(7-1)公社債投資の税金(平成27年12月末まで)

7
−1
公社債投資の税金(平成27年12月末まで)
公社債の種類
方法で分類できます。発行者によって分
利付債・割引債、償還までの期間によっ
けた場合は国債・地方債・政府関係機関
て分けた場合は、短期債・中期債・長期
債・社債などに分類できます。募集方法
債・超長期債にそれぞれ分類できます。
によって分けた場合は、公募債・非公募
さらに仕組債などもあります。
けて①利子、②償還差益、③譲渡益の3つ
以後、大規模な改正が行われます。7-1
があります。したがって、税金の上でも
では平成27年12月31日までの利払い・
この3つを分けて考える必要があります。
譲渡・償還について解説します。平成
公社債に対する課税の概要は次の表の
28年1月1日以後の利払い・譲渡・償
通りです。
還については7-2を参照して下さい。
中分類
小分類(年限は発行例からの抜粋)
割引債
国庫短期証券(2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年)
ストリップス国債※
地方債
公募地方債(5年、10年)、非公募地方債(縁故割当地方債)
政府関係機関債
政府保証債(2年∼10年)、財投機関債
地方公社債
地方公共団体が設立した公社(地方住宅供給公社、地方道路公社、
土地開発公社)が発行する債券
金融債
割引金融債(1年)、利付金融債(1年∼10年)
事業債等
事業債(NTT債、電力債、銀行社債、一般事業債)、短期社債、
特定社債(特定目的会社発行の社債)、新株予約権付社債など
※ストリップス国債は利付国債の元本部分と利子部分を分離して販売されるもので、正式には分離元本振替国
債、分離利息振替国債といいます。
一般の
利付債
割引債類似
の利付債
新株予約権
付社債
〔
一律20.315%の
源泉分離課税
所得税15.315%の
源泉徴収と住民税
5%の特別徴収
償還差益
〕
譲渡益
非課税
雑所得として総合課税 譲渡所得として総合課税
※1
※1
株式等の譲渡所得等として
申告分離課税※3
※1※2
一般の
割引債
―
割引転換社
債型新株予
約権付社債
―
発行時に所得税18.378
%の源泉分離課税
非課税
※1※4
雑所得として総合課税 株式等の譲渡所得等として
※1
申告分離課税※3
※1 告知や告知書の提出は不要で、支払調書も提出されません。
※2 非居住者の場合、振替国債・振替地方債の利子については、一定の要件を充たすことにより日本国内で
は課税されません。
※3 上場銘柄等に限り特定口座への預入れが認められています。
※4 東京湾横断道路建設事業者および民間都市開発推進機構が発行する割引債については16.336%です。
※5 この表は国内発行の公社債についてです。発行地が国外の場合は違った取扱いがなされる場合がありま
すので、10章「外国証券と税金」を参照して下さい。
※6 一定の障害者等にあたる方については、元本350万円まで利子が非課税となる制度があります(178ペー
ジ参照)。
※7 「利子が支払われない公社債(割引債を除く)」については、譲渡益は譲渡所得として総合課税されま
す。これは、投資法人債型のETFについて適用されます(161ページ参照)。
利付債の税金(平成27年12月末まで)
公社債は、利子の支払われる利付債と、
還差益、譲渡益の三つがあります。
利払いがない代わりに利息分だけ割り引
譲渡益は原則として非課税です。
いた価格で発行される割引債とに大別さ
ただし、利付債でも新株予約権付社債
れます。
や割引債に類似する債券などの譲渡益は
公社債の中には、個人による購入が認められない債券があります。国庫短
利付債から生じる収益には、利子、償
課税されます。
期証券、ストリップス国債などは、個人による購入は認められていません。
■ 利息に対する税金(平成27年12月末までの利払い)
個人が取引できない債券
物価連動国債は平成27年1月より、個人による購入が認められる予定です。
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券
超長期国債(20年、30年、40年)、変動利付国債(15年)、
利付債 物価連動国債(10年)、長期国債(10年)、
中期国債(2年、5年)、個人向け国債(3年、5年、10年)
利子
債
民間債
なお、公社債税制は平成28年1月1日
割
引
債
●公社債(国内債)の種類
公共債
公社債から生じる収益には、大きく分
利
付
債
