AVC-ULTRA Overview Revision 2.0 j February, 2015 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j 改訂履歴 Revision No. 内容 発行日 1.0 j 初版発行 2013 年 6 月 1.1 j Figure 3, Figure 4 の誤植を修正 2014 年 2 月 Class 4:4:4 仕様を更新 2.0 j Class 4K/2K 仕様を追加 AVC-ULTRA 対応商品を最新情報に更新 2015 年 2 月 Partner 情報更新 1 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j Introduction H.264/AVC 規格のビデオコーデックは,2007 年にプロフェッショナル向け制作用フォーマットと しては業界で初めて,Panasonic より AVC-Intra として導入された.その後 2008 年以降は,すべて の P2HD 機器に標準搭載されている. AVC-Intra は,最新のコーデック技術により従来と比べて およそ2倍の圧縮効率と優れた画質の両立と,編集に適したフレームごとに完結したコーデックス キームが広く受け入れられ,ノンリニア編集機やサーバーの標準フォーマットの一つとなった.また 周辺機器やソフトベンダーによる各種のツール群が整備され,45社以上の会社から 90 を超える AVC-Intra サポート製品群が提供されている.これらにより,AVC-Intra による種々のワークフロー が制作アプリケーションに応じて構築可能となっている.こうした状況を踏まえ,他の主要なカメラ レコーダーメーカーは,Panasonic から 6 年遅れて,H.264/AVC による同様なコンセプトのビデオコ ーデックの導入を始めた. いっぽう,AVC-Intra 導入後の数年において,ネットワークインフラおよび半導体技術の進化は, 映像コンテンツの視聴環境や制作ワークフローに新たな局面をもたらそうとしている.スマートフォ ンに代表されるモバイル端末に牽引されて,公衆網によるネットワークの伝送速度はここ数年で数 十倍速くなった.これにより,映像コンテンツを視聴する形態は必ずしもテレビ放送視聴に限られ ず,スマートフォンやタブレット端末を含めたより多様な形態で楽しめる環境が可能となってきた. 映像制作の面においても,IP ネットワーク伝送を活用した時間・場所の制約を越えた新しい制作ワ ークフローが可能になりつつある.また,大規模,高速で低電力な LSI を可能にする半導体技術の 進化は,より高精細で美しい映像作品の制作を低い運用コストで実現することを可能にする. これらここ数年の技術/環境変化の機会を捉え,Panasonic は AVC-Intra で培った H.264/AVC 技術の蓄積をさらに一歩進めて,新たな映像制作の時代を築くべく AVC-ULTRA コーデックファミ リ ー を 開 発 し た . 本 稿 で は , AVC-ULTRA が 新 た に 映 像 制 作 に も た ら す も の , お よ び AVC-ULTRA の概要とその技術について述べる. What will AVC-ULTRA bring you? AVC-ULTRA は,映像制作に携わる人々に,下記の3つをもたらすことを目指して開発された. (1) 映像コンテンツ制作ワークフローの運用コストを大きく下げる (2) 時間・場所の制約を越えた,ネットワークベースの映像取材・制作を可能にする (3) 映像作品の創作意欲を駆り立てる制作環境の提供 Figure 1 に AVC-ULTRA が広げる世界の概念図を示す.(1)は,Long GOP 方式の MPEG2 より も低い映像ビットレートで高画質を実現できる AVC-LongG により実現される.(2)は, IP ネットワー ク経由の転送に適したより低いビットレートの AVC-LongG と AVC-Proxy により実現される.また, (3)のために,従来よりも映像表現力がいっそう高く,映像効果を自在に繰ることのできる加工性能 2 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j に優れた Class200 および Class4:4:4 が AVC-Intra の仲間に加わり,さらにより高いフレームレート への対応,より高精細な 4K 映像フォーマットに対応した Class4K の追加まで,対応するビデオフォ ーマットを拡張した.これら,(1), (2), (3)のすべてが,H.264/AVC で統一的に扱える AVC-ULTRA により実現される.AVC-ULTRA により,多様なアプリケーションに応じて最適なワークフロー構築 を可能にし,映像制作に携わる企業・クリエーターのビジネス機会を一層大きく広げていく. Higher picture quality for creative work of production 4K,2K & 1080/50p,60p Class4:4:4, Class200, Class4K/2K Class100, 50 LongG50, LongG25 Lower data rate with high picture quality LongG12, LongG6 Extremely low data rate for network based workflow for cost effective workflow Figure 1 Overview of AVC-ULTRA AVC-ULTRA codec family for HD AVC-ULTRA ファミリーは,そのすべてが H.264/AVC 規格に準拠している.Figure 2 に,HD ビデオフォーマットに対する AVC-ULTRA ファミリーのコーデック仕様,概略ビットレートを示す.