2013 多変数関数の微分積分 津川 光太郎 平成 26 年 2 月 17 日 概要 この講義ノートは講義受講者の便利のため web 上におきました. しかし, こ のノートの内容は公開するに十分な質のものでは無いため, 一般人には見つかり にくい位置に隠して置きました. 万が一受講者以外でこのノートを目にしてい る人がいる場合には, このような事情を考慮の上でひっそりとご利用ください. 目次 0 イントロ 0.1 記号等 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 0.2 既知とする結果 (主に一変数の微分積分から) . . . . . . . . . . . . . . 2 2 2 1 N 次元ユークリッド空間と多変数関数の極限・連続性 2 2 「全」微分・偏微分と連鎖律 8 3 高階の偏微分とテイラーの定理 12 4 極値問題 16 5 陰関数定理 (1) とラグランジュ乗数法 19 6 陰関数定理 (2) 22 7 重積分 (1) 26 8 重積分 (2) と面積 30 9 重積分と逐次積分 34 10 重積分の変数変換 38 11 広義積分 42 1 12 線積分とグリーンの定理 (ベクトル解析入門) 46 13 最後に 50 イントロ 0 0.1 記号等 定理, 系, 定義, 注意, 補題, 例には section で通し番号を付ける. N 次元ベクトル の成分を右下の添え字を用いて x := (x1 , · · · xN ) と表記するので, 数列やベクトル (m) 列に関する添え字 {xm }∞ = m=1 と紛らわしい場合がある. そのような場合には x (m) (m) ∞ (x1 , · · · , xN ) のように右上の添え字を用いる. また, 混乱のない場合には {xm }m=1 を {xm } と略記する. N, Q, R はそれぞれ自然数, 有理数, 実数全体とする. 断りのな い限り N, M, j, k, l, m, n ∈ N, p, q, r, s, t ∈ R, a, b, c, x, y, z ∈ RN とする. 特に 2 次元 や 3 次元の場合を考えるときには (x, y) ∈ R2 , (x, y, z) ∈ R3 という表記法を主に用 いる. 「弧状」連結などと書くときは「」内の語は省略可能. ベクトルが縦か横かは 明記しなかったり意図的に混同したりするので文脈で判断して欲しい. 基本的には, ベクトル値関数は f = t (f1 , · · · , fN ) と縦ベクトルとし, RN の点 x = (x1 , · · · , xN ) は 横ベクトルとする. 板書のためのノートであり, 板書量を減らすため論理記号を多用 したり, 文章の語尾を省略するなどしてある. 正しく読みやすい日本語の文章では無 いので注意. 0.2 既知とする結果 (主に一変数の微分積分から) • R の完備性 (コーシー列は収束する.) • ボルツァノ・ワイエルストラウスの定理 (R の有界列は収束する部分列を含む.) • 一変数の中間値の定理, テイラーの定理 .. . 1 N 次元ユークリッド空間と多変数関数の極限・連続性 定義 1.1. (N 次元ユークリッド空間) RN := {x := (x1 , · · · , xN ) | 1 ≤ ∀ j ≤ N, xj ∈ R} 2 とし, x, y ∈ RN , a ∈ R に対し, ax := (ax1 , · · · , axN ), x + y := (x1 + y1 , · · · , xN + yN ), (x, y) := x · y := x1 y1 + · · · + xN yN (内積), √ |x| := (x, x) = (x21 + · · · + x2N )1/2 ≥ 0 (絶対値, 長さ) と定める. 注意 1.2. N 次元ベクトル空間に内積を導入したものを N 次元ユークリッド空間と (x,y) いう. θ := cos−1 |x||y| により, 我々が良く知っている “角度” が導入される (ここで用 いる cos 関数は, テーラー展開を利用して cos a := 1 − a2 /2 + a4 /24 · · · と定義する か, 微分方程式 f ′′ = −f, f (0) = 1, f ′ (0) = 0 の解として定義する). 定理 1.3. x, y ∈ RN に対し, 以下が成立. (i) |(x, y)| ≤ |x||y| (シュワルツの不等式) (ii) |x| − |y| ≤ |x + y| ≤ |x| + |y| (三角不等式) √ (iii) max1≤k≤N |xk | ≤ |x| ≤ N max1≤k≤N |xk | Proof. (i) ∀ t ∈ R に対し 0 ≤ |x + ty|2 = (x + ty, x + ty) = |x|2 + 2t(x, y) + t2 |y|2 . こ れは t の二次関数であり, 判別式より D = |(x, y)|2 − |x|2 |y|2 ≤ 0. (ii) 右式についてはシュワルツの不等式より |x + y|2 = (x + y, x + y) = |x|2 + 2(x, y) + |y|2 ≤ (|x| + |y|)2 . よって |x + y| ≤ |x| + |y|. 左式については, 右式の x へ x + y, y へ −y を代入すると, |x| ≤ |x + y| + |y|. よって |x| − |y| ≤ |x + y|. (iii) |x| の定義により明らか. 定義 1.4 (ベクトル列の収束). {xm } ⊂ RN , x ∈ RN とする. def {xm } が極限 x に収束 ⇐⇒ |xm − x| → 0 (m → ∞). (m) (m) 命題 1.5. {x(m) } ⊂ RN , x ∈ RN , x(m) = (x1 , · · · , xN ), x = (x1 , · · · , xN ) とする. (m) {x(m) } が x に収束 ⇐⇒ 1 ≤ ∀ k ≤ N に対し {xk } が xk に収束. √ (m) (m) Proof. 定理 1.3 の (iii) より max1≤k≤N |xk −xk | ≤ |x(m) −x| ≤ N max1≤k≤N |xk − (m) xk |. よって |x(m) − x| → 0 ⇐⇒ |xk − xk | → 0 (1 ≤ ∀ k ≤ N ). 定義 1.6 (コーシー列). {xm } ⊂ RN とする. def {xm } がコーシー列 ⇐⇒ |xm − xn | → 0 (m, n → ∞) ⇐⇒ ∀ ε > 0, ∃ M ∈ N s.t. “∀ m, ∀ n ≥ M =⇒ |xm − xn | < ε”. def 3 定理 1.7 (RN の完備性). {x(m) } ⊂ RN とする. {x(m) } が収束する ⇐⇒ {x(m) } がコーシー列. Proof. (=⇒) 極限を x とすると, |x(m) − x(n) | = |x(m) − x + x − x(n) | ≤ |x(m) − x| + |x(n) − x| → 0 (m, n → ∞) (⇐=) R1 については既知とする. (m) (m) x(m) = (x1 , · · · , xN ) とすると, 定理 1.3(iii) より 1 ≤ ∀ k ≤ N に対し {xk } はコーシー列. R1 の完備性よ (m) り ∃ xk ∈ R s.t. xk → xk (m → ∞). ここで x := (x1 , · · · , xN ) とすると, 命題 1.5 よ り x(m) は x に収束. (m) 定理 1.8 ((多次元の) ボルツァノ・ワイエルストラウスの定理). {x(m) } ⊂ RN とする. {x(m) } が有界 (∃ M > 0 s.t. supm∈N |x(m) | < M ) =⇒ {x(m) } は収束する部分列を 含む. (m) Proof. R1 については既知とする. {x(m) } が有界なので, 定理 1.3(iii) より {x1 } も (m ) (m1,n ) 有界. よって収束する部分列 {x1 1,n }∞ } は有界かつ n=1 が存在する. よって {x (m1,n ) 第一成分が収束する. 次に {x } の第二成分について同様にして部分列を選ぶと, 有界かつ第一, 二成分が収束する部分列 {x(m2,n ) } が得られる. これを N 回繰り返せ ばよい. 定義 1.9 (距離). x, y ∈ RN に対し, 二点 x, y 間の距離を以下で定める. d(x, y) := |x − y| 定理 1.10 (距離の性質). ∀ x, ∀ y, ∀ z ∈ RN に対し以下が成立する. • d(x, y) ≥ 0, “d(x, y) = 0 ⇐⇒ x = y”. • d(x, y) = d(y, x). • d(x, z) ≤ d(x, y) + d(y, z). 注意 1.11. N 次元ユークリッド空間は上記の d を距離として完備な (コーシー列は 必ず収束する) 距離空間となる. 距離の性質を満たす関数はこれ以外にも沢山ある. 例えば d1 (x, y) = max1≤k≤N |xk − yk | として距離空間を定義することも出来る. d を 用いても d1 を用いても定理 1.3 より位相的性質 (収束性や開集合などの概念) は変わ らない. 4 定義 1.12 (曲線). I : R 上の区間 (つまり [p, q], [p, q), (p, q], (p, q), (−∞, q], (−∞, q), [p, ∞), (p, ∞), (−∞, ∞) のいづれか) x : I ∋ t 7→ x(t) ∈ RN , 連続 (つまり ∀ t0 ∈ I, x(t) → x(t0 ) (t → t0 )) とする. このとき x(t) を RN 内の連続曲線といい, x(t) は曲線 C を定めるという. I = [p, q] のとき x(p) を始点, x(q) を終点, さらに x(p) = x(q) のとき C は閉曲線と いう. さらに, 1 ≤ ∀ k ≤ N に対し xk (t) ∈ C 1 (I) かつ |x′ (t)| ̸= 0 (∀ t ∈ I) のとき滑らかな曲線という. 