小中連携にみるこれからの中学校英語教育の進め方

小中連携の視点からみる
これからの中学校英語の進め方
大阪市英語イノベーション事業統括アドバイザー
田縁眞弓
本日の流れ
1.小学校英語活動と大阪市の取り組み
2.中1生にみられる変化
3.フォニックスの系統的指導
4.中学校で伸ばせる力
公立小学校における外国語活動
・2011年春よりすべての公立小学校において高学年を対象とした英語活動が
始まった
・道徳とおなじ「領域」の位置づけ
・指導は学級担任を中心に行い、ALTや地域の英語のできる人材との
TTも奨励されている
・希望する小学校には、児童の数だけ「英語ノート1」「英語ノート2」が紙ベースで
配布され、それとともに 教師向けの指導書ならびにCDまた電子黒板用の
ICT教材も各学校に配布
・すでに前倒しで9割以上の小学校で指導がスタートしていたため大きな混乱は
みられなかった
・Hi,friends 1およびHi,friends 2 配布
・「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」で新たな枠組みが示される(昨年)
・リーダー育成スタート つくば研修 2014 夏
・特例校の先行実践
2015年スタート
各都道府県の取り組みが活発化
今後の動き
・2020年をめどに、小学校3年生から週1~2コマ、高学年からは教科化し週3コマ程度
(うち、15分を三回にわけたモジュール授業も行う)可能性
新学習指導要領
外国語を通じて,言語や文化について
体験的に理解を深め, 1.言語や文化への気付き
積極的にコミュニケーションを図ろうと
する態度の育成を図り,2.コミュニケーションへの関心・意欲・態度
外国語の音声や基本的な表現に慣れ親し
ませながら,コミュニケーション能力の
3.音声・表現への慣れ親しみ
素地を養う。
中学校英語
指導の目標
外国語を通じて
言語や文化についての(体験的に)理解を深め
積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の
育成を図り、
聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどの
(外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら)
コミュニケーション能力の(
)を養う
指導の指針
・音声を中心として進める
・文字や英語の読みは音声による
コミュニケーションの補助としてのみ指導する
・国語や我が国の文化も 指導の中に織り込む
小学校での英語活動
新学習指導要領から読み取れる指導者に求められるもの
1.児童の発達段階を踏まえ、興味関心を抱くような
学習内容と活動を設定できること
2.積極的にコミュニケーションを図ろうとする気持ちを
起こさせることが出来ること
3.英語の音声や基本的な表現に慣れ親しませる
ことができること
取り扱う主な語彙
アルファベット(大文字・小文字)、体の部位、数を表すことば(1~60)、色を表す言葉、
食べ物(果物、野菜、飲み物、おやつ、お菓子、食事のメニューなど)、スポーツ、
乗り物、動物、身につけるもの(洋服、持ち物)、色々な形を表す言葉、楽器を表す言葉、
身の回りにあるもの、曜日、学校科目、月の名称、行事、季節、家族の名前、
代名詞(you,we,me,us)
場所の名前、職業の名前
動詞
play swim cook ride turn go get up eat take a bath, watch
clean study want have
形容詞
fine, hungry, happy, sleepy, well, big, cool, cute, nice, beautiful
助動詞、疑問詞、副詞など
can, can not, very, together, where, right, left, straight
その他
10カ国以上の国の名前および首都の名前などが英語ノート2のCDに含まれる
総語彙数
約300
(動詞 15)
新学習指導要領における変更点
追加点
・小学校における外国語活動を通じて音声面を中心としたコミュニケーションに対する
積極的な態度などの一定の素地が育成されることを踏まえる
削除点
・英語を聞くことに慣れ親しみ、初歩的な英語を聞いて相手の意向などを
理解できるようにする
・英語で話すことに慣れ親しみ、初歩的な英語を用いて自分の考えなどを話すことが
できるようにすること
⇒従来中学校で行われていた「聞くこと」「話すこと」に慣れ親しむという活動は
小学校英語活動に託される
⇒小学校におけるコミュニケーション能力の素地を育成する目的は
中・高等学校の外国語科で目指すコミュニケーション能力を支えるものであり、
中学校における外国語科への円滑な移行を図る観点から目標として明示
(新学習指導要領解説 外国語活動編)
大阪市重点校(小学校)の取組
実施体制
• 1~6年生全学級
• 15分×3回(週)
• 基本担任が指導
カリキュラムの柱
音素や音韻認識能力向上のための音声イ
