大気からの窒素成分沈着

大気からの窒素成分沈着
Nitrogen Deposition from Atmosphere
野口 泉 ・山口 高志
*
Izumi NOGUCHI ・Takashi YAMAGUCHI
*
地方独立行政法人 北海道総合研究機構 環境科学研究センター
Hokkaido Research Organization, Institute of Environmental Sciences
摘 要
生物の栄養塩として重要な大気中の窒素酸化物由来の酸化態および還元態窒素の沈
着量を把握するには、その沈着過程ごとに、さらに各沈着過程における成分の形態別
に沈着量を評価しなければならない。本稿では、沈着過程である湿性および乾性沈着、
さらに窒素沈着成分の形態について、その特性、由来およびその挙動についてとりま
とめた。また、現在の我が国における窒素成分沈着量の観測手法および評価方法を取
り上げ、その上で全国における窒素成分沈着量調査結果、および北海道における詳細
な形態別沈着量を評価した結果から、近年の窒素成分沈着量の状況を考察した。その
結果、全国の状況では平均で 71 mmol m
-2
y (10 kg-N ha
-1
-1
y )を超える状況にあ
-1
ることが認められた。さらに都市部およびその近郊では窒素酸化物の乾性沈着による
影響がより大きく、清浄地域および田園地域では乾性沈着の寄与は小さいものの粒子
状物質の乾性沈着の寄与が比較的大きいことが認められた。また土地利用では、特に
森林地域で乾性沈着量が大きくなることから、長距離輸送汚染物質の影響を受けやす
い日本海側の森林地域での観測が重要となると考えられた。
キーワード:還元態窒素,乾性沈着,湿性沈着,窒素酸化物,北海道
Key words:ammonium nitrogen, dry deposition, wet deposition, nitrogen oxides,
Hokkaido
1.はじめに
大気中の窒素成分としては大気組成の約 78%を
占める窒素ガス(N2)
が最も量が多く、窒素循環の中
でも大きな寄与を占める。しかしながら、N 2 を利
用できる窒素固定能力を持ったシアノバクテリアや
マメ科の植物の共生菌などの一部の生物を除いて
は、生物が栄養素として利用できるのは無機の酸化
態窒素とアンモニア態窒素である。熱帯地方では雷
が多く、
この雷によって直接生成される窒素酸化物、
あるいは雷などによる森林火災で生成される窒素酸
化物が降水中に取り込まれ、森林林を育てる栄養と
1)- 3)
なるなど、巧妙なメカニズムが知られている
。
大気中の酸化態窒素は、温室効果ガスとしても有
名な亜酸化窒素(N2O)など、酸素と結合している窒
素成分を全て指す場合もあるが、ここでは、窒素酸
化物(NOx)由来の成分として用いる。酸化態窒素
は、ガス成分(NOy)
、さらにガス状成分にも変換さ
れる粒子状成分(硝酸塩)を含む成分(NOz:NOy に
4)
粒子状成分を含む場合もあるが、本稿では鈴木 に
従い、NOz とした)である。還元態窒素はアンモニ
アおよびその粒子状成分
(アンモニウム塩)を含む成
分(NHz:NOz に合わせて表記する)である。本稿
ではこれら栄養素となる大気からの窒素成分の供
給、生態系へのインプットすなわち大気中の窒素成
分の沈着について論じる。なお、大気中の窒素成分
の沈着については、酸性雨として多くの研究成果が
あり、これらを中心に述べる。
2.沈着過程とその観測・評価方法
大気中の酸化態および還元態窒素成分の沈着は、
図 1 に示すようにその過程から大きく分けて湿性
沈着と乾性沈着に分類される。湿性沈着は霧
(雲)や
露・霜によるオカルト沈着(降水がないのに降水量
5)
としてカウントされる場合があるため)
も含むが 、
しばしば霧(雲)による沈着は雲沈着として区別さ
れ、湿性沈着は狭義として降水のみによる沈着とし
て区分される。これらの観測・評価のためには、専
用の装置を用いる。バケツで雨を集めることはでき
ても、乾性沈着と区分して捕集するためには、図 2
に示すような降水時に蓋が開く降水時開放型と呼ば
受付;2009 年 12 月 2 日,受理:2010 年 3 月 30 日
*
〒 060-0819 札幌市北区北 19 条西 12 丁目,e-mail:[email protected]
2010 AIRIES
111
野口・山口:大気からの窒素成分沈着
ガス
Gas
粒子
Aerosol
Ⅲ
雲
Cloud
Ⅱ
降雪
Snowfall
Ⅴ
Rime
氷霧
Ⅲ
Ⅱ
雲
Cloud
霧・もや
(Fog,
Mist)
Ⅴ
Ⅰ
Ⅳ
Ⅰ
霧・もや
Mist
Ⅳ Fog,
霜
Frost
Snowcover
積雪
Rainfall
降雨
Ⅰ: 乾性沈着(dry
乾性沈着(Dry deposition
deposition)
)
Dew
Ⅱ: 湿性沈着(wet
湿性沈着(Wet deposition
depositionby
bywash
washout)
out)
Ⅲ: 湿性沈着(wet
湿性沈着(Wet deposition
depositionby
byRain
rain out)
out)
Ⅳ: 霜・露の沈着(occult
霜・露の沈着(
Occult deposition
deposition)
)
Ⅴ: 雲(霧)沈着(cloud
雲(霧)沈着(
Cloud deposition
deposition)
)
図 1 沈着過程.