注意 1.13. C1 : x(t) := (cos 2πt, sin 2πt), t ∈ [0, 1], ( ) C2 : x(t) := cos πt(t + 1), sin πt(t + 1) , t ∈ [0, 1], とすると, C1 , C2 の像は同じであるが別の曲線である. 定義 1.14 (内点, 外点, 境界). a ∈ RN , r > 0 に対し Br (a) := B(a, r) := {x ∈ RN | |x − a| < r} 開球, B r (a) := B(a, r) := {x ∈ RN | |x − a| ≤ r} 閉球, A ⊂ RN とする. def (i) a は A の内点 ⇐⇒ ∃ ε > 0 s.t. B(a, ε) ⊂ A. def (ii) a は A の外点 ⇐⇒ ∃ ε > 0 s.t. B(a, ε) ⊂ Ac (補集合, complement). def (iii) a は A の境界点 ⇐⇒ (i),(ii) を満たさない. (iv) A の内部 Aint とは A の内点全体. (v) A の外部 Aext とは A の外点全体. (vi) A の境界 ∂A とは A の境界点全体 (つまり ∂A = RN \ {Aint ∪ Aext }). (vii) A := A ∪ ∂A を A の閉包という. 定義 1.15 (開集合, 閉集合). def • G ⊂ RN が RN の開集合 ⇐⇒ G = Gint (⇐⇒ ∀ a ∈ G, ∃ ε > 0 s.t. B(a, ε) ⊂ G). def • F ⊂ RN が RN の閉集合 ⇐⇒ F = F . 5 注意 1.16. RN 全体および空集合 ∅ は RN の開集合かつ閉集合. 定理 1.17. ∂F ⊂ F ⇐⇒ F は閉 ⇐⇒ F c は開 ⇐⇒ “{xm } ⊂ F, xm → x =⇒ x ∈ F ” Proof. 略 定義 1.18 (連結, 領域). A ⊂ RN とする. def • A は弧状連結 ⇐⇒ ∀ a, ∀ b ∈ A, ∃ x(t), t ∈ [0, 1] (連続曲線) s.t.∀ t ∈ I, x(t) ∈ A, x(0) = a, x(1) = b. • 「弧状」連結な開集合を領域という. 定義 1.19 (集積点, 孤立点). A ⊂ RN , a ∈ RN とする. def • a は A の集積点 ⇐⇒ ∃ {an } s.t. an → a (n → ∞), an ̸= a (∀ n ∈ N). def • a は A の孤立点 ⇐⇒ a ∈ A かつ a は A の集積点ではない. 定義 1.20 (定義域, 値域). A ⊂ RN とする. f : A ∋ x 7→ f (x) ∈ RM が与えられたとき. D(f ) := A を f の定義域, f (A) を f の値域という. ただし, B ⊂ A に対し f (B) := {f (x) | x ∈ B} とし, f (B) は B の像という. 定義 1.21 ((多変数ベクトル値関数の収束・極限)). A ⊂ RN , f : A → RM , a : A の集積点 とする. def x → a のとき f (x) が極限 b に収束する (f (x) → b) ⇐⇒ ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. “x ∈ A, 0 < |x − a| < δ =⇒ |f (x) − b| < ε”. 定義 1.22 (多変数ベクトル値関数の連続性). A ⊂ RN , f : A → RM , a ∈ A とする. def f (x) が x = a で連続 ⇐⇒f (x) → f (a) (x → a) ⇐⇒∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. def “x ∈ A, |x − a| < δ =⇒ |f (x) − f (a)| < ε”. 注意 1.23. 6 (i) f (x) が x = a で不連続 ⇐⇒∃ ε > 0, ∀ δ > 0, ∃ x ∈ A s.t. def |x − a| < δ, |f (x) − f (a)| ≥ ε. (ii) a が A の孤立点であるとき, x → a なる点列は存在しないので, 必ず f (x) は x = a で連続. 定理 1.24 (RN 上の中間値の定理). Ω : RN の領域, f : Ω → R, 連続とする. このとき f (Ω) は区間である. Proof. “a, b ∈ Ω, f (a) < y < f (b) =⇒ y ∈ f (Ω)” を示す. R1 については既知とする. Ω : 連結より ∃ x(t), t ∈ [0, 1](連続曲線) s.t. ∀ t ∈ [0, 1], x(t) ∈ Ω, x(0) = a, x(1) = b. g(t) := f (x(t)) は [0, 1] 上連続よって R1 の中間値の定理より 0 < ∃ θ < 1 s.t. y = g(θ) = f (x(θ)). x(θ) ∈ Ω なので y ∈ f (Ω). 定理 1.25 (コンパクト集合上の連続関数の最大値の存在). F ⊂ RN : 有界閉, f : F 上連続 =⇒ f は F 上で最大値・最小値をとる. (∃ ) xM , ∃ xm ∈ F s.t. f (xm ) ≤ f (x) ≤ f (xM ) (∀ x ∈ F ) Proof. (一変数の場合と同じ) 最大値のみ示す. (Step 1) f (F ) が上に有界であることを示す. 上に非有界とすると ∃ {xn } ⊂ F s.t. f (xn ) → ∞. ボルツァノ・ワイエルストラウスの定理より ∃ x ∈ RN , ∃ {xnk } ⊂ F s.t. xnk → x. 閉集合の性質より x ∈ F , つまり x は f の定義域に含まれる. よって連続 性より f (xnk ) → f (x) だがこれは矛盾. (Step2) f (F ) は上に有界だから実数の性質より上限 p が存在する. 上限の性質より ∃ {yn } ⊂ f (F ) s.t. yn → p. {xn } ⊂ F を f (xn ) = yn を満たすよう選ぶ. ボルツァ ノ・ワイエルストラウスの定理より ∃ x ∈ RN , ∃ {xnk } s.t. xnk → x. 閉集合の性質よ り x ∈ F であり, 連続性より f (x) = p. よって f は x で最大値 p をとる. 定義 1.26 (一様連続). B ⊂ A ⊂ RN , f : A → RM とする. def f が B 上一様連続 ⇐⇒ ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. “x, y ∈ B, |x − y| < δ =⇒ |f (x) − f (y)| < ε” 定理 1.27 (コンパクト集合上の連続関数の一様連続性). F ⊂ RN : 有界閉, f : F → RM , F 上連続 =⇒ f は F 上一様連続. 7 α_1+α_2 α_2 α_1 (a,f(a)) f(a) (a,f(a)) x_2 a 1 (α_1,α_2) 1 x_1 図 1: 超平面 (N = 2) 図 2: 接超平面 (N = 2) Proof. (一変数の場合と同じ) 背理法による. f は F 上連続だが一様連続ではないと する. このとき ∃ ε > 0, ∃ {xn }, ∃ {yn } ⊂ F s.t. |xn − yn | < 1/n, |f (xn ) − f (yn )| ≥ ε. (1.1) ボルツァノ・ワイエルストラウスの定理より {xnk } → a. これと (1.1) より {ynk } → a. 連続性より k → ∞ のとき f (xnk ) → f (a), f (ynk ) → f (a). これは (1.1) に矛盾. 「全」微分・偏微分と連鎖律 2 注意 2.1 (一次関数). a, α ∈ RN とし, 以下の一次関数を考える. f (x) = f (a) + α · (x − a) (x ∈ RN ). 幾何的意味 (図 1):これを満たす (x, f (x)) ∈ RN +1 の集合は (a, f (a)) を通る勾配ベク トル (N = 1 のときは傾き) が α の超平面 (N = 1 のときは直線) である. |x − a| = 1, θ は α と x − a のなす角とすると α · (x − a) = |α||x − a| cos θ が最大となるのは θ = 0 のとき. よって α は点 x = a における超平面の最急勾配方向を指している. 定義 2.2. D(f ) ⊂ RN , f : D(f ) → R, a ∈ D(f )int とする. • f (x) が x = a で「全」微分可 ⇐⇒∃ α ∈ RN s.t. f (x) = f (a) + α · (x − a) + o(|x − a|) def :::::::::::::::::::::::::::: f (x) − f (a) − α · (x − a) =0 x→a |x − a| ⇐⇒∃ α ∈ RN s.t. lim def (⇐⇒超曲面 (x, f (x)) が (a, f (a)) の近傍で超平面によって近似できる) 8 • 上の波線部の式を超曲面 (N = 1 のときは曲線)(x, f (x)) の接超平面 (N = 1 の ときは接線) という (図 2). def • 領域 Ω で「全」微分可 ⇐⇒ Ω の各点で「全」微分可 • f : x = a で微分可なとき, f ′ (a) := grad f (a) := α とする (グラディエント (勾 配) と読む). 定義 2.3. D(f ) ⊂ RN , f : D(f ) → R, a ∈ D(f )int , v ∈ RN , |v| = 1 とする. ( f (a + hv) − f (a) h→0 h ) lim と定義する場合もある Dv f (a) := lim h→+0 とし, f (x) の x = a における v 方向の方向微分係数という. 