基礎物理学A(建築1)第13回 配付資料

第13回
○ 剛体の回転運動(つづき)
剛体の(原点のまわりの)角運動量は次式で表される。
L = Iω
(16’)
ここで,慣性テンソル I は,慣性モーメントと慣性乗積を行列要素とする次の対称行列である。
⎛ I xx
⎜
I = ⎜ −I xy
⎜
⎜⎝ −I zx
−I xy
I yy
−I yz
(
N
−I zx ⎞
⎟
−I yz ⎟
⎟
I zz ⎟⎠
)
(
N
慣性モーメント: I xx = ∑ m i y 2i + z 2i ,
i=1
(17)
)
N
(
I yy = ∑ m i z 2i + x 2i , I z z = ∑ m i x 2i + y 2i
i=1
N
慣性乗積: I xy = ∑ m i x i y i ,
i=1
N
N
i=1
i=1
)
(18)
Iyz = ∑ mi yi zi , Iz x = ∑ mi zi x i
i=1
(19)
(16)式を用いると角運動量の時間変化の式は,次のように表すことができる。
dL
=N
dt
→
d
( Iω ) = N
dt
(20)
とくに回転運動によって慣性テンソルが時間変化しないときには次式が成り立つ。
dω
I
=N
dt
(21)
【 演 習 】 重心のまわりの慣性テンソル I が時間変化しないときは,(15)式を(22)式のように書き表せる
ことを示しなさい。
dW d ⎛ 1
⎞ d L′
= ⎜ Mv2⎟ +
⋅ ω (15), ⎝
⎠ dt
d t dt 2
dW d ⎛ 1
⎞ d ⎛1
⎞
= ⎜ M v 2 ⎟ + ⎜ ω ⋅ Iω ⎟
⎝
⎠
⎝
⎠
d t dt 2
dt 2
(22) ○ 固定軸のまわりの剛体運動
固定軸を z 軸とすると, z 軸のまわりの回転角 θ を変数とするとして自由度1の運動である。
このとき,角速度,角速度ベクトル,角運動量は次のように表される。
ω = θ!
(1) ,
⎛ 0 ⎞
ω =⎜ 0 ⎟
⎜
⎟
⎝ ω ⎠
(2) ,
⎛ −I zx ω ⎞
⎜
⎟
L = ⎜ −I y z ω ⎟
⎜
⎟
⎜⎝ I z z ω ⎟⎠
(3)
I z z がこの回転運動によって変化しないから,角運動量の時間変化の式((20)式)の z 成分は次のよ
うに変形できる。
(
)
d
Izz ω = Nz
dt
→
Izz
dω
= Nz
dt
→
Izz
d 2θ
= Nz
dt2
(4)
・剛体振子(物理振子)
重力は質量中心に働く一つの力 Mg に置き換えられるから, z 軸から重心までの距離を h として
N z = −Mg h sin θ であり,(4)式は次のように変形される。
Mg h
d 2θ
=−
sin θ
2
Izz
dt
(5)
この式を単振子の運動方程式と比較すると,剛体振子は糸の長さが Mg h I z z の単振子と同一の運
動をすることがわかる。したがって剛体振子の小振幅振動の周期は,次式で与えられる。
T = 2π
Izz
(6)
Mg h
○慣性モーメントの計算
z 軸のまわりの慣性モーメント I z z を簡単のため I z で表すことにする。いろいろな形の剛体の慣性
モーメント I z を計算するときに役立つ関係がいくつかある。
・平行軸の定理: I z = I G + Mh 2
(7)
I G は,重心 G を通り z 軸に平行な軸のまわりの慣性モーメントで, z 軸と重心の距離を h とする。
【 演 習 】 質量 m i の質点の位置座標 (x i , y i , z i ) と重心 G に対する相対座標 ( x ′i , y′i , z ′i ) ,および G の位置
座標 (x, y, z ) との間に成り立つ以下の関係式を(18)式に代入し,平行軸の定理を導きなさい。
(x i , y i , z i ) = (x + x ′i , y + y′i , z + z ′i )
(8)
【 演 習 】z 軸に垂直な平面物体(と厚さが無限小の物体)では次の関係式が成り立つことを導きなさい。
Iz = Ix + Iy
(9)
質量が連続的に分布する剛体の慣性モーメントは,密度 ρ (x, y, z) を用いた体積積分により計算する。
N
(
)
N
(
)
I z = ∑ m i x 2i + y 2i = ∑ x 2i + y 2i ρ (x i , y i , z i ) Δv ⎯lim
⎯⎯⎯⎯
→ I z = ∫∫∫ ( x 2 + y 2 )ρ (x, y, z)dxdydz (10)
Δ
v→0
i=1
i=1
V
あるいは,面密度 σ (x, y) を用いて Oxy 平面上での面積積分によって計算することもできる。
N
(
)
N
(
)
I z = ∑ m i x 2i + y 2i = ∑ x 2i + y 2i σ (x i , y i ) Δ S ⎯lim
⎯⎯⎯⎯
→ I z = ∫∫ ( x 2 + y 2 ) σ (x, y)dS
Δ
S→0
i=1
i=1
面密度と密度の間の関係:
S
σ (x, y) =
z2 ( x,y)
∫
ρ (x, y, z) dz
z1 ( x,y)
(11)
(12)
【 演 習 】密度が一様な四角柱の慣性モーメント I z を計算しなさい。ただし,底面の辺の長さを 2a およ
び 2b ,高さを 2c ,質量を M とし,これらを用いて計算結果を表しなさい。四角柱の中心 O (重
心)を通る軸のまわりの慣性モーメントから,平行軸の定理を利用して z 軸に平行なほかの軸の
まわりの慣性モーメントも求めてみなさい。
z
z
2
2
2
ri = x i + y i
y
2c
ri
P ( xi, yi, zi )
P Δz
Δx Δy
O
x
mi = ρΔ v
= ρΔx Δ y Δz
2a
2b