な お,この表は HD における AVC-ULTRA の全体像を示すものであり,実際の商品では必ずしもす べてがサポートされるわけではなく,商品の性格に応じて実装されるフォーマットが限定される場 合がある点は注意願いたい. Figure 3 に,1080/59.94i ないし 29.97p に対する各モードのビデオビットレートを,非圧縮映像と 合わせて棒グラフにして示す.12bit 4:4:4, 10bit 4:2:2, 8bit 4:2:0 のそれぞれにおいて,非圧縮映 像に対して,AVC-Intra ではおよそ 1/5~1/10 に,AVC-LongG では 1/25~1/125 に圧縮される. またファイルフォーマットは,Figure 2 に示すとおり,業界標準の MXF に加え,AVC-LongG の 一部と AVC-Proxy は mov 形式に対応している. 3 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j Approximate Video Rate (bps) Compression Format Codec File format 1080 720 Full Color Bit Class resolusample depth tion Intra/ Long CBR/ VBR 4:4:4 4:4:4 12bit Yes Intra VBR MXF 180M 220M 200 4:2:2 10bit Yes Intra CBR MXF 178M 226M 226M 100 4:2:2 10bit Yes Intra CBR MXF 89M 111M 111M 1080 23.98p 25p 59.94i 23.98p 25p 59.94p 59.94p 24p 29.97p 50i 24p 29.97p 50p 50p 440M 44M 56M 226M 452M 111M 222M 50 4:2:0 10bit No Intra CBR MXF 54M 54M G50 4:2:2 10bit Yes Long VBR MXF 50M 50M 50M 50M G25 4:2:2 10bit Yes Long VBR MXF 25M 25M 25M 25M 50M G12 4:2:0 8bit Yes Long VBR MXF/mov 12M 12M 24M G6 4:2:0 8bit Yes Long VBR MXF/mov 6M 6M 12M G6 4:2:0 8bit Yes Long VBR mov 6M SHQ 4:2:0 8bit No Long VBR mov 3.5M HQ 4:2:0 8bit No Long VBR mov 1.5M LOW 4:2:0 8bit No Long VBR mov 800k CBR: Constant Bit Rate, VBR: Variable Bit Rate Figure 2 AVC-ULTRA codec family for HD for 1920 x 1080, 59.94i or 29.97fps 12-bit 4:4:4 10-bit 4:2:2 8-bit 4:2:0 Figure 3 Video data rate of AVC-ULTRA and uncompressed picture for HD 4 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j Low cost operation with AVC-LongG IP ネットワークやワイヤレスネットワークのインフラが整い,モバイル端末での視聴も含め多様な 映像コンテンツを楽しめる環境が可能となってきた.それに伴い,より多くのコンテンツをより低い 運用コストで制作することが望まれる.AVC-LongG25 は,フル HD の AVC-Intra Class100 とほぼ 同等の映像品位を約 1/4 のビットレートで実現し,映像制作の運用コストを大幅に下げることので きるコーデックである.それに加え,50Mbps の SDTV 用制作インフラを最大限活かしていっそう高 画質の HD を扱える AVC-LongG50 も用意されている. AVC-LongG は,フレーム間の相関を利用した Long GOP 方式を採用することで高効率な圧縮 を実現している.AVC-LongG50 と LongG25 はいずれもフル HD で 10bit 4:2:2 サンプリングに対 応している.