試料採取装置
200mm
風の整流板
(助炭)
降水感知
センサー
融雪ロート
乾性沈着物用
パケット
排水管
操 作パネル
洗浄水
電磁弁
開閉蓋
ターンテーブル
冷蔵庫
図 2 湿性沈着採取装置.
れる捕集装置が必要となる 。捕集された降水成分
はその濃度と降水量の積で沈着量が評価される。一
方、乾性沈着の観測・評価はより複雑である。1990
年代前半までは湿性沈着捕集装置の降水時の蓋置き
場として、すなわち非降水時には開放型となる状況
下でバケツ型の容器で捕集(バケット法)
されたもの
を「乾性降下物」と呼び、その全量を「乾性降下物
量」として評価を行っていた。環境省の 2~3 次の
酸性雨観測網(1988~1997 年度)でも同様である。
しかし、バケット法では大きな粒子などしか捕集で
7)
きないなどの問題があるため 、現在では測定例は
少なくなってきており、近年は、沈着フラックス法
8)- 11)
が中心となっている
。沈着フラックス法には、
上下方向の風向きの変化に応じて濃度を測定する、
すなわち応答速度の速い高価な測定機器を用いる渦
相関法や、タワーを建てて高さ別に成分濃度を測定
6)
112
する濃度勾配法などのより精度が高い方法がある。
しかし、これらの方法は限られた場所でしか用いる
ことができないため、最近は汎用性の高いインファ
11)- 13)
レンシャル法による評価例が多い
。この方法
は、大気中のガス・粒子濃度を測定し、モデルによ
り評価された沈着速度を乗じて評価する方法であ
り、以下の式で表される。
(z)
F=Vd×C
:沈着面への沈着物質のフラックス
(沈着量)
F
Vd :沈着速度
(z):基準高さ z における沈着物濃度
C
V d は大気中から沈着表面までの 3 つの沈着過程
(①乱層境界層内の輸送過程、②層流境界層内の輸
送過程、③表面での捕捉過程)における沈着抵抗の
地球環境 Vol.15 No.2 111-120
(2010)
和の逆数として算出される。
(ra+rb+rc)
Vd=
ra:空気力学的抵抗、rb:準層流層抵抗、rc:表面抵抗
-1
これらの抵抗値は、沈着成分の輸送されやすさ、
沈着しやすさによって変化する。これを風速や気温
などの気象データ、また対象成分の溶解度や地表面
の被覆状況などから推定し、沈着速度を求めること
となる。特に表面抵抗 rc は、気孔抵抗、葉肉抵抗、
クチクラ抵抗、下層キャノピー抵抗および地表抵抗
など各種抵抗値で構成され、これら抵抗値は植物の
有無、季節などで変化するため、算出および評価が
難しい抵抗値である。また、これらのモデルは欧米
で開発されたため、日本やアジアの気候、植生に対
するモデルの検証も不可欠である。そのため、渦相
関法や濃度勾配法との比較などにより抵抗モデルの
14)- 18)
精度を高めることが必要である
。加えて、よ
り多くの地点での評価例も重要となることから、複
雑な計算を簡便化することにより、多くの自治体で
19), 20)
の評価例を得る必要もある
。このように、イン
ファレンシャル法のモデルはまだ開発および改良段
階である。
一方、大気中の粒子およびガス成分濃度を測定す
る方法は、自動測定装置による方法の他、成分の形
態分別に優れている拡散デニューダ法があるが、図
3 に示すように安価で簡便なフィルターパック法や
パッシブ法などの捕集法が広く用いられている。
-
湿性沈着の場合、窒素成分は主として NO3 およ
+
び NH4 として水溶液中に存在する窒素成分である
が、乾性沈着の場合は、表 1 に示すように NOz で
ある二酸化窒素(NO2)、一酸化窒素(NO)、硝酸ガ
ス(HNO 3)、亜硝酸ガス(HONO)、および硝酸塩
-
(NO3 )
、および NHz であるアンモニアガス
(NH3)
、
+
アンモニウム塩(NH4 )と種類が多い。しかも、こ
れらの成分はそれぞれ沈着速度が異なるため、区別
して計測、あるいは捕集・分析しなければならない。
そのため、粒子およびガス成分の分別など、計測方
法や捕集方法においては、その精度とともに検討す
21), 22)
べき課題がまだある
。加えて、これらの成分は
独立して存在するのではなく、図 4 に示すように
種々の発生源から排出された後、様々な反応、変換
図 3 乾性沈着成分捕集装置.
