昇降圧チョッパ方式双方向 DC/DC コンバータ

平地研究室技術メモ No.20140428
昇降圧チョッパ方式双方向 DC/DC コンバータ
(読んでほしい人:パワエレ技術者)
2014/4/28 舞鶴高専 平地克也
平地研究室技術メモ No. 20140104「電圧型+電流型双方向 DC/DC コンバータ」[1]で詳しく説明
したように、降圧チョッパと昇圧チョッパ、または電圧型 DC/DC コンバータと電流型 DC/DC コン
バータを合体すれば双方向 DC/DC コンバータを作ることができます。同様にして2つの昇降圧チョ
ッパをうまく合体させれば双方向 DC/DC コンバータを作ることができます。さらに2つの「多機能
チョッパ」を合体させれば様々な動作を変幻自在に行うことのできるユニークな双方向 DC/DC コン
バータを作ることができます。
■昇降圧チョッパ方式
図1(a)(b)は同じ昇降圧チョッパですが、(a)は V1 が入力、V2 が出力であり、電力の流れは左から
右です。(b)は逆に V2 が入力、V1 が出力であり、電力の流れが右から左です。両者を合体すれば(c)
の昇降圧チョッパ方式双方向 DC/DC コンバータとなります。E1 から E2 を充電する時は Q1 と D2
が動作します。E2 から E1 を充電する時は Q2 と D1 が動作します。Q1 と Q2 に FET を使用すれば
D1 と D2 は FET の寄生ダイオードを流用できます。昇圧チョッパ+降圧チョッパ方式(図2)では
必ず V1>V2 でしたが、図1(c)の方式ではベースになるチョッパが昇降圧チョッパなので V1 と V2
の大小関係は任意に選ぶことができます。
D2
Q1
E1
C1
V1
(a)
L1
C2
V2
D1
昇降圧 チョ ッパ ( V1が 入力 V2が 出力 )
D1
V1
C1
Q1
E1
V1
合体
D2
C1
L1
E2
V2
Q2
L1
C2
(c)
V2
昇降 圧チ ョッ パ方 式双 方向 DC/DCコン バー タ
E2
(b)
Q2
C2
昇降圧 チョ ッパ ( V2が 入力 V1が 出力 )
図1
昇降圧チョッパ方式双方向 DC/DC コンバータ
高圧
E1
V1
L1
Q1
C1
D2 C2
Q2
図2
低圧
D1
E2
V2
昇圧チョッパ+降圧チョッパ方式双方向 DC/DC コンバータ
1
■フライバックトランス方式
図1(c)の回路において L1 を変圧器の励磁インダクタンスで構成すれば図3のフライバックトラン
ス方式双方向 DC/DC コンバータとなり、入出力の絶縁が可能となります。左から右に電力を伝達す
る時は図3(b)に示すように Q1 と D2 が動作します。右から左に電力を伝達する時は図3(c)に示すよ
うに Q2 と D1 が動作します。
Q
が ON の 時 の 電 流 径 路
Q が OFF の
C1
D1
時の電流径路
n1
n2 D 2
C2
Q1
Q2
(b)
TR1
E1
V1
C1
n1
D1
n2
E2
C2
V2
D2
C1
D1
左 から 右
n1
n2
C2
D2
Q2
Q1
(a)
図3
Q1
Q2
(c)
回 路構成
右 から 左
フラ イバ ック トラ ンス 方式 双方 向 DC/DCコ ンバ ータ
■多機能チョッパ方式
多機能チョッパは1つの回路で降圧チョッパ、昇圧チョッパ、昇降圧チョッパの全ての動作を行う
ことができる面白いチョッパ回路です。詳細は文献[2][3][4]を参照下さい。図4に多機能チョッパの
回路構成と4つの動作を示します。なお、図4(d)の昇圧降圧混合動作は昇降圧チョッパと同様に昇
圧も降圧も可能ですが昇降圧チョッパより損失を抑制できるお得な動作です。
この回路を図5のように2つ合体させれば双方向 DC/DC コンバータとなります。図5(a)は V1 が
入力、V2 が出力であり、電力の流れは左から右です。(b)は逆に V2 が入力、V1 が出力であり、電力
