OK邸/埼玉県草加市 WA邸/埼玉県草加市 後期高齢者(75歳以上)の脱衣

OK邸/埼玉県草加市
建物種別
建物構造
断熱性能
脱衣室用暖房
建物備考
被験者特記
測定機器
WA邸/埼玉県草加市
戸建て
木造軸組工法
旧省エネ(S55)基準以下
浴室壁設置のガス式バス乾燥暖房機を利用
S62年築 窓ガラスはシングル
建物種別
建物構造
断熱性能
脱衣室用暖房
建物備考
82歳 男 現在要支援1 単身居住
ここ数年大腸癌、心臓横動脈瘤
被験者特記
測定機器
血圧計:HEM-7115/オムロン
温湿度ロガー:ELUSB-2-LCD/Lascar Electronics Inc.
サーモグラフィカメラ:i5/FLIR
室温計測帯:AL自作
二酸化炭素濃度計:GC-02/GOD ABILITY
室温計:Laserliner Multitest Master
2012年冬脱衣・浴室
温熱環境+血圧測定
後期高齢者(75歳以上)の脱衣・入浴時における温熱環境及び血圧の測定/2012年冬季
戸建て
木造軸組工法
旧省エネ(S55)基準以下
石油ファンヒーターを利用
S56年増築 窓ガラスはシングル
浴室は2方窓
75歳 男 3人居住
糖尿病
血圧計:HEM-762/オムロン
温湿度ロガー:ELUSB-2-LCD/Lascar Electronics Inc.
サーモグラフィカメラ:i5/FLIR
室温計測帯:AL自作
二酸化炭素濃度計:GC-02/GOD ABILITY
室温計:Laserliner Multitest Master
1
7
・・・・・・・・・・・住宅、被験者、測定機器概要
外部
暖房乾燥機
エアコン
予備脱衣前には
エアコン暖房を
いれてLD同等に
温めている
エ
外部
CH=2450
CH-300
浴室
寝室
イ
ウ
脱衣室
FL+1400
洗濯
エアコン
廊下
廊下室温
13.0°C/2012/2/19/21:00
15.5°C/2012/2/24/21:05
TV
居間
S
FL+100
ア
C
※暖房はエアコンによる
1
2
3
4
S
5m
ア
脱衣前(起床活動時の定位置)
イ
膝が悪く、脱衣室が狭いため
寝室のベットに腰掛け、肌着(上下)へ予備脱衣
ウ
脱衣後
エ
入浴後5分
居間 垂直温度分布測定/2012/02/19
時間帯
着衣前
二酸化炭素濃度(ppm)
07:00~22:00/起床活動
AVG 1026
18:00~21:00/入浴前後
AVG 1147
※冬季において調理時の機械換気、日常の窓開閉による換気は殆どなし
再入浴後7分
動線平面図
2012年冬脱衣・浴室
温熱環境+血圧測定
C
居間 二酸化炭素濃度測定/2012/01/29
2
後期高齢者(75歳以上)の脱衣・入浴時における温熱環境及び血圧の測定/2012年冬季
7
・・・・・・・・・・・動線平面図、居間環境測定【OK邸】
OK邸〈事前暖房無〉2012/02/19/20:16脱衣~20:40着衣
OK邸〈事前暖房有〉2012/02/24/20:03脱衣~20:34着衣
※浴室壁付のガス式バス乾燥暖房機(室間開放)を脱衣前20分間のみ運転
※浴槽内湯温度は41°C
230
28
100
230
28
100
220
27
95
220
27
95
210
26
90
210
26
90
200
25
85
200
25
85
190
24
80
190
24
80
180
23
75
180
23
75
170
22
70
170
22
70
160
21
65
160
21
65
150
20
60
150
20
60
140
19
140
19
130
18
130
18
120
17
45
120
17
45
110
16
40
110
16
40
100
15
35
100
15
35
90
14
30
90
14
30
80
13
25
80
13
25
70
12
20
70
12
20
60
11
60
11
50
10
50
10
40
9
40
9
50
血圧(mmHg)・脈拍数(回/1分間)
55
相対湿度(%rh)
240
29
55
50