113
野口・山口:大気からの窒素成分沈着
表 1 大気から沈着する主な窒素成分.
一酸化窒素
(NO)
化石燃料の燃焼,雷による生成,土壌からの放出,N2O や NH3 からの酸化などを起源とする.生成
物である NO2 や HONO から再度,NO となる場合もある.窒素酸化物の基本的物質であるが,水に
は溶けにくく,降水や雲水にも直接はほとんど取り込まれず,乾性沈着における沈着量もかなり少な
い.燃焼による発生では,燃料中の窒素分から生成されるフューエル NOx と燃焼に用いる空気中の
窒素ガスから生成されるサーマル NOx があり,後者は高温燃焼ほど生成されやすい.
二酸化窒素
(NO2)
NO からの酸化により生成される.生成物である HNO3 から再度,NO2 となる場合もある.NO より
水に溶けやすく,降水や雲水にも一部取り込まれる.水との反応で HONO を間接発生させる.
亜硝酸ガス
(HONO)
化石燃料の燃焼による放出,NO からの二次生成もあるが,地表面や粒子表面での NO2 と水の反応
から生成,放出される寄与も大きい.かなり水に溶けやすく,降水や雲水にも取り込まれるが,大部
-
分は NO3 に変換される.日光により NO と OH に分解されやすい.
硝酸
(HNO3)
主に NO2 から生成される.またその生成物である粒子状 NO3 から再度,HNO3 となる場合もある.
極めて水に溶けやすく,降水や雲水にも取り込まれる.気温が高いと大気中の存在比が増え,沈着量
-
も増加するが,気温が低下すると粒子状 NO3 に変換される.
粒子状硝酸イオン
-
(NO3 )
ガス成分から粒子成分になる二次粒子であり,NaCl,CaCO3,NH3 と HNO3 の反応で塩として生成
される.その粒径は粗大粒径側および微小粒径側双方にピークを持つ二山型の分布を示す.これはカ
ウンターカチオンの元の粒子の粒径に左右されるためであり,Na NO3 や Ca
(NO3)2 は粗大粒径側の,
NH4 NO3 は微小粒径側の割合が多い.
降水(雲水)
中硝酸イオン
-
(NO3 )
nss-SO4 とともに酸性成分と呼ばれる.NO3 /nss-SO4 比は降水より雲水(特に雲底)で大きい.そ
の濃度や沈着量は,降水の酸性化,土壌や陸水の酸性化に関する重要な指標である.一方,土壌や陸
2-
水では栄養塩としても重要である.雲水中濃度 / 降水中濃度比は,nss-SO4 の比より大きい.
アンモニアガス
(NH3)
農業で使われる肥料や酪農の家畜の糞尿,下水や生活排水,化石燃料の燃焼などに由来する.また土
+
壌や陸水,湿地などからの放出もある.粒子状 NH4 がガス化して再度 NH3 となる場合もある.水に
溶けやすく,降水や雲水にも取り込まれる.
粒子状アンモニウム
+
イオン
(NH4 )
ガス成分から粒子成分になる二次粒子であり,NH3 と HNO3,HCl,硫酸ミストなどとの反応で塩と
して生成される.NH4NO3,NH4Cl,
(NH4)
2SO4 など,いずれも粒径が小さい.気温の上昇などにより,
ガス化しやすい.
降水
(雲水)中
アンモニウムイオン
+
(NH4 )
酸を中和するアルカリ成分であるが,土壌に沈着した後は土壌の酸性化を促進する働きをすることが
-
知られている.また NO3 と同様に土壌や陸水では栄養塩としても重要である.雲水中濃度/降水中
2-
濃度比は,nss-SO4 の比より大きい.
