真の世界都市を目指して

講座番号2番
第1部(9:30~11:00)
真の世界都市を目指して
~東京の課題と解決のヒント~
森記念財団
主任研究員 園田 康貴氏
研 究 員 大和 則夫氏
<講師プロフィール>
園田 康貴(そのだ やすたか)さん
1994 年森ビル㈱に入社。2000 年より森記念財団都市整備研
究所に勤務。主に「東京中心部の市街地・都市活動の実態に
関する調査研究」
、
「ニューヨーク・東京比較調査研究」を担
当。
大和 則夫(やまとのりお)さん
2000 年森ビル株式会社入社。都市開発事業本部、六本木ヒル
ズ運営本部、経営企画部に従事。2008 年、ロンドン・スクー
ル・オブ・エコノミクスにて修士号(MSc)を取得。
2014 年より森記念財団都市戦略研究所に勤務。
東京、さらなる飛躍の必要性
東京は、森記念財団による世界の都市総合力ランキングでロンドン、ニューヨーク、パリに続き、4
位です。しかし、近年、東京は、シンガポールやソウル、香港、北京、上海といったアジアの都市に
追い上げられ、国際競争力に陰りが見え始めています。
シンガポールは国際会議の開催数が世界一で、文化・交流の分野ではアジアをリードしています。
中国や ASEAN の諸都市の成長は、近年はやや鈍化してはいるものの、それでもやはり驚異的なス
ピードで成長を続けています。
東京が国際的な都市となっていくた
めには、ニューヨーク、ロンドン、パリと
どのような差があるのでしょうか?
また、東京オリンピックを飛躍のチャ
ンスにすることができるのでしょうか?
東京の飛躍への課題
東京には空の玄関口として成田と羽田の 2 つの大きな空港があります。しかし、成田国際空港は
都心から遠く、ビジネスマンなど多忙な人には利便性が高いとは言えません。また、成田も羽田も共
に混雑している空港であるため、グローバル企業のトップビジネスマンなどが使用するビジネスジェ
ットの発着枠が両空港あわせて 8 便/日しかありません。ニューヨークにはビジネスジェット専用の空
港があり、1日何百機と受け入れています。
それだけでなく、東京の国際線の本数はロンドンの空港と比較して、半分以下なのです。また、パ
リも欧米諸国と結ぶ高速鉄道が発達しています。
東京はひとたび国内に入ると交通網は充実していても、国際都市に重要な国際ネットワークの能
力が大きく欠如しているのです。
また、東京には大規模な国際会議や、見本市を開くことの出来るコンベンションセンターやそれに
参加するために世界中から集まる多く人々を収容するホテル、娯楽施設を含む統合型リゾート(IR)
がないため、国内で国際見本市に出展できず、海外に出て国際見本市に出展せざるを得ない国内
企業があるという信じられない事態も起きつつあります。
また、自由の女神やエッフェル塔という世界中の人が知る第一級の観光スポットが少なく、それに
次ぐ観光スポットをアピールしきれていないというのも東京の課題です。
東京、飛躍への原動力
ここまでは悪い面ばかり書いてきましたが、東京は悪いことばかりではありません。むしろ良い面の
ほうがはるかに多いのです。
シンガポールや香港、上海などと比べると東京には、充実した国内ネットワークがあり、北は北海
道から始まり、京都、大阪、奈良、南は九州、沖縄と日本全土にあふれる魅力を容易に訪れることが
できます。
そして、ごみの少ないきれいな街や、治安の良さなど環境面の強さ、世界文化遺産に登録された
和食など魅力は山ほどあります。
それだけでなく、世界で類を見ない程の大きな経済圏の魅力もあります。数千万の労働力と消費
力、想像力、発信力は計り知れないものがあります。
これが2027年のリニア中央新幹線の開通により工業の集積地、中京圏と融合したときの力は考
えられないものがあるように思います。
東京の飛躍への起爆剤
ロンドンは、2012年のオリンピックの開催を機に競争力を増し、それまで長年の間世界一に君臨
した都市ニューヨークを2012年に抜き去り、差を広げつつあります。
ロンドンではオリンピックを機にそれまで手付かずで、開発が遅れていた貧困街が再開発され、ス
タジアムや選手村、交通などが整備されたことで、環境や治安が向上し、周囲の開発も促進され、観
光客が増えるなど様々な効果がありました。
このようにオリンピックなどの国際的なイベントは、目標時期が明確になるため、これまでなかなか
前に進んでこなかったような都市開発を、一気に進めていく起爆剤としての役割があります。
当日は、安倍政権の成長戦略も進み、国家戦略特区が設置され、リニア新幹線も現実となりつつあ
る今、東京の課題解決の先進事例や、最新の世界の都市総合力ランキングを披露します!!
担当 J3A・森 裕一郎 J3G・楢木 悠斗 J3Ⅰ・今村 翔太(文責)