特に, ek := (0, · · · , 0, 1, 0, · · · , 0) (第 k 成分のみ 1) のとき ∂ f (a) : = Dek f (a) ∂xk ( f (a1 , · · · , ak−1 , ak + h, ak+1 , · · · , aN ) − f (a1 , · · · , aN ) ) = lim h→0 h とし, f (x) の x = a における xk 変数に関する偏微分係数という. 全ての偏微分作用 素を並べた作用素を ( ∂ ∂ ) ∇ := ,··· , ∂x1 ∂xN としナブラと読む (このノートでは ∇ は必ず横ベクトルとする). 注意 2.4. 定義より明らかに, 全微分可 =⇒ 連続. 定理 2.5 (「全」微分と偏微分の関係). D(f ) ⊂ RN , f : D(f ) → R, a ∈ D(f )int とする. このとき f (x) : x = a で「全」微分可 =⇒ 全ての方向に方向微分可で Dv f (a) = f ′ (a) · v. これより全ての変数について偏微分可であり ( ∂ ) ∂ ∇f (a) := f (a), · · · , f (a) = f ′ (a). ∂x1 ∂xN Proof. 定義 2.2 を定義 2.3 へ代入すると, α · (hv) + o(|hv|) = α · v = f ′ (a) · v h→0 h Dv f (a) = lim より前半を得る. 後半は v = ek として ∂ f (a) := Dek f (a) = f ′ (a) · ek = αk ∂xk より. 9 定理 2.6. Ω : RN の領域, f : Ω → R, Ω 上 xk (1 ≤ ∀ k ≤ N ) に関して偏微分可とする. 1 ≤ ∀ k ≤ N に対し ∂f が Ω で連続 =⇒ f は Ω 上「全」微分可. ∂xk Proof. 任意に a ∈ Ω をとり固定. Ω は開集合なので ∃ r > 0 s.t. B(a, r) ⊂ Ω. gk := ∂f は x = a で連続なので ∂xk ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. “|x − a| < δ =⇒ 1 ≤ ∀ k ≤ N, |gk (x) − gk (a)| < ε. (2.1) 以下, |x − a| < δ を満たす x について考える. r(x) := f (x) − f (a) − ∇f (a) · (x − a) とおき r(x) = o(|x − a|) を示せばよい. r(x) = f (x1 , · · · , xN ) − f (a1 , · · · , aN ) − g1 (a)(x1 − a1 ) − · · · − gN (a)(xN − aN ) = r1 (x) + · · · + rN (x). ただし ( ) r1 (x) : = f (x1 , x2 , · · · , xN ) − f (a1 , x2 , x3 · · · , xN ) − g1 (a)(x1 − a1 ), ( ) r2 (x) : = f (a1 , x2 , · · · , xN ) − f (a1 , a2 , x3 , · · · , xN ) − g2 (a)(x2 − a2 ), .. . ( ) rk (x) : = f (a1 , · · · , ak−1 , xk , · · · , xN ) − f (a1 , · · · , ak , xk+1 , · · · , xN ) − gk (a)(xk − ak ) , I .. . とした. ここで [ ]xk ∫ xk I = f (a1 , · · · , ak−1 , t, xk+1 , · · · , xN ) = gk (a1 , · · · , ak−1 , t, xk+1 , · · · , xN ) dt, ak ak ∫ xk II = gk (a) 1 dt. ak よって ∫ xk rk (x) = gk (a1 , · · · , ak , t, xk+1 , · · · , xN ) − gk (a) dt. ak ここで (2.1) を用いると |rk (x)| ≤ |xk − ak |ε. これより |r(x)| ≤ N max |xk − ak |ε ≤ N |x − a|ε. k つまり lim x→a |r(x)| ≤ N ε. |x − a| ε > 0 は任意だったので r(x) = o(|x − a|). 10 II 定理 2.7. Ω : RN の領域, f : Ω 上全ての xk に関して偏微分可, 1 ≤ ∀ k ≤ N に対し ∂f (x) ≡ 0 (∀ x ∈ Ω) =⇒ ∃ C ∈ R s.t. f (x) ≡ C (∀ x ∈ Ω). て ∂xk Proof. 概略. ∀ B(a, ε) ⊂ Ω 上で示せば十分. 1 変数に関する結果を既知とし, 各変数 xk に関して繰り返し用いればよい. 定義 2.8 (合成写像). f : RN ⊃ A ∋ x 7→ f (x) ∈ RM , g : RM ⊃ B ∋ y 7→ g(y) ∈ RL , かつ f (A) ⊂ B とする. φ : A → RL を φ(x) := g(f (x)) (∀ x ∈ A) と定めたとき, これを f と g の合成写像と いう. 以下, ベクトル値関数は縦ベクトルとする. つまり f1 (x) f2 (x) .. . f (x) = = f1 (x1 , · · · , xN ) f2 (x1 , · · · , xN ) .. . . fM (x1 , · · · , xN ) fM (x) 定義 2.9. ∂(f1 , · · · , fM ) Jf := := ∇f = ∂(x1 , · · · , xN ) ∂f1 ∂x1 .. . ∂fM ∂x1 ··· ··· ∂f1 ∂xN .. . ∂fM ∂xN とし f のヤコビ行列という. 特に, N = M のとき |Jf | = det ∂(f1 , · · · , fN ) ∂(f1 , · · · , fN ) = ∂(x1 , · · · , xN ) ∂(x1 , · · · , xN ) をヤコビ行列式 (ヤコビアン) という. 定理 2.10. N = 1, M ∈ N, L = 1 とし, f, g は定義 2.8 を満たし, f (x) は x = a ∈ A で, g(y) は y = f (a) で微分可とする. このとき, φ = g(f (x)) : R ⊃ A → R に関して 以下が成立. φ′ (a) = ∇g(f (a))f ′ (a). 注意 2.11. L = M = N = 1 のときは φ′ (a) = g ′ (f (a))f ′ (a). 11 定理の結果を ∂φj に適用し, 縦横に並べることにより以下を得る. ∂xk 系 2.12. L, M, N ∈ N とし, f, g は定義 2.8 を満たし, f (x) は x = a ∈ A で, g(y) は y = f (a) で微分可とする. このとき, φ = g(f (x)) : RN ⊃ A → RL に関して以下が 成立. ∇φ(a) = ∇g(f (a))∇f (a). つまり ∂φ1 ··· ∂x1 .. . ∂φL ··· ∂x1 ∂φ1 ∂xN .. . ∂φL ∂xN = ∂g1 ··· ∂y1 .. . ∂gL ··· ∂y1 ∂g1 ∂yM .. . ∂gL ∂yM ∂f1 ∂x1 .. . ∂fM ∂x1 ··· ··· ∂f1 ∂xN .. . ∂fM ∂xN . Proof of 定理 2.10. φ(a + h) − φ(a) = g(f (a + h)) − g(f (a)) (定義 2.2 より) = ∇g(f (a))(f (a + h) − f (a)) + o(|f (a + h) − f (a)|) (ここで |h| → 0 のとき |f (a + h) − f (a)|/|h| → f ′ (a) なので) = ∇g(f (a))(f ′ (a)h + o(|h|)) + o(|f (a + h) − f (a)|) = ∇g(f (a))f ′ (a)h + o(|h|). 3 高階の偏微分とテイラーの定理 ここでは断りのない限り Ω : RN の領域, f : Ω → R とする. ∂f 定義 3.1. f (x) が Ω 上 xj に関して偏微分可かつ が xk に関して偏微分可なとき ∂xj fxj xk := ∂ ( ∂f ) ∂ 2f := ∂xk ∂xj ∂xk ∂xj とする. 3 階以上の偏微分についても同様. 定理 3.2 (シュワルツの定理). Ω 上 fxk , fxj xk , fxj が存在し fxj xk が連続 =⇒ Ω 上 fxk xj も存在し fxj xk = fxk xj . 12 Proof. xj , xk 以外の変数を固定することにより, N = 2 の場合に帰着される. よって 以下を示せばよい. “f : R2 ⊃ Ω ∋ (x, y) → f (x, y) ∈ R, Ω 上 fx , fy , fxy が存在し fxy は連続 =⇒ Ω 上 fyx も存在し fxy = fyx ” 任意の (a, b) ∈ Ω を一つとり固定する. 以下 fyx (a, b) の存在と fxy (a, b) = fyx (a, b) を 示す. 