Vol.279 平成 27 年 2 月 17 日 ヤフー事件の東京

Vol.279 平成 27 年 2 月 17 日
ヤフー事件の東京高裁判決に思う~地裁判決との違い
理 ・不 自 然 である場 合 、②組 織 再 編 成 に係 る行 為
の一 部 が、組 織 再 編 成 に係 る個 別 規 定 の要 件 を形
ヤフー事 件 とは、ヤフーにその株 式 の 100%を取
式 的 には充 足 し、当 該 行 為 を含 む一 連 の組 織 再 編
得 された(本 件 買 収 )S 社 が、その後 わずか 1 カ月 で
成 に係 る税 負 担 を減 少 させる効 果 を有 するものの、
ヤフーに合 併 され(本 件 合 併 )、それが、共 同 で事 業
当 該 効 果 を容 認 することが、組 織 再 編 成 税 制 の趣
を営 むための適 格 合 併 で S 社 の法 人 税 法 上 の欠 損
旨 ・目 的 又 は当 該 個 別 規 定 の趣 旨 ・目 的 に反 する
金 をヤフーが引 き継 ぐ要 件 (同 法 57 条 3 項 )を満 た
ことが明 らかであるものの二 つがある旨 判 示 していま
すとして、合 併 後 のヤフーが S 社 の合 併 前 の欠 損 金
す。
を引 継 いだところ、税 務 署 長 が同 法 132 条 の 2 によ
地 裁 判 決 では、A 氏 の副 社 長 就 任 を含 む、合 併
り その 引 継 ぎを 否 認 し たもので 、 そ の 当 否 が 税 務 訴
に 至 る「 具 体 的 な 事 情 」を 検 討 し 、 総 合 勘 案 し て A
訟 で争 われました。東 京 地 裁 判 決 (平 26.3.18)、同
氏 の副 社 長 就 任 は 特 定 役 員 引 継 要 件 を 形 式 的 に
高 裁 判 決 (平 26.11.5)のいずれもが国 の否 認 を是 と
充 足 するものの、本 件 合 併 は、その実 質 において、
しました。
共 同 で 事 業 を 営 むた め のも の とは い えず 、 単 なる 資
本 件 合 併 では、欠 損 金 の引 継 ぎのための個 別 要
産 の売 買 にとどまると評 価 することが妥 当 と判 断 し、
件 の一 つである特 定 役 員 引 継 要 件 (当 時 の同 法 施
特 定 役 員 引 継 要 件 を形 式 的 に満 たすだけで欠 損
行 令 112 条 7 項 5 号 。下 記 2)に関 し、ヤフーと S
金 の引 継 ぎ=税 負 担 の減 少 効 果 を容 認 することは、
社 の 間 に 支 配 関 係 の 生 じる 直 前 に ヤフー の 当 時 の
同 要 件 を定 めた法 57 条 3 項 及 び法 令 112 条 7 項
社 長 A 氏 が S 社 の副 社 長 (非 常 勤 ) に就 任 した行
5 号 (当 時 )の趣 旨 ・目 的 (=合 併 後 の共 同 事 業 性 )に
為 (A 氏 の副 社 長 就 任 )が行 われ、特 定 役 員 引 継 要
反 することが明 らか、として A 氏 の副 社 長 就 任 をその
件 が 充 足 さ れ る 形 に な って い ま し た が 、 税 務 署 長 に
まま認 めて欠 損 金 の引 継 ぎを認 め ることは上 記 ②の
より、A 氏 の副 社 長 就 任 が、法 132 条 の 2 の「法 人
ケースに当 たり否 認 できると判 断 しました。
税 の負 担 を不 当 に減 少 させる結 果 となると認 められ
一 方 、高 裁 判 決 では、地 裁 が認 定 した「具 体 的 な
る」行 為 に当 たるとされて否 認 され、S 社 の欠 損 金 を
事 情 」に拠 りつつ、本 件 合 併 の実 体 を「単 なる資 産
ヤフーの欠 損 金 とみなして同 社 の損 金 の額 に算 入
の売 買 」と 評 するのではなく、 A 氏 の副 社 長 就 任 に
する計 算 が否 認 されたものです。
つき、ヤフーの法 人 税 の負 担 を減 少 させるという税
2.「特 定 役 員 引 継 要 件 」とは
務 上 の 効 果 を生 じさ せ ること 以 外 に、 そ の 事 業 上 の
合 併 法 人 と被 合 併 法 人 との間 に支 配 関 係 が生 じ
必 要 は認 められず、経 済 的 行 動 として不 自 然 ・不 合
る前 から 被 合 併 法 人 の 社 長 、 副 社 長 等 の 経 営 者 ク
理 だと、その真 の目 的 に照 準 を合 わせた 認 定 をしま
ラスの役 員 (これを「特 定 役 員 」といい、A 氏 は S 社 の
した。小 職 には、その認 定 により、A 氏 の副 社 長 就
副 社 長 となったのでこれに当 たります。) となってい
任 の上 記 ② への該 当 性 が一 層 明 確 になっ たと思 わ
る者 が、 合 併 後 の合 併 法 人 でも、 同 じく 特 定 役 員 と
れ、その意 味 で地 裁 判 決 より厳 しい判 決 になってい
して残 ると見 込 まれることが特 定 役 員 引 継 要 件 です。 ると思 われます。高 裁 のこの積 極 的 な認 定 は、本 件
その要 件 が満 たされている合 併 であれば、双 方 の経
の一 連 の行 為 に深 く関 与 している関 係 者 のメールの
営 者 が共 同 して合 併 後 の事 業 に参 画 し、合 併 後 も
「税 務 ストラクチャー上 の理 由 で A 氏 又 は B 氏 に取
共 同 で事 業 が営 まれているとみることができ、被 合 併
締 役 に入 っていただく必 要 があるとのことで・・」との
法 人 の未 処 理 欠 損 金 の引 継 ぎを認 めても課 税 上 の
記 述 、及 び、本 件 買 収 の対 価 である 450 億 円 のうち、
弊 害 が少 ないと考 え、欠 損 金 の引 継 ぎを認 める要
S 社 の事 業 自 体 の価 値 は 250 億 円 程 度 であり、他
件 の一 つとされました。本 件 合 併 では、 S 社 の役 員
の 200 億 円 は S 社 の欠 損 金 の引 継 ぎによる法 人 税
は A 氏 を除 く全 員 が合 併 の際 に退 任 したので、A 氏