また,絵柄に応じて GOP ごとにデータ量を最適化する VBR(Variable Bit Rate)制御を 採用することで,安定した画質とデータレートを両立している. LongG25 を,他社が採用している 8bit 4:2:2 サンプルで 50Mbps の MPEG2 方式と比べると,高 精度な動き予測,デブロッキングフィルタ,GOP 構造の最適化,算術符号化 CABAC など H.264/AVC で進化した信号処理と,人間の視覚特性を考慮し,さらに繰り返し符号化時の劣化を 最小限に抑えつつ映像の性質に応じて適応的にビット配分を最適化する Panasonic 独自の適応 制御技術により,ビットレートが半分でありながら同等以上の画質が実現できる. Figure 4 に,LongG25 で収録された素材蓄積に必要なストレージ容量を,MPEG2 50Mbps と比 較して示した.Figure 4 で明らかなように,LongG25 では必要なストレージ容量を半減できるため, 素材蓄積に必要な設備投資や運用コストを大幅に抑えることができる.また Figure 5 には,1 分間 の映像クリップを,Ethernet, Wi-Fi,モバイル公衆網経由を想定したネットワーク転送に要する時 間を示している.AVC-LongG によって,IP ネットワークを経由した映像素材伝送時間を半減するこ とで時間コストを抑えることができるとともに,サイト内ネットワークインフラ等にかかわる運用コストも 大幅に抑えることができる. Required Capacitye (PB) 0.0 1-Week (24H x 7days) 1-Month (24H x 30days) 1-Year (24H x 365days) 50.0 100.0 1.8 3.6 150.0 200.0 250.0 LongG25 (10-bit 4:2:2) MPEG2 50 (8-bit 4:2:2) 7.7 15.4 Lower cost 94.0 188.0 Figure 4 Required storage capacity for HD content 5 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j Transfer Time for 1-min Clip (min) 5 10 15 20 25 0 100Mbps Ether 25Mbps Wi-Fi 0.25 0.5 30 LongG25 (10-bit 4:2:2) MPEG2 50 (8-bit 4:2:2) 1 2 Faster speed 12.5 2Mbps mobile 25 Figure 5 Transfer time of 1-minite HD clip over IP network ところで,Long GOP 方式は Intra フレーム方式と比較して,編集等に際して PC でのソフトウェア 処理負荷が大きくなることが懸念される.Figure 6 に,AVC-LongG25 のソフトウェアでのエンコード /デコード速度の測定例を AVC-Intra Class100 と比較して示した.Figure 6 は,1080/59.94i の 1 フレームの処理に要する平均処理時間を示している.LongG25 のエンコード/デコード速度は, Class100 と概ね同等であり,特にデコードは 33msec の 1 フレームを 3 倍以上の速度で処理できる ことから,複数ストリームを同時に扱うリアルタイム編集も余裕でこなすことができる.なお,Figure 6 の測定例は 2012 年版 Core i7 プロセッサ搭載 PC での測定に基づいており,毎年新しく投入され るプロセッサの進化により処理時間は年々短縮されていく. Processing time per frame (1080/59.94i) 0 10 20 30 40 Desktop Decode Laptop AVC-Intra 100 AVC-LongG 25 Desktop faster Encode Laptop Figure 6 Software codec performance 6 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j MXF file format for AVC-ULTRA AVC-LongG のファイルは,業界標準の MXF OP-1b 型式で記録される.Figure 7 (b)に OP-1b のファイル構造を,また比較のため Figure 7 (a)に OP-1a の構造をそれぞれ簡略化して示した.こ の例では,オーディオは 2 チャンネルとし,簡単化のためビデオ,オーディオ以外の構成要素や各 要素の KLV 構造は省略して示している.OP-1b は,OP-1a と同様にビデオ/オーディオ/メタデー タが1つのファイルにパッケージ化されるため,IP ネットワーク経由での転送がシンプルに行える. OP-1a は Figure 7 (a)に示すようにビデオとオーディオのセットを 1 フレーム単位で細切れに記録 する構造であるのに対し,AVC-LongG の OP-1b では Figure 7 (b)に示すように 2 秒単位でビデオ とオーディオをセットにし,かつオーディオ情報は 2 秒間のデータがまとめて配置される.これによ り,高速サーチ時のオーディオ信号の活用が容易で,また他のファイルフォーマットへの変換が高 速に行える特徴を持つ. File Header File Body File Footer V V V V V V V V V V V V V V V V and and and and and and and and and and and and and and and and A A A A A A A A A A A A A A A A …………………………………… 1 frame Audio Audio Video 1 2 1 frame (a) OP-1a File Header File Body Video and Audio File Footer Video and Audio …………………………………….. 