重度・複障害児のアセスメントチェックリスト 概要・使い方

広島県立福山特別支援学校
第1章
重度・重複障害児のアセスメントチェックリストの概要
目的
重度・重複障害児の認知及びコミュニケーションに関する力
構 成 等
のアセスメントを行う
対象発達年齢
1ヶ月~18 ヶ月
分野・領域
○コミュニケーション :
「要求表出」「人間関係」
○認知 : 「聴覚・言語」「触覚等」
「視覚等」
補助項目
1
「身体の動き等」
目的
アセスメントとは,「個人の状態像を理解し,必要
自立活動の6区分の中に取り上げられているコミ
な支援を考えたり,将来の行動を予測したり,支援の
ュニケーションに関する力は,学校生活全般において
成果を調べること」といわれています。
特に重要なもので,児童生徒が将来よりよく生きてい
くために大切な力です。しかし,重度・重複障害児の
特別支援教育においては,重度・重複障害の児童生
多くは,身体の動きで自分の意思や気持ちを表出する
徒(以下,重度・重複障害児)の指導を行っていく際
ことに大きな制限があり,また知的障害・視覚障害・
に,個々の児童生徒の実態から教育的ニーズを的確にと
聴覚障害などの影響によって周囲の情報を受け取る
らえ,指導目標を設定し,適切な指導内容を定めていく
ことにも困難さがあります。さらに,言語でのコミュ
必要があります。そのため的確
ニケーションが困難である児童生徒が多く,児童生徒
なアセスメントは,目標を設定
し指導を行っていく上で,根幹
を成すとても重要な位置にあ
的確なアセスメント
↓
指導目標の設定
↓
適切な指導内容
ります。
の伝えたい気持ちを教員が読み取ることが難しい場
合もあります。このように,多くの児童生徒はコミュ
ニケーションに大きな課題を抱えているため,学校教
育の中でコミュニケーションに焦点を当てた指導は
しかしながら,実際の重度・重複障害児のアセスメント
重要なこととなります。そして,その力を育てるため
では,方法が関係者からの聞き取りや行動観察に大きく
には,児童生徒の認知の力を伸ばすことが必要である
依存している傾向があります。
と考えられます。
そこで,的確なアセスメントを行うためには,心理・
以上のような状況から,聞き取りや行動観察によるア
発達検査等も併せて活用していく方法が推奨されてい
セスメントの際に,可能な限り客観的に実態が把握できる
ます。しかし,既存の心理・発達検査,チェックリス
ことを目指して,重度・重複障害児を対象とした新たな
ト等では,重度・重複障害児の多様な実態を包括的に
チェックリストを作成しました(平成 26 年 3 月)。こ
把握できるものが非常に少ないという状況がありま
の度,その改訂を行い ver2.0 の作成を行いました。
した。理由としては,発達年齢 18 ヶ月未満に焦点を
当てて研究された内容が極めて少ないことと,肢体不
自由や視覚・聴覚障害を有しているとこれらから発生
2 特色
する制限によりチェックできる項目が限られてしま
重度・重複障害児のアセスメントチェックリスト
うためです。そのため,重度・重複障害児が多く在籍
(以下,本リスト)は指導の手掛かりとして日々の取
している本校においては,指導目標を設定するにあた
組の中で活用できるものを目指しています。重度・重
って既存の心理・発達検査等を活用することに難しさ
複障害児の教育を行っていく上で重要な領域である
があると感じていました。
コミュニケーションに関する力の発達と,コミュニケ
広島県立福山特別支援学校
ーションに関する力の基礎となる認知力の発達の二
う,課題を整理するためのシートを改良しました。
点に焦点を当てました。
本校のような肢体不自由学校では発達の初期の段
「2
特色」の最初でも述べましたが,このように
階にある児童生徒が多いため,その実態を細やかに把
して完成した本リストは標準テストではなく,アセス
握できるよう,18 ヶ月未満に焦点を当て項目数の充実