平行移動 fe(x, y) = f (x + a, y + b) により (a, b) = (0, 0) の場合のみ示せばよい. h ̸= 0, k ̸= 0 とし ∆k f (x) := f (x, k) − f (x, 0) とすると ∆k f (x) = fy (x, 0) k→0 k (3.1) lim また ∆k f (x) に x について平均値の定理を用いると ∆k f (h) − ∆k f (0) = (∆k f )x (θh) (0 < ∃ θ < 1) h = fx (θh, k) − fx (θh, 0) よって ∆k f (h) − ∆k f (0) fx (θh, k) − fx (θh, 0) = hk k (ここで fx (θh, y) に y について平均値の定理を用いると) = fxy (θh, ξk) (0 < ∃ θ, ∃ ξ < 1). fxy の連続性より ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. |∀ h| < δ, |∀ k| < δ, ε >|fxy (θh, ξh) − fxy (0, 0)| 1 { ∆ f (h) ∆ f (0) } k k − fxy (0, 0) ((3.2) より) = − h k k 1( ) ((3.1) より) → fy (h, 0) − fy (0, 0) − fxy (0, 0) h (k → 0). つまり以下が得られた. fy (h, 0) − fy (0, 0) = fxy . h lim h→0 定義 3.3. m ∈ N ∪ {0} とする. def f ∈ C m (Ω) (f は Ω 上 C m 級) ⇐⇒ m 階までの全ての偏導関数が Ω 上連続. def m f ∈ C ∞ (Ω) (f は Ω 上 C ∞ 級) ⇐⇒ ∀ m ∈ N, f ∈ C m (Ω)(⇐⇒ f ∈ ∩∞ m=1 C (Ω)). 13 (3.2) 定義 3.4 (多重指数). αk ∈ N ∪ {0} (1 ≤ k ≤ N ) とする. α = (α1 , · · · , αN ) を多重指数と呼ぶとき, |α| := α1 · · · + αN , α! := α1 !α2 ! · · · αN !, ∂ α f := ∂ |α| , ∂xα1 1 · · · ∂xαNN xα := x1α1 · · · xαNN (x ∈ RN ), とする. ∑ 注意 3.5. m 次以下の多項式は Pm (x) = |α|≤m cα xα , ∑ m 次斉次多項式は Qm (x) = |α|=m cα xα と書ける. 命題 3.6 (二項定理の一般化). x ∈ RN , k ∈ N のとき N (∑ )k xi = ∑ k! xα . α! |α|=k i=1 例 3.7. N = 3, k = 5 のとき 5! 4 1 0 5! 5 0 0 x1 x2 x3 + x x x + ··· 5!0!0! 4!1!0! 1 2 3 5! 2 2 1 + x x x + ··· . 2!2!1! 1 2 3 (x1 + x2 + x3 )5 = 5! ここで 2!2!1! とは x1 , x1 , x2 , x2 , x3 のように同種のものがある場合の重複組み合わせ である. 定理 3.8 (一変数のテイラーの定理). I = (p, q), f (x) ∈ C m (I), a, a + h ∈ I のとき, 以下を満たす0 < θ < 1 が存在する. f (a + h) = m−1 ∑ k=0 f (k) (a) k h + Rm , k! f (m) (a + θh) m ただし Rm := h . m! 命題 3.9. f ∈ C k (Ω), a ∈ Ω, h ∈ RN , g(θ) := a + θh ∈ Ω (0 ≤ ∀ θ ≤ 1) のとき, φ(θ) := f (g(θ)) とおくと φ(k) (θ) = ∑ k! ∂ α f (a + θh)hα α! (3.3) |α|=k 注意 3.10. 命題 3.6 より N (∑ i=1 ∑ k! ∂ )k = hα ∂ α hi ∂xi α! |α|=k なので {( ∑ dk ∂ )k } (3.3) ⇐⇒ k (f (a + θh)) = f (a + θh). hi dθ ∂xi i=1 N 14 (3.4) Proof. (3.4) を帰納法により示す. φ′ (θ) = ∇f (g(θ))g ′ (θ) = (fx1 (a + θh), · · · , fxN (a + θh)) · (h1 , · · · , hN ) N {( ∑ ∂ ) } = f (a + θh) hi ∂x i i=1 .. . 定理 3.11 (多変数関数のテイラーの定理). Ω : RN の領域, f ∈ C m (Ω), a ∈ Ω, h ∈ RN , g(θ) := a + θh ∈ Ω(0 ≤ ∀ θ ≤ 1) のとき, 以下を満たす 0 < θ < 1 が存在する. f (a + h) = ∑ |α|≤m−1 ∂ α f (a) α h + Rm , α! ただし Rm := ∑ ∂ α f (a + θh) hα . α! (3.5) |α|=m 注意 3.12. 十分小さな ε > 0 を取ると, ∃ C = C(f, m, a, ε) s.t. |∀ h| < ε =⇒ |Rm | ≤ C|h|m . Proof. 十分小さな ε > 0 を取ると, B(a, ε) ⊂ B(a, 2ε) ⊂ Ω. f ∈ C m (Ω) より |α| = m のとき ∂ α f (x) は B(a, ε) 上連続. よってボルツァノ・ワイエルストラウスよ り maxx∈B(a,ε) |∂ α f (x)| が存在. a + θh ∈ B(a, ε) より. 注意 3.13. 注意 3.10 を用いると (3.5) は以下のようにも書ける. 1 {( ∑ ∂ )k } ∂ )m } 1 {( ∑ f (a + h) = hi hi f (a) + Rm , ただし Rm := f (a + θh). k! ∂xi m! ∂xi i=1 i=1 0≤k≤m−1 ∑ N N Proof of 定理 3.11. 命題 3.9 の g や φ を用いると f (a + h) = f (g(1)) = φ(1) (ここで定理 3.8 を a = 0, h = 1 として用いると) = m−1 ∑ k=0 φ(k) (0) k φ(m) (0 + θ × 1) m 1 + 1 , k! m! (0 < ∃ θ < 1) (ここで命題 3.9 を用いると) = m−1 ∑ k=0 1 ∑ k! α 1 ∑ m! α ∂ f (a)hα + ∂ f (a + θh)hα . k! α! m! α! |α|=k |α|=m 15 定義 3.14 (ヘッシアン). Hf (x) := ∂ 2f ··· ∂x1 ∂x1 .. . ∂ 2f ··· ∂xN ∂x1 ∂ 2f ∂x1 ∂xN .. . ∂ 2f ∂xN ∂xN をヘッセ行列 (ヘッシアン) という. 例 3.15. m = 3 の場合における (3.5) は以下のように書ける. f (x + h) = f (x) + ∇f (x)h + 1t hHf (x)h + R3 2 ただし h は縦ベクトル t h は h の転置 (つまり横ベクトル) とする. 4 極値問題 この節では D(f ) ⊂ RN , f : D(f ) → R は連続とする. 定義 4.1 (最大・最小値, 極大・極小値). def • f が a ∈ D(f ) で最大値 [狭義の最大値] をとる ⇐⇒ a ̸= ∀ x ∈ D(f ) に対し f (a) ≥ f (x)[f (a) > f (x)] が成立. def • f が a ∈ D(f )int で極大値 [狭義の極大値] をとる ⇐⇒ ∃ ε > 0 s.t. a ̸= ∀ x ∈ B(a, ε) に対し f (a) ≥ f (x)[f (a) > f (x)] が成立. これらの a を最大点や極大点という. 明らかに内点で最大値をとるならば必ず極大 である. 注意 4.2. f の最大点・最小点を知りたい. (i) D(f ) : 非有界または開のとき, 必ずしも最大・最小点は存在しない.|x| → ∞ や x → a ∈ ∂D(f ) における f (x) の挙動を調べる必要がある. その結果 (ii) に帰 着される場合もある (演習問題 ? ). (ii) D(f ) : 有界かつ閉のとき, 定理 1.25 より必ず最大点・最小点が存在. その候補 となる点 a は以下の三通り. (a) f は a で微分不可. (b) a ∈ ∂D(f )(次節のラグランジュ乗数法を用いる). (c) a ∈ D(f )int かつ f は a で微分可. 16 以下, (c) について考える. 定理 4.3. a ∈ D int (f ), f (x) : x = a で微分可とする. a が f の極大点または極小点 =⇒ ∇f (a) = 0. 注意 4.4. ⇐= は正しくない (例 鞍点). Proof. a が極大点のとき f (x, a2 , · · · , aN ) は x1 = a1 で極大. よって一変数の結果よ ∂ り f (a1 , · · · , aN ) = 0. 他の変数 xj についても同様. ∂x1 定義 4.5. a ∈ D(f )int とする. def a は f の臨界点 ⇐⇒ ∇f (a) = 0 以下, x, y ∈ RN は縦ベクトル, t x, t y は横ベクトルとする. 定義 4.6. b11 · · · .. B= . bN 1 · · · QB (x) := ∑N i,j=1 bij xi xj b1N .. : 実対称行列 (つまり b = b ∈ R) とする. ij ji . bN N = t xBx (x ∈ RN ) を二次形式という. def def def def (i) B は正 [負] 値 ⇐⇒ QB は正 [負] 値 ⇐⇒ ∀ x ∈ RN \ {0}, QB (x) > [<]0. (ii) B は不定符合 ⇐⇒ QB は不定符合 ⇐⇒ ∃ x, ∃ y ∈ RN s.t. QB (x) > 0 > QB (y). 例 4.7. ( N = 2, B = ) a b b c ( , QB (x) = ) x y ( )( a b b c ) x y = ax2 + 2bxy + cy 2 . (i) a > 0, ac − b2 > 0 =⇒ B, QB は正値. (ii) a < 0, ac − b2 > 0 =⇒ B, QB は負値. (iii) ac − b2 < 0 =⇒ B, QB は不定符合. 例 4.8. B= λ1 0 ... 0 2 2 , QB (x) = λ1 x1 + · · · + λN xN のとき λN (i) QB は正 [負] 値 ⇐⇒ 1 ≤ ∀ j ≤ N, λj > [<]0. (ii) QB は不定符合 ⇐⇒ ∃ i, ∃ j s.t. λi > 0 > λj . 