2sec Video Video Video Video ……………….. 1 frame Audio 1 Audio 2 2sec 2sec (b) OP-1b (AVC-LongG) Figure 7 MXF File structure of AVC-LongG OP-1b compared with OP-1a AVC-Intra Class4:4:4 及び AVC-Intra Class4K/2K ファイルも,AVC-LongG と同様に MXF OP-1b 型式で記録される.OP-1b ファイルの構造は Figure 7(b)に示した構造と同じであり,ビデ オデータとして AVC-Intra 圧縮データが格納される. 7 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j High speed production over the net with AVC-LongG & AVC-Proxy 公衆網モバイルネットワークの転送速度が高速化されるに伴い,公衆回線を使って映像素材を 伝送することでより素早い映像取材・番組制作の環境が整いつつある.しかしながら,AVC-Intra の HD 素材を伝送するためには,転送時間や運用コストの面において現状のインフラ環境はまだ 必ずしも十分とは言えない.AVC-LongG12, AVC-LongG6 と AVC-Proxy は,ネットワーク環境を 活かして,時間や場所を越えたネットワークベースの運用を実現するコーデックである. AVC-LongG12 と AVC-LongG6 は,8bit 4:2:0 サンプリングで,フル HD の画素サイズに対応し ている.いっぽう AVC-Proxy は,より高速な転送を優先するために画素をダウンサンプリングして いる.Figure 8 の棒グラフに, LongG12, LongG6, および Proxy HQ で圧縮された1分間の HD 素 材 を , Wi-Fi な い し モ バ イ ル 公 衆 網 で 伝 送 す る 場 合 の 転 送 時 間 を 秒 で 示 し て い る . AVC-LongG12, LonG6 のフル HD 素材を Wi-Fi や公衆網を経由して短時間で遠隔地のサイトに 送り,本素材として即座に活用するワークフローが可能になる.また AVC-Proxy はいっそう高速な 転送が可能なため,モバイル端末や遠隔地での内容確認やオフライン編集に適している. Transfer Time for 1-min Clip (sec) 0 25Mbps Wi-Fi 100 200 300 400 LongG12 (Full HD) LongG6 (Full HD) Proxy (sub-sampled) 28.8 14.4 3.6 360 180 2Mbps mobile 45 Faster Figure 8 Transfer time of 1-minite HD clip over wireless network AVC-Proxy は , QuickTime に 対 応 し た mov 型 式 の フ ァ イ ル と し て 記 録 さ れ る . ま た , AVC-LongG12 および AVC-LongG6 のファイルについても, MXF OP-1b 型式に加え mov 型式 を選択することも可能である,これにより, QuickTime に対応したモバイル機器や既存の編集ソフ トでのダイレクト再生が可能である. 2013 年秋に商品化されたカメラレコーダーAJ-PX5000 では,AVC-Intra,AVC-LongG50, LongG25 での記録と,AVC-LongG6 ないし AVC-Proxy のいずれかの同時記録の機能を備えてい る.これにより,AVC-Intra ないし AVC-LongG50, LongG25 などによる 4:2:2 サンプリングの記録と 並行して,ネットワーク転送用に 4:2:0 の素材を同時に生成する効率的な運用が可能となる. 8 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j Inspiring creativity with extended AVC-Intra AVC-ULTRA には,AVC-Intra にも新たなメンバー,Class200 と Class4:4:4 が加わった.Figure 9 に,1080/59.94i ないし 1080/29.97p に対するこれらのビットレートを棒グラフにして示す.なお, 参考のため HDCAM-SR 方式についても合わせて示した. AVC-Intra Class200 は, 10bit 4:2:2 サンプリングの映像を Class100 の2倍となるおよそ 200Mbps のビットレート(1080/59.94i の場合)で圧縮する.