メント及び指導の手掛かりとなるように考えたもの
を図りました。また,重度・重複障害児の発達のスピ
です。重度・重複障害児の教育が少しでも充実したも
ードはゆっくりで,1 年間の指導を経ても変化が小さ
のにつながっていくことを願っています。
いことがあります。そのため児童生徒の小さな発達を
確実に評価できるよう,チェックの方式は四段階評価
3
内容
としました。
次に,本リストの作成過程について述べます。まず,
本リストは認知・コミュニケーションの力を細やか
重度・重複障害児の発達に関する文献研究を行いまし
にアセスメントするためのリストです。領域としてコ
た。特に認知・コミュニケーションに関するものを中
ミュニケーション分野を中心とした「要求表出」「人
心にアセスメントの手法を調べ,実際に試行・分析を
間関係」と,認知分野を中心とした「聴覚・言語」
「触
行いました。そして文献研究で使用した心理・発達検
覚等」
「視覚等」の 5 領域があります。5 領域の項目数
査,チェックリストの中から本リスト作成の目的に沿
は,総数で 310 項目です。
ったものを精選・リストアップし,内容や発達段階ご
本リストの中では領域ごとの発達の流れを分かり
とに整理しました。その後,本リストの目的に沿うよ
やすくするため,領域をまたいで重複している項目が
うチェック項目の修正・新規追加を行いました。
一部あります。(下記の例を参照)
内容の精選・修正。
新規項目の追加。
試記入・修正。
領域ごとに分類。
発達段階を基準に整理。
先行文献より関連項目を
リストアップしカード化。
約700項目。
例:人間関係 47 聴覚・言語 39
「ちょうだい」の言葉掛けに応じて,手に持っている
物を渡す。
また,幅広く児童生徒の表現をアセスメントするた
めに抽象的な表現をした項目を設定すると同時に,学
校で表出しやすい具体的な行動を項目としています。
(一部)
作成の流れ
その際には,項目の意図を明確にもちつつも,次の
点に留意しながら,重度の知的障害・視覚障害・肢体
不自由による制限があっても評価がしやすい項目を
例:触覚等 22「簡単な玩具を繰り返し使い続ける。
」
具体化
触覚等 23「吊るされている玩具に繰
り返し触れることを好む。
」
重視しました。
・より細かいステップ(発達段階)
昨年 7 月に改定した Ver1.1 までは「感覚・認知」
・初期の感覚の項目
の領域にまとめられていた項目を Ver2.0(本リスト)
・視覚,運動機能に依存しない項目
より「触覚等」と「視覚等」の二つの領域に分けまし
作成途中では数回の校内研修を行い,より使用しや
た。視覚の発達と手の発達は並行して考えることが多
すいように本校教職員から意見収集を行いました。こ
いのですが,重度・重複障児の中には視覚障害を有す
れらの作業を通して発達初期のコミュニケーション
る児童生徒も多く,日常生活場面では視覚を十分に活
の課題をより細かく示すことができました。
用できていないことが少なくありません。そのため,
改訂版である Ver2.0 では,認知力の発達がよりわ
Ver2.0 では視覚を中心した認知発達と触覚を中心と
かりやすくなるように改良を行いました。また,リス
した認知発達を発達初期段階のみ分けて考えていま
トより得られた実態を日々の取組につなげやすいよ
す。Ⅳ段階までは視覚を活用しなくても達成しやすい
広島県立福山特別支援学校
項目を触覚等の領域にまとめました。そして,目と手
また,身体の動き等を簡易的にアセスメントするた
の協応が求められてくるⅤ段階以降は,触覚等の発達
めに,補助項目として「健康の状態」
「上肢の操作」
「身
の続きは視覚等に合わせて考えるようにしています。
以下に関連図を示します。
体の操作」「構音機能」についての項目を設定してい
ます。これらの身体・機能面の項目数は 34 項目あり
ます。
身体の動き等
触覚等
視覚等
