MedeA:電池材料への適用事例紹介

技術情報
材料設計支援統合システム
MedeA:電池材料への適用事例紹介
MedeAは原子・分子レベルのシミュレーション技術を基に様々な材料の物性評価を行うための統合環境です。
本号12ページでの報告のとおり、5月20日にMedeAを用いた適用事例紹介を中心としたセミナーを開催しま
した。本稿では、セミナーでご紹介した事例の中から、電池材料を対象としたMedeAの適用事例を掲載します。
■ LiCoO2におけるLi占有率変化の影響
構造変化は、正極劣化の原因となり得るため、本来 避
エネルギーの効率的な発生/使用が社会的に要請さ
けたい事象です。このように(a)のプロットからは、過
れる現代において、それを実現するための技術や材料
充電として避けるべき領域に関する示唆を得ることが
の開発が強く求められています。そのためには、材料が
できます。
発現する物性に対する基礎的な理解を基とした新物質
一方、
(b)で示すプロットは全領域に渡り一定の傾きを
の探索が不可欠となります。
維持しています。これは、LiCoO 2が広い領域で一定の電
電池を構成する4つの主要コンポーネントである正極、
圧を提供することを意味しており、この点においてこの
負極、セパレータそして電解質のうち、正極材料につい
材料が優れていることを示しています。本計算値から得
ては、長寿命化の観点から、Liの充填/脱離に際しての構
られる電位は3.8-4.0 Vであり、ほぼ実測値と一致します。
造安定性が強く求められます。原子レベルのミクロな視
本稿で示した事例は、計算対象としては標準的なもの
点からは、充填/脱離に対する格子定数の変化がその指
を選択していますので新味に欠けますが、本アプローチ
標となります。以下に、Liイオン電池の代表的な正極材
は広範に亘る候補材料に適用可能であり、それら材料
料であるコバルト酸リチウムLiCoO 2を対象に、Li占有率
の基礎的な評価、スクリーニングなど、様々な目的に適
の変化に対する構造への影響をMedeA-VASPを用いて
用可能です。
検討した例をご紹介します。
次ページの報告にありますとおり、セミナーでは電池
図1に計算に用いたLiCoO 2 のモデル構造と計算過程
関連に加え、伝熱材料に関する事例も紹介しています。
の模式図を挙げます。単位格子をa, b両軸方向に2倍し
ご興味ございましたら、是非お問い合わせください。
たスーパーセルを基本構造とし、そこからランダムにLi
原子を一つずつ取り除き、MedeA-VASPによる構造最
適化とエネルギー評価を行いました。
図2にLi占有率を変化させた時のc軸長の変化(a)とLi
脱離に伴うエネルギー変化(b)のプロットを挙げます。
LiCoO 2はab面に沿ったCoO 2ユニットが層構造を形成し、
Liイオンが層間を拡散しLiの充填 /脱離が行われます。
従ってLi量の変化が及ぼす構造への影響はc軸に対して
最も顕著です。プロット(a)に示されるように、c軸長は
Li占有率が高い領域においては概ね線形に変化してお
り、CoO 2層の酸素イオンと層間に存在するLiイオンの間
の引力とイオン自体の存在による斥力のバランスが取れ
た状態であることを示していると考えられます。そして
(a)
Liの占有率が極端に低くなると、
( a)におけるx軸0.2付
近に見られるような、急激な変化が起こります。こうした
図1 LiCoO 2モデルにおけるLi占有率変化の模式図
(b)
図2 LiCoO 2モデルにおけるLi占有率を変化させた時の
(a)c軸長の変化と(b)脱離エネルギーの変化
11
セミナー 情 報
材料設計支援統合システム
MedeA:セミナー開催報告
MedeAの最新の適用事例を紹介するセミナーを5月20日、東京にて開催しました。今回は電池や熱電材料
に焦点を当て、原子レベルのシミュレーションが材料設計の現場で活用されている実例を紹介しました。企
業での研究開発でも関心の高い内容で、多くの方にご参加頂き盛況なセミナーとなりました(図1)。
■ 熱電材料の物性予測
Atomic Simulations for Thermoelectric Applications
■ 電池材料の物性予測
Atomic Simulations for Battery Applications
Sr. Scientist Volker Eyert, Materials Design Inc.
Sr. Scientist Volker Eyert, Materials Design Inc.
最新のMedeAでは、これまでの第一原理計算では推
MedeAでは、電池材料に関する次のような物性を評
算 の 難しかった 物 性を計算 で きるようになりました 。
価することができます。
Electronicsモジュールを使用することで、第一原理計算
・電極材の構造、熱力学的物性
を単に行い電子状態を求めるだけでなく、さらにその電
・Liの充填/脱離における電気化学ポテンシャル変化
子状態を解析し様々な物性を評価することができます。
・Liの充填/脱離における物質の体積変化
フェルミ面の表示や、電子・正孔の有効質量、電気伝導
・構造、組成、温度、Li充填量に依る拡散係数
度、ゼーベック係数等々を評価できます。
・電解質のLiの拡散(固体電解質およびイオン液体)
さらに、ハイブリッド汎関数等の精度の高い汎関数と
組み合わせて電子状態を評価することで、実測に近い
セミナーでは、典型的な例としてコバルト酸リチウム
物性値を得ることが可能となります。バンド構造を正確
LiCoO 2における電位の大きさや、Li充填/脱離における
に表現することは多くの物性値の評価に影響を与えます。
構造変化を評価した例を紹介しました(計算の詳細は
MedeAは実用的な物性値を精度の高い手法と組み合わ
本号11ページで紹介しています)。さらに、スピネル構造
せて利用することができ、材料設計の現場でも効果的
のLiM 2O 4についても同様の評価を行った適用例を紹介
なシミュレーションツールです。
しました。遷移金属をM=Mg, Al, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni,
セミナーでは実際の熱電材料として、テルル化ビスマ
Cuと組成を変えたときの構造変化の傾向を評価するこ
スBi 2Te 3における適用例を紹介しました。Bi 2Te 3に対して
とで、どのような組成のときにLi充填/脱離による構造変
スピン軌道相互作用を考慮した第一原理計算からバン
化が少なく安定した電池となるかを材料設計した例です。
ド構造を評価し、さらにゼーベック係数を推算しました。
正確なバンド構造から計算することで、実測を再現する
結果を得ることができました。
他、電気伝導度を求めた例としてモリブデナイトMoS2
への適用例も紹介しました。シリコンに代わる半導体材
料として期待されるMoS2は層状の結晶構造をもち、異方
的な電気伝導性をもちます。MedeA-Electronicsを利用す
ることで、層内方向および層間方向に分けて電気伝導度
を計算し、異方性を評価することができます。
図1 セミナー風景
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RSI ニュースレター
Vol. 21, No. 3, 2014
2014 年 7 月 1 日 発行
発行人 後藤 純一
発行所 株式会社菱化システム
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