債、利息の付き方によって分けた場合は
国債
公社債に対する課税の概要(平成27年12月末まで)
●公社債に対する課税(平成27年12月末まで)
公社債は、考え方によっていろいろな
大分類
● 債券と税金
利子所得の場合、他の所得と異なり必
利子については、非課税制度の適用を
要経費はありません。したがって、受け
受 け る も の 以 外 は、 原 則 と し て 一 律
取る利子の全額が課税対象となります。
20.315%の源泉分離課税となります。つ
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14.6.27 6:30:47 PM
● 債券と税金
まり、他の所得とは合算せず、所得税
円建外債(世銀債等)の利子には源泉分
15.315%の源泉徴収と住民税5%の特別
離課税は適用されず、利子所得として総
■ 譲渡益に対する税金(平成27年12月末までの譲渡)
徴収のみで課税関係は終了します。告知
合課税の対象になります。この場合、年
利付債の譲渡益は、原則、非課税です。
す。
や告知書の提出は不要で、支払調書も提
間に支払いを受けた金額が3万円を超え
利付債を利払日と利払日の間に証券会
経過利子に対する20.315%の税相当額
出されません。
る場合は、税務署に支払調書が提出され
社を通して売買する場合には、売り方の
は所得税や住民税そのものではないた
もっとも、以下の国際機関が発行する
ます。
保有日数に対応する利息すなわち経過利
め、確定申告による精算はできません。
子を買い方が売り方に支払うことになっ
非課税であるため、譲渡の際には告知
ています。この際、受け渡される経過利
や告知書の提出は不要で、支払調書も提
子は、税相当額として20.315%を控除し
出されません。
た額によることになっています。これは、
譲渡益が非課税であるかわり、譲渡損
買い方が利払日に利子を受け取る際に
が出た場合は無かったものとして取り扱
は、売り方が保有していた期間を含めて、
われ、他の所得との損益通算をすること
20.315%の税額が徴収されるからです。
はできません。
したがって、買い方が売り方に経過利子
なお、平成28年1月1日以後に譲渡
を支払う際に、それまでの税相当分を控
した場合は、譲渡益は申告分離課税の対
除して支払うことで調整を図るわけで
象となります(詳しくは167ページを参
す。この経過利子も譲渡収入に含まれま
照して下さい)。
・国際復興開発銀行(世銀)
・米州開発銀行 ・アジア開発銀行
・アフリカ開発銀行 ・国際金融公社 ・欧州復興開発銀行
■ 償還差益に対する税金(平成27年12月末までの償還)
額面未満で購入した公社債の償還を受
益が生じます。これが償還差益です。算
けると、償還価額と購入価額との間に差
式は次の通りです。
償還差益 = 償還金額 − 公社債の取得費・取得価額
面100円で償還を受けたときには、10円
徴収はありません。告知や告知書の提出
が償還差益になるわけです。
は不要で、支払調書も提出されません。
利付債の償還差益は、税法上は雑所得
利付債の償還差損(平成27年12月末までの償還)
利付債を、額面金額を超える金額で購入し、額面で償還を受けた場合は償
還差損が生じます。償還差損の取扱いについて、税法上、明確な規定はない
ようです。他の雑所得との通算は認められるとする説もあるようですが、税
務当局が示した資料等では損失が無かったものとして取り扱うこととされて
います。なお、雑所得との通算が認められるとする前者の説においても、雑
所得以外の他の所得との通算は出来ないこととされています(雑所得の損失
については他の所得との損益通算が認められないためと考えられます。総合
課税の損益通算については24ページ以降を参照して下さい)。
また、
159ページで取り上げている他社株転換可能債(EB)の償還差損(株
式償還の場合)についても同様に2つの説がありますが、過去に税務当局が公
表した質疑応答事例集では「課税所得の計算上考慮されない」とされており、
本書ではこの見解に合わせています。
なお、
平成28年1月1日以後の償還については取扱いが明確化されます
(167
ページ参照)
。
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券
として総合課税の対象になります。源泉
債
たとえば、公社債を90円で購入して額
個人向け国債への課税(平成27年12月末まで)
個人向け国債の課税はどのようになるのでしょうか?