健康の状態
日々の覚醒や体調等について。
上肢の操作
触覚等と視覚等の領域の関連図
5 領域の各段階に,その段階の特徴的な内容をキー
ワードとして設定しました。このキーワードは発達の
ポイントともなるものです。以下に 5 領域の主な内容
とキーワードを記載します。
上肢の操作性について。
身体の操作
粗大運動など身体の操作について。
構音機能
発声,喃語等の構音機能面について。
5領域の主な内容,キーワード
5 領域に振り分けた項目は,さらに発達段階ごとに
コミュニケーション
分けています。段階は以下の表を基準に分けています。
要求表出 要求表出の基礎となる力から言葉で
の要求までについての領域。
キーワード…「快不快の分化」
「期待反応」
「要求表
出」
「大人の注意を引く」
「指さし要求」等
人間関係 支援者との人間関係や社会性につい
各段階の中の項目は,おおまかに発達段階・類似項
ての領域。
目ごとに並べていますが,発達段階の把握は段階での
キーワード…「人の働きかけによる刺激」「人への
まとまりを目安にしてください。
注意」
「共感性の芽生え」
「社会性の芽生え」等
認知
聴覚・言語 聴覚・言語面での認知・理解・応答
についての領域。
これらのチェック項目は,あくまで一般的な発達段
階に沿って並べているため,生活年齢や障害の状態に
よって発達の偏りがある場合は必ずしもこれに当て
はまるわけではありません。
キーワード…「音への注意」
「特定のフレーズへの
気付き」
「言葉の理解」
「言葉の活用」等
触覚等 主に触覚に関することで,物の認知や簡
単な操作についての領域。
本リストにはチェックした内容をまとめるための
課題整理シートがあります。シートには「指導内容記
入表」と「コミュニケーションに関するプロフィール
キーワード…「外界への気づき(皮膚感覚…)
」
「物
表」の二つの表があります。指導内容記入表は本リス
の単純な操作」
「因果関係の理解」等
トのチェック項目の中で児童生徒の重要な課題とし
視覚等 主に見ることの発達や目と手の協応の発
て選んだ項目をもとにして,個々の児童生徒の実態に
達についての領域。
合わせて具体的な指導目標を考えるためのものです。
キーワード…「注視」「追視」「リーチング」「視覚
また,プロフィール表では児童生徒の認知・コミュニ
的変化への興味」
「目と手の協応」
「数量概念」等
ケーションに関する力の全体像をわかりやすくする
広島県立福山特別支援学校
とともに,指導のポイントとなるキーワードを整理す
いて研究する必要があります。もし,このリストを用
るために活用します。
いてアセスメントをされたみなさんの中から事例報
この課題整理シートの記入を行うことは,本リスト
で行った実態把握を実際の児童生徒の指導につなげ
告をいただければ,より多くの事例が集まりこのリス
トの精度が高まります。ご協力お願いします。
ていくための大切なプロセスとなります。
4
活用のポイント
6 引用・参考文献
本リストは児童生徒の実態にせまり,さらに学習課
題のヒントを得るためのツールとなることを目指し
ています。より有効に活用していくポイントとして以
下の 2 点があげられます。
○複数の支援者でアセスメントする
重度・重複障害児の評価は,児童生徒の行動を支
援者が解釈せざるを得ないため,支援者間に評価の
ずれが生じることが多くあります。本リストを活用
し,共通の視点で児童生徒のことを考えることは,
支援者間での実態の共通理解をもつことにつなが
ります。このことを通してより客観的な実態把握が
可能となるでしょう。
○時期を変えて複数回アセスメントする
一定期間を置いて再度アセスメントすることで
児童生徒の変化をとらえたり,以前把握した実態を
振り返ったりできます。特に重度・重複障害児の指
導経験が浅い支援者は数ヶ月単位で見直すことで,
不明確だった点が明確になることがあります。また,