17 定理 4.9. 任意の実対称行列 B に対し, 以下をみたす直交行列 U (t U U = I) が存在. diag{λj } = t U BU. ただし {λj } は λ1 ≥ λ2 ≥ · · · ≥ λN をみたす B の固有値 (⇐⇒ ∃ x ∈ RN \{0} s.t. Bx = λj x ⇐⇒ λj は det(λj I − B) = 0 の根), diag{λj } は {λj } を対角成分とする対角行列. Proof. 線形代数より. 命題 4.10. 実対称行列 B に対し以下は同値. (i) QB は正 [負] 値. (ii) x = 0 は QB の狭義の最小 [大] 点. (iii) B の固有値が全て正 [負]. 注意 4.11. 以下の証明より, 一般に λ1 [λN ] を最大 [小] の固有値とすると λN |x|2 ≤ QB (x) ≤ λ1 |x|2 が成立することも分かる. Proof. (i)⇐⇒(ii) は明らか. (i)⇐⇒(iii) を示す. 定理 4.9 より以下をみたす直交行列 U が存在. λ1 0 t e .. QB (x) = t xBx = t xt U U x = y By . 0 λN e := diag{λj } とおいた. さらに U : RN ∋ x 7→ y = U x ∈ RN ただし y := U x, B e の正値性は同値. よって例 4.8 を用いれば良い. は全単射なので B の正値性と B 2 t |y| = (U x, U x) = (x, U U x) = |x|2 より U は等長作用素であり, 上記の議論とこれ により注意 4.11 が得られる. 定理 4.12. a ∈ D(f )int は臨界点, f は a の近傍で C 2 級 (つまり ∃ ε > 0 s.t. f は B(a, ε) 上で C 2 級) とする. (i) f のヘッシアン Hf (a) の固有値が全て正 [負] =⇒ a は f の狭義の極小 [大] 点. (ii) f のヘッシアン Hf (a) が正負両方の固有値をもつ =⇒ a は極大点でも極小点 でもない. ( 2 ) ∂ ∂2 (iii) a が極小 [大] 点 =⇒ △f (a) := ∂x + · · · + f (a) = tr Hf (a) ≥ [≤]0(ただ 2 ∂x2 1 し tr A とは行列 A の対角成分の総和). 18 N 注意 4.13. (i), (ii) 以外の場合, つまり 0 固有値を持つ場合についてはより高次の項 を調べる必要がある. Proof. 簡単のため f : C 3 級の場合について示す. 例 3.15 より f (x) = f (a) + ∇f (a)(x − a) + 1t (x − a)H(a)(x − a) + R3 , 2 |R3 | ≤ C|x − a|3 (4.1) (i) 固有値が全て正のときを示す. 注意 4.11 より λN |x − a|2 ≤ t (x − a)H(a)(x − a) ≤ λ1 |x − a|2 よって x ̸= a で |x − a| が十分小さいとき (4.1) より ( ) f (x) − f (a) ≥ λN |x − a|2 − C|x − a|3 = λN − C|x − a|) |x − a|2 > (λN − ε)|x − a|2 > 0. 全て負のときも同様. (ii) 例えば λ1 > 0 > λ2 とし, それぞれに対応する固有ベクトルを y1 , y2 とする (ただ し |y1 | = |y2 | = 1). Hf (a)yj = λj yj より t yj Hf (a)yj = λj |yj |2 = λj . ここで (4.1) に x := a + ty1 を代入すると十分小さな t に対し f (a + ty1 ) − f (a) = λ1 t2 + R3 , |R3 | ≤ Ct3 ≥ (λ1 − Ct)t2 > 0. 同様にして f (a + ty2 ) − f (a) ≤ (λ2 + Ct)t2 < 0. (iii) 対偶を示す. tr Hf (a) < 0 とす ∑ ると, (線形代数の知識より)tr Hf (a) = j λj > 0 なので少なくとも一つの固有値は 正. (ii) の証明と同様にして a が極小点ではないことが示される. 5 陰関数定理 (1) とラグランジュ乗数法 例 5.1. x, y ∈ R は x2 + y 2 − 1 = 0 をみたすとする (← 陰に与えられた関数). dy を求めることが出来るか? このとき y = f (x)(陽に与えられた関数) と表現し dx 2 2 a + b − 1 = 0, b > 0 [< 0] とする. 十分小さな ε > 0 をとると (例えば ε = |b|/2), B((a, b), ε) 上では x2 + y 2 − 1 = 0 ⇐⇒ y = であり √ √ 1 − x2 [y = − 1 − x2 ] [ dy ] −x x dy =√ =√ . dx 1 − x2 dx 1 − x2 しかしながら (a, b) = (1, 0) や (−1, 0) の近傍においてはどんなに小さな ε > 0 に対 しても B((a, b), ε) 上で x2 + y 2 − 1 = 0 ⇐⇒ y = f (x) を満たす f (x) は存在しない. 19 以下 Ω は RN +1 の領域, F : Ω ∋ (x, y) := (x1 , · · · , xN , y) 7→ F (x, y) := F (x1 , · · · , xN , y) ∈ R とする. 定理 5.2. F ∈ C 1 (Ω), (a, b) ∈ Ω s.t. F (a, b) = 0, Fy (a, b) ̸= 0 =⇒ F (x, y) = 0 は (a, b) の近傍で y = f (x) と解くことが出来る. より詳しくいうと ∃ r > 0, ∃ s > 0 s.t. (a) U × V := B(a, r) × [b − s, b + s] ⊂ Ω. (b) Fy (x, y) ̸= 0 (∀ (x, y) ∈ U × V ). (c) ∀ x ∈ U に対し y ∈ V で F (x, y) = 0 をみたすものが ただ一つ 存在. (d) さらに (c) の y により f (x) := y と定めると f : U int → V は C 1 級となり以下 が成立. fxj (x) = − Fxj (x, f (x)) (1 ≤ ∀ j ≤ N ). Fy (x, f (x)) (5.1) 注意 5.3. • 合成関数の微分により F ∈ C m =⇒ f ∈ C m および ∂ α f に関する公式も得ら れる. • (5.1) は F (x, f (x)) = 0 に以下のように合成関数の微分を適用した式を用いる と覚えやすい. ) ∂ ( F (x, f (x)) = Fxj (x, f (x)) + Fy (x, f (x))fxj (x) = 0. ∂xj ちなみにこの計算は以下の証明の (Step 3) で f の微分可能性を示したから適 用出来るのであって, (Step 3) の代わりとしてこの計算で f の微分可能性を証 明したことにはならない. Proof. (Step 1) 「(a)–(c) をみたす r, s の存在を示す.」 Fy (a, b) ̸= 0 より Fy (a, b) > 0 の場合を考える (< 0 の場合も同様なので). Fy の連続性より, 十分小さな r′ > 0, s > 0 に対し (a’) U ′ × V := B(a, r′ ) × [b − s, b + s] ⊂ Ω (b’) ∀ (x, y) ∈ U ′ × V に対し Fy (x, y) > 0 20 が成立. ∀ y ∈ V に対し Fy (a, y) > 0 より F (a, y) は V 上単調増加 F (a, b) = 0 より F (a, b − s) < 0, F (a, b + s) > 0 次に F (x, b − s), F (x, b + s) の x に関する連続性より, 十分小さな 0 < r(< r′ ) をとる と ∀ x ∈ B(a, r) =: U に対し F (x, b − s) < 0, F (x, b + s) > 0 任意の x0 ∈ U を固定すると F (x0 , b−s) < 0 < F (x0 , b+s) かつ Fy (x0 , y) > 0 (∀ y ∈ V ) より F (x0 , y0 ) = 0 をみたす y0 が唯一つ存在する. これにより f (x0 ) := y0 と定義 する. (Step 2)「f の連続性を示す.」 背理法. f (x) が x = c ∈ U で不連続とする. つまり ∃ ε0 > 0, ∃ {xn } ⊂ U s.t. xn → c, |f (xn ) − f (c)| ≥ ε0 . (5.2) yn := f (xn ) とおくと yn ∈ V よって {yn } は有界. ボルツァノ・ワイエルストラウ スより収束する部分列 {ynm }m が存在. ynm = f (xnm ) → d, xnm → c (m → ∞) であ る. ynm = f (xnm ) より F (xnm , ynm ) = 0 であり F の連続性より F (c, d) = 0 よって d = f (c). これは (5.2) と矛盾. (Step 3)「f (x) が C 1 級であること」を示す. c ∈ U を固定する. h は h ̸= 0, c + hej ∈ U int をみたすとする (ej は第 j 成分のみ 1 で 他は 0). k := f (c + hej ) − f (c) とする. f の連続性より k → 0 (h → 0). ここで h を 固定する (つまり k も固定). q(t) := F (c + thej , f (c) + tk) (0 ≤ t ≤ 1) とすると q(t) は [0, 1] 上微分可 (F ∈ C 1 より). q ′ (t) = Fxj (c + thej , f (c) + tk)h + Fy (c + thej , f (c) + tk)k, q(0) = F (c, f (c)) = 0, q(1) = F (c + hej , f (c) + k) = F (c + hej , f (c + hej )) = 0. 