通常の利付債と同じく、利
対象となった大規模な自然災害に
子に対して20.315%(所得
より被害を受けた場合、もしくは、
税15.315%・住民税5%)の源泉分
保有者本人が死亡した場合、上記期
離課税が適用されます。
間経過前であっても中途換金が可
個人向け国債には、変動金利型
能です。
(10年満期)と、固定金利型(3年
中途換金は、口座を開設している
満期、5年満期)とがあります。
証券会社等を通じて国に買い取っ
いずれも、額面金額100円につき
てもらう方法により行います。買取
100円で発行され、購入できる単位
額は、額面金額に経過利子相当額を
(最低額面単位)は1万円です。半
加えた額から、直前2回分の各利子
年毎に年2回利払が行われます。
(税引前)×0.79685を除いた金額と
いずれも、2回目の利払日(発
なります。中途換金の際の譲渡益は
行から1年経過)以降であれば、
非課税です。個人向け国債の取扱機
原則としていつでも中途換金でき
関に口座を開設している個人間の
ます。ただし、災害救助法の適用
売買は、発行日以後、いつでも可能
157
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● 債券と税金
です。その場合の譲渡益も非課税
するので、償還差益は発生しません
です。
が、個人間売買で購入した場合に生
償還時には額面100円で償還され
じた償還差益は雑所得として総合
ます。通常は発行時に額面で購入
課税の対象となります。
割引債の税金(平成27年12月末まで)
割引債は、額面未満の価格で発行され
いはありません。つまり、割引債では償
て額面で償還される債券で、期中に利払
還差益と譲渡益だけが収益となります。
■ 償還差益に対する税金(平成27年12月末までの発行分)
ABS(債券型)の税制(平成27年12月末まで)
ABS(資産担保証券)のうち債券型のものはどのよう
に課税されるのでしょうか?
産の流動化に関する法律」(いわゆ
同様に課税されます。
るSPC法)に基づく特定目的会社
行時において償還差益10円の18.378%に
します。
あたる1.8378円が先取りで課税されるこ
①国債および地方債、②内国法人が発
とになります。この1.8378円は割引債の
行する社債(会社以外の内国法人が特別
発 行 価 額 に 上 乗 せ さ れ ま す。 即 ち、
の法律により発行する債券を含む)、③
91.8378円で発行したことになります。
外国法人が発行する債券(国外において
これにより、償還時に改めて税金が徴収
発行する割引債にあっては、平成20年5
されることはありません。償還に際し、
月1日以後発行されるもので、その債券
告知や告知書の提出は不要で、支払調書
の社債発行差金のうち国内において行う
も提出されません。
事業に帰せられるものがある場合に限
ただし、外貨公債、独立行政法人住宅
る)は、発行時に償還差益の18.378%の
金融支援機構・沖縄振興開発金融公庫・
所得税を源泉徴収されて納税が完了する
独立行政法人都市再生機構が発行する債
源泉分離課税が適用されます(一部には
券については源泉徴収が行われず、雑所
税率16.336%のものもあります(155ペ
得として総合課税の対象となります。
ABS(資産担保証券)とは、企
が社債として発行するものは、通常
業等から資産(ローン債権、リース
の利付債と同様に取り扱われます。
料債権、不動産等)を譲り受けたS
SPC法に基づく特定目的信託が発
PV(特別目的会社・信託等)が、
行する社債的受益権の場合は、利子、
譲り受けた資産の予想キャッシュ・
譲渡益は通常の利付債と同様に取り
フローを裏づけに発行する証券をい
扱われますが、償還差益は譲渡益部
います。ABSには出資証券として
分と配当部分に区分し、譲渡益部分
発行されるものや債券として発行さ
は非課税、配当部分は配当所得とし
■ 譲渡益に対する税金(平成27年12月末までの譲渡)