-
-
2-
2-
図 4 大気中窒素成分の動態.
を経て沈着する。さらに、反応は一方向に進むもの
だけではなく、ガス同士の変換はもとより、ガスか
ら粒子へ、ガスや粒子から雲粒へ、雲粒から粒子へ、
粒子からまたガスへと変換を繰り返すなど、その形
態は時間とともに複雑に変化する。当然のことなが
ら、降水が多ければ湿性沈着が、降水が少なければ
114
乾性沈着の寄与が増大することとなる。
本稿では湿性沈着
(降水による沈着)
、乾性沈着
(ガ
ス・粒子による沈着)
に分けて考察する。なお、大気
中には有機態を含む微量の窒素成分も含まれている
が、ここでは窒素成分沈着量に大きく寄与、あるいは
関連する酸化態および還元態窒素成分を対象とする。
地球環境 Vol.15 No.2 111-120
(2010)
3.大気中窒素成分の発生源とその影響因子
酸化態および還元態窒素成分は、利用しやすい栄
養素として重要であり、大気からの窒素成分の沈着
は特に通常施肥が行われない森林に対する影響が大
きい。また多すぎれば、窒素過剰、窒素飽和が今後
23)
の重要な問題となることが指摘されている 。さら
に湖水や沿岸水では富栄養化の原因となる成分であ
る。また施肥の過剰などが主な原因であるが、地下
水の高濃度硝酸性窒素問題でも降水成分、特に乾性
沈着を含めた窒素成分沈着量の評価は重要である。
これらの成分をコントロールするためには、その
排出量を抑えることが根本的解決方法である。しか
し、例えば NH 3 は発生源から数 km で沈着してし
24)
まうが 、粒子状の塩として変換されれば何千 km
も運ばれてしまう。このため、地域の排出量を把握
するだけではなく、国内はもとより、中国や韓国の
窒素酸化物およびアンモニア排出量の評価も重要と
なる。いわゆる、国境を越えた「越境大気汚染」
、
「長
距離輸送汚染」である。また、表 1 に示すとおり、
各成分の発生源は多岐に渡っており、例えば自動車
からの NO 排出量を減らすための三元触媒は結果
25)
として NH 3 の排出量を増加させることになる 。
さらに、雷や土壌由来の窒素酸化物については、一
部報告はあるがまだ充分な定量的な評価は進んでい
1)- 3), 26), 27)
ない
。このように、充分な対策をとること
ができない発生源もあり、根本的な対策、例えば化
石燃料の使用量を減らすこと、燃焼温度の管理によ
るサーマル NOx(表 1 参照)の低減や適切な施肥の
実施などが、これらの排出量を適切に抑制する方法
である。
28)
REAS による 1995 年および 2000 年の中国、日
本および韓国の窒素酸化物の排出量およびアンモニ
ア排出量を図 5 に示す。
化石燃料の燃焼による窒素酸化物の排出量では、
日本と韓国は同程度であるが、中国は約 5 倍の排出
量を示し、5 年間の増加量は日本の排出量以上であ
る。日本の排出量は減少傾向にあるものの、中国は
近年大幅な自動車台数の増加傾向を示している。こ
のため、中国の窒素酸化物排出量は現在も増加傾向
29), 30)
にあると考えられる
。
アンモニア排出量では、日本は農業活動、特に畜
産からの排出量が減っているが、韓国は化石燃料の
燃焼からの、中国は農業活動からの排出量が増大し
ており、中でも中国の著しい排出量の増加がみられ
る。原因は食糧生産の増大による施肥に伴うアンモ
1)
, 31)
- 33)
ニアの負荷量の増加によるところが大きい
。
また NH 3 濃度は都市部では NO 濃度との相関が高
34)- 36)
く
、自動車からの排出量も無視できないなど、
化石燃料の燃焼由来についてはまだ充分把握されて
25)
はいない 。
また発生源の変化だけではなく、環境の変化によ
る沈着量への影響も検討する必要があるだろう。例
えば窒素成分沈着量における HNO 3 の寄与は大き
図 5 中国,日本および韓国の窒素酸化物とアンモニア排出量
.