相対湿度(%rh)
29
室温(°C)
240
室温(°C)
血圧(mmHg)・脈拍数(回/1分間)
※浴槽内湯温度は41°C
2012年冬脱衣・浴室
温熱環境+血圧測定
ア
ウ
エ
エ
ウ
ア
ウ
エ
エ
ウ
脱
衣
前
脱
衣
後
入
浴
後
5
分
再
入
浴
後
7
分
着
衣
前
脱
衣
前
脱
衣
後
入
浴
後
5
分
再
入
浴
後
7
分
着
衣
前
収縮期血圧(最高血圧)
拡張期血圧(最低血圧)
ア
~ ウ 動線平面図に位置表示
脈拍数
室温※脱衣前―居間、脱衣後・着衣前―脱衣室
入浴後―浴室
後期高齢者(75歳以上)の脱衣・入浴時における温熱環境及び血圧の測定/2012年冬季
相対湿度※測定場所は室温に同じ
3
7
・・・・・・・・・・・各状況温湿度、血圧、脈拍測定値グラフ【OK邸】
CH=2450
CH-300
浴室
エ
廊下室温
13.5°C/2012/2/18/20:05
12.5°C/2012/2/25/20:30
外部
洗濯
ウ
FL+1400
石油
ファンヒータ 脱衣室
廊下
チェスト
C
エアコン
外部
TV
FL+300
居間
ア
S
石油ストーブ+ヤカン
※暖房は石油ストーブとエアコンによる
1
2
3
4
S
5m
居間 垂直温度分布測定/2012/02/02
時間帯
ア
脱衣前(起床活動時の定位置)
ウ
脱衣後
エ
入浴後5分
着衣前
07:00~22:00/起床活動
AVG 2536 超
17:00~20:00/入浴前後
AVG 2918 超
※計測限界3000ppm超を含
※冬季において調理時の機械換気以外の日常の窓開閉による換気は殆どなし
再入浴後7分
動線平面図
二酸化炭素濃度(ppm)
2012年冬脱衣・浴室
温熱環境+血圧測定
C
居間 二酸化炭素濃度測定/2012/01/28
4
後期高齢者(75歳以上)の脱衣・入浴時における温熱環境及び血圧の測定/2012年冬季
7
・・・・・・・・・・・動線平面図、居間環境測定【WA邸】
WA邸〈事前暖房無〉2012/02/18/19:05脱衣~19:33着衣
WA邸〈事前暖房有〉2012/02/25/19:26脱衣~20:55着衣
※脱衣室の石油ファンヒーターを脱衣20分前から着衣後まで運転
※浴槽内湯温度は42°C
※夕食時日本酒100cc程飲
230
28
100
230
28
100
220
27
95
220
27
95
210
26
90
210
26
90
200
25
85
200
25
85
190
24
80
190
24
80
180
23
75
180
23
75
170
22
70
170
22
70
160
21
65
160
21
65
150
20
60
150
20
60
140
19
140
19
130
18
130
18
120
17
45
120
17
45
110
16
40
110
16
40
100
15
35
100
15
35
90
14
30
90
14
30
80
13
25
80
13
25
70
12
20
70
12
20
60
11
60
11
50
10
50
10
40
9
40
9
50
血圧(mmHg)・脈拍数(回/1分間)
55
相対湿度(%rh)
240
29
55
50
相対湿度(%rh)
29
室温(°C)
240
室温(°C)
血圧(mmHg)・脈拍数(回/1分間)
※浴槽内湯温度は42°C
2012年冬脱衣・浴室
温熱環境+血圧測定
ア
ウ
エ
エ
ウ
ア
ウ
エ
エ
ウ
脱
衣
前
脱
衣
後
入
浴
後
5
分
再
入
浴
後
7
分
着
衣
前
脱
衣
前
脱
衣
後
入
浴
後
5
分
再
入
浴
後
7
分
着
衣
前
収縮期血圧(最高血圧)
拡張期血圧(最低血圧)
ア
~ ウ 動線平面図に位置表示
脈拍数
室温※脱衣前―居間、脱衣後・着衣前―脱衣室
入浴後―浴室
後期高齢者(75歳以上)の脱衣・入浴時における温熱環境及び血圧の測定/2012年冬季
相対湿度※測定場所は室温に同じ
5
7
・・・・・・・・・・・各状況温湿度、血圧、脈拍測定値グラフ【WA邸】
