平成 26 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 N-25 カテナン/リンカー比を変化させた薗頭カップリングによるカテナンポリマーの合成 Synthesis of Novel Catenane polymers with Various Catenane/Linker Ratio by Ternary Sonogashira Coupling Polymerization ○新保光祐1, 星徹 2, 澤口孝志 2, 萩原俊紀 2 *Kosuke Shimbo1, Toru Hoshi2, Takashi Sawaguchi2, Toshiki Hagiwara2 Abstract: Catenanes are mechanically interlocked molecules consisting of two or more cyclic moieties. In our previous work, it was revealed that Sonogashira coupling polymerization of diiodo[2]catenane with 4,4’-diethynylbiphenyl as a linear linker proceeded and high molecular weight poly[2]catenane was obtained. However, solubility and moldability of the poly[2]catenane were low. To change the catenane/linker ratio of the poly[2]catenane, we designed a ternary polymerization of diiodo[2]catenane, diiodobiphenyl, and diethynylbiphenyl. In this presentation, we report syntheses and properties of the novel ternary catenane polymers. 1. 緒言 カテナンとは環状化合物同士が鎖のように連なった構造をしている。カテナンの環同士は、互いの分子の中を回転で きることから高い自由度を有するものと考えられる。 薗頭カップリングを用いたポリ[2]カテナンの合成については、本研究室でリンカーに直線状の 4,4’-ジエチニルビフ ェニルを用いると非常に高い分子量のポリマーが合成できることを既に報告している。しかし、このポリマーは溶解性、 成形性が低くリンカーをさまざまに変化させて用いてポリ[2]カテナンの合成を試みたが機械的物性が測定できるよう な柔軟なポリマーを得るには至らなかった。 一方、Hay カップリングによるカテナンポリマーの合成においては、カテナンとリンカーの比を変化させることによ り、柔軟なポリマーが得られるという結果が得られている。そこで本研究では、薗頭カップリングにおいてもカテナン とリンカーの比を変化させて重合を行えば、高分子量かつ柔軟なカテナンポリマーが合成できるのではないかと考えて 検討を行った。 I I I I リンカーA + n カテナン リンカーB m (カテナン+リンカーA) : リンカーB = 1 : 1 2. 実験 2.1 ジヨード[2]カテナンの合成 5-アミノイソフタル酸をヨード化して得た 5-ヨードイソフタル酸 (1) を DCC、HOBt を用いて活性エステルとし、4アミノベンジルアミンによりアミド化し U 字型ジアミン (2) を得た。2 を少量の THF に溶解した後クロロホルムで希 釈し、トリエチルアミンを加えたのち、クロロホルムに溶解した二塩化セバコイルをゆっくりと滴下して室温、窒素下で 24 時間反応した。反応後、塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、分取薄層クロマトグラフィーで単離を行 いジヨード[2]カテナン (3) を得た。 O COOH NH 1) DCC,HOBt I ClCO(CH2)8COCl I NH2 COOH 1 (72%) 2) H N 2 THF,0℃,24h THF,CHCl3 under-N2,r.t.,24h NH O H O N O NH2 NH2 2 (95%) NH I NH O H N O I 3 (5%) Scheme 1 Preparation of Diiodo[2]catenane (3) 1:日大理工・学部・応化, College of Science and Technology, Nihon Univ. 2:日大理工・教員・応化, College of Science and Technology, Nihon Univ. 1185 平成 26 年度 日本大学理工学部 学術講演会論文集 2.2 ポリ[2]カテナンの合成 シュレンク管にジヨード[2]カテナン (3) と 4,4’-ジエチニルビフェニル (4) を 100 μmol 仕込み、それに対して触媒 を 2 mol%加え窒素下 DMF 中で二日間、薗頭カップリング反応を行いポリ[2]カテナン(1:1) (6) を合成した。また、4,4’ジエチニルビフェニル (4) と 4,4’-ジヨードビフェニル (5) をリンカーに用い、同条件で薗頭カップリングを行いポリ [2]カテナン (1:2) (7) を合成した。 H N O O O NH H N O HN + I I NH H N O O HN N H O 4 O 3 H N O Pd(PPh3) 4, CuI, PPh3 O O NH DMF, Et3N, under-N2, 60℃, 48h H N O H N O H N HN I O H N O HN N H O n O I NH N H 6 (1:1) (92%) O NH O HN HN NH O O O H N + O + I I 4 O 5 3 O H N O O H N NH Pd(PPh3) 4, CuI, PPh3 DMF, Et3N, under-N2, 60℃, 48h HN O HN NH H N O N H O O O n 7 (1:2) (81%) Scheme 2 Preparation of Poly[2]catenane (6) and (7) 3. 結果・考察 合成した 3 の H-NMR 測定結果を Figure 1 に f g O H N c HN k l O m NH H N h~k および、アミド結合による g のシグナルが c 4 O 3 j,k a g N H O O n I HN O 3 H N j b I 示す。二塩化セバコイルのプロトンに由来する 出現し、さらに過去の報告と完全に一致したこ iO h NH a 1 e d O f b e d h i h’ i’ h’’ i’’ とから合成を確認した。 合成した 3 と 4 の薗頭カップリングを行って 得られた生成物 6、7 の 1H-NMR スペクトルも あわせて Figure 1 に示す。リンカー4 の末端エ チニル基のプロトン n が消失した他は、3 およ 6 7 び 4 に由来するすべてのプロトンが帰属でき、 g’ f ’ e’ b’ c’ a’ l’ m’ d’ g’’ f ’’ e’’ b’’ c’’ a’’ l’’,m’’ d’’ なおかつ積分比から、6 では 3 と 4 が 1:1 で、7 では 1:2 で含まれていることが明らかなになっ n l m 4 Figure 1 j’,k’ j’’,k’’ Chemical shift δ (ppm from TMS) (400MHz,DMSO-d6) 1H-NMR Spectra of 3,4,6 and 7 たことから、ポリ[2]カテナン (1:1) および (1:2) の合成を確認した。 Diiodo[2]catenane (3) Mn=1.0×103 3、6、7 の GPC 測定結果を Figure 2 に示す。 6 と 7 を比較すると、7 は数平均分子量が小さい ことが分かる。これは、今回新たに用いたリン Poly[2]catenane (1:1) (6) Mn=7.4×104 Mw/Mn=2.7 カーである、4,4’-ジヨードビフェニルが溶媒へ の溶解性が低いことが原因であると考えられ、 Poly[2]catenane (1:2) (7) Mn=2.9×104 Mw/Mn=2.0 今後合成条件のさらなる検討が必要である。 条件検討の結果および得られたポリ[2]カテナ ンのフィルム化については当日報告する。 2 3 4 5 log M 6 7 Figure 2 GPC Cureve of 3,6 and 7 1186
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