28)
115
野口・山口:大気からの窒素成分沈着
4.日本の窒素成分沈着量
80
NH4+湿性沈着量, mmol m−2 y−1
いが、O 3 濃度の上昇は HNO 3 の存在割合を大きく
する。また温暖化による気温の上昇も HNO3 の存在
割合を大きくする。さらに、気温、降水量の増加や
降水頻度の変化は、湿性沈着と乾性沈着、さらには
雲沈着の割合にも大きく影響を及ぼす。これらのこ
とから、大気中の窒素成分の挙動と沈着形態別の沈
着量把握は大気環境の変化と併せて長期的な観測が
必要と考える。
y = 0.97x + 5.5
r = 0.83
60
40
環境省
全環研
20
0
4.1 湿性沈着
2003 ~ 2007 年度の環境省の酸性雨長期モニタリ
37)
ング結果 および同時期の全国環境研協議会(全環
34)- 36), 38)- 40)
-
研)の酸性雨全国調査
における NO3 およ
+
び NH4 の平均湿性沈着量を図 6 に示す。
環境省によれば、2003 ~ 2007 年度の日本全国 31
-
+
地点における NO3 および NH4 の平均湿性沈着量は
-2 -1
それぞれ 25 および 27 mmol m y であり
(100 mmol
-2 -1
-1 -1
+
m y =14 kg-N ha y )
、
わずかに NH4 が多いが、
同程度を示した。一方、全環研によれば 2003 ~ 2007
-
+
年度の日本全国 77 地点における NO3 および NH4
-2
の平均湿性沈着量はそれぞれ 33 および 38 mmol m
-1
+
y であり、やや NH4 が多かった。環境省より全環
研での湿性沈着量が多かったのは環境省では離島や
山間部が多かったのに対して、全環研では都市部が
多く含まれていることによる。両方の調査結果
(重複
地点は環境省の結果を用いて評価、102 地点)
では、
-
-2
-1
NO3 湿性沈着量は 4.8 ~ 68 mmol m y の範囲で、
-2
-1
+
平均で 28 mmol m y 、NH4 湿性年沈着量は 5.7 ~
-2 -1
-2 -1
94 mmol m y の範囲で、平均で 33 mmol m y で
-
+
あった。また NO3 と NH4 の湿性年沈着量は図 6 に
示すように発生源が異なるにもかかわらず、高い相
関がみられ、湿性沈着においては近隣の発生源の影
響を受けるガス成分より、粒子状成分の取り込みに
よる影響が大きい可能性が示唆された。
-
+
NO 3 +NH 4 湿性沈着量(N 湿性沈着量)は 12 ~
-2 -1
-2 -1
158 mmol m y の範囲で、平均で 61 mmol m y
-2
-1
であった。100 mmol m y を超えた地点は、関東
地方と九州から新潟にかけての日本海側の地点であ
り、上位 3 地点は前橋、長岡、福井であった。この
原因としては、近隣の畜産などの影響も考えられる
が、東京の江東で 100 を超え、川崎、磯子でも
-2
-1
90 mmol m y 以上の沈着がみられたことから都
市活動の影響は大きいと考えられた。また日本海側
の地点では、近隣に大きな発生源はみられないこと
から長距離輸送汚染物質の影響が大きいと考えられ
た。これら N 湿性沈着量が 4 年以上得られた 64 地
点では、約 8 割の地点で増加傾向にあり、平均の年
-2
-1
変化率は 2 mmol m y であった。増加率が大き
かった上位 3 地点は筑後小郡、新潟および松江で、
日本海側に近い地点が多かった。このことも排出量
116
0
20
40
60
80
NO3− 湿性沈着量, mmol m−2 y−1
図 6 国内の窒素成分湿性沈着量.
