Ni基合金Alloy 617の母材および溶接継手の高温引張

電力中央研究所報告
火 力 発 電
Ni 基合金 Alloy 617 の母材および溶接継手の高
温引張および疲労特性評価
キーワード:先進超々臨界圧,ニッケル基超合金,溶接継手,引張,疲労
背
報告書番号:Q13001
景
Ni 基合金 Alloy 617 は、先進超々臨界圧発電プラント(A-USC)の有力な候補材料の
一つである。しかしながら、熱膨張係数は従来の高 Cr フェライト鋼より大きく、AUSC プラントの蒸気温度も USC プラントより上昇することから、厚肉部に適用した場
合発生する熱応力が大きくなる可能性がある。さらに、大型部材としての製造性の問
題から、現在の USC プラントより溶接継手部が多くなる。したがって、A-USC プラン
トの実機部材としての健全性を確保するためには、Alloy 617 母材および溶接継手の熱
応力による損傷を精緻に評価しなければならない。しかし、その評価に必要な低ひず
み速度下での引張特性や疲労特性は明らかにされていない。
目
的
Ni 基合金 Alloy 617 の母材および溶接継手の高温引張特性、繰返し変形特性および疲
労寿命を把握する。
主な成果
Alloy 617 の母材および溶接継手を用い、目標とされる蒸気温度である 700℃での引張
および疲労試験を実施し、以下の知見を得た。
(1) 母材の 0.2%耐力は動的ひずみ時効(図 1)によりひずみ速度の低下に伴って大き
くなったが、破断伸びは顕著に低下する傾向を示した。溶接継手試験片の 0.2%耐力は
母材のそれより大きく、破断伸びは逆に小さくなった(図 2)。また、ひずみ速度の低
下に伴い、破壊形態は粒内破壊から粒界破壊へ遷移することがわかった。
(2) 母材の真破断ひずみは、動的ひずみ時効領域で最も小さい値を示した。切欠き試
験片の真破断ひずみは、多軸応力の効果により平滑試験片より小さいが、いずれも最
小 10%程度の値を維持した(図 3)。
(3) 母材および溶接継手両方とも繰返し硬化特性を示し、寿命中期においては初期引
張特性の相違によらず、それぞれ一定の応力-ひずみ関係 注 1)を示すことがわかった
(図 4)。全ひずみ範囲が同じ場合、溶接継手試験片の疲労寿命は母材より小さく、主
き裂はすべて溶接金属で発生した(図 5)。また、応力振幅で母材および溶接継手の疲
労寿命を統一的に整理できることがわかった(図 6)。
今後の展開
今後、同材料のクリープと疲労の重畳する負荷条件下での挙動を把握するとともに、
高精度なクリープ疲労寿命評価法を開発する。
動的ひずみ時効
母材
溶接継手
-1
10 %/s
10-4%/s
BM
0.2

○
□
●
■
700℃
WM
700℃
粒界破壊(10-4%/s)
WM
BM
粒内破壊(10-1%/s)
破断位置:BM(母材)、WM(溶接金属)
図 1 700℃での母材の応力-ひずみ
関係および破面観察
図 2 0.2%耐力と破断伸びのひずみ
速度依存性
全ひずみ範囲
1.0%
0.7%
0.5%
0.4%
第 1 サイクル
○
△
▽
◇
寿命中期
●
▲
▼
◆
動的ひずみ時効領域
引張応力-ひずみ関係
700℃
700℃
図 3 母材の真破断ひずみとひずみ
速度との関係
図 4 母材の引張変形と繰返し変形特性
の比較 注 1)
主き裂
母材
溶接金属
母材
0.7%での溶接継手試験片の破損写真
700℃
WM
WM
WM
700℃
主き裂発生位置:WM(溶接金属)
図 5 全ひずみ範囲による疲労寿命の整理注 1)
図 6 応力振幅による疲労寿命の整理
注 1)材料の繰返し変形特性は応力振幅-ひずみ振幅で表示し、疲労寿命は全ひずみ範囲で整理することが多い。
研究担当者
張
聖徳(材料科学研究所 構造材料領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 材料科学研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 046-856-2121(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
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平成26年4月発行
13-007