明神礁より採集されたエラゴカイ科多毛類1未記載種について ◯自見直人(広島大学)・Stephan Hourdez (Centre national de la recherche scientifique)・ 藤原義弘(海洋研究開発機構) エラゴカイ科(Alvinellidae)は深海の熱水噴出域にのみ生息する多毛類である.2 属 11 種からなる分 類群であり,日本近海では伊豆諸島南部明神礁および沖縄南海トラフにおいて 1 種 Paralvienlla hessleri Desbruyeres & Laubier, 1989 が報告されている.演者らは伊豆諸島南部明神礁における潜 航調査で P. hessleri とは形態上明らかに異なるエラゴカイ科の多毛類を 7 個体採集した.7 個体は性 特異的と考えられる形態以外は同一の形態であった.そこで雌雄と考えられる2個体のミトコンドリ ア DNA COX1 領域を比較したところ,遺伝的変異がほぼ無かったため同一種の雌雄個体であると判断し た.本生物種の形態観察を実体顕微鏡・走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行った結果,鰓および前口 葉の形態により類似種 Paralvienlla unidentata Desbruyeres & Laubier, 1993 を除く他の同科 10 種 とは別種であると判断した.さらに,生殖器と考えられている雄特有の器官 Sexual tentacles を本種 が有する点,短剛毛が初めて出現する節が異なる点により類似種である P. unidentata と区別できる ため,本生物種を未記載種であると判断した.
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