れるものがあります。わが国の「資
て課税されます。
割引債の譲渡益は原則として非課税で
市基盤整備公団、解散前の住宅・都市
す。譲渡損は無かったものとして取り扱
整備公団、外国政府、外国地方公共団
われます。ただし、次の割引債の譲渡益
体および国際機関が発行したもの
券
100円償還の割引債があるとすると、発
入するため、償還時には償還差益が発生
債
基本的には、通常の債券と
割引債の場合、通常は、額面未満で購
ージ図表参照))。たとえば、90円発行で
については、譲渡所得として総合課税の
これらの場合の譲渡益への課税方法
対象となります(譲渡損は損益通算の対
は、後述する割引債類似の債券の場合と
象になります)。
同じです(161ページ参照)。
①国外で発行された割引債(ゼロ・クー
なお、平成28年1月1日以後に譲渡
ポン債など)
した場合は、平成27年12月31日までに
②国内で発行される割引債で、独立行政
発行し源泉徴収されたものを除き、譲渡
法人住宅金融支援機構、解散前の住宅
益は申告分離課税の対象となります(詳
金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、独
しくは167ページを参照して下さい)。
立行政法人都市再生機構、解散前の都
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159
14.6.27 6:30:48 PM
● 債券と税金
新株予約権付社債の税金(平成27年12月末まで)
特殊な債券の税金(平成27年12月末まで)
新株予約権付社債とは、新株予約権が付
い込むべき金額の払い込みに当てられま
債券の中には、いわゆる仕組債とよば
税務上も特別な取扱いがされることが多
いた社債です。新株予約権とは、発行会社
す(代用払込みといいます)
。投資家(社
れる特殊なキャッシュ・フローを持つ債
いので注意が必要です。
の株式を、発行後一定の権利行使期間内に
債の保有者)は新たな払い込みをするこ
券があります。そのような債券の場合、
一定の行使価額を払い込むことで発行会社
となく、発行会社の株式を取得すること
から取得できる権利をいいます。新株予約
ができます。
■ 割引債類似の債券に対する税金(平成27年12月末まで)
権付社債の保有者が権利行使した場合、発
投資家は新株予約権付社債のまま保有す
利付債の譲渡益は原則として非課税で
として受け取ります。そこで、利付債の
行会社は新株を発行するか保有する自己株
ることも、売却することもできます。権利
すが、例外もあります。次に掲げるもの
利子が一律20.315%の源泉分離課税とさ
式を譲渡することになります。
行使して株式を取得することもできます。
は性格が割引債に類似し、本来利子とし
れていることとの均衡上、譲渡益につい
転換社債型新株予約権付社債(CB)
新株予約権付社債は、通常は利付債と
て受け取るものを中途売却による譲渡益
ても課税することとされています。
の場合、新株予約権の行使に際して払い
して発行されます。ただし、割引債とし
込むべき金額が社債の発行価額に等しく、
て発行されるものもあります。満期まで
権利行使時には必ず社債が償還され、払
保有すれば償還金額が支払われます。
■ 利子・償還差益に対する税金(平成27年12月末までの利払い・償還) 償還差益は雑所得として総合課税の対
利子については一律20.315%の源泉分離
象となります。いずれも告知や告知書の
課税とされ、他の所得とは合算せず、所
提出は不要で、支払調書は提出されませ
得税15.315%の源泉徴収と住民税5%の
ん。
②元本部分と利札部分がそれぞれ独立して取引される債券
③利子の計算期間が1年を超える場合がある債券
④最高利率/最低利率が1.5以上である債券
(利子を付さない期間があるものを含む)
⑤割引債以外で利子が支払われない公社債
●①の「著しく低い」利率
■ 譲渡益に対する税金
新株予約権付社債は、新株予約権が付