が増加傾向にある中国などからの長距離輸送汚染物
質の影響を示唆するものと考えている。
4.2 乾性沈着
乾性沈着の評価においては前述したように近年は
インファレンシャル法を用いた評価方法が主流であ
る。この方法はモデルを用いて気象データや土地利
用状況などから成分濃度別の沈着速度(Vd)を求め、
大気中濃度(C)との積で沈着量(F)を求める方法(F
=Vd×C)
である。そのため、用いるモデルが異なれ
15), 41)
ば結果も異なる。ここでは、2 種類のモデル
を
用いた結果を示す。
15)
松田 のモデルを用いた環境省の酸性雨長期モニ
37)
タリング結果 によれば、2003 ~ 2007 年度の日本
全国 10 地点における平均乾性沈着量は、HNO 3 は
-2
-1
-
-2
-1
11 mmol m y 、粒子状 NO3 は 4.3 mmol m y
-2
-1
+
であった。また NH3 は 5.1 mmol m y 、粒子状 NH4
-2
-1
+
-
は 9.1 mmol m y と、HNO3>NH4 > NH3>NO3
の順に沈着量が多く、NOz と NHz の沈着量は同程
度であった。これらの評価は森林と草地のみで分類
し、半径 1 km の土地利用の比率に応じて沈着量を
算出しており、いずれも草地より森林における沈着
速度は大きく、沈着量は多かった。図 7 に示すよ
うに、乾性沈着量の合計が多かった竜飛岬、蟠竜湖
および檮原は森林の割合が多い地点である。また松
15)
田 は、HNO3 と粒子状物質の沈着速度は風速に応
じて大きくなること、NH3 の沈着速度は地表面や植
生が濡れている場合に大きくなることを報告してい
る。このことから、気象条件や土地利用によって乾
性沈着量は大きく変動することが分かる。
NOz と NHz の乾性沈着量の合計(N 乾性沈着量)
-2 -1
は 4.6 ~ 56 mmol m y の範囲で、平均で 29 mmol
-2
-1
m y であり、湿性沈着量と合わせると乾性沈着
量の割合は平均で 36%であった。しかし、竜飛岬、
隠岐および檮原では乾性沈着の割合が 50%を超え
ている年があり、また環境省の報告では NO 2 、
NO、HONO 成分の評価を行っていないことから、
地球環境 Vol.15 No.2 111-120
(2010)
50
40
30
20
10
HNO3
NO3
−
NH3
+
NH4
図 7 2003~2007 年の窒素成分乾性沈着量(環境省の報告書
乾性沈着の割合はまだ大きくなると考えられる。な
お、N 乾性沈着量は隠岐、蟠竜湖および檮原で増加
+
傾向がみられ、HNO3 および粒子状 NH4 において
その傾向が大きかった。
41)
乾性沈着推計ファイル Ver3-2、Ver3-4 を用いた
34), 35)
全環研の酸性雨全国調査
によれば 2006、2007
年度の日本全国 27 地点における平均乾性沈着量は、
-2
-1
-
HNO3 は 19 mmol m y 、粒子状 NO3 は 0.8 mmol
-2
-1
-2
-1
m y であった。また NH3 は 12 mmol m y 、粒
+
-2
-1
子状 NH 4 は 2.4 mmol m y と、HNO 3>NH 3>
+
-
NH4 >NO3 の順に沈着量が多く、NOz の沈着量が
やや多かった。これらの評価は市街地、森林、農地、
草地、水面に分け、積雪寒冷地では冬季は積雪に覆
われることから農地、草地は積雪として分類し、半
径 1 km の土地利用の比率に応じて沈着量を算出し
ており、いずれも森林における沈着速度は他の土地
利用の場合よりも大きく、沈着量は多かった。また、
環境省の調査結果に比べガス状成分の沈着量が多か
ったのは前述したように全環研の調査地点は都市部
も多く含まれており、成分濃度が高い地点が含まれ
ていたこと、モデルの違いにより、粒子状物質の沈
着量が、環境省のそれと比べて少なかったことが原
因である。
-2
-1
N 乾性沈着量は 4.2 ~ 95 mmol m y の範囲で、
-2
-1
平均で 33 mmol m y であり、湿性沈着量と合わ
せると乾性沈着量の割合は平均で 32%であった。
しかし、長野、豊橋、大阪、神戸、海南、大宰府、
大里では乾性沈着の割合が 50%を超えている年が
あり、また全環研の報告でも NO2、NO、HONO 成
分の評価を行っていないことから、乾性沈着の割合
はまだ大きくなると考えられる。乾性沈着の割合が
多かった地点は西日本に多く、沖縄の大里は NH 3
沈着量が高かったが、他の地点では HNO3 沈着量が
多かった。これは、西日本の地域では気温がより高
く、HNO3 の存在割合が大きく、濃度がより高かっ
たためと考えられた。また都市部で沈着量が多かっ
たのは同様に HNO 3 濃度がより高い傾向にあった
辺
戸
岬
檮
原
蟠
竜
湖
隠
岐
伊
自
良
湖
八
方
尾
根
佐
渡
関
岬
小
笠
原
竜
飛
岬
0
利
尻
乾性沈着量, mmol m−2y−1
60
より作成).