ンプット アルファベットジングルなどで音と文字の結び付け
歌やチャンツ 音源付絵本 DVD絵本を用
い内容を推測させながら多量の英語を聞
かせる
導入した単語・表現を使ってのコミュニカテ
ィブなやり取り 自分のことを伝えられる楽しさを体験
大阪市独自の総合的なカリキュラム作成
3年生
大阪市独自の総合的なカリキュラム作成
5年生
「新しい」中1生に見られる特徴
態度面
・人前で発表することを厭わない
・英語を積極的に聞いたり伝えようとする
知識面
・聞いてわかる英単語はたくさんある
・文字をなんとなく当て読み出来る子も いる
・英語の塊を類推しながら
聞こうとする姿勢は培われている
学習姿勢
・英語を学習ととらえていない子が多い
フォニックスの階段
(松香 2001)
音韻は言語音声から意識された要素として抽出された最小の単位で,フォネ
ームphonemeの訳語として音素と同じ意味に用いられることが多い。
音韻認識
Phonemic awareness
音素は音声の最小単位たる単音に対応する分節音素と強弱や高低アクセント
のように単音に対応しない超分節音素に分けられるが,このうち分節音素に
限り音韻と呼ぶこともある
音素認識
Phonological awareness
フォニックスのルール
84ルール
第1グループ 一語一音 子音 21 母音 5
第2グループ 2つの母音が重なるとき 一番目を名称読み(長母音) 2番目は読まない
eのついた母音 5 a_e e_e i_e o_e u_e
礼儀正しい母音 10 ai ay ea ee ey ie oa ow ue ui
第3グループ 2文字で新しい音
2文字子音 8 sh ch ph wh th th ck ng
2文字母音 8 oo oo ou ow oi oy au aw
第4グループ 混ざった音
2または3文字が各々の音を残しながら混ぜ合わせた音になる
連続子音 21
sm sn sk sp st sw bl br spr など
r のついた母音 5
ar er ir or ur
コミュニケーション
活動を支える読み
の力
簡単な英単語が
英語の絵本など
読み聞かせを
楽しむ
耳にした英語の
アルファベットの
一字一音がわかる
(音韻認識)
たくさんの英語の
音に楽しく触れる
歌・チャンツ・絵本
手遊び・ゲーム
文字を目で追う
読める
フォニックスルールの系統的指導
音韻認識指導
□
□
□
たのしい活動で気付きを後押し
先生が「発音のサンプル」とならず
に、必ずスタンダードな共通音源を使う
文字をみればそこに意味があることに
気付かせる
フォニックス指導
DO
少しずつ。
規則があることに気づくよう誘導
どんな規則か考えさせる
応用して読ませる
読めなかったり、間違ったときに
支援する
ライミングワードを使って練習
Don’t
一度にたくさんの規則を
導入する
規則を説明するだけ
単語の読み方を丸ごと
教える
誤りをすぐに訂正する
1音単位にこだわる
例外の説明をしすぎる
発音指導
Kawasaki (2012)
cat can cap ham
bat pan map jam
hat fan tap Pam
nine
tape
rain meet boat
May key row
blue
Eat pie
suit
第3グループ
oo oo
ou ow
oi oy
au aw
2文字母音
food moon spoon
book cook look
mouth house round
how now cow town owl
(× snow low yellow)
coin oil noise toy enjoy
August sauce cause jaw straw
フォニックスのルール
84ルール
第1グループ 一語一音 子音 21 母音 5
第2グループ 2つの母音が重なるとき 一番目を名称読み(長母
音) 2番目は読まない
eのついた母音 5 a_e e_e i_e o_e u_e
礼儀正しい母音 10 ai ay ea ee ey ie oa ow ue
ui
第3グループ 2文字で新しい音
2文字子音 8 sh ch ph wh th th ck ng
2文字母音 8 oo oo ou ow oi oy au aw
第4グループ 混ざりあった音
2または3文字が各々の音を残しながら混ぜ合わ
せた音になる
連続子音 21
sm sn sk sp st sw bl br spr など
r のついた母音 6
ar er ir or ur など
*フォニクスのグループ・名称は指導書により異なる
(参考We Can Phonics workbook mpi)
第4グループ 混ざりあった音
2または3文字が各々の音を残しながら混ぜ合わ
せた音になる
連続子音 21
sm sn sk sp st sw bl br
spr など
問題
あなたは中学校英語科教員です 同僚が
「小学校で英語をやってきたといっても聞き取り
が少し出来るようになったくらいの違いしかない
し、今まで通りきっちり英語の指導をすればい
いじゃないの?」と言いました。
さて
あなたはどのようにアドバイスしますか?
