初体験!トランジスタ・ アンプの設計と実験

特集 技術一直線! トランジスタ工房
トラウマ
解消
初体験! トランジスタ・
アンプの設計と実験
コレクタ電流 I C[mA]
加藤 大
電流I C の関係
とても重要な式なのでぜひ覚えよう.V BE の
変化に対する I C の変化量=グラフの傾き= g m .
I C = I S e VT
Δ=
VBE
∂I C
∂
gm =
=
I e VT
∂VBE ∂VBE S
∂VC
∂VBE
=
IC
VT
exp
VBE
とも書く
VT
特性式を偏微分するとg m が求まる
トランジスタの五つの基本特性
① ベース−エミッタ間電圧にコレクタ電流は敏感に反
応する
アナログ回路設計では,具体的な数値や関係を覚え
ることも大切です.ちょっと数式が出てきますが,単
純化して細かいことは気にしないことにします.
トランジスタの特性を示す基本は次式です.これだ
けは覚えてください.
式(1)は指数関数なので,図 1 に示すように V BE の
わずかな違いで,
IC が大きく変わります.これは,
「素」
のトランジスタ,すなわち第 1 章で解説した回路ブロ
ッ ク VCCS(Voltage Controlled Current Source, 電
圧制御電流源)のR E = 0 Ωのときのg m を表します.
② コレクタ電流を大きくすると増幅パワーが上がる
図 1 のグラフの傾きは,VCCS が電圧を電流に変換
する係数,相互コンダクタンスg m を意味します.g m は,
IC を VBE で偏微分して(VBE の変化に対する IC の変化
だけを考えて),以下のように求められます.
gm =
I C =I S e
(1)
IC : コ レ ク タ 電 流[A],IS : 飽 和 電 流[A],
VBE :ベース・エミッタ間電圧[V],VT :熱電
圧[V]
,e :自然対数の底
飽和電流I S は,V BE に逆向きに電圧を加えた時に流
IC
VT
(2)
例 え ば,I C = 1 mA の と き g m = 38 mS で,V BE を
1 mV 動かすと電流は 38 μA 変化します(図 2).コレ
RC
10k
VBE
VT
IC
1mA
VC
gm =
ΔVBE
=1mV
IC
VT
ΔIC =ΔVBE gm =ΔVBE
IC
VT
ΔVBE =1mV,IC =1mAのとき,
1mA
ΔIC =1mV×
=38μA
26mV
ΔVC =RC ΔIC =10kΩ×38μA
=380mV
れるほんの少しの電流のことで,デバイスにより値は
異なります.ポピュラな 2SC1815 では 0.01 pA のオー
ダです.熱電圧 V T は,温度(絶対温度)に比例する電
VBE を 1 mV 動かすとVC は 380 mV も動く.エミッタ抵抗を付けないト
圧で,室温
(300 K)では約 26 mV です.
ランジスタの能力は非常に高いが,安定に動作させるのが難しい
2014 年 8 月号
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0.6
ベース-エミッタ間電圧 VBE[V]
第 1 章では,トランジスタをどう使ったらいいか,
どうとらえたらいいかをイメージ中心にお話をしま
した.そろそろトランジスタの特性について少し詳
しく見ていきましょう.
前章では無視したトランジスタ自体の特性を具体
的な数字を使って考察してみましょう.すると,ト
ランジスタの動作に必要な条件が見えてきます.
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VBE
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図 1 重要なトランジスタの基本特性①
…ベース−エミッタ間電圧V BE とコレクタ
Dai Katoh
イントロダクション
第2章
恐るるに足らず!電卓片手に2 石
のシンプルな回路でやってみよう
図 2 重要なトランジスタの基本特性②…コレクタ電流I C と電圧
増幅能力g m の関係
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