の節 税 効 果 によるものとして両 者 が明 確 に認 識 して
の副 社 長 就 任 がなければ、特 定 役 員 引 継 要 件 を満
いたことを、A 氏 の副 社 長 就 任 の動 機 ・真 の目 的 を
たせませんでした。
語 るものとして大 きく評 価 したことによると思 われま
3.高 裁 の判 断 の特 長
す。
上 記 地 裁 判 決 も高 裁 判 決 も、法 132 条 の 2 によ
り組 織 再 編 成 に係 る行 為 又 は計 算 の否 認 が認 めら
れるケースには、①取 引 が経 済 的 取 引 として不 合
(提 供 :税 理 士 法 人 タクトコンサルティング)
1.はじめに
本資料は当社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成されていますが、明示、暗示にかかわらず内容の正確
性、あるいは完全性については保証するものではありません。また、発行日現在の法令・関係規制等をもとに作成しておりますので、
その後の改正等にご注意ください。なお、本資料は有価証券の取引その他の取引の勧誘を目的としたものではありません。
金融商品取引法第 37 条(広告等の規制)にかかる留意事項
本資料は、法制度/税務、自社株評価、相続/事業承継、株主対策/資本政策、オファリング、
M&A/IPO、年金/保険等の諸制度に関する紹介や解説、また、これに関連するスキーム等の紹介
や解説、及びその効果等に関する説明・検証等を行ったものであり、金融商品の取引その他の取
引の勧誘を目的とした金融商品に関する説明資料ではありません。記載の内容に従って、お客様
が実際にお取引をされた場合や実務を遂行された場合の手数料、報酬、費用、その他対価はお
客様のご負担となります。なお、SMBC日興証券株式会社(以下「弊社」といいます。)がご案内す
る商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等をご負担いただく場合があります。例えば、
店舗における国内の金融商品取引所に上場する株式等(売買単位未満株式を除く。)の場合は約
定代金に対して最大 1.242%(ただし、最低手数料 5,400 円)の委託手数料をお支払いいただき
ます。投資信託の場合は銘柄ごとに設定された各種手数料等(直接的費用として、最大 4.32%の
申込手数料、最大 4.5%の換金手数料又は信託財産留保額、間接的費用として、最大年率
5.61%の信託報酬(又は運用管理費用)及びその他の費用等)をお支払いいただきます。債券、
株式等を募集、売出し等又は相対取引により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただ
きます(債券の場合、購入対価に別途、経過利息をお支払いいただく場合があります。)。また、外
貨建ての商品の場合、円貨と外貨を交換、又は異なる外貨間での交換をする際には外国為替市
場の動向に応じて弊社が決定した為替レートによるものとします。上記手数料等のうち、消費税が
課せられるものについては、消費税分を含む料率又は金額を記載しております。
本資料は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手した情報に基づいて作成されています
が、明示、黙示に関わらず内容の正確性あるいは完全性について保証するものではありません。
また、別段の表示のない限り、その作成時点において施行されている法令に基づき作成したもの
であり、将来、法令の解釈が変更されたり、制度の改正や新たな法令の施行等がなされる可能性
もございます。さらに、本資料に記載の内容は、一般的な事項を記載したものに過ぎないため、お
客様を取り巻くすべての状況に適合してその効果等が発揮されるものではありません。このため、
本資料に記載の内容に従って、お客様が実際に取引をされた場合や実務を遂行された場合、そ
の期待される効果等が得られないリスクもございます。なお、金融商品の取引その他の取引を
行っていただく場合には、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変
動等及び有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む。)の悪化等それらに関する外
部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)、又は元本を超過す
る損失を生ずるおそれ(元本超過損リスク)があります。なお、信用取引又はデリバティブ取引等
(以下「デリバティブ取引等」といいます。)を行う場合は、デリバティブ取引等の額が当該デリバ
ティブ取引等についてお客様の差入れた委託保証金又は証拠金の額(以下「委託保証金等の額」
といいます。)を上回る場合があると共に、対象となる有価証券の価格又は指標等の変動により
損失の額がお客様の差入れた委託保証金等の額を上回るおそれ(元本超過損リスク)があります。
また、店頭デリバティブ取引については、弊社が表示する金融商品の売付けの価格と買付けの価
格に差がある場合があります。上記の手数料等及びリスク等は商品毎に異なりますので、当該商
品等の契約締結前交付書面や目論見書又はお客様向け資料等をよくお読みください。なお、目論
見書等のお問い合わせは弊社各部店までお願いいたします。また、実際の取引等をご検討の際
には、個別の提案書等をご覧いただいた上で、今後の制度改正の動きに加え、具体的な実務動
向や法解釈の動き、及びお客様の個別の状況等に十分ご留意いただき、所轄の税務署や、弁護
士、公認会計士、税理士等の専門家にご相談の上、お客様の最終判断をもって行っていただきま
すよう、お願い申し上げます。
商 号 等: SMBC日興証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2251号
加 入 協 会: 日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、
一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会
(2014 年12月1日現在)