ついては上場株式等、非上場の銘柄につ
与されているなど株式の性格をもつこと
いては未公開株式等と同様となります(
から、譲渡益については株式と同様に申
平成28年1月1日以後は、168ページの
告 分 離 課 税 で 課 税 さ れ ま す。 税 率 は
区分に従い、特定公社債または一般公社
20.315%( 所 得 税15.315%・ 住 民 税 5
債となります) 。
%)です。基本的な課税方式は平成28
現在は、株式と同様に取引所に上場さ
年の前後で変わりません。譲渡損益の損
れている銘柄などに限って特定口座への
益通算の範囲は、上場されている銘柄に
預入れが認められています。
新株予約権の権利行使期間満了時の課税
券
特別徴収のみで課税関係は終了します。
の利付債の場合と課税方法は同じです。
①利率が著しく低い債券(表面利率が下表のような利率の債券)
債
利子および償還差益については、一般
発行から償還までの期間
利率(年利)
7年未満
0.1%未満
7年以上8年未満
0.2%未満
8年以上10年未満
0.3%未満
10年以上15年未満
0.4%未満
15年以上
0.5%未満
●参考 平成15年6月12日以前発行分の「著しく低い」利率
発行日から
償還期限まで
の期間
発行日
平成5.10.1∼ 平成6.1.1∼
平成7.9.27∼ 平成9.10.27∼ 平成10.9.29∼ 平成11.5.27∼ 平成14.9.3∼
平成5.12.31
平成7.9.26 平成9.10.26 平成10.9.28 平成11.5.26
平成14.9.2 平成15.6.12
5年以上
2.25%未満
1.5%未満
1.5%未満
1.0%未満
0.5%未満
0.5%未満
0.2%未満※
5年未満
1.75%未満
1.0%未満
0.5%未満
0.5%未満
0.2%未満
0.1%未満
0.1%未満
※発行日から償還期限までの期間が5年以上6年未満の場合。6年以上7年未満のものは利率が0.4%未満、7
年以上のものは利率が0.5%未満のものに限定されます。
①にはディープ・ディスカウント債な
て総合課税の対象となります。譲渡所得
どが含まれます。②はいわゆるストリッ
の金額の計算方法は次の通りです。
新株予約権と社債の同時発行の場合、新株予約権が譲渡されないまま権利
プス債、③・④はいわゆるディファー
なお、上表の「著しく低い」利率を超
消滅した場合でも、その損失を株式等の譲渡による雑所得の必要経費等とし
ド・ペイメント債、⑤は投資法人債型E
える利率の債券は、利付債と同様に譲渡
て控除することはできません。また、これを通常の雑所得の損失として他の
TF(193ページ)が該当します。
益が非課税となります。
雑所得との間で通算することなどもできません。
これらの債券の譲渡益は譲渡所得とし
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● 債券と税金
保有期間
譲渡所得の計算方法
5年以内
譲渡所得=譲渡収入−
(取得費+譲渡費用)−特別控除額※
5年超 譲渡所得=
{譲渡収入−
(取得費+譲渡費用)−特別控除額※}×1/2
※特別控除額は、その年の短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計額に対して50万円まで認められます。その年に
短期と長期両方の譲渡所得があるときは、先に短期譲渡所得から特別控除の50万円を差し引きます。譲渡所
得が50万円以下のときは、その金額までしか控除できません(19ページ参照)
。
償還差益については一般の利付債と同
別徴収のみで課税関係は終了します。譲
様に雑所得として総合課税されます。利
渡益、償還差益、利子いずれも告知や告
子については一律20.315%の源泉分離課
知書の提出は不要で、支払調書は提出さ
税とされ、他の所得とは合算せず、所得
れません。
税15.315%の源泉徴収と住民税5%の特
①発行体
日本に支店を有しない外国法人
