結核集団感染事例の発生について

資料提供
平成27年2月6日(金)
保健福祉部 保健予防課健康危機管理対策室 担当:総括 柴田 隆之
長寿福祉課介護保険室 担当:室長補佐 伊東 正憲
結核集団感染事例の発生について
介護老人保健施設「もえぎ野」(北相馬郡利根町もえぎ野台1丁目1-8:施設長 野村 隆
二)において結核患者5人と結核感染者が7人確認され,結核の集団感染と判断しましたので,
下記のとおり情報提供します。
なお,現在の状況は,結核患者5人のうち3人が死亡しており,その他一人は結核病床を有す
る病院に入院中で,もう一人は外来治療中です。
記
1 経過
(1)「もえぎ野」の入所者1人が,結核(菌検査塗抹陽性で他に感染させる恐れがある)に罹
患した旨の結核患者発生届が,昨年9月12日に医療機関から竜ケ崎保健所に提出されまし
た(患者A)。その後,10月17日に死亡が確認されました。
(2)竜ケ崎保健所及び「もえぎ野」では,(患者A)の接触者である入所者並びに濃厚接触者で
ある施設職員に対して,昨年9月から今年1月にかけて接触者健康診断を実施しました。
(3)その結果,施設入所者及び利用者から結核患者4人(患者B,C,D,E)が確認され,治
療を開始しました。その後2人死亡(患者B:平成26年12月4日死亡,患者C:平成2
6年12月27日死亡)が確認されました。
(4)その他,結核感染者が施設職員から7人確認され,発病を予防するための治療を順次開始
しました。
(5)竜ケ崎保健所では,集団感染を確認するため,患者A~D4人の結核菌について,衛生研
究所において分子疫学的検査(※1)を実施した結果,本年2月5日に全員の菌の遺伝子パタ
ーンが一致したことから,今回の事例が同一の感染源による集団感染であることを確認しま
した。
(※1)分子疫学的検査とは
複数の結核菌を遺伝子レベルで違いがあるかないかを確認検討する検査
(6)竜ケ崎保健所では,感染が確認された職員の確実な服薬治療と入所者及び職員の定期的な
健康診断を支援していきます。
2 結核患者等の発生状況等
【 結核患者 】(施設入所者及び利用者)
結核患者
発生届日
現在の状況
備 考
A:90歳代 男
H26.9.12
H26.10.17死亡(結核)
X線検査及び菌検査で発病発見
B:70歳代 男
H26.11.19
H26.12.4死亡(肺炎)
X線検査及び菌検査で発病発見
C:80歳代 女
H26.12.4
H26.12.27死亡(肺炎)
X線検査及び菌検査で発病発見
D:90歳代 女
H26.12.17
結核病床入院治療中
X線検査及び菌検査で発病発見
E:90歳代 女
H27.1.31
外来治療中
X線検査及び菌検査で発病発見
【 結核感染者 】(施設職員)
人 数
7人
年 代
( 男:1 人 , 女:6 人 )
10歳代~60歳代
注:患者及び家族等の個人情報については,プライバシー保護の観点から特段の御配慮を
お願いします。
3 保健所の対応
(1)接触者健康診断の実施
(単位:人)
対象区分
実施時期
対象者
検査結果
患者
感染者
異常なし
未受診
H26.9.18~
H27.1.20
18
0
7
11
0
H26.9.11~
用者(ショートスティ) H26.12.9
14
4
0
10
0
H26.9.29~
H26.11.25
1
0
0
1
0
33
4
7
22
0
施設職員等
入所者及び利
患者家族
合
計
(2)その他の入所者について
今回の接触者健診の対象となっていないその他92名の入所者の内,一年以内に健康診断
を実施していない55名については,1月31日までに健康診断を実施し,全員異常ありま
せんでした。残りの37名についても健康状態を監視しつつ今後順次実施していく予定です。
【 参 考 】
○ 結核集団感染の定義
同一の感染源が,2家族以上にまたがり,20人以上に結核を感染させた場合をいう。
なお,発病者1人は6人が感染したものとして感染者数を計算する。
