多良間・伊良部海丘におけるうらしま潜航報告-YK14-16 概要- ○沖野郷子(東京大学大気海洋研),浅田美穂・野口拓郎(海洋研究開発機構), 小牧加奈絵(高知大学),藤井昌和・多良賢二・眞中卓也(東京大学大気海洋研), 冨田大貴・小出聡子(静岡大学) 海底熱水系の構造や熱水化学組成、また熱水系の支える生態系は多様であり、その多様性を規制し ているのは熱水系周辺の地質学的な背景である。沖縄トラフは大陸地殻のリフティングから海洋性地 殻形成へと移行しつつある背弧拡大系であり、大陸や島弧からの豊富な堆積物供給で特徴づけられ、 多数の熱水系が発見されている。YK14-16 航海では、AUV を用いた高精度マルチセンサ探査により、沖 縄トラフ熱水系の規模と成因を明らかにし、その地質学的背景を議論するための潜航調査を行った。 潜航対象としたのは、南部沖縄トラフの2サイト(伊良部、多良間)である。伊良部海丘は背弧リ フトの軸部に位置し、玄武岩からなる海丘である。複数の高まりからなる複合的な海丘(群)であるが、 これまで 3 カ所で熱水の噴出が認められていた。多良間海丘は伊良部海丘から約 20 マイル西に位置し、 背弧リフトに対して島弧側に位置する流紋岩の丘である。低温の湧水が海丘頂部にあることが知られ ている。また、過去の ROV 探査で海丘の南側の海水に著しい濁りが報告され、未知の高温熱水噴出孔 の存在が予想されてきたものの、その位置は特定できていない。本航海では、1)伊良部・多良間の 両海丘において、複数のセンサを用いた海中・海底下の三次元的な高精度マッピングを実施し、2) 異なる母岩・テクトニックセッティングにある2サイトの比較を行うこと、さらに3)多良間海丘の 未知の高温熱水孔の位置をピンポイントで特定することを目的とし、うらしま 4 潜航を実施した。 潜航は概ね高度 100m の定高度航走で行い、マルチビーム測深機、サイドスキャンソナー、サブボト ムプロファイラによる詳細な地質構造探査、フラックスゲート磁力計による高解像度磁気異常探査、 CTD, pH, ORP,濁度計と ADCP やソナーの水中音響データを用いた海中の 3 次元プルームマッピング、 MINIMONE システムによる採水に成功した。第 181,184 潜航では、伊良部西部の円錐状海丘および東部 の高まりを探査した。周辺の地質構造が高精度で明らかになったほか、既知の熱水噴出孔周辺で熱水 プルームと考えられる水中異常を検知した。磁気 異常は著しく高く、新鮮な玄武岩からなる海丘で あることを示唆している。第 182,183 潜航では、 多良間海丘の全体をカバーし(右図)、詳細な構造 が明らかになった。また、海丘東麓部において、 化学センサおよびソナーの水中音響データで非 常に強い海水異常が検知され、これまで知られて いなかった比較的高温の熱水噴出孔の位置をピ ンポイントで特定することができた。 また、夜間に支援母船よこすかによる海上地球 物理観測も実施した。広域の地質構造が明かにな ったほか、マルチビーム測深機の水中音響データ から、ハイドレート湧出の可能性のある音響異常 を発見した。
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