37)
こと、また Vd が他の土地利用の場合より市街地で
大きかったためと考えられた。
酸化態および還元態窒素の湿性および乾性沈着量
の合計
(N 沈着量)
は、環境省の調査では 16.7 ~ 149
-2
-1
-2
-1
mmol m y の範囲で、平均で 76 mmol m y で、
沈着量が大きかった地点は、伊自良湖と蟠竜湖で、
-2
-1
それぞれ 130、100 mmol m y であった。一方、
-2
-1
全環研の調査では 38.7 ~ 171 mmol m y の範囲
-2
-1
で、平均で 100 mmol m y で、沈着量が大きか
った地点は、長岡、大宰府で、それぞれ 171、167
-2
-1
mmol m y であった。いずれも N 沈着量は北日
本の地点では少ない傾向が認められた。一方で離島
や山間部が多いため、全体的に沈着量が少なめであ
-2
-1
った環境省の調査でも平均で 76 mmol m y と
-1
-1
-2
-1
10 kg-N ha y (71 mmol m y )
を超える状況に
-1
-1
あることが認められた。10 kg-N ha y は針葉樹
23)
林の窒素の臨界負荷量の閾値でもあり 、窒素過剰、
窒素飽和現象が各地で出現する可能性が考えられ
る。
5.窒素成分の沈着形態別寄与
北海道における湿性および乾性沈着評価結果か
ら 、 前 節 で は 評 価 し て い な か っ た N O 2、 N O 、
HONO 成分の乾性沈着評価を含めた事例を表 2 に
示す。乾性沈着評価に用いたモデルは乾性沈着推計
38)
ファイル Ver4-0 である。札幌は市街地 100%で、
利尻は前述の全環研による土地利用割合に従って森
林 14%、草地 74%、水面 12%で算出した。
HNO3 沈着量が札幌で多かったのは濃度の違いだ
けでなく、V d が大きかったことにもよる。また都
市部である札幌は NO2 および HONO 濃度が高く、
NO2 および HONO 沈着量は大きく、乾性沈着量の
中でも大きな割合を示した。NO では札幌で極めて
濃度が高いにもかかわらず、利尻で沈着量が大きか
ったのは、NO が水に溶けにくく、沈着しにくい成
分であること、利尻では森林および草地の植物によ
117
野口・山口:大気からの窒素成分沈着
表 2 2004 ~ 2006 年度の札幌および利尻における窒素成分沈着量.
札幌
濃度
mmol m
乾性
ガス
HNO3
mmol m
沈着量
%
mmol m y
-2
-1
%
68
3
5
1.6
34
817
54
6.6
18
37
61
0.5
10
34
2
3.3
9
2
3
0.2
5
NO
551
37
0.000002
0
2
4
0.0030
0
NH3
100
7
2.0
5
17
27
2.4
51
NOy
859
90
35.5
95
42
72
2.3
49
NHy
100
10
2.0
5
17
28
2.4
51
23
25
0.7
25
10
30
0.8
33
69
75
2.0
75
23
70
1.7
67
959
91
37.5
93
58
64
4.8
65
NO3
-
NH4
+
粒子
92
9
2.6
7
32
36
2.6
35
NOz
882
84
36.1
90
51
57
3.2
43
NHz
168
16
39
43
4.0
10
4.2
57
NO3
-
24.9
50
13.0
42
NH4
+
24.7
50
18.0
58
乾性
40.1
45
7.3
19
湿性
49.6
55
31.1
81
合計
89.7
100
38.4
100
るガスの取り込みを見込んでいるためである。しか
し、他の成分に比べるといずれの地点でも無視でき
るほど小さかった。NH3 は札幌で約 6 倍濃度が高い
が、沈着量は利尻の方が大きかった。ガス状成分全
体では札幌は NOy の寄与が大きかったが、利尻は
NOy と NHy の寄与は同程度であった。粒子状の
-
+
NO 3 および NH 4 は札幌で濃度が高かったが、沈
着量はいずれも同程度であり、乾性沈着全体では札
幌は粒子の寄与が 7%と少なかったが、利尻では 35
%とより大きかった。このことから、濃度が低くて
も森林を含む地域では沈着量が多くなることが分か
る。また札幌では NOz の寄与が大きく、利尻では
NHz の寄与がやや大きかった。湿性沈着ではいず
-
れも札幌の沈着量が大きかったが、NO3 沈着量は
+
+
札幌では NH 4 と同程度であり、利尻では NH 4 沈
着量がやや大きかった。乾性沈着はいずれも湿性沈
着より少なかったが、
その寄与は札幌で大きかった。
このように、都市部では NO2、HONO の寄与が無
視できないことから、都市部およびその郊外などに
おける窒素収支の解析のためには、これら成分を含
む NOz の乾性沈着調査、評価が重要となることが
考えられた。一方、清浄地域では森林地域も多く、
粒子の寄与が大きかったことから、前述の環境省の