撮影する場面にかかわらず,非圧縮画 像 と 視 覚 的 に ほ ぼ同 等 の 画 質 を 確 保 で き , ハ イエ ン ドの 高 品 位 映 像 制 作 に 最 適 で あ る . EBU(European Broadcasting Union)による主観評価の結果報告(BPN 098)においても,基本画質 および第 7 世代までの繰り返し符号化画質は,非圧縮画像とほぼ同等との評価を得ている. AVC-Intra Class200 は,HDCAM-SR SQ のおよそ半分のビットレートであることから,高品位な素 材のハンドリングや運用コストを大幅に圧縮して低予算でハイエンドの制作を行うことができる. AVC-Intra Class4:4:4 は, 12bit 4:4:4 サンプリングでありながら HDCAM-SR HQ の 4:4:4 に対し ておよそ 1/4,HDCAM-SR SQ の 4:4:4 モードに対しておよそ半分となる約 200Mbps のビットレート (1080/29.97fps の場合)で映像素材を扱える.12bit 4:4:4 サンプリングにより,作者の創作意図を 正確に汲んだカラーグレーディングやクロマキーなどの多彩な映像加工に適したマスターフォーマ ットとして利用できる. さらに,Class100 においても高フレームレートへの拡張が行われ,2013 年秋に発売された AJ-PX5000 では,Class100 による 1080/60p までの撮影が可能である.また,美しいスロー映像を 撮影するためのいっそうの高フレームレート撮影機能もサポートされ,2014 年秋に発売された VARICAM HS では 240p までのハイスピード撮影を実現している. for 1920 x 1080, 59.94i or 29.97fps 12-bit 4:4:4 10-bit 4:2:2 Figure 9 Video data rate of AVC-Intra Class4:4:4, Class200 and Class100 9 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j AVC-Intra Class200, Class 100, Class 50 は,映像のフレーム毎に完結した圧縮スキームを採 用するとともに,フレーム毎のデータ量が絵柄に依存することなく一定となる CBR(Constant Bit Rate)方式を採用している.このため,特定フレームのみを入れ替える編集や加工が,ストリーム全 体を操作することなく容易に行える.フレーム毎一定の符号量の実現は,Figure 10 に示す 2 パス 方式のエンコード処理により行われる.すなわち,ビデオフレームの性質をプリエンコードしつつ分 析し,その結果によりエンコードのパラメータ制御範囲が決定される.また,人間の視覚特性を考 慮し,さらに繰り返し符号化時の劣化を最小限に抑えつつ,エンコーダーで発生する符号量を監 視しながら適応的にビット配分を最適化することで,常にフレーム毎のデータ量を一定に保ってい る. Picture Analyzer with Pre-Encoding Adaptive Bit-allocation Optimizer Encoded stream Video data Encoder Figure 10 AVC-Intra multi-pass enocder AVC-Intra の仲間に加わったより高画質な記録を今までにない運用コストで実現する Class200, Class4:4:4 により,作者の創作意図に沿ったよりクリエイティブな映像作品の制作が可能となる. AVC-ULTRA for 4K Panasonic は,2012 年 2 月に HPA (Hollywood Post Alliance) Tech Retreat において, 4K(4096 x 2160),4:4:4 サンプリング,24fps で 7.6Gbps ものビットレートを有する映像を, AVC-ULTRA によりおよそ 400Mbps に圧縮した映像を公開し,4K シネマプロダクションを経済的 な運用コストで実現する革新的コーデックの登場として高い評価をいただいた.4K による映像制 作は,今後,シネマ用途に留まらず,スポーツ収録やライブ映像,さらには放送へと,映像コンテン ツビジネスを大きく広げていく可能性を有している. Figure 11 に 4K,2K 映像に対応した AVC-ULTRA フォーマットのコーデック仕様,概略ビットレー トを示す.今後の 4K 映像アプリケーションの広がりを踏まえ,解像度はシネマ用途の 4096 x 2160 およびビデオ用途の UHD(3840 x 2160)に,またフレームレートは 24p からハイフレームレートシネ マやビデオ用途の 60p まで対応する.サンプリングについては,後処理でのカラーグレーディング に適した 12-bit 4:4:4,およびより取り扱いが容易な 10-bit 4:2:2 をサポートしている. 10 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j Approximate Video Rate (bps) Compression Format 4096x2160 3840x2160 2048x1080 File format Codec Class Color sample Bit depth Intra/ Long CBR/ VBR 23.98p 25p 59.94p 23.98p 25p 59.94p 24p 29.97p 50p 24p 29.97p 50p 4K4:4:4 4:4:4 12bit Intra VBR MXF 640M 800M 4K4:2:2 4:2:2 10bit Intra VBR MXF 320M 400M 