評価した行動の再現性が低いことに気付き,評価や
目標値を当初のものからより実態に沿ったものに
修正する必要がでてくることもあります。
5
今後の展望
本リストの項目に対応させた指導例集として「自立
活動の手引き」を現在作成しています。本リストでの
アセスメントをより実践に生かせるよう,各項目の指
導のヒントをまとめています。
本リストは完成されたものではなく,まだ内容が荒
い部分も残されています。また,段階によって項目の
精度の偏りもあります。本リストの内容を向上させる
ために,項目のさらなる細分化,重度・重複障害児の
発達により焦点をあてた項目の追加,活用しやすい内
容への修正等を行っていきます。そのためには,実践
事例の蓄積を行いながら重度・重複障害児の発達につ
・宇佐川浩 感覚と運動の高次化からみた子どもの理解
(2007) 学苑社
・遠城寺宗徳他 遠城寺式乳幼児分析的発達検査法
(1977) 慶応通信
・大伴潔他 言語・コミュニケーション発達スケール
LC スケール (2008) 学苑社
・片桐和雄他 重症心身障害児の認知発達とその援助
生理心理学的アプローチの展開 (1999) 北大路書房
・川村秀忠 障害の重い子の早期発達診断 (2013)
ジアース教育新社
・木原秀樹 240 動画でわかる赤ちゃんの発達地図
(2011) メディカ出版
・小池敏英他 肢体不自由特別支援学校における重度・
重複障害児のコミュニケーション学習の実態把握と学
習支援 (2011) ジアース教育新社
・小林芳文 MEPA-Ⅱ 乳幼児と障害児の 感覚運
動発達アセスメント (1992) コレール社
・坂口しおり 障害の重い子どものコミュニケーション
評価と目標設定 (2006) ジアース教育新社
・徳永豊 重度・重複障害児の対人相互交渉における
共同注意 コミュニケーション行動の基盤について
(2009) 慶應義塾大学出版会
・長崎勤 コミュニケーション発達と指導プログラム
(1996) 日本文化科学社
・三宅和夫監修 KIDS乳幼児発達スケール (1989)
・長崎県立長崎特別支援学校 実態把握チェックリスト
・長崎県立諫早特別支援学校 自立活動チェックリスト
・田中美郷・進藤美津子 乳児の聴覚発達検査とその
臨床および難聴児早期スクリーニングへの応用
・徳永豊 障害の重い子供の目標設定ガイド (2014)
慶応義塾大学出版会
・独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 重複障害
児のアセスメント研究 実践につなげやすい重複障害
のある子どもの見え方とコミュニケーションに関する
初期的な力のアセスメントブック (2008)
・文部科学省 2特別支援学校 小学部・中学部学習指
導要領 第7章 自立活動 特別支援学校, 高等部学
習指導要領 第6章 自立活動 指導内容 (2009)
海文堂出版
広島県立福山特別支援学校
第2章
重度・重複障害児のアセスメントチェックリスト
及び課題整理シートの使い方
1
活用の手順
(1)本リストのチェック項目にマークしていきます。
(2)基本的には『おおよそできる』,
『時々できる』にマークした項目から,領域ごとに 2 項目ずつ児童・生徒
の課題となる項目を選択してください。(※課題設定の基準は児童生徒の実態によってはこの限りではあり
ません。
)
(3)課題整理シートの記入をしてください。
2
本リストの使い方・記入例
(1)本リストの記入にあたって
ア
それぞれの項目において,評価欄にある『できる』『おおよそできる』『時々できる』『できない』の4点
のいずれかにマークしましょう。マークする基準としては,以下の表を目安にしてください。
(記入例)
評価
できる
おおよそ
割合
8~10 割
マークする基準
ほぼできていること
5~7 割
できることの方が多い
1~4 割
できないことの方が多い,
領
域
番
号
発
達
段
階
項目
Ⅰ
.