②転換対象株式
東証第一部上場会社発行の普通株式
③発行額
数億円程度
④発行価額
額面の100%
⑤利子(クーポン)
年率6%から8%程度
⑥償還
発行条件決定日の転換対象株式の株価(A)と、本債券償還日の10営
譲渡損益の損益通算(平成27年12月末まで)
することができます。ただし、長期
の譲渡所得は総合課税の譲
譲渡所得の場合は、1/2にする前
渡所得です。総合課税の譲渡損失の
の金額と通算します(詳しくは24ペ
場合は、他の総合課税の所得と通算
ージ以降を参照して下さい)。
◆利子および譲渡益に対する課税
◆償還差益に対する課税
他社株転換可能債から生じる利子およ
償還時の課税は、①現金で償還される
び譲渡益に対する課税は、通常の利付債
場合と、②株式で償還される場合とで次
の場合と同様です。すなわち、利子に対
の表のようになります(償還が現金とな
しては源泉分離課税(20.315%)、譲渡益
るか株式となるかの決定方法は、課税方
は非課税となります。
法の決定には無関係です)。
券
通算できます。割引債類似
Bの場合は転換対象株式でそれぞれ償還
債
割引債類似の債券の譲渡損失は総合課税の他の所得と通
算できるのでしょうか?
業日前の同株式の株価(B)を比べ、A≦Bの場合は額面価額、A>
●他社株転換可能債の償還時の課税関係(平成27年12月末までの償還)
譲渡所得の計算方法
■ 他社株転換可能債(EB)に対する税金(平成27年12月末まで) 額面金額で償還されるため、通常、償還差損益は発生しません。償還差益
①現金償還の場合
が生じた場合は、雑所得として総合課税となります。
株式償還された場合は、通常、償還差損(他社株転換可能債の取得価額と
償還された株式の時価との差額)が発生します。この場合の償還差損は、
②株式償還の場合 他の雑所得やその他の所得との通算はできません。株式での償還が決まっ
た後に株価が急騰し、償還差益が発生する場合もまれにあります。この場
合の償還差益は雑所得として総合課税となります。
他社株転換可能債(EB)とは、対象
されることとなります。評価日の他社株
となる他社株式の価格により、現金で償
式の価格が一定水準以上であった場合
還されるか、他社の株式で償還されるか
は、現金で償還されます。
が決まる債券です。償還が現金となるか
他社株式となるかの決定方法にはいくつ
◆発行条件例
償還を受けた他社株式の取得価額は、
れた場合は、債券投資と株式投資の二つ
かの形態がありますが、一般的には、予
他社株転換可能債はいろいろなタイプ
償還日の時価となります。
償還された株式
の取引を行ったものと考えるわけです。
め定められた評価日の他社株式の価格が
の商品が販売されていますが、一般的な
を将来譲渡した際の譲渡損益は、一般の
なお、特定口座を開設している証券会
一定水準を下回った場合には株式で償還
発行条件は以下のとおりです。
株式と同じく、
申告分離課税となります。
社の一般口座で取引していた他社株転換
その際の譲渡所得は、償還日の他社株式
可能債の償還によって取得した上場株式
の時価と譲渡価額との差額となります。
については、当該特定口座に預けること
つまり、他社株転換可能債が株式償還さ
ができます(122ページ参照)
。
162
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163
14.6.27 6:30:48 PM
● 債券と税金
■ 株価指数連動債に対する税金(平成27年12月末まで)
仕組債
の超過割合をかけた分だけ償還金額が増
して、償還金額や利子が変動する債券で
加し、下回る場合には、その下回る分だけ
す。償還金額が変動するタイプには、例
償還金額が減少するタイプの株価指数連
仕組債とは、一般的には、通常の利付債や割引債と異なり、特殊なキャッ
えば償還条件決定日の日経平均株価が基
動債の場合、償還差益(償還金額の額面
シュ・フローを持つ債券のことをいいます。仕組債の利率や償還価格は、投