英語の授業で強みを十分に生かすには?
態度面
・人前で発表することを厭わない
・英語を積極的に聞いたり伝えようとする
・人前で発表する活動を取り入れる
(自己紹介・友達紹介・30秒スピーチ・show&tell)
・インフォメーションギャップを使った活動をたくさん
取り入れる
・教師のスモールトークなどでインタラクションを奨励
回数
重点校
研修
13
14
15
これ以降
日付
あいさつ
(5分)
歌・チャンツ
(3分)
フォニックス
(3分)
語彙
(5~8分)
読み聞かせ
(5分)
5文自己紹介
(3名、必ず事
前に
発表指導、拍
手)
teapot
5文自己紹介
(3名、必ず事
前に
発表指導、拍
手)
teapot
Rain, Rain,
Go Away
二重音字 子 No.11 国
No.12 動物
音
ch, sh, ph, th,
5文自己紹介
(3名、必ず事
前に
発表指導、拍
手)
Rain, Rain,
Go Away
二重音字 子 No.1~12
音
復習
gh, ck, ng, wh
Lesson 2-3 Program 53
This is…
She is, He is This is…
She is, He
is
8文自己紹介
Take me out
to the ball
game
(magic-e)
フォニックス 文字を見て
ルールを用い 言える
た音読開始 単 語 認 知
さまざまな 振り返りな
ど
音読活動
教科書の内容、ワーク、宿題
の指示・点検、その他(20分)
5月14
日(水)
絵本を音読し No.11 国
てみる、生徒に
読める単語を
選んでスライド
で示して全員
読みORT Stage
1より
の自動化
Floppy Floppy Lesson 2-1 Program 5(stage 1)
This is…
1
Who is it?
Is this
This is …
(stage 1)
(that)?
Is that…?
Big Feet
(stage 1)
Lesson 2-2 Program 5What’s
2
this?
Where
It’s a …
is…?
5文自己紹介
Hello.
My name is Mayumi Tabuchi.
Please call me Maami.
I like sports.
Nice to meet you!
5文自己紹介
Hello.
My name is ____________.
Please call me ________.
Hello, ________
I like ________.
Nice to meet you!
Nice to meet you too.
8文自己紹介
Hello.
My name is Mayumi Tabuchi.
Please call me Maami.
I am from Nakaoji-cho Sakyo-ku Kyoto.
I like sports.
I play tennis
I have a cat. His name is Tororo.
Thank you.