の流れが右から左です。L1、C1、C2 を共通部品として(a)と(b)を合体させれば図5(c)の双方向 DC/DC
コンバータとなります。
Q1∼Q4 に FET を使えば D1∼D4 は FET の寄生ダイオードで代用できます。
この回路の4種類の動作を図6に示します。電流径路を見れば、図6(a)∼(d)はそれぞれ図4(a)∼(d)
と全く同じ動作をしていることが分かります。図6では左から右に電力を伝達しています。この回路
は完全に左右対称なので右から左の電力伝達も同様に実現できます。
この回路はまさに多機能であり、いろんな動作が考えられます。以下に動作の例を示します。
(1) 左から右は昇圧動作、右から左は降圧動作。この場合は V1<V2 の条件が必要です。
(2) 左から右は降圧動作、右から左は昇圧動作。この場合は V1>V2 の条件が必要です。
(3) 左から右、右から左、共に昇降圧動作。この場合は V1 と V2 の大小関係は任意です。
(4) 左から右、右から左、共に昇圧降圧混合動作。(3)より効率向上が期待できます。
V1 または V2 の電圧変動が大で、V1 と V2 の大小関係が入れ替わるような用途では(3)または(4)で動
作させます。しかし、動作モードは自由に切替可能なので V1 と V2 の大小関係に応じて(1)と(2)を切
り替えるような動作も可能です。こうすれば(3)や(4)よりも損失の低減が期待できます。
2
Q1
Q1
Q2
Q2
Q 1 ON時
(a)
Q1 OFF 時
Q2 ON時
降圧 動作
(b)
Q2 OFF 時
昇圧 動作
L
Q1
Q1
vL
Vin
Vout
Q2
Q1 Q2 ON時
Q2
Q 1Q 2 OFF時
Q1Q 2 ON時
Q 1 ON Q 2 OFF時
(c)
昇降 圧動 作
( 非反 転昇 降圧 チョ ッパ )
(d)
図4
E1
C1
V1
Q1
L1
D3
V2
Q4
E1
(a)
多 機能 チョ ッパ ( V1 が 入力 V2 が 出力)
D1
C1
Q2
(b)
合体
L1
Q3
V1
昇 圧降 圧混 合動 作
多機能チョッパの4つの動作
C2
D2
Q1 Q2 OFF 時
D4
C2
V1
Q1
C1
Q2
E2
V2
(c)
D1
V2
E2
L1
D2
Q4
D4
多機能チ ョッ パ方 式双 方向 DC/DCコン バー タ
多機能チョッパ方式双方向 DC/DC コンバータ
3
D3
C2
多 機能 チョ ッパ ( V2 が 入力 V1 が出 力)
図5
Q3
D1
Q1
D2
Q4
(a)
C1
Q2
D4
Q3
(b)
Q1
C2
D4
図6
(d)
昇圧 動作
D1
Q3
D3
L1
Q2
(c) 昇 降圧 動作
( 非反 転昇 降圧チ ョッ パ)
D4
C2
C1
L1
D2
Q4
D2
Q4
Q2
D3
D3
L1
降 圧動 作
D1
Q3
C2
C1
L1
Q2
D1
Q1
C2
C1
Q1
D3
Q3
D2
Q4
D4
昇圧 降圧 混合 動作
多機能チョッパ方式双方向 DC/DC コンバータの各種動作
(左から右に電力を伝達する時)
■参考文献
[1] 平地克也、
「電圧型+電流型双方向 DC/DC コンバータ」
、平地研究室技術メモ No.20140104
[2] 平地克也、
「多機能チョッパ回路の御紹介」
、平地研究室技術メモ No.20120831
[3] 高見親法、平地克也、
「降圧チョッパ + 昇圧チョッパ縦続接続方式の研究」
、パワーエレクトロ
ニクス学会誌、Vol.36, p.178, 2011
[4] 高見親法、平地克也、三島智和、
「降圧チョッパ/昇圧チョッパ縦続接続方式の全動作モードの検
討」
、パワーエレクトロニクス学会誌、Vol.37, pp.89-96, 2012
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