計算にあたっては,初発の患者を含めない。
今回の事例の計算式
患者4人×6 + 結核感染者7人 = 31人
○【結核感染者】
結核菌に感染しているが,X線検査等では明らかな発病は確認されない状況であり,将来発
病の危険性が高い者。
結核菌への感染の有無は,免疫学的方法(ツベルクリン反応,QFT検査(※2))により確認
を行う。発病を予防するための治療の対象となり,抗結核薬のINH(イソニコチン酸ヒドラ
ジド)の服用を行う。なお,他の者に結核を感染させることはない。
(※2) QFT検査とは
QFT(クオンティフェロン)検査とは,血液検査で感染の有無を判別する検査法で,
ツベルクリン反応検査のようなBCG接種の影響を受けずに感染の確認ができる利点
がある。
県民の皆様へ
(1)2週間以上せきが続いたら早めに受診しましょう
結核の初期症状は,かぜとよく似ています。2週間以上,咳や痰・発熱などの
症状が長引く場合は,早めに医療機関を受診しましょう。
(2)定期的に胸部X線検査を受けましょう
市町村で行っている住民健診や職場等で健康診断の対象者の方はすすんで健康
診断を受け,早期発見に努めましょう。
(3)乳児のBCG接種は必ず受けましょう
感染した場合の重症化を防ぐため,必ず1歳の誕生日前までにBCG接種を受
けましょう。
【 参考資料 】
1 本県における過去に発生した結核集団感染事例
(人)
発生時期
発生場所
患者
結核感染者
H14. 4 真壁郡内地域
6
1
H14. 5 事業場
3
15
H14.12 専門学校・塾
2
23
H15. 5 病院(精神)
11
12
H15. 6 病院
32
14
H15.12 病院 (精神)
10
7
H16. 6 事業所
3
3
H19. 6
老人保健施設
2
10
H19.11
事業所
3
14
H20. 4
事業所
2
14
H20. 6
飲食店(居酒屋)
2
18
H20. 7
飲食店
3
6
H20. 9
飲食店
3
4
H22. 5
病院
2
12
H23. 4
病院
2
12
H23. 9
事業所
1
30
H24. 2
事業所
2
17
H24. 3
病院(精神)
5
15
2 全国における結核集団感染の発生状況(H15年~H24年)
(件)
社会福祉
大 学 中学校 小学校 その他
年 事業所 地 域
医療機関
塾
件数
施 設
専門学校 高 校 幼稚園 (不明を含む)
H15
21
9
2
10
2
2
1
-
6
43
H16
18
9
2
18
1
3
4
-
6
48
H17
13
6
2
11
2
1
-
-
8
37
H18
16
9
2
4
2
4
1
-
11
38
H19
22
11
1
4
0
-
1
1
10
42
H20
23
12
3
10
1
-
2
-
7
48
H21
13
8
2
4
0
2
3
-
7
30
H22
16
6
6
9
1
-
1
-
4
38
H23
22
15
4
19
2
3
3
1
10
64
H24
24
19
5
9
0
2
1
-
2
42
集団発生の場所が1件で2か所以上の場合があり,発生場所の合計と「件数」は一致しない。
3 結核の発生状況
区分
新登録患者数
(人)
年末時登録患者数
(人)
全結核罹患率
(人口10万人対)
結核死亡数
(人)
本県
全国
本県
全国
本県
全国
本県
全国
H20
422
24,760
1,200
62,244
14.2
19.4
36
2,200
H21
446
24,170
1,091
59,573
15.1
19.0
33
2,159
H22
410
23,261
972
55,573
13.8
18.2
46
2,129
H23
431
22,681
933
55,196
14.6
17.7
49
2,166
H24
401
21,283
929
52,203
13.6
16.7
45
2,110
H25
382
20,495
944
49,814
13.0
16.1
47
2,084