準価額(例えば発行条件決定日の日経平
金額超過額)は、利子所得として20.315
資家のニーズに合わせて設計されます。仕組債には、多様なキャッシュ・フ
均株価の終値)を上回る場合に、額面金
%の源泉分離課税が適用されます。償還
ローを生み出すために、スワップやオプション取引等のデリバティブ取引が
額にその超過割合をかけた分だけ償還金
差損(償還金額が額面金額未満の場合の
組み込まれています。組み込まれているデリバティブには、金利・通貨・株
額が増加し、下回る場合には、その下回
差額)は無かったものとして取り扱われ、
式関連のデリバティブ、クレジット・デリバティブ、商品関連のデリバティ
る分だけ償還金額が減少するものなどが
他の雑所得や他の所得から控除すること
ブ等様々なものがあります。投資家が望むキャッシュ・フローと発行体が望
あります。
はできません。
むキャッシュ・フローとが異なる場合は、スワップ取引等を用いて、これら
一方、利子が変動するタイプは、例え
◆譲渡損益に対する課税
を交換します。
ば、利率の決定方法が、各利払い時点の
償還金額が変動するタイプの株価指数
キャッシュ・フローが特殊であるため、課税方法も通常の債券と異なる場
日経平均株価が10,000円以上なら3%、
連動債で償還差益(額面金額の超過額)
合が多く、個別に課税方法を確認する必要があります。
10,000円未満なら0.1%となるようなデ
が利子所得として課税される債券につい
ジタル型、各利払い時点の日経平均株価
ては、発行から償還までの期間が1年を
を10,000円で割った比率を7%にかけ、
超える場合などは、利子の計算期間が1
そこから5%を引くといったようなレバ
年を超えることになるため、割引債類似
レッジ型、各利払い時点の日経平均株価
の債券(161ページ参照)として、譲渡
が10,000円以上なら前回の利率に0.5%
益は譲渡所得として総合課税されること
上乗せし、10,000円未満なら0.5%控除
になります。
するといったようなアップダウン型など
一方、利子が株価指数に連動するタイ
様々なものがあります。ただし、利率が
プの場合、たとえば、各利払い時点の日
0%を下回ることはありません。
経平均株価が10,000円以上なら利率が3
◆利子に対する課税
%、10,000円未満なら0.1%となるタイ
株価指数連動債の利子は、20.315%の
プは、発行当初から最高利率/最低利率
源泉分離課税となります。
が1.5以上である債券(利子を付さない
◆償還差益に対する課税
期間があるものを含む)として割引債類
額面で償還する一般的な利付債の償還
似の債券(161ページ参照)に該当する
差益は雑所得として総合課税されます
ことが見込まれるため、譲渡益は譲渡所
が、株価指数連動債の場合は、商品性に
得として総合課税されることになる模様
応じ個別に確認する必要があります。例
です。もっとも、この点は個別商品ごと
えば、償還条件決定日の日経平均株価が
に確認する必要があります。
債
株価指数連動債とは、株価指数に連動
券
預貯金および金融類似商品等の税金
預貯金の利子はどのように課税されますか。また、金融
類似商品等はどのように課税されますか。
公社債の利子や預貯金の利
す。
子は一律20.315%の源泉分
◇定期積金または相互掛金の給付補
離課税の対象となります。
てん金
金融類似商品等とは、預貯金の利
◇抵当証券の利息
子と同じく、20.315%の源泉分離課
◇金投資(貯蓄)口座の差益
税の対象となる金融商品であり、具
◇外貨投資口座の差益
体的には次のようなものが含まれま
◇一時払保険の差益
基準価額を上回る場合に、額面金額にそ
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● 債券と税金
−2
公社債投資の税金(平成28年1月以後)
金地金の税金と支払調書
現物である金地金の譲渡に対する税金は、金融類似商品の金投資(貯蓄)