2K4:4:4 4:4:4 12bit Intra VBR MXF 180M 220M 440M 2K4:2:2 4:2:2 10bit Intra VBR MXF 90M 110M 220M 800M VBR: Variable Bit Rate Figure 11 Outline of AVC-ULTRA for 4K/2K AVC-ULTRA の最初の 4K 対応商品として,新開発スーパー35mm CMOS センサーを搭載した デジタルシネマ用 4K カメラレコーダーVARICAM 35 が 2014 年秋に発売された.VARICAM 35 は, AVC-Intra Class 4K コーデックを搭載して 4K/UHD 映像の高画質記録を実現し,かつ AVC-Intra Class2K による 2K 記録,AVC-Intra Class200,Class100 による HD 記録機能を備えている. Expanding business opportunities with unified codec AVC-ULTRA の多彩なコーデックファミリーのエンコード/デコードをスケーラブルかつ低電力で 行うために,Panasonic は新たなコーデックエンジン LSI を開発した.LSI の外観,およびチップ写 真を Figure 12 に示す.このコーデックエンジンは,H.264/AVC の“CAVLC 4:4:4 Intra”, “High 4:2:2 Intra”, “High 10 Intra”, “High 4:2:2”など多くのプロファイルと,4K に対応してレベル 5.2 ま でサポートしている.また,AVC-ULTRA の各フォーマットに加えて,DVCPRO ファミリーの処理も 可能である.これら多くの機能が小さなシリコン上に集積され,さらに高速メモリーチップを積層し て1つの小型パッケージに収めることで,信頼性と低消費電力を実現している. この新しいコーデックエンジンにより, AVC-Intra,AVC-LongG および AVC-Proxy が統一的に 扱え,さらには HD のみならず 4K への対応も可能としている.したがって,一つの AVC-ULTRA 機器で多くのフォーマットの同時サポート,あるいはアップグレードによる拡張を提供できる.その 結果,アプリケーションやワークフロー,制作予算に応じて対象とする最適なビデオフォーマットや コーデック方式を選択することが可能となり,最小限の投資でコンテンツ制作のビジネス機会を広 げていくことができる. 11 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j Figure 12 AVC-ULTRA codec engine LSI AVC-ULTRA partnership 最初の商品導入からすでに8年が経過した AVC-Intra Class100, Class50 は,ノンリニア編集機 やサーバーの標準フォーマットの一つとなり,またソフトベンダーにより各種のツール群が整備され, 45 社以上のベンダーから 90 を超える AVC-Intra サポート製品群が供給されている. Figure 13 に各社から供給されている AVC-Intra サポート商品群を示す(2015 年1月時点).これらにより, 種々の映像制作アプリケーションに応じて最適なワークフローが現時点で構築可能となっている. Brand name Product name Brand name Product name Brand Name Product name Adobe Premiere Pro CS5 After Effects CS5 Prelude CS6 EVS Xedio Dispatcher Xedio CleanEdit XT3, XT2+, XS, XTAccess BaseLight NewAuto HIMARAYA 5.0 NL Technology SAT-AI OpenCube P2-Soft HD v2.2, ENGSoft v1.2 OpenCube HD/SD XFReader Quantel sQ Server Pablo, iQ, eQ, Qube Rimage Rimage Archiver for P2 Sakura Eiki Velocity ESX 1.2 NEXIO AMP, Volt QuiC PROGRADE Prime Edit Prunus NC Prunus Universal Player SeaChange MediaServer 1200 SGO MISTIKA v6 Imagine Products P2 Log Pro, ShotPutPro Sobey E7 v2.5 MainConcept Codec SDK Reference 2.1 SONY Vegas Pro 12 Xpri NS v5 Amberfin iCR 6 Apple Final Cut Pro 7, X FilmLight Assimilate SCRATCH 6 For-A Autodesk Smoke 2012, Flame 2012, Media Concierge LTR-120HS Grass Valley Avid Media Composer 5 NewsCutter 9 Symphony 5 AirSpeed Multi Stream Harmonic (Omneon, Rhozet) EDIUS 4 Aurora 7 