モータ開発者が語る 実用例にみる SR モータ応用機器開発 第2回 システム設計 ―広い速度領域をカバーする応用事例 連載 日本電産 見城尚志* Nidec SR Drives Steve Randall** Nidec SR Drives Mike Turner*** *けんじょう たかし:技術顧問 **スティーブ・ランダル:Head of Machines Technology ***マイク・ターナー:Technical Director SRD 社(Switched Reluctance Drives 社,現 Nidec SR Drives 社,以降当社と記す)が,SR モー タのプロトタイプ開発の段階を経て,最初の製品 モータ設計における“Holistic design” と“System−level design” を送り出したのは 1983 年だが,このとき開発の キーとなったのがマイクロプロセッサの利用であ った。そこで,まず SR モータの特徴を理解する マイクロプロセッサを利用したデジタル化の結 ために,マイクロプロセッサ導入前後での制御法 果,SR モータの応用は一気に広がりを見せるこ について振り返っておきたい。 とになる。ランダルによると SRD 社で設計され SR モータにおいて,インバータに使うパワー て製品になった用途は多岐にわたっており, 素子のスイッチイング・タイミング制御はトルク ・キッチン,掃除機,洗濯機など家電用 と速度に関係する。アナログ時代にはダイオード ・スライディングドアのアクチュエータ とオペアンプを組み合わせて非線形関数を合成し ・遠心分離機用 ていた。このようなアナログ回路のパラメータ設 ・織物機械 定は経験則によっていた。 ・ポンプ,コンプレッサー,コンベヤなどの産 デジタル化は,まずアナログ方式をなぞるよう な発想で TTL や CMOS IC を豊富に使うデジタル ハードウェアを設計から始まった。非線形関数の 業用 ・(乗用車,バス,トラック,オフロード用) EV 用駆動モータ 処理には EPROM を使ったが,間もなく ASIC が ・鉄道車両用空調機 使えるようになった。それと並行してマイクロプ ・SR 発電機 ロセッサも発達して,A⊘D,D⊘A 変換型の出現に とさまざまな分野・機種に及ぶ。重量でいうと数 よってタイミングの柔軟な調整がしやすくなった。 百グラムから数トンまで,速度では数万 rpm,ト メモリを使ったルックアップ・テーブルを非線形 ルクでは数 10 kNm にまで及ぶ。 処理に導入して,これが今日でも使われている。 少人数であった SRD 社が,これだけ多岐にわ 第 57 巻 第 12 号(2013 年 12 月号) 71
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