調査における竜飛岬のように乾性沈着の寄与が湿性
沈着を上回る地域が多いことが考えられ、日本海側
などの長距離輸送汚染物質の影響を受けやすい森林
地域では乾性沈着調査、評価が重要となることが考
えられた。
札幌における湿性および乾性沈着量と札幌の藻岩
118
%
-3
25.5
ガス
合計
mmol m y
-1
0.5
HONO
湿性
%
-2
濃度
8
NO2
粒子
-3
利尻
沈着量
山山頂における雲
(霧)
沈着量を比較すると、通年は
合計の 5%以下となる雲沈着量は、冷夏だった 2003
年では乾性沈着量を超えたことが報告されている
42)
。この原因は、気温が低かったため、HNO3 の濃
度が低く、乾性沈着量が少なかったこと、湿度が高
く雲に覆われる時間が多く、雲沈着量が多かったこ
とによる。このことから、乾性沈着量や雲沈着量は
その年の気象条件、あるいは温暖化などにも大きく
影響を受けると考えられた。また雲水成分は降水成
分よりいずれの成分も濃度が高く、雲水中成分濃度
-
+
/降水中成分濃度の比では NO 3 や NH 4 の比が大
43), 44)
きいこと
、雲沈着は地域によっては湿性および
44)
, 45)
乾性沈着以上の沈着量があること
などが報告さ
れており、特に窒素成分の沈着量把握においては、
今後は雲沈着の評価を進める必要があると考えられ
る。
6.まとめ
大気中の酸化態および還元態窒素の沈着量を把握
するためには、
湿性沈着および乾性沈着の沈着過程、
さらに湿性沈着では各イオンの、乾性沈着ではガス
および粒子状成分の形態別に沈着量を把握する必要
があることを述べた。また、観測手法、評価手法を
示し、特に乾性沈着評価に必要な沈着速度のモデル
が現在も開発中の段階にあり、より精度の高い方法
が必要であること、さらに沈着速度は土地利用、気
象条件、成分によって異なることからモデルによる
沈着速度算出が極めて複雑なことを示した。その上
地球環境 Vol.15 No.2 111-120
(2010)
で、
現段階で報告されている全国の窒素成分沈着量、
さらに詳細に評価された北海道における窒素成分沈
着量を考察した。その結果、全国の窒素成分沈着量
は、離島や山間部が多い環境省の評価では平均で
-2
-1
76 mmol m y 、都市部も多く含む全環研の評価
-2
-1
では平均で 100 mmol m y と、平均でも 71 mmol
-2
-1
-1
-1
m y (10 kg-N ha y )を超える状況にあること
が認められた。また、都市部およびその近郊では
NOz の乾性沈着による影響がより大きく、清浄地
域および田園地域では乾性沈着の寄与は小さいもの
の、特に森林の割合が高いそれら地域では粒子状物
質の乾性沈着の寄与が大きくなることなどから長距
離輸送汚染物質の影響を受けやすい日本海側の森林
地域での観測が重要となることを示唆した。
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(独)国立環境研究所地球環境研
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境省による国設酸性雨測定局である利尻局のデー
タ、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
雨龍研究林との共同研究のデータを用いており、関
係機関へ深く感謝する。また、利尻における亜硝酸
ガス測定には、(財)
日本環境衛生センター酸性雨研
究センターおよび
(財)
上越環境科学センターの協力
を得た。ここに、関係各機関に深謝する。
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120
野口 泉
Izumi NOGUCHI
1963 年北海道生まれ。北海道環境科
学研究センター環境科学部主任研究員兼
環境科学科長。1985 年北海道大学工学
部衛生工学科水質工学講座を卒業。同年、
北海道職員として北海道環境科学研究セ
ンターの前身である北海道公害防止研究所大気部に配属。大
気の中の水質である「酸性雨」担当となる。
酸性雨関連では、
東アジアモニタリングネットワーク、環境省の酸性雨モニタ
リングネットワーク、全環研の全国調査に関わる委員等を務
める。近年の主要なテーマは大気汚染物質の沈着や対流圏オ
ゾン、およびその影響である。
山口 高志
Takashi YAMAGUCHI
北海道大学大学院地球環境科学研究科
修了。学生時代は有珠山で土壌生成およ
び植生遷移について調査を行っていた。
公害監視業務等を経て、現在は酸性雨
を中心とした大気汚染に関する研究を行
っている。北海道への長距離輸送による大気汚染物質のモニ
タリングと、生態系への影響を定量的に把握したいと考えて
いる。趣味としてワラジムシ・ダンゴムシの顔写真を撮影し
ており、その一環として「超極小域 GIS -庭のワラジムシ
分布」の作成を検討している。