【OK邸】 埼玉県草加市(男82歳)
定
脱
衣
室
事
前
暖
房
値
無
各
測
差
経
過
順
脱
衣
室
事
前
暖
房
有
室温差(°C)
湿度差(%rh)
収縮期血圧差(mmHg)
脈拍差(回/1分間)
室温差(°C)
湿度差(%rh)
収縮期血圧差(mmHg)
脈拍差(回/1分間)
居 寝
室
-10
間 脱
居 寝
室
+1
間 脱
脱
脱
衣
衣
+30
前
後
脱
脱
衣
衣
+6
前
後
居 寝
室
+6
間 脱
居 寝
室
-10
間 脱
脱
脱
衣
衣
+4
前
後
脱
脱
衣
衣
±0
前
後
廊 脱
衣
下 室
廊 脱
衣
下 室
-55
+8
廊 脱
衣
下 室
廊 脱
衣
下 室
-9
+2
+1.5
浴槽湯+30
+23.5
入
浴
5
入
浴
5
室
浴
室
下
再
着
入
衣
-11
浴
前
7
再
着
入
衣
-3
浴
前
7
脱
廊
-2.5
衣
浴槽湯-18.5 室 下
脱 廊
衣
+2
室 下
再
着
入
衣
-3
浴
前
7
再
着
入
衣
-3
浴
前
7
-29
+6
+2
浴槽湯+14
室
浴
+1.5
入
浴
5
入
浴
5
室温(°C)
21
床表面温度(°C)
15
環境
二酸化炭素濃度(ppm)
-5
浴槽湯-30
浴
起床活動時の定位置〈居間〉
※ほとんど滞在している
浴
1147
室
-22
+10
-10.5
脱
衣
室
脱
衣
室
廊
【WA邸】 埼玉県草加市(男75歳)
居 居
+10
下
廊
上下温度差(°C)
【FL+0.1⇔1.1m】
相対湿度(%rh)
-21.5
NON
NON
-1.5
-21.5
NON
NON
間 間
居 居
間 間
居 脱
衣
間 前
居 脱
衣
間 前
居 居
間 間
居 居
間 間
居 脱
衣
間 前
居 脱
衣
間 前
廊 脱
衣
下 室
廊 脱
NON
衣
下 室
-8
+3
+36
-2
脱
衣
後
脱
衣
後
-1
-2
+7
廊 脱
衣
下 室
廊 脱
衣
下 室
-1
+6
-29
脱
衣
後
脱
衣
後
-19
+2
室
入
浴
5
入
浴
5
-27
+6
-1.5
浴
浴槽湯+21
室
浴
+23.5
室
入
浴
5
入
浴
5
室温(°C)
21.5
63
床表面温度(°C)
16
二酸化炭素濃度(ppm)
室
浴
+16.5
4.7
※暖房はエアコンによる
※加湿は電気加湿機による
浴
+1.5
浴槽湯+29
+8
+5
2918 超
脱 廊
衣
室 下
脱 廊
+0.5
NON
衣
室 下
再
着
入
衣
+12
浴
前
7
再
着
入
衣
±0
浴
前
7
脱 廊
+5.5
衣
浴槽湯-14 室 下
脱 廊
-30.5
衣
室 下
再
着
入
衣
-1
浴
前
7
再
着
入
衣
+5
浴
前
7
-1.5
浴槽湯-29
居
+8
-27.5
間
居
NON
間
居
NON
間
居
-5
間
居
+1
間
居
NON
間
居
NON
上下温度差(°C)
【FL+0.1⇔1.1m】
相対湿度(%rh)
間
居
間
7.1
62
※暖房は石油ストーブとエアコンによる
※加湿はストーブ上のやかんによる
■調査の背景と概要
■結果と考察
一般的にヒートショックと言われ、高齢者が暖房されていない脱衣・浴室における冬季入浴に伴う
□脱衣室への暖房:無のケース
血圧変動のリスクには脱衣時の急激な血圧上昇による脳出血、入浴時(高温浴)の急激な血圧低下
による脳梗塞・心筋梗塞・脱水・血液粘度上昇・起立性低血圧による失神があると言われています。
【OK邸】・【WA邸】の室間温度差はともに5°Cをかなり超えるなかで、収縮期血圧の変動幅は95mmHg
と56mmHg。脱衣から着衣までの時間30分という短時間での変動幅としては大きい。※未測定ではあり
そこで先の1・2月、実際に後期高齢者(75歳以上)が暮らす寒い住宅(旧省エネ(S55)基準以下)にて
脱衣・入浴時の気温と血圧の変化を測定しました。ケースとしては脱衣室(浴室)への暖房の有・無
ますが、入浴1分後の血圧は驚愕反射により脱衣後よりも高くなると言われていることから更に変動幅は
