光延反応を用いたクロマン骨格化合物の合成に関する理論的解析

テクニカルノート
光延反応を用いたクロマン骨格化合物の合成に関する理論的解析
∼ CASS 技術による
合成経路スクリーニング∼
Th eoreticalA nal
ysis ofM itsunobu Reaction F orm ing Ch rom an Skel
eton Com punds
-
O
screening for synth esis routes w ith CA SS tech nol
ogy-
OH
PPh3 (131 mg, 0.5 mmol)
DEAD (88 mg, 0.5 mmol)
O
O
+
in THF (3 mL) at 0 °C
OH
O
3
(97 mg, 0.5 mmol)
OH
4
(7 %)
1
(71 mg, 81 %)
光延反応は、アゾジカルボン酸エステル (DEAD) とトリフェニルホスフィン (PPh₃) を用いてアルコールと酸を脱
水縮合させる反応として知られている。アルコールの立体反転と伴うことや、穏和な条件で反応が進行することな
どから、有機合成の有用な反応として広く利用されている。
今回は、
より抽 出 さ れる薬 理 活 性 天 然 物 で あ る 2 ,6 -dim eth ylch rom an-4 -one (1) を、光延
反応により合成する経路について、密度汎関数理論 (DFT) 計算を用いた反応解析を行い、合成可否及び副生成物の
予測を行った。
O
OH
Ph3P
N N
3
OH
H
EtO2C
CO2Et
N N
PPh3
CO2Et
EtO2C
7
HN
HN
Path A
O
O
OH
CO2Et
HN
N
Ph3P
CO2Et
O
8(0.0)
Path B
10
O
O
O
9
OH
PPh3
OH
15(not optimized)
CO2Et
CO2Et
O
12
CO2Et
O
O
16
O
12
O
PPh3
13
11
11
O
HN
N
O
PPh3
9
O
OH
CO2Et
O
17
PPh3
14
O PPh3
O
14
1 O
OH
9
Path C
OH 18(30.8)
Scheme 1. Plausible routes producing the target using Mitsunobu reaction.
株 式 会 社
Transition State Tech nol
ogy ( TS テ ク ノ ロ ジー
〒 7 5 5 -8 6 1 1 山 口 県 宇 部 市 常 盤 台 二 丁 目
16 番
1 号
TSTCL Tech. Note No.01 (2011)
)
TEL: 0 8 3 6 - 3 5 - 9 2 2 8
F A X: 0 8 3 6 - 3 5 - 9 2 2 8
分子内にアルコール及びフェノールが共存する場合、一般文献では光延反応は PathB により進行すると記載され
ている。しかしながら本解析では、アルコールから水素が引き抜かれた PathB の中間体 15 は存在せず、反応はま
ず活性種によりフェノールの水素が引き抜かれる PathA により進行すると計算された。その後アルコールに PPh₃
が付加した 16、11 によるフェノール水素の再度の引き抜きを伴い、中間体 17 を生成した後、安定な主生成物と
して 1 を、副産物として 4 を与えると予想された。
TS7
14.6
(8.2)
PPh3 + DEAD
6.4
TS8-18
29.9
TS10-20
TS8-21 18
(27.6)
14.4
12.1 26.1
TS3-8
(6.7)
(9.7)
19
3.1
7.1
(3.1)
10+11
7.7
21
8+9
1.1
20 + 12
3+7
2.3
-2.8
0.0
16 + 11
-7.6
17 + 12
-13.1
TS20-1
22.2(25.0)
TS17-4
0.3
(13.4)
TS17-1
-7.7
(5.4)
4+14
-37.3
1+14
-61.6
Figure 1. Energy correlation diagram (kcal mol-1) of the Mitsunobu reaction
本解析の結果、本反応は若干の副産物の生成を伴うものの、目的化合物 1 が合成可能であると予測された。
実際に、THF 溶媒 0℃条件下で、主生成物 1 を 81%、副生成物 4 を 7% の収率で得ることができ、理論計算による
合成予測の結果と一致しその有用性が示された。
また、反応エネルギー、遷移状態構造、及び中間体の立体構造から考察することにより、光延反応全体の反応機
構を明らかにすると伴に、律速段階及び副産物生成のメカニズムも解明された。
1.304
1.123
1.917
1.834
2.448
1.219
2.298
TS8-21
1.460
TS17-1
TS17-4
Figure 2. 3D structures related to Figure 1. Lengths in the Figure are in Å units.
計算方法等
L evel
: B3 L Y P/ 6 -3 1 G * 、 真 空 中 、 絶 対 零 度 、 モ デル 化 な し
関連製品
CA SS(Com puter A ided Synth esis) に よる受 託 研 究 http://www.tstcl.jp/products/cass/
遷移状態データベース (TSDB) http://www.tsdb.jp/
参考文献
K . H ori ,H . Sadatom i, M . A ota, T. K uroda, M . Sum im oto, H . Y am am oto,
, 15, 8 2 8 9 -8 3 0 4 (2 0 1 0 )