うわっ…私の会社、UX低すぎ…?

IN02 社内情報システムとUXデザイン 研究グループ
要旨
【概要】
市場競争の激しいコンシューマ向けのウェブサイトは、ユーザーの様々なニーズを満
たすように日々進化している。そこではユーザーインターフェース(UI)やインフォメ
ーションアーキテクト(IA)が整っていることを当然とし、更なる+α(真の満足)を
ユーザーに提供するための取り組みがなされている。一方で、社内システムの現状はど
うだろうか。ユーザーは真の満足を得られているのだろうか。
近年コンシューマ向けウェブサイトにおいて取り入れられている、ユーザーがポジテ
ィブな体験・満足を得られるようにと提唱されたユーザーエクスペリエンス(以降 UX)
という概念がある。本研究グループでは、社内システムにその概念を取り入れることで、
ユーザーに真の満足を提供できるかを検証する。
1
UX とは何か
1.1
UX とは
一般的に「ユーザー体験」と訳され、ユーザーが製品やサービスを利用した際
に得られる「体験」に焦点を当てた概念である。
1.2
UX の定義
UX について研究しているニールセンノーマングループでは、以下のように定
義している。
① いらいらや面倒なしに顧客のニーズを満足させる
② 製品に所有する喜びや使用する喜びをもたらす簡潔さと優雅さがある
1.3
UX デザインとは
目的達成の手段のみに主観をおかず、達成するまでのユーザーの体験に主観を
置いてデザインする。つまり、一連の体験から満足を得られるように「体験全体
をデザイン」することである。
2
UX デザインの活躍
身近な製品やサービス、コンシューマ向けウェブサイトといった、日頃我々が利用
している製品やサービスは日々使いやすく進化し続けている。
例えば、Apple の iPhone や Microsoft の Office などの設計・開発は、各社が設定し
た UX ガイドラインに沿って実施されており、UX デザインを取り入れることで高い効果
が発揮されることを実証している。
一方で社内システムではどうだろうか。
(注)
「Microsoft」および「Office」は米国 Microsoft Corporation の米国およ
びその他の国における商標または登録商標です。
(注)
「Apple」および「iPhone」 は、Apple Inc.の米国およびその他の国におけ
る商標または登録商標です。
2014 Beacon Users' Group
IN02 社内情報システムとUXデザイン 研究グループ
要旨
3
社内システムの現状
社内システムでは、ユーザーの満足を得られているとは言えない現状である。では、
なぜこのような現状になっているのだろうか。
社内システム開発では、ユーザーの声を直接システムに反映することが多い。しか
しユーザーの声は、自身の知識や経験から分析した要望にすぎない。真の満足を得る
ためには、ユーザーの声だけではなく、ユーザーの体験を理解し分析することが重要
ではないかと考えた。そこで、本研究グループではユーザーの体験全体を考える UX デ
ザインを社内システムに取り入れる方法を検討した。
4
社内システムに UX デザインを取り入れるには
UX デザインの手法として紹介されている実践事例は、コンシューマ向けウェブサイ
トやサービスを設計する際のものが多く、社内システムでの事例はあまり見られない。
この理由は社内システムに以下のような特徴があるからだと考える。
① 全てのユーザーの業務を考慮する必要がある
② ユーザーが社内業務を行うにあたり、利用するシステムを選択できない
③ “①、②”を背景にシステムや運用変更の業務影響を考慮しなければならない
④ システム開発のための予算や期間がシビアである
これらを踏まえることで、社内システムに UX デザインを導入することができると仮
定して、実践と考察を行った。
5
UX デザイン実践の切り口
本研究グループのメンバーの一人が実際に行っている勤退管理業務を題材とし、UX
デザインに用いられる手法(本研究では「ペルソナ手法」と「ストーリーマッピング」)
を、4 章にて述べた①~④の特徴を考慮し、本研究グループ独自の視点で試みた。
6
結果と考察
6.1
結果
「ペルソナ手法」と「ストーリーマッピング」を行った結果、ユーザーの声に
捉われず業務全体を俯瞰して、より真の満足に近い提案を行うことができた。
6.2
考察
UX デザインを用いて業務全体のプロセスを把握し、社内システム独自の特徴
を常に意識することで、このような結果が得られた。以上のことから、社内シ
ステムに UX を取りいれることで、ユーザーに真の満足を提供することができる
と考える。
2014 Beacon Users' Group