大きいことを想定する必要があります。
についてです。参考的に測定したものとしては脈拍、相対湿度。また被験者の身体機能形成への
影響が大きいと思われる起床活動時の定位置(居間)についての温熱環境も測定しました。
脈拍数について、変動結果からは明確な事象は見当たりません。
相対湿度について、測定値はすべて50%rh以上で特に関係する事象は見当たりません。
本調査の分析により、居住者が年を取ってもできるかぎり自力でADL(日常生活動作)を確保し、
QOL(生活の質)を高められる住環境づくりの具体的な「見える化」に役立てられればと考えています。
6
後期高齢者(75歳以上)の脱衣・入浴時における温熱環境及び血圧の測定/2012年冬季
7
・・・・・・・・・・・各測定値差、起床活動定位置環境、所見
□脱衣室への暖房:有のケース
【OK邸】・【WA邸】の室間温度差はともにほぼ5°C程度以下で、収縮期血圧の変動幅は34mmHgと
12mmHgと入浴1分後の驚愕反射による上昇分が反映されていないとは言え、無暖房に比べ約36%と
21%に低下し、一般的に言われる1日の血圧変動幅程度(10~30mmHg)に近づいています。
脈拍数について、変動結果からは明確な事象は見当たりません。
相対湿度について、測定値はすべて50%rh以上で特に関係する事象は見当たりません。
【WA邸】居間から脱衣室へ移動する途中にある非暖房の廊下を通過するとは言え、未着衣状態の
脱衣室(浴室)では居間の室温より高い、24-5°Cを超えるよう暖房をすれば、血圧変動幅の減少が
期待できます。
□起床活動時の定位置(居間)における温熱環境の身体機能形成への影響
【OK邸】・【WA邸】とも室温は21°C程度ですが、後期高齢者ということから療養環境的配慮として
22~23°Cが望ましいと考えられます。また、上下温度差が3°Cを超え、床表面温度も15-6°Cと低く、
足に対する寒さが強いことから、平穏時の血圧の高さを上げる要因になっていると思われます。簡易
な改善方法としては足元に電気マット(40cm角)を敷き、低温火傷に注意しながら使用することです。
相対湿度は62-3%rhで、インフルエンザや老人性乾皮症の予防には好ましい。
24時間換気や気密性がない住宅(事務所ではない)なうえ、居住者には冬季に窓を開けて換気をする
という認識が極めて乏しいことから、二酸化炭素濃度の適性化≒作業の効率化という理解がないので
1000ppmを超えている。特に【WA邸】では暖房器具に開放型石油ストーブを使用していることから
3000ppm以上になり、一酸化炭素中毒化の懸念を持つ。しかし、住宅に気密性のないことが幸いし、
湯沸しや調理に利用できる開放型石油ストーブの使用を今後止めさせることは容易ではないでしょう。
■今後の課題
□ADLとQOLの視点での住環境づくりを実現するために
・高齢者は暑さや寒さに対してよく我慢していると言われます。一方では年を重ねるごとに冷温覚の
感受性低下が進み、なかでも足が顕著です。実体としては冷温覚がにぶり、「寒い」ことについての
認識が乏しいまま、身体を寒い環境下に置いていると言う方が正しいのではと思います。よって、
高齢者の主観によらず温度計などの環境計測データを確認したうえで住環境をコントロールする
ガイドをわかりやすく示す必要があります。 ・脱衣室の温熱環境の改善が健康と快適性に寄与することに異論ありませんが、【OK邸】の測定時に
気づいたことがあります。脱衣室への暖房がなかったときの脱衣行為には寝室のベットに腰掛けて
ブリーフ姿までの予備脱衣がありました(暖房がある現在も)。要支援認定を受ける居住者は下肢の
動作機能があまり好ましくないことから、狭い脱衣室での行為にストレスを感じていたようです。
こと身体機能に固有の不安がある高齢者の住環境づくりには温熱環境にとどまらず、ADLとQOLの
観点から総合的に問題や解決案の有効性を「見える化」すべく工夫が今後、必要と考えられます。
7
後期高齢者(75歳以上)の脱衣・入浴時における温熱環境及び血圧の測定/2012年冬季
7
・・・・・・・・・・・所見2