2014/06/17 急性網膜壊死とは 急性網膜壊死の病態と診断基準 高瀬 博 • 急性網膜壊死は、単純ヘルペスウイルスまたは水痘帯状疱疹ウイルスの網 膜感染により生じる、予後不良の難治性疾患である • 本症の診断基準には、 American Uvei,s Society によって作成されたものがあ るが、その基準は主に臨床所見と経過のみからなり、眼内から検出されるヘ ルペスウイルスの存在は考慮されない (Holland GN. Am J Ophthalmol. 1994.) • 近年、PCRや抗体率測定などによる眼内液検査が一般臨床に急速に普及し つつあり、眼内からのヘルペスウイルスの検出を加味した診断基準の作成が 必要と考えられる American Uvei,s Society の診断基準 B. 急性網膜壊死の用語が用いられる基準 1. 急性網膜壊死は臨床所見と感染の経過からのみ診断される。 臨床所見は以下のものを含む a. 一つまたは複数の境界明瞭な網膜壊死病巣が周辺部網 膜に存在する b. 抗ウイルス薬の投与がなければ病巣は急送に進行する c. 病巣は円周状に拡大する d. 閉塞性網膜動脈炎が存在する e. 硝子体および前房に明らかな炎症反応がある Holland GN. Am J Ophthalmol. 1994;117:663-‐667.より和訳、引用 1 2014/06/17 2 2014/06/17 3 2014/06/17 当科における多項目迅速眼内液検査システム DNA抽出 細菌 保存領域 検査項目 16S rRNA スクリーニング検査 真菌 保存領域 28S rRNA ウイルスセット ぶどう膜炎、角膜炎セット 眼内リンパ腫 HHV 1〜8 結核、梅毒、バルトネラ IgH、TCR HTLV-1プロウイルス トキソカラ、トキソプラズマ 遺伝子再構成 アカントアメーバ Real-time 定量 PCR Multiplex 定性 PCR Real-time 定量 PCR (カンジダ、アスペルギルス) 定性 PCR Real-time 定量 PCR 二次検査 サイトカイン解析 (IL-10 / IL-6) 遺伝子配列解析→菌種の特定 診断基準項目の診断パラメータ 抗体率(Q値、Goldmann Witmer coefficient) 眼内液の病原微生物特異的 IgG / 眼内液の総 IgG Q値= 血清中の病原微生物特異的 IgG / 血清中の総 IgG 初期眼所見項目 感度 特異度 PPV NPV 前部ぶどう膜炎 または 豚脂様角膜後面沈着物 0.98 0.39 0.15 0.99 網膜滲出班が周辺部網膜に 存在、次第に癒合する 0.91 0.96 0.74 0.99 網膜動脈炎 0.76 0.93 0.55 0.97 視神経乳頭発赤 0.70 0.74 0.23 0.96 炎症による硝子体混濁 0.89 0.39 0.14 0.97 眼圧上昇 0.11 0.91 0.12 0.90 陰性 : 1>Q値 偽陽性: 6>Q値>1 陽性 : Q値>6 4 2014/06/17 診断基準項目の診断パラメータ 特異度 PPV NPV 病巣は急速に円周方向に拡大 0.59 0.99 0.82 0.95 多発性裂孔、網膜剥離 0.57 0.97 0.70 0.95 網膜血管閉塞 0.57 0.89 0.37 0.95 視神経萎縮 0.35 0.96 0.50 0.93 抗ヘルペスウイルス薬に反応 0.89 0.96 0.72 0.99 眼内液検査 感度 特異度 PPV NPV HSVまたはVZVが陽性 0.91 0.99 0.91 0.99 経過項目 感度 5
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