で
き
な
い
時
で々
き
る
お
でお
きよ
るそ
で
き
る
記
外界への気付き(皮膚感覚・味覚・嗅覚)
できる
時々
できる
できない
まれにできることがある
0割
1
Ⅰ 急に抱きかかえられると身構える。
2
Ⅰ
暑かったり寒かったりしたときに,不快を
しめす。
できない,不可能
イ
具体的な状況など補足事項があれば記述欄に記入してください。
ウ
記入を始める場所は基本的にはⅠ段階からですが,児童生徒の実態に応じてⅡ段階やⅢ段階から開始して
もかまいません。
エ
チェック項目は,おおよそ発達段階ごとに並べています。児童生徒の実態に応じて,記入を終了してくだ
さい。(例)「できない」の項目が 7 つ以上続く。
オ
本リストは担任との関係,学校での様子をもとに記入するようにしてください。一部の項目は記入者と児
童生徒との人間関係が影響することが考えられますので,ある程度,関係性ができてから行うことが望まし
いです。
カ
児童生徒の体調がいいときの状態を評価します。
(2)課題の設定について
基本的には「時々できる」「おおよそできる」にマークがついた項目が児童生徒の力を伸ばすことができる
ポイントであると考えられます。それらの項目の中から特に重点的に指導すべき項目を,各領域で 2 項目ずつ
選択してください。選択した項目は本リストの記述欄に○の目印をつけます。その項目が児童生徒の課題とな
ります。
※既にほぼ達成されている項目でも「その項目の力をさらに広げたい」「般化できるようにしたい」等の意
図があれば「できる」でも課題として設定することも可能です。
※児童生徒の実態によっては,各領域での課題が 0~1 項目になることもあります。
広島県立福山特別支援学校
*記入例及び欄の説明
①領域番号
領
区
域
分
番
号
発
達
段
階
⑥手引き連携欄
領域ごとの通し番号。
④評価欄 4段階の中から,
該当
③項目
次版より連
携予定。
する欄にチェックする。
で
き
.
な
い
項目
時
で々
き
る
お
でお
きよ
るそ
で
き
る
記述欄
手
引
き
⑤記述欄 具体例・補
②発達段階
足・重点課題の記入を
Ⅰ 快不快の分化
おこなう。
1
生理的不快の表出ができる。
Ⅰ (※暑さ・寒さ・痛み等を支援者が読み取
れるようしめすことができる)
2
優しく抱きかかえると心地よさそうにな
Ⅰ る。(例:緊張がゆるむ・表情がゆるむ・
脈や呼吸が安定する等)
3
Ⅰ
人からされて不快になる刺激・働きかけが
ある。
4
Ⅰ
人からされて快になる刺激・働きかけがあ
る。
キーワード欄
Ⅱ 反応表出の芽生え 大人への注意
5
手や身体に触れながら呼びかけると反応が
手や身体に触れながら呼びかけると反応が
Ⅱ ある。(例:緊張状態が変わる・表情が変
ある。(例:緊張がゆるむ・表情がゆる
わる・脈や呼吸が変化する等)
む・脈や呼吸が安定する等)
6
声掛けをすると反応がある。(例:緊張が
声掛けをすると反応がある。(例:緊張状
Ⅱ 態が変わる・表情が変わる・脈や呼吸が変
ゆるむ・表情がゆるむ・脈や呼吸が安定す
る等)
化する等)
7
Ⅱ
そばにいる支援者を意識して,注視をす
る。
8
Ⅱ
不快な時にいつもと違う泣き方や表情・発
声等ができる。
9
Ⅱ
支援者の働きかけを受けて表情・発声・視
線などで気持ちを表そうとする。
声掛けやボディタッチを受けて応えるよう
10 Ⅱ な反応がある。(例:表情が変わる,支援
者を注視する,身体を動かす等)
○
課題とする項目に
○印。
表情,視線で気持ち
を表出できるように
したい。
機能的に困難な場合
は「できない」にマー
ク。記述欄に備考を。
Ⅲ 期待反応 簡単なやりとり 大人への積極性 要求の芽生え
11 Ⅲ
支援者の声掛けに応じるように声を出す。
(※1 回でもよい。)
支援者からの繰り返しの働きかけに対して,笑う・
12 Ⅲ 声を出す等のサイクルを3回以上維持できる。