平均値の定理より q(1) − q(0) = q ′ (θ) をみたす 0 < θ < 1 が存在. つまり 0 = Fxj (c + θhej , f (c) + θk)h + Fy (c + θhej , f (c) + θk)k. ここで h → 0 とすると θh → 0, θk → 0 であり − Fxj (c, f (c)) k f (c + hej ) − f (c) ∂ ← = → f (c) (h → 0). Fy (c, f (c)) h h ∂xj 左辺は連続なので右辺も連続関数. 全ての 1 ≤ j ≤ N についてこれがいえたので f ∈ C 1. 21 定理 5.4 (ラグランジュの乗数法). Ω : RN の領域, f, g : Ω → R, C 1 級, S := {x ∈ Ω | f (x) = 0} とする. a ∈ S が g の条件 S の下での極値点かつ ∇f (a) ̸= 0 =⇒ ∃ λ ∈ R s.t. ∇g(a) = λ∇f (a). 注意 5.5. つまり, 条件付極値問題を考える際には右辺を満たす点を 候補 として考 えればよい. Proof. ∇f (a) ̸= 0 より少なくとも一つの j に対して fxj (a) ̸= 0 が成立. 簡単のため fxN (a) ̸= 0 の場合を考えると, 定理 5.2 より x = a の近傍において f (x) = 0 ⇐⇒ xN = φ(x1 , · · · , xN −1 ) と解ける (ただし, f (a) = 0 より aN = φ(a1 , · · · , aN −1 ) であること に注意). これより g を条件 S の下に制限したものを G とすると, G(x1 , · · · , xN −1 ) := g(x1 , · · · , xN −1 , φ(x1 , · · · , xN −1 )) と表される. これが点 (a1 , · · · , aN −1 ) で極値を持つ ので 1 ≤ ∀ j ≤ N − 1 に対し Gxj (a1 , · · · , aN −1 ) = 0. 合成関数の微分より gxj (a1 , · · · , aN −1 , φ(a1 , · · · , aN −1 ))+gxN (a1 , · · · , aN −1 , φ(a1 , · · · , aN −1 ))φxj (a1 , · · · , aN −1 ) = 0. ここで (5.1) より φxj (a1 , · · · , aN −1 ) = − fxj (a1 , · · · , aN −1 , φ(a1 , · · · , aN −1 )) . fxN (a1 , · · · , aN −1 , φ(a1 , · · · , aN −1 )) これを代入すると gxj (a) − gxN (a) fxj (a) = gxj (a) − λfxj (a) = 0. fxN (a) ただし, λ := gxN (a)/fxN (a) とおいた. 6 陰関数定理 (2) 以下 Ω は RM +N の領域, F : Ω ∋ (x, y) := (x1 , · · · , xM , y1 , · · · , yN ) 7→ F (x, y) := F (x1 , · · · , xM , y1 , · · · , yN ) ∈ RN とする. x = (x1 , · · · , xN −1 , xN ) ∈ RN に対し x′ := (x1 , · · · , xN −1 ) ∈ RN −1 とする. 定理 6.1 (ベクトル値関数の陰関数定理). F ∈ C 1 (Ω), (a, b) ∈ Ω s.t. F (a, b) = 0, det ∇y F (a, b) ̸= 0 =⇒ F (x, y) = 0 は (a, b) の近傍で y = f (x) と解くことが出来る. より詳しくいうと ∃ r > 0, ∃ s > 0 s.t. (a) U × V := B(a, r) × B(b, s) ⊂ Ω. 22 (∀ (x, y) ∈ U × V ). (b) det ∇y F (x, y) ̸= 0 (c) ∀ x ∈ U に対し y ∈ V で F (x, y) = 0 をみたすものが ただ一つ 存在. (d) さらに (c) の y により f (x) := y と定めると f : U int → V は C 1 級となり以下 が成立. ( ∂(F , · · · , F ) )−1 ∂(F , · · · , F ) ∂(f1 , · · · , fN ) 1 N 1 N =− . ∂(x1 · · · , xM ) ∂(y1 , · · · , yN ) ∂(x1 , · · · , xM ) ただし右辺の −1 は逆行列を意味する. Proof. (a) は領域の定義より, (b) は F ∈ C 1 (Ω) より明らか. N = 1 の場合について は定理 5.2 で示されたので, N ≥ 2 の (c), (d) について帰納法で示す. ∂ FN (a, b) ̸= det ∇y F (a, b) ̸= 0 より ∇y FN (a, b) ̸= (0, · · · , 0). つまり 1 ≤ ∃ j ≤ N s.t. ∂yj ∂ 0. ここで変数 yj と yN の役割を入れ替えることにより FN (a, b) ̸= 0 として一般 ∂yN 性を失わない. (c) について示す. N = 1 の結果より FN (x, y) = 0 を yN = fN (x, y ′ ) と解ける. こ のとき FN (a, b) = 0 より bN = fN (a, b′ ). Fej (x, y ′ ) := Fj (x, y ′ , fN (x, y ′ )) (j = 1, · · · , N − 1) とすると, 明らかに Fej (a, b′ ) = Fj (a, b) = 0 ように det (j = 1, · · · , N − 1). さらに, 後で示す ∂(Fe1 , · · · , FeN −1 ) (a, b′ ) ̸= 0 ∂(y1 , · · · , yN −1 ) (6.1) が成立する. よって N − 1 の場合に帰着される. (d) について示す. (c) より F (x, y) = 0 は U × V 上で y = f (x) と解けており U int 上で C 1 級である. これを代入して F (x, y) = F (x, f (x)) = 0 よって x ∈ U int において ∀ x ∈ U. ) ∂ ( Fj (x, f (x)) = 0. ∂xk 合成関数の微分より ( ∂F ) j ∂xk つまり N ∑ ∂Fj ∂fl + = 0 (1 ≤ j ≤ N, 1 ≤ k ≤ M ). ∂y l ∂xk l=1 ∂(F1 , · · · , FN ) ∂(F1 , · · · , FN ) ∂(f1 , · · · , fN ) =− . ∂(x1 , · · · , xM ) ∂(y1 , · · · , yN ) ∂(x1 , · · · , xM ) 23 仮定 (b) より ∇y F (x, y) は (a, b) の近傍で逆行列を持つので両辺に掛けると結論を 得る. 以下 (6.1) について示す. 簡単のため ∂k := ∂y∂k と略記する. 1 ≤ ∀ j, ∀ k ≤ N − 1 に 対し ∂k Fej (a, b′ ) = ∂k Fj (a, b′ , f (a, b′ )) + ∂N Fj (a, b′ , f (a, b′ ))∂k f (a, b′ ) ∂k FN (a, b′ , f (a, b′ )) = ∂k Fj (a, b′ , f (a, b′ )) − ∂N Fj (a, b′ , f (a, b′ )) ∂N FN (a, b′ , f (a, b′ )) 1 = (∂k Fj ∂N FN − ∂N Fj ∂k FN ). ∂N FN aj : = ∂N FN (∂1 Fj , · · · , ∂N −1 Fj ), bj : = ∂N Fj (∂1 FN , · · · , ∂N −1 FN ), とおくと D : = det = ∂(Fe1 , · · · , FeN −1 ) ∂(y1 , · · · , yN −1 ) 1 det N −1 (∂N FN ) a1 − b1 .. . aN −1 − bN −1 ここで bl = Cbm であることより det −b1 −b2 a3 .. . aN −1 のように 2 行以上に bj が現れる場合の行列式は 0 となるので D= 1 × (∂N FN )N −1 a1 a2 . .. . . det . .. . .. . aN −1 + det −b1 a2 .. . .. . .. . .. . aN −1 a1 .. . a j−1 + · · · det −bj aj+1 .. . aN −1 24 a1 a2 .. . .. . .. . + · · · + det aN −2 −bN −1 つまり 1 ( ∂(F1 , · · · , Fj−1 , FN , Fj+1 , · · · , FN −1 ) ) ∂(F1 , · · · , FN −1 ) ∑ D= ∂N FN det − ∂N Fj det ∂N F N ∂(y1 , · · · , yN −1 ) ∂(y1 , · · · , yN −1 ) j=1 N −1 = ∑ (−1)−N ( ∂(F1 , · · · , Fj−1 , Fj+1 , · · · , FN −1 , FN ) ) (−1)N ∂N FN · · · · · · + (−1)j ∂N Fj det ∂N FN ∂(y1 , · · · , yN −1 ) j=1 = (−1)−N ∂(F1 , · · · , FN ) det ̸= 0. ∂N FN ∂(y1 , · · · , yN ) N −1 ただし最後の等号においては右辺行列式の第 N 列の余因子展開を用いた. 