K2 Summit, K2 Solo Spectrum Media Port 7000 Media Deck Pro Media Carbon Building 4 Media FORK LIVE ASSIST Calibrated Software Calibrated {Q} Cinegy Cinegy Ingest, Capture Cinegy Air, Player Dalet Dalet News Suite Brio Dayang D3 Edit 3.0, ME 1.2 Harris Hitachi Digital Rapids StreamZ /HD, Flux Drastic Technologies MediaReactor KRAYKEN Matrox MOG Raylight for Mac Raylight Ultra X.mio2 mxf SPEEDRAIL S1000 mxf SPEEDRAIL F1000 TELESTREAM DVFilm FlipFactory 7.1 Vantage,Agility 2G, Episode 6 MXF4MAC VIDEOS Neo CLIPSTER 4.5 VENICE VITEC ( FOCUS) ProxSys series Evertz Media Server AVC-Intra Codec MXF Import MXF ImEx Suite Armadia TOSHIBA DVS Vizrt Viz Media Engine 5.3 NEC Figure 13 AVC-Intra supported products by 3rd-party vendors また, AVC-LongG や AVC-Intra 4K を含めた AVC-ULTRA ファミリーのサポートもカメラレコ ーダーの商品ラインナップの充実に伴い広がってきており,2 年前は 22 社であったものが,現在は 12 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j 30 社になっている.Figure 14 に,現時点での AVC-ULTRA のパートナー企業示す(2015 年1月 時点). AVC-ULTRA をサポートする企業や製品は,今後ますます充実してくるものと期待され る. Figure 14 AVC-ULTRA partner companies AVC-ULTRA products AVC-ULTRA の起源となる AVC-Intra Class100, Class50 は,すべての P2HD 機器で対応可能 となっており,すでに8年間の実績を積んでいる.また,AVC-ULTRA ファミリーとして加わった, AVC-LongG は, 2013 年秋に発売されたカメラレコーダーAJ-PX5000,レコーダーAJ-PD500 を 皮切りに,今後新たに発売されるすべての機器に標準搭載ないしはオプション搭載される予定で あり,ハンドヘルドタイプとして初めて AJ-PX270 に AVC-ULTRA コーデックが搭載された.また, 4K 対応商品として 2014 年秋に発売されたデジタルシネマ用 4K カメラレコーダーVARICAM 35 に,AVC-Intra Class 4K が搭載された.Figure 15 に AVC-ULTRA 搭載機器の一覧を示す. これらの AVC-ULTRA 対応機器では,P2 カード同様に内蔵 RAID システムによるデータ信頼性 と P2 カードの約2倍の高速転送性能を持ちつつ,SD カードサイズにまで小型化された microP2 カ ードのスロットを標準で装備する.microP2 カードは,CPS (Content Protection System) を備えて おり,撮影された貴重なコンテンツ資産を不用意に漏洩させる心配がない.かつ,P2 カードと比べ ておよそ 1/2 の価格帯のため,AVC-ULTRA の低いビットレートによる経済性と合わせていっそう 運用コストを下げることができる. また,新たに開発された express P2 カードは,新 VARICAM シリ ーズでのマスターグレード 4K 映像記録,ハイフレームレート VFR 収録映像(HD 最大 240fps)記録 に対応し,大容量化(256GB)と高速転送を実現している.Figure 16 に microP2 カード,express P2 カードの外観を示す. 13 AVC-ULTRA Overview, rev 2.0 j AVC-ULTRA が搭載されるカメラレコーダー,レコーダーや,今後ますます充実していくサーバ ー,編集機,各種ツール群などの対応製品により,アプリケーションに応じて自在なワークフローを 構築し,より低い運用コスト,ネットワークで時間・場所の制約を越えた新たな制作形態,創作意図 を思い通り反映した美しい映像作品制作を可能とし,映像制作に携わる企業・クリエーターのビジ ネス機会を一層大きく広げていく. AJ-PX5000 AJ-PD500 AJ-PX800 AJ-PX270 VARICAM 35 AJ-PG50 VARICAM HS Figure 15 AVC-ULTRA products microP2 card expressP2 card Figure 16 microP2 card and expressP2 card 14
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