国際地域学部国際観光学科卒業論文(2013 年 12 月提出)要旨 指導教員:古屋秀樹教授 地方鉄道の収益改善に関する研究 ~鉄道業経営効率化と関連事業拡大について~ 1820100228 山田椋平 <論文構成> 1章 はじめに 3章 鉄道業経営改善案 1-1 問題意識 3-1 上下分離方式の概要 1-2 先行研究 3-2 上下分離方式導入試算 1-3 本研究の目的 3-3 運賃値上げ試算 2章 地方鉄道の現状と経営状況 4章 関連事業の展開 2-1 損益計算書から見る地方鉄道の性質 4-1 各社関連事業の事例 2-2 沿線地域の人口減少 4-2 わたらせ渓谷鐵道の経営改革案 2-3 モータリゼーションの進行 2-4 鉄道の公共性について 5章 おわりに 5-1 まとめ 5-2 今後の課題 <要旨> 1章 はじめに 我が国の鉄道は、国内の重要な交通手段として整備され、全国各地に路線網を張りめぐ らすに至った。都市内輸送、都市間輸送では重要な役割を担う鉄道ではあるが、輸送密度 の低い地方では、少子高齢化による沿線人口の減少、モータリゼーションの進行に伴う鉄 道利用者の自家用車への転換等により旅客輸送人員が減少し続けており、収益が伸びず厳 しい経営を強いられているところが多い。鉄道事業者も営利団体であるが故、不採算な事 業は廃するのが当然な考えではあるが、鉄道のもつ公共性は非常に高く、沿線住民の利便 性を考えるとそれを奨励することもできない。 そのような中、上下分離方式導入による有効な費用低減策や収益増加策を打つことで、 効率的な経営を行っている会社や、鉄道業では赤字 でも関連事業で収益をあげ、会社全体 で利益を出している会社も存在しており、これらの事例を用いて試算を行い、地方鉄道の 収益改善につながる考察をする。 2章 地方鉄道の現状と経営状況 本研究では、筆者の生活圏内である首都圏の地方私鉄のうち、関連事業に特徴のある5 社と、関連事業を幅広く展開する JR 九州の計6社を対象とし、各会社の損益計算書 や『鉄 道統計年報』において公表されている様々な指標を用いて、各会社の財務状況等を図示・ 比較した上で、それぞれの会社を立て直すための具体案として、上下分離方式 導入試算、 運賃値上げ試算を行い、鉄道業の経営改善の可能性を探った。また、比較各社の関連事業 の具体例を示し、最後は鉄道業・関連事業共に赤字で経営困難なわたらせ渓谷鐵道の経営 再建について考察した。 各社の現在の経営状況として、鉄道業単独で利益をあげるのは、 ほとんどが赤字経営で あり、苦しい状況に置かれている。鉄道収益の内訳では定期外の収益が高いが、定期収入 の割合が多いほうが経営安定していると言える。乗客数は旅客運輸収入と直接関係してく るが、地方においては少子高齢化やモータリゼーションの進行により減少傾向にあり、今 後定期の乗客を確保するのは難しい。 3章 鉄道業経営改善案 鉄道業の経営改善案として、上下分離方式導入試算結果からはすべての会社で、負担す る費用が大幅に軽減され、経営効率が良くなることを示した。また、運賃の値上 げも両立 することによって、今回取り上げた全社とも、黒字に転換することを明らかにした。 0 50 銚子電鉄 いすみ鉄道 わたらせ渓谷鐵道 100 150 200 250 300 現営業係数 値上げ時営業係数 車両保存+値上げ時営業係数 完全分離+値上げ時営業係数 図 3-5 運賃値上げ、上下分離方式導入時の営業係数 <出所>筆者作成 4章 関連事業の展開 関連事業は、JR 九州や富士急行のように、資金と環境が整っていれば、大規模に展開 し大幅な利益を得る可能性がある。鉄道業を派手に展開することで 、会社全体で「ブラン ド力」を持ち、関連事業が展開しやすくなることもある。逆に、資金が少ない銚子電鉄や いすみ鉄道において展開している食品や物品の製造販売業は、比較的少ない費用で事業を 展開でき利益を上げやすく、鉄道事業での赤字を補填できる可能性は高い。一見鉄道と全 く関係のないような事業でも、相乗効果は期待できることが明らかになった。 5章 おわりに 経営改善の案を挙げてきたが、実際にこのような取り組みを行うのは簡単ではない。し かし、鉄道は単なる移動手段ではなくその地域の重要な資源であるため、今後も地方鉄道 経営改善についてよく考えていく必要がある。 主要参考文献 ・国土交通省監修(各年)『鉄道統計年報』政府資料等普及調査会・電気車研究会 ・国土交通省監修(各年)『数字で見る鉄道』一般財団法人運輸政策研究機構
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