定理 6.2 ((逆関数定理)). Ω は RN の領域, f : Ω → RN , C 1 級, ∂(f , · · · , f ) 1 N a∈Ωで ̸= 0 ∂(x1 , · · · , xN ) (6.2) =⇒ ∃ U, ∃ V : 開集合 s.t. a ∈ U, f (a) ∈ V, f : U ∋ x 7→ y ∈ V, 全単射. よって g(y) := x により V → U 全単射が定まる. この g は f の逆写像 (つまり f (x) = y ⇐⇒ g(y) = x) であり U 上 C 1 級で ∂(g1 , · · · , gN ) ( ∂(f1 , · · · , fN ) )−1 = . ∂(y1 , · · · , yN ) ∂(x1 , · · · , xN ) (6.3) Proof. F (x, y) := f (x) − y : Ω × RN ∋ (x, y) 7→ F (x, y) ∈ RN a ∈ Ω, b = f (a) とすると F (a, b) = 0. (6.2) より (x, y) = (a, b) で ∂(F1 , · · · , FN ) ̸= 0. ∂(x1 , · · · , xN ) よって陰関数定理より (a, b) の近傍で F (x, y) = 0 即ち y = f (x) は x = g(y) と解け る. g(y) は y = b を含む開集合 V 上で定義され C 1 級. U := g(V ) = f −1 (V ) とおく と V : 開, f : 連続より f −1 (V ) は開. よって V は題意を満たす. x = g(f (x)) に合成 関数の微分を用いると ∂(g1 , · · · , gN ) ∂(f1 , · · · , fN ) ∂(x1 , · · · , xN ) = =I ∂(y1 , · · · , yN ) ∂(x1 , · · · , xN ) ∂(x1 , · · · , xN ) よって (6.3) が得られた. 定理 6.3 ((領域保存性)). Ω は RN の領域, f : Ω → RN , C 1 級, ∀ ∂(f , · · · , f ) 1 N x∈Ωで ̸= 0 ∂(x1 , · · · , xN ) =⇒ f (Ω) は RN の領域. 25 (6.4) Proof. (i) f (Ω) : 開を示す. ∀ b ∈ f (Ω) に対し b = f (a), a ∈ Ω と書ける. (6.4) より逆 関数定理が適用出来て, U, V : 開がとれる. b ∈ V ⊂ f (Ω) より f (Ω) は開. (ii) f (Ω) : 連結を示す. b, b′ ∈ f (Ω) とすると, b = f (a), b′ = f (a′ ) (a, a′ ∈ Ω) と書 ける. Ω : 連結より, 連続曲線で ∃ x(t) ∈ Ω (∀ t ∈ [0, 1]) s.t. x(0) = a, x(1) = a′ なるも のが存在. y(t) := f (x(t)) とすると y(0) = f (a) = b, y(1) = f (a′ ) = b′ を f (Ω) 内で 結ぶ曲線である. 7 重積分 (1) この節以降, 積分については主に N = 2 の場合を考える. 主に [4] を参照. この節 では区間 I := [a, b] × [c, d] ⊂ R2 上の積分について考える. f (x, y) : I → R は有界 (つまり ∃ M > 0 s.t.|f (x, y)| ≤ M (∀ (x, y) ∈ R2 )) とする. 定義 7.1 (過剰和・不足和). ∆(分割) : a = x0 < x1 < · · · < xm = b, c = y0 < y1 < · · · < yn = d. この {xi }i , {yj }j を分点という. ∆i,j (小区間) := [xi−1 , xi ] × [yj−1 , yj ], d(∆)(分割の幅) := max{xi − xi−1 , yj − yj−1 }, i,j |∆i,j |(面積) := (xi − xi−1 )(yj − yj−1 ), e : I の分割とする. このとき ∆, ∆ e ∆ e は ∆ の細分) ⇐⇒ {∆の分点の集合 } ⊂ {∆ e の分点の集合 } ∆ ⊂ ∆( def Mi,j := sup{f (x, y) | (x, y) ∈ ∆i,j }, mi,j := inf{f (x, y) | (x, y) ∈ ∆i,j } ∑ ∑ S(f, ∆)(過剰和) := Mi,j |∆i,j |, s(f, ∆)(不足和) := mi,j |∆i,j |. i,j i,j 定義より明らかに以下の補題が成立する. e に対して以下が成立. 補題 7.2. 任意の I の分割 ∆ ⊂ ∆ e ≤ S(f, ∆) e ≤ S(f, ∆) ≤ M |I|. −M |I| ≤ s(f, ∆) ≤ s(f, ∆) 定義 7.3 (上積分・下積分). P は I の全ての分割の集合とする. ∫ f (x, y) dxdy(上積分) := inf S(f, ∆), ∆∈P ∫I f (x, y) dxdy(下積分) := sup s(f, ∆) ∆∈P I 26 注意 7.4. 補題 7.2 よりこれらは有限値であり以下が成立する. ∫ ∫ f (x, y) dxdy ≤ f (x, y) dxdy. I I 定義 7.5. ∫ def f (x, y) が I 上で「重」積分可 ⇐⇒ ∫ f (x, y) dxdy = I f (x, y) dxdy. I ∫ このとき, この値により f (x, y) dxdy を定義する. I 定義 7.6 (リーマン和). R(f, ∆, {(ξi,j , ηi,j )}i,j ) := m ∑ n ∑ f (ξi,j , ηi,j )|∆i,j |. i=1 j=1 ただし (ξi,j , ηi,j ) ∈ ∆i,j とし, 代表点という. 注意 7.7. 明らかに s(f, ∆) ≤ R(f, ∆, {(ξi,j , ηi,j )}i,j ) ≤ S(f, ∆). 定理 7.8 (ダルブーの定理). 以下は同値. ∫ ∫ (i) f (x, y) dxdy = f (x, y) dxdy. I I (ii) ∀ ε > 0, ∃ ∆ ∈ P s.t. S(f, ∆) − s(f, ∆) < ε. (iii) ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. ∀ ∆ ∈ P “d(∆) < δ =⇒ S(f, ∆) − s(f, ∆) < ε′′ . (iv) lim R(f, ∆, {(ξi,j , ηi,j )}i,j ) = ∃ V . d(∆)→0 (⇐⇒ ∃ V ∈ R s.t. ∀ ε > 0, ∃ δ > 0, ∀ ∆ ∈ P, ∀ {(ξi,j , ηi,j )}i,j “d(∆) < δ =⇒ |R(f, ∆, {(ξi,j , ηi,j )}i,j ) − V | < ε′′ ) 以下の証明は一変数の場合と同様であるが復習のため省略せずに行う. Proof.∫ (i) =⇒ (iv) を示す. V := f (x, y) dxdy とすると I ∀ ε > 0, ∃ ∆0 ∈ P s.t. V − s(f, ∆0 ) < ε/2. ∆0 : a = x0 < · · · < xm = b, c = y0 < · · · < yn = d, 27 δ を 0 < δ < ε/4M (m(d−c)+n(b−a)) とする. 以下, “d(∆) < δ なる全ての ∆ に対し V − e := ∆0 ∪ ∆(それぞれの分点の和集合による分割) とする. ∆ s(f, ∆) < ε” を示す. ∆ (1) (l) の小区間 ∆i,j が ∆i,j ∪ · · · ∪ ∆i,j と細分化されたとき, (k) (k) mi,j := inf{f (x, y) | (x, y) ∈ ∆i,j } とおくと, 細分化による s(f, ∆) の増加分は (1) (1) (l) (l) mi,j |∆i,j | + · · · + mi,j |∆i,j | − mi,j |∆i,j | (1) (l) (|∆i,j | = |∆i,j | + · · · + |∆i,j | より) (1) (1) (l) (l) =(mi,j − mi,j )|∆i,j | + · · · + (mi,j − mi,j )|∆i,j | (1) (l) ≤2M (|∆i,j | + · · · + |∆i,j |) = 2M |∆i,j | また ∆0 の分割線により影響をうける ∆i,j の総面積は、、、 (図より)≤ (m−1)(d−c)δ+ e (n−1)(b−a)δ. よって s(f, ∆)−s(f, ∆) ≤ 2M ((m−1)(d−c)+(n−1)(b−a))δ < ε/2. これより f + (s(f, ∆) e − s(f, ∆)) < ε/2 + 0 + ε/2 < ε. V − s(f, ∆) = (V − s(f, ∆0 )) + (s(f, ∆0 ) − s(f, ∆)) e を用いた. ただし, 真ん中の項については ∆0 ⊂ ∆ ∃ 同様にして δ > 0 s.t. S(f, ∆) − V < ε も得られる. よって任意の d(∆) < δ なる ∆ に対し V − ε < s(f, ∆) ≤ R(f, ∆, {(ξi,j , yi,j )}i,j ) ≤ S(f, ∆) < V + ε. (i) =⇒ (ii) を示す. sup, inf の性質より ∀ ε > 0 に対し ∫ ∫ ε f (x, y) dxdy ≤ S(f, ∆1 ) ≤ f (x, y) dxdy + , 2 I ∫I ∫ ε f (x, y) dxdy − ≤ s(f, ∆2 ) ≤ f (x, y) dxdy, 2 I I をみたす ∆1 , ∆2 が存在する. ∆ = ∆1 ∪ ∆2 とすると ∆ ⊃ ∆1 , ∆2 より ∫ ∫ ε ( ε) = ε. S(f, ∆) − s(f, ∆) ≤ S(f, ∆1 ) − s(f, ∆2 ) ≤ f (x, y) dxdy + − f (x, y) dxdy − 2 2 I I (ii) =⇒ (iii) は演習問題. (iii) =⇒ (i) を示す. ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. d(∆) < δ なる全ての ∆ に対し ∫ ∫ 0 ≤ f (x, y) dxdy − f (x, y) dxdy ≤ S(f, ∆) − s(f, ∆) < ε I I (iv) =⇒ (iii) は明らか. 28 定理 7.9. f : I 上連続 =⇒ f : I 上積分可. Proof. f は有界閉集合上の連続関数なので一様連続. よって ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. (x, y), (x′ , y ′ ) ∈ I, |(x, y) − (x′ , y ′ )| < δ =⇒ |f (x, y) − f (x′ , y ′ )| < ε/2|I|. (7.1) ∆ を d(∆) < δ/2 なる分割とすると (x, y), (x′ , y ′ ) ∈ ∆i,j のとき (7.1) より Mi,j −mi,j < ε/2|I|. よって ∑ (Mi,j − mi,j )|∆i,j | < (ε/|I|) × |I| = ε. S(f, ∆) − s(f, ∆) = i,j 定理 7.8 の (iii) より f は I 上積分可. 定理 7.10 (積分の性質). (i)(線形性) f, g : I 上積分可 =⇒ f + g, αf (α ∈ R は定数) も積分可で ∫ ∫ ∫ f + g dxdy = f dxdy + g dxdy, I I ∫ ∫I αf dxdy = α f dxdy. I I (ii)(正値性) f, g : I 上積分可, f ≤ g (∀ (x, y) ∈ I) ∫ ∫ =⇒ f dxdy ≤ g dxdy. I I (iii)(絶対値評価) f : I 上積分可 =⇒ |f | も I 上積分可で ∫ ∫ f dxdy ≤ |f | dxdy. I I (iv)(積) f, g : I 上積分可 =⇒ f g も積分可で ∫ ∫ f g dxdy ≤ sup |g| |f | dxdy (x,y)∈I I I (v)(平均値の定理) f : I 上積分可ならば ∫ ∃ inf f (x, y) ≤ µ ≤ sup f (x, y) s.t. I I f dxdy = µ|I|. I さらに f : I 上連続ならば ∃ ∫ (ξ, η) ∈ I s.t. f dxdy = f (ξ, η)|I|. I 証明は一変数と同様なので省略する. 29 8 重積分 (2) と面積 A ⊂ R2 : 有界集合, f (x, y) : A → R, 有界 (∃ M > 0 s.t. |f (x, y)| ≤ M, ∀ (x, y) ∈ A) とする. 有界性より A ⊂ ∃ I := [a, b] × [c, d]. 定義 8.1. fe(x, y) := { f (x, y), (x, y) ∈ A, (x, y) ∈ I \ A, 0, を f の 0 拡張という. fe が I 上で可積分なとき f は A で可積分といい ∫ ∫ f (x, y) dxdy := fe(x, y) dxdy. A I 注意 8.2. この値や可積分性は I の取り方に依らない. 定義 8.3. def • A が面積を持つ ⇐⇒ 1 が A 上可積分. ∫ ∫ • |A| := A 1 dxdy = I χA (x, y) dxdy を A の面積という. ただし, χA (x, y) := { 1, (x, y) ∈ A, 0, (x, y) ∈ / A, とし定義関数という. 注意 8.4. • 積分の正値性より, A ⊂ B, A, B: 面積確定 =⇒ |A| ≤ |B|. • 定義より明らかに I := [a, b] × [c, d] に対し |I| = (b − a)(d − c). 参考 ジョルダン測度 ([1]) 定理 8.5. |A| = 0 ⇐⇒∀ ε > 0, ∃ m ∈ N, ∃ Ij := [aj , bj ] × [cj , dj ] (1 ≤ j ≤ m) s.t. m m ∪ ∑ A⊂ Ij , |Ij | < ε. j=1 j=1 Proof. =⇒ を示す. ∫ χA dxdy = 0 =⇒ ∀ ε > 0, ∃ ∆ s.t. S(χA , ∆) < ε |A| = 0 =⇒ I 30 ここでこの ∆ の小区間により D := {(i, j) | ∆i,j ∩ A ̸= ∅}, {Ik }m k=1 := {∆i,j }(i,j)∈D と すると n ∑ ∑ ε > S(χA , ∆) = 1 · |∆i,j | = |Ij | k=1 (i,j)∈D ⇐= を示す. 分点として 2m−1 2m−1 m m m {xk }k=0 := {aj }m j=1 ∪ {bj }j=1 , {yk }k=0 := {cj }j=1 ∪ {dj }j=1 とし……. 例 8.6. A := {(x0 , y0 )}(一点からなる集合) としたとき |A| = 0. Proof. 定理 8.5 を m = 1 で用いる. ∀ ε > 0 に対し, I1 := [x0 − √ √ [y0 − ε/4, y0 + ε/4] とすると |I1 | < ε, A ⊂ I1 . √ ε/4, x0 + √ ε/4] × 定理 8.7. φ(x) : [a, b] 上連続, Gφ := {(x, φ(x) | a ≤ x ≤ b)} (φ のグラフ) とすると, |Gφ | = 0. Proof. [a, b] : 閉, φ : 連続より φ は [a, b] 上一様連続. よって ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. |x1 − x2 | < δ =⇒ |φ(x1 ) − φ(x2 )| < ε/2(b − a). [a, b] の分割 ∆ で d(∆) < δ なるものを とる. Mi := sup{φ(x) | xi−1 ≤ x ≤ xi }, mi := inf{φ(x) | xi−1 ≤ x ≤ xi } とすると Mi − mi = sup{φ(x1 ) − φ(x2 ) | x1 , x2 ∈ [xi−1 , xi ]}. ∪m 明らかに Gφ ⊂ i=1 [xi−1 , xi ] × [mi , Mi ] であり m m ∑ ∑ (xi − xi−1 )(Mi − mi ) [xi−1 , xi ] × [mi , Mi ] = i=1 i=1 ∑ ε (xi − xi−1 ) < ε. 2(b − a) i=1 m ≤ 注意 8.8. • 滑らかな曲線 ((x(t), y(t) ∈ C 1 (I), |(x′ (t), y ′ (t))| ̸= 0) は, 適当に分割すれば, そ れら 1 つ 1 つは y = φ(x) または x = ψ(y) と書くことが出来て, その面積は 0. • 連続曲線は必ずしも面積 0 ではない. 定理 8.9. B : f の不連続点の集合とすると |B| = 0 =⇒ f は I 上可積分. 31 Proof. |B| = 0 より ∀ ∃ ∃ ε > 0, m ∈ N, Ij := [aj , bj ] × [cj , dj ] (1 ≤ j ≤ m) s.t. B ⊂ m ∪ j=1 Ij , m ∑ |Ij | < ε/4M j=1 ここで Iej := (a′j , b′j ) × (c′j , d′j ) を Ij ⊂ Iej , |Iej | ≤ |Ij | + ε/4mM を満たすものとする. このとき B⊂ m ∪ j=1 C := I \ ∃ Iej , m ∑ |Iej | < ε/2M. (8.1) j=1 ∪m e j=1 Ij : 閉, f : C 上連続なので f は C 上一様連続. よって δ > 0 s.t.(x, y), (x′ , y ′ ) ∈ C, |(x, y) − (x′ , y ′ )| < δ =⇒ |f (x, y) − f (x′ , y ′ )| < ε/2|I|. (8.2) ∆ : d(∆) < δ/2 なる I の分割 (*), ∆′ : ∆ に {a′j }, {b′j }, {c′j }, {d′j } を加えたものとす る (ただし [a, b] や [c, d] の外部にある点は加えない). Mi,j := sup{f (x, y) | (x, y) ∈ ∆′i,j }, mi,j := inf{f (x, y) | (x, y) ∈ ∆′i,j }. ∑ ∑ ′ e 以下, S(f, ∆′ ) − s(f, ∆′ ) = i,j (Mi,j − mi,j )|∆′i,j | < ε を示す. i,j を (i)∆i,j ⊂ ∪j Ij なる i, j と, (ii) それ以外に分ける. (i) (i) m ∑ ∑ ∑ ′ (Mi,j − mi,j )|∆i,j | ≤ 2M |∆′i,j | = 2M |Iej | < ε ((8.1) より) j=1 ∑ ∑ (Mi,j − mi,j )|∆′i,j | ≤ ε/2|I| |∆′i,j | ≤ ε/2 ((8.2) と (*) より) (ii) (ii) 系 8.10. φ1 (x), φ2 (x) : [a, b] 上連続, φ1 (x) < φ2 (x) (a < ∀ x < b), A := {(x, y) ∈ R2 | a ≤ x ≤ b, φ1 (x) ≤ y ≤ φ2 (x)} とすると f : A 上連続 =⇒ f は A 上可積分. 注意 8.11. このような A を縦線図形や x について単純な図形という. Proof. fe を f の 0 拡張とし, I := [a, b] × [mina≤x≤b φ1 (x), maxa≤x≤b φ2 (x)] とすると. {feの I 上の不連続点 } ⊂ Gφ1 ∪ Gφ2 . ここで定理 8.7 より右辺の面積は 0. よって定理 8.9 より fe は I 上可積分. 32 定理 8.12. A ⊂ R2 : 有界集合とすると A が面積確定 ⇐⇒ |∂A| = 0 Proof. (⇐=) を示