S E A N 地 域 の 主 要 な 税 務 リ ス ク と 対 応 ポ イ ン ト

ASEAN地域の主要な
税務リスクと対応ポイント
藤井 康秀
森下 良太
KPMG Phoomchai Advisory Ltd.
公認会計士
KPMG Singapore
税理士
が 定 め ら れ て お り、 企 業 は そ れ に
従って納税を行うことになる。納付
期限に遅れた場合は、一定の遅延利
息(延滞税)
が課される。また、企業
が自ら納税額を計算して申告・納税
を行う申告納税制度を採用している
国においては、申告書を期限内に提
出しなかった場合や申告が過小だっ
た 場 合 に は、 ペ ナ ル テ ィ( 加 算 税 )
が課されるのが通常である。
なってきている。 ASEAN経 済 共同
トを含めたビジネス管理が一層重要に
も、当該地域における税務マネジメン
が見込まれるなか、日本企業において
ASEAN諸国の将来的な経済発展
的な指摘のみが行われるとは限らず、
法の運 用においては、 必 ず し も 論 理
が困難である。 ② 税 務 官 吏による税
全 般 的に理 解 する人 材 を 育てること
国ごとに異なっており、各国の税制を
であ り、税 制の構 造、法 律の体 系が
は、その成 り 立 ちの歴 史がさまざま
応は、取扱いが難しい。 ①各国の税制
殊に、 各 国にお ける税 務リスク対
重 要となる税 務 課 題である。 そのた
ループとしての統一的な管理と対応が
たがる 取 引への課 税であ り、 企 業グ
化である。 移転価格税制は、国をま
が、移 転 価 格 税 制の導 入と調 査の強
組み始めている。 その代 表 的 な 方 法
企業に対する課税の強化に一様に取り
経済発展の進展とともに、外国進出
への対 策である。 ASEAN各 国は、
されているのは、各国の移転価格税制
そのよう な なかで、特に最 近 注 目
ては、日本の税務当局のような対応
ところが、ASEAN諸国におい
査で検証されることになる。
であったかどうかは、将来の税務調
される。実際にその還付請求が適正
いて一定の期間内に還付金の入金が
を行った場合には、その請求に基づ
過大納付分について企業が還付請求
を 除 き、 通 常 の 税 務 申 告 に お い て、
日本の場合、更正の請求を行う場合
税務当局の対応は、国ごとに異なる。
てしまった場合の還付請求に対する
一方、企業が税金を過大に納付し
)
体
( ASEAN Economic Community
の発足も2015年末に予定されてお
税務調査における指摘事項についての
め、ASEAN地 域 内においては、シ
は極めて稀である。企業が税金の還
計担当に一任されていることが多い。
り、ASEAN諸国の経済成長に向け
事後的な対応に追われて、予防的な
ンガポールの統括会社を利用して移転
ためには各 国の特 性 を 把 握し、経 営
た新たな取 組みが開 始される観 点か
措 置が取りにくい。 ③ 制 度が複 雑で
トするう えでは、依 然 として多 くの
に存在する拠点を効率的にマネジメン
スキルおよび法 規 制 等が異 なる各 国
これらの原因により、ASEAN地域
の交渉による解決を図る傾向にある。
のものを 学 習 するより も、税 務 署と
会社の雇用する会計スタッフが税法そ
の効率化を図ることが重要となる。
ら、その重要度は増している。
付請求を行った場合、原則としてそ
課題がある。 これらのリスクへの対処
内の投 資 先 国にお ける税 務リスク対
どの国においても税金の納付期限
当局が消極的な姿勢をみせることが
税金の還付という手続に対して税務
初めて還付金の入金がされる。また、
付請求が適正であったことを認めて
され、その結果、税務当局がその還
の還付請求に対して税務調査が実施
価格税制への対策を行う企業が多い。
は、ASEAN地域でビジネスを行って
応は、個々の子 会 社、 関 係 会 社の会
しかしながら、所 得 水 準、人 材の
いくうえで避けてはとおれない。 その
ASEAN諸国に
おけるもう1つの
税務課題
あり、運用に不透明感があることで、
注目される
移転価格リスク
第1章
8
経理情報●2015.3.10(No.1407)