統計学的手法を用いたMonochromatic Imaging におけるアーチファクト低減に関する検討 埼玉医科大学総合医療センター 中央放射線部 ⃝ 松澤浩紀 長谷川彩香 中根淳 小林芳春 この研究発表の内容に関する利益相反事項は、 ☑ ありません 公益社団法人 日本放射線技術学会(JSRT) 第61回関東部会研究発表大会 背 景 Dual Energy CTにおけるMonochromatic Imagingが ✤ ✤ 造影コントラストの最適化 1) ビームハードニングアーチファクトの低減 2) に、有用との報告がなされている。 1) Matsumoto K. Virtual monochromatic spectral imaging with fast kilovoltage switching: improved image quality as compared with that obtained with conventional 120-kVp CT. Radiology 2011; 259:257‒262 2) Lin XZ. High-definition CT Gemstone spectral imaging of the brain: initial results of selecting optimal monochromatic image for beam-hardening artifacts and image noise reduction. J Comput Assist Tomogr 2011; 35(2):294-7 しかし、Monochromatic Imagingにおける 統計学的な性質が、明らかにされていない 状況で定量評価が行われている。 面内のCT値分布が不均一の場合、特定の定量評価 における信頼性が問われる可能性がある。 目 的 Monochromatic Imagingにおけるアーチファクト 低減効果に対して、統計学的手法を用いた物理評価 と視覚評価による検討を行った。 ! さらに、Monochromatic Imageの面内均一性に ついても検討した。 使用装置・機器 X線CT装置 Discovery CT 750HD (GE社) 実効エネルギー測定用自作鉛コリメータ 線量計 RaySafe Xi (Unfors RaySafe社) Chest Phantom N-1 LUNGMAN (Kyoto Kagakku社) CT性能評価用ファントム:Catphan CTファントム (The Phantom Laboratory社) 頭部補償リング 方 法 I. 実効エネルギー測定 半価層から実効エネルギーを測定した。 ! II. 物理評価 ! 胸部フ ァント ム Normal Scan画像とMonochromatic Imageの各画像において、 アーチファクトを位置パラメータで評価した。 III.視覚評価 ! を使用 Normal Scan画像とMonochromatic Imageの各画像を 正規化順位法を用いて視覚評価した。 IV.面内均一性評価 頭部補償リングを装着したCT性能評価用ファントムを使用し、 Q-Q plotから面内の均一性を評価した。 結果_実効エネルギー I. 実効エネルギー測定 半価層から実効エネルギーを測定した。 ! II. 物理評価 ! Normal Scanの画像とMonochromatic Imageの各画像において、 回転照射法を用いて半価層を求め、 アーチファクトを位置パラメータで評価した。 III.視覚評価 ! 実効エネルギーを算出した。 Normal Scanの画像とMonochromatic Imageの HVL:9.7mmAl 各画像を視覚評価した。 実効エネルギー(140kV):62keV IV.面内均一性評価 頭部補償リングを装着したCT性能評価用ファントムを使用し、 Q-Q plotから面内の均一性を評価した。 結果_物理評価 Normal Scan画像(140kV)とMonochromatic Image(60∼140keV) の各画像において、アーチファクトを位置パラメータで評価した。 各keVにおける位置パラメータ 60 keV 140kVにおける位置パラメータ:48.0 Location Parameter 48 45 140kVにおける位置パラメータ:36.4 Location Parameter 60 50.5 45.8 62 46.7 42.4 70 43.2 39.7 80 39.5 35.9 90 36.5 34.2 100 34.2 31.4 110 32.5 29.4 120 31.5 27.9 130 31.0 26.8 140kV 48.0 36.4 36 30 15 0 50 60 70 80 90 100 keV 110 120 130 140 150 結果_視覚評価 Normal Scan画像(140kV)とMonochromatic Image (62、80、100、140keV)の各画像を視覚評価3)をした。 3) 中前光弘. 順位法を用いた視覚評価の信頼性について:順序尺度の解析と正規化順位法による尺度構成法. 日本放射線技術学会誌 2000; vol.56 no.5:725-739 Kendall s coefficient of concordance W=0.73 62keV Chi-square test Xr2=29 X2(4,0.05)=9.49 Xr2>X2(4,0.05) 140keV 140kV 80keV -1 100keV 0 1 Good Bad 0.91 0.42 not significant scale 0.63 0.11 l.s.d.(5%)=0.45 62keVが最も劣っていた。 100keVが最も優れていた。 80keVと140keVには有意差がなかった。 140kVと140keVには有意差がなかった。 結果_面内均一性評価 頭部補償リングを装着したCT性能評価用ファントムを使用し、 統計学的手法であるQ-Q plotから面内の均一性を評価した。 各画像におけるQ-Q plot 4 Normal Scan 3 kV 140 直線性 あり 均一性 高 2 Quantile 1 0 Monochromatic Imaging -1 62keV 80keV 100keV 120keV 140keV 140kV -2 -3 -4 -20 -10 0 10 20 30 CT Value 40 50 60 70 keV 低 高 直線性 あり なし 均一性 高 低 考察_1 Monochromatic Imagingにおいて、アーチファクトに対する 物理評価と視覚評価が一致しない可能性がある。 物理評価:80keV以上がアーチファクト量少ない 視覚評価:100keVが最も良い 140keVと140kVには有意差がない 一方だけではなく、両者の結果から 総合的に評価する必要があると考える。 考察_2 高keVになるにつれて、面内のCT値がガウス分布していなかった。 ガウス分布していないと… SD等の指標を用いる場合は注意が必要である。 NPS等の測定についても、方法によっては正確に 画像のノイズ特性を示していない可能性がある。 Monochromatic Imageの評価において、 面内の正規性を確認することが重要である。 結 論 Monochromatic Imageは、Normal Scan画像と比較すると、 限定的であったがビームハードニングアーチファクトの低減 に有用であった。 本検討においては 100keV > 140kV ! さらに、Monochromatic Imagingを評価する際には、事前に 統計学的性質を理解する必要があることを明らかにした。
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