスの影響と
売上高
目減り要因
して、米ドル高による海外売上高の目減りが挙げられます。
ただし、米主要企業(除くエネルギー企業)全体では海
外売上高の比率は約3割程度と必ずしも大きくはなく、売
売上高
拡大要因
米国内売上高
67.7%
上高の大勢は米国内売上高が占めています(図2)。米ド
ル高の進行によって海外売上高の一部は目減りする可能
米国景気の回復
性がある一方、米ドル高の背後にある米国景気の回復は
米国内売上高の押し上げに寄与すると期待されます。
(出所)ファクトセット (注)S&P500指数採用企業(除くエネルギー)のうち、
地域別売上高を公表している企業(424社)より集計。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で
配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
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レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社
図3:米主要企業(除くエネルギー企業)の
海外売上高比率別の構成(2013年)
米ドル高の影響に応じ銘柄毎に選別する余地も
上高への依存度に応じて企業毎に異なるため、米国株へ
米主要企業のうち、総売上高の50%超を海外売上高
90%
75%超~100%以下
24.5%
28.5%
23.1%
30%
30.4%
内需型企業
40%
大きい
50%超~75%以下
60%
上高の3割未満に留まる一方、総売上高の50%以上を
内売上高が100%の企業は88社あり、金融、不動産、公
【海外売上高比率】
4.0%
70%
50%
めています(図3)。とりわけ、内需型企業の中でも、米国
21.7%
80%
が占める「グローバル型企業」の比率は企業数および総売
米国内で稼ぐ「内需型企業」は米主要企業の約7割を占
5.9%
米ドル高による悪影響
の投資に当たっては銘柄選別の余地が大きいと言えます。
100%
グローバル
型企業
もっとも、米ドル高による米国企業への影響は、海外売
25%超~50%以下
0%超~25%以下
23.6%
20%
10%
0%
20.8%
17.4%
企業数
総売上高
小さい
0%
益、通信、消費関連などのセクターで構成されています。 (出所)ファクトセット (注)S&P500指数採用企業(除くエネルギー)のうち、
地域別売上高を公表している企業(424社)が母集団。
内需型米国企業は堅調な収益回復が予想される
図4:米主要企業の一株当たり利益(EPS)
の予想コンセンサス
図4はグローバル型と内需型の米主要企業の利益見通
しを比較したものです。グローバル型米国企業と比較して、
14
米ドル高による売上目減りの影響を受けにくく、米国景気
12
回復の恩恵を受けやすい内需型米国企業の方が、足元
10
ではより堅調な収益回復が予想されています(図4)。
6
逆風の中でも、2016年に向けて緩やかな増益基調が続く
4
戦略見直しや、各種リストラ策による収益性改善などの結
10.5
6.7
5.2
海外売上高比率50%以上
の米国企業(グローバル型企業)
1.3
2
0
2012年
2014年推定
2013年
2015年予想
2016年予想
(出所)ファクトセット (注)S&P500指数採用企業(除くエネルギー)のうち、
地域別売上高を公表している企業(424社)が母集団。
米ドル高は海外投資家の米国株投資を促す要因
最後に、米ドル高の進行は、米国株にとってプラスの恩
8.6
4.7
果次第では、グローバル型企業が見直される可能性もあ
ると考えられます。
11.6
海外売上高比率50%未満
11.2
の米国企業(内需型企業)
9.8
11.1
8
一方、グローバル型米国企業の収益は、米ドル高という
との見方が市場コンセンサスとなっています。海外事業の
(前年比、%)
図5:米ドル相場と海外投資家による
米国株への投資動向
(1973年3月=100)
120
は為替換算の面で投資収益の改善要因となるため、米国
(10億米ドル)
300
米ドルの実効為替レート
250 (対主要通貨、右軸)
株投資拡大の追い風となると期待されます。
200
100
実際、1990年代後半の米ドル高局面には海外投資家
150
90
による米国株への投資が拡大基調にあったほか、足元で
100
も2013年に資金流出超に転じた海外投資家の米国株投
50
恵をもたらす面もあります。海外投資家にとって米ドル高
資は、2014年に入り回復に転じています(図5)。
-50
利環境がなお続いており、相対的な配当利回りの高さや
-100
今後の配当成長期待の面で、海外投資家による米国株
への評価が高まる可能性があります。
米ドル高
110
80
70
米ドル安
0
足元では、米国の10年国債利回りは2%を下回る低金
株式のネット取得
60
海外投資家による
米国株へのネット投資額(左軸)
90
92
94
96
98
00
02
50
株式のネット売却
04
06
08
10
12
40
14
(年)
(出所)米商務省、FRB (期間)1990~2014年
(注)2014年のネット投資額は1-9月の年率値。
●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて
作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す
るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ
こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で
配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。