(例:「支援者がくすぐる」⇔「子どもが笑う」)
13 Ⅲ
気管切開のため,声を
出すことができない。
抱っこをして揺らす
と繰り返し笑顔が出
やすい。
好きな遊びをした後,もう一度してほしそ
うな表情や行動をする。
好きな遊びをした直後に,再度その遊びを
14 Ⅲ 繰り返そうとすると,期待をあらわす。
(※短期記憶での期待表出)
毛布ブランコをした
後が一番期待の表情
がでやすい。
広島県立福山特別支援学校
3 課題整理シートの使い方・記入例
(1)課題整理シートについて
課題に設定した項目についての指導内容等をまとめるためのシートです。
(2)指導内容記入表の記入にあたって
リストの中から選択した課題の発達段階,領域番号,項目の文章をシートに転記します。次にその課題の力
を育むための具体的な指導目標と支援・留意点を児童生徒に応じて考え記入します。
*記入例及び欄の説明
①領域名
各領
域の名称が記載
されてます。
⑤具体的な指導目標
課題
課題とする項目をベースに,児
とする項目の領域
童生徒に合わせたより具体的
番号を記入。
な指導目標を記入。
③領域番号
⑥支援・留意点
指導目標を達成する
ための支援・留意点。
「課題とする項目」
と同じ文章でも可。
②発達段階
課題
④課題とする項目
とする項目の発達
課題とする項目の内
段階を記入。
容をリストより転記。
(3)コミュニケーションに関するプロフィール表について
本リストでアセスメントした児童生徒の実態を簡単にあらわすとともに,指導のポイントとなるキーワード
を整理するためのものです。
(4)コミュニケーションに関するプロフィール表の記入にあたって
指導内容記入表の各領域の「課題とする項目」の発達段階に当たるセルに網掛けをする。
*記入例
広島県立福山特別支援学校
4
語句について
本リストで使用されている語句は,以下の意味で使用しています。
反応する
刺激や働きかけを受けて,表情や身体の動きに変化が起こること。
気付く
それまで気に留めていなかったところに注意を向けることができ,物事の存在や状態,違い
等が分かること。
応答する
問いかけや呼びかけに意図をもって,答えること。
働きかけ
視覚,聴覚(言葉掛けを含む),触覚,体性感覚など,支援者が意図して子どもに働きかけ
たものであればどんな刺激でもよい。
手さし
指さしが身体的機能の障害等で困難な場合に,目標の人・物を手で指し示す行動のこと。指
示した物の目標物が明確であることが重要。
多くの人にわ
渡す・指差す・身振りなど,支援者の注意を引き要求対象が伝わりやすい手段。その児童生
かる手段
徒との関係性があまりない支援者にも伝わるような手段。
遊ぶ
その子どもが自発的にその行動を繰り返し,楽しめている状態。
声掛け
児童生徒にとっての受け止めやすさを重視した,音節が少ない声でのアプローチ。言葉の意
味は重視されない。
※Ver.1 よりの変更点
○項目の追加,削除,修正。
○名称を「重度・重複障害児のコミュニケーションに関するアセスメントチェックリスト」から「重度・重複障害児のア
セスメントチェックリスト -認知・コミュニケーションを中心に―」に変更。
○「区分」という表記を「領域」に,「領域」という表記を「分野」に変更。
「人間関係」と認知を中心とした「聴覚・言語」
「触覚等」
「視
○4 領域を,コミュニケーションを中心とした「要求表出」
覚等」の 5 領域に変更。
○補助項目より「視機能」
「視認知」を削除。それらの内容は「認知(視覚等)
」に統合。
○リストより総番号の欄を削除
○キーワードを修正。
○概要及び使い方を修正。
○「語句について」を追加・修正。
○「重点課題」という名称を「課題」に変更。
○「アセスメントリストまとめ表」の名称を「課題整理シート」に変更し,内容及びサイズを修正。
○各領域及び身体機能面の表のカラーを変更。