自己紹介活動のポイント
• しっかりしたキューでスタート
先生のキュー 全員のキュー 次の紹介
• 他の生徒を巻き込んだinteractiveな活動に
やり取り QA
感想
発表内容への興味を広げる
• 過分な負荷をかけない
• 教師によるモデルを示す
(できれば悪い例も)
「新しい」中1生に見られる特徴
態度面
・人前で発表することを厭わない
・英語を積極的に聞いたり伝えようとする
知識面
・聞いてわかる英単語はたくさんある
・文字をなんとなく当て読み出来る子も いる
・英語の塊を類推しながら
聞こうとする姿勢は培われている
学習姿勢
・英語を学習ととらえていない子が多い
英語知識を最大限に生かす
聞けばわかる単語数が多い
当て読みができる子もいる
(慣れ・気付き)
⇒自立した読みへ
スペルクイズなどの工夫
語彙の指導
• 語彙を聞けばだいたいわかる
• 絵をヒントに語彙がわかる 言える
• 単語を見てすぐに音声化でき同時に意味が
わかる (単語認知の自動化)
(活動例) PPTで絵のヒントなしに読む ランダムに読む
一人で読む ペアで読む 全体で読む 四方読み
立って読む 時間を決めて読む など
音読の指導
• ORTを使って
PPT⇒読ませたいところで止める
1.2とキューを与える
教師は後読み・あるいは over lapping
アナログ本⇒ペア読み(小学校ですでにスタート)
個人読み 4人読みなど
• 教科書を使って
内容理解・多様な音読・ポストリーディング
多様な音読の例
•
•
•
•
•
•
Listen and repeat (pair work)
Buzz reading (standing)
Reading while walking
Read, look up and say
Listen and finish the sentence.
Shadowing
参考資料 安井(2010)
Phonics is concerned with the word recognition dimension of
the ‘simple view of reading’.
The purpose of high quality phonic teaching is for children to secure the crucial
skills of word decoding that lead to fluent and automatic reading, thus freeing
them to concentrate on the meaning of the text.(p.10)
Primary National Strategy 2007
日本のフォニックスを使った指導では、音声と文字との関連ルールに
児童の注意を向けているが、それが目的ではなく、その段階を早く
卒業して、そういう関連ル-ルを意識しなくても発話(あるいは文章)
の意味に集中できるようになることが最終目的である
小学校英語活動を
中学校英語につなぐ
英語への姿勢を最大限に生かす
よく英語を聞き、反応し、伝えようとす
る態度 (コミュニケーション)
⇒正確であることを求めすぎて、
その素地を損なわない指導
文法指導
小学校英語活動を
中学校英語につなぐ
類推力を最大限に生かす
英語の塊を類推しながら
聞こうとする姿勢は培われている
⇒テキストをかたまりとして指導
多読につなげる
4技能統合指導
中学校での英語の授業
指導で変わるべきところ
1.小学校で慣れ親しんだ音声から引き続き音声を重視し文字へ
2.実際の場面での適切な使い分け
3.基本的な読み書き
4.今まで触れてきたような英語を帰納的に文法構造の把握へ導く
5.高校ではスキルの統合を図り意思伝達のために必要な
コミュニケーション能力をバランスよく指導する
(相川 2010)
聞き取りの力に自信を持たせる
・全部わからなくてもわかろうとする姿勢を
評価されてきた学習集団
・聞いて、わかる単語を拾わせ、確認する
・絵本や歌の聞き取り
・まず音声で聞かせてそれから文字で確認
文法事項の理解
・必ず場面を与えて音声による導入
・説明は最小限に⇒音声ドリル⇒書くドリル
内在化しアウトプットへ
・文法指導の順番を考慮
一般動詞⇒疑問詞⇒CAN⇒過去形
知識としてではなく使える文法として指導
(be動詞・複数形・三人称単数の指導への注意)
参考文献 一部
英語ノート1.2 Hi,friends 1 2 文部科学省
小学校学習指導要領解説 外国語活動編 文部科学省
中学校学習指導要領解説外国語 文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chu/gai.htm
金谷憲 (2009) 英語授業ハンドブック 大修館書店
田縁眞弓、岡本織華、三ツ木由佳(2007)小学校中学年における読みの指導
『小学校英語教育学会紀要』第8号
田縁眞弓・岡本織華.2008.「小学校中学年における読みとその内容理解に関する研究
」『小学校英語教育学会紀要』第9号
Cameron, L.2001. Teaching Language to Young Learners.
Cambridge University Press.