口座の差益とは異なり、原則、譲渡所得として他の所得と合わせ総合課税の
対象となります。譲渡所得の金額については、金地金の譲渡益と金地金以外
の譲渡益の合計から譲渡所得の特別控除額を差し引いたものとなります。な
お、譲渡所得の特別控除の金額は、その年の金地金の譲渡益とそれ以外の総
合課税の譲渡益の合計額に対して50万円となります。譲渡所得の計算方法に
公社債に対する課税の概要(平成28年1月以後)
なお、居住者または国内に恒久的施設を有する非居住者に対して、金地金
平成28年1月1日以後、公社債税制は
株式や公募株式投信の譲渡損益と同様
等(金・白金の地金、
金貨・白金貨)の譲渡の対価の支払をする売買業者は、
大規模な改正が行われます。
に、源泉徴収ありの特定口座で取引して
当該支払金額等を記載した支払調書をその支払の確定した日の属する月の翌
「特定公社債」に該当する公社債(特
いれば、申告不要にもできます。
月末日までに、その支払をする者の所在地の所轄税務署長に提出することと
定公社債の定義は後述)について、利子
特定公社債の償還損益は、譲渡損益と
なっています。ただし、同一人に対するその金地金等の譲渡対価の支払金額
は現行では源泉分離課税とされています
同様に扱われます。発行会社の倒産等に
が200万円以下である場合には、支払調書の提出は不要です。
が、改正後は、源泉徴収後、申告不要と
より元本全額が償還されないケースでは
するか申告分離課税とするかを選べるよ
一部回収できた場合は回収できた金額に
うになります。
より譲渡したものとみなし(注)、全損の
特定公社債の譲渡損益は、現行では非
場合は後述の「特定管理株式等が価値を
課税とされていますが、税率20%(所得
失った場合」に限り譲渡損失とみなしま
★
税15% 、住民税5%)の申告分離課税
す。
に改められます。外貨建の場合の為替損
公募公社債投信についても、特定公社
益は譲渡損益に含まれます。現行の上場
債と同様の課税方式に改正されます。
券
■ 特定公社債の課税の概要(平成28年1月以後)
債
ついては、19ページの図表を参照してください。
●上場株式・特定公社債・公募投信の課税の概要(平成28年1月以後)
利子・配当・分配金
上場株式など
公募株式投信など
特定公社債
公募公社債投信など
譲渡損益
償還損益
配当所得として税率20.315%で源
泉徴収後申告不要
(確定申告し税率20%の申告分離
課税(所得税15%★、住民税5%) 譲渡所得等として税率20%(所得税15%★、住民税5%)の申
または総合課税を選択可)
告分離課税(源泉徴収ありの特定口座なら申告不要を選択可)
利子所得として税率20.315%で源
デフォルトによる損失については、一部回収できた場合は譲
泉徴収後申告不要
(確定申告し税率20%(所得税15 渡損失として扱い、全損の場合は「特定管理株式等が価値を
(176ページ)に該当する場合、譲渡損失として
%★、住民税5%)の申告分離課税 失った場合」
扱う。
を選択可)
(※1)網掛けは、損益通算が認められている範囲を示します(未公開株式等や一般公社債の譲渡損とは損益通算で
きません。172ページ参照)
。
(※2)この図表では、大口株主が受ける配当、未公開株式、一般公社債、世銀債等などは考慮しません。割引債お
よび割引債類似の債券には別途、償還時の源泉徴収の規定があります(173ページ参照)
。
★印の付いている所得税については、別途復興特
別所得税の課税も行われます。復興特別所得税の
税率は基準所得税額の2.1%です。詳しくは41ペ
ージを参照してください。
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(注)社債がデフォルト後の処理において、指名
債権となった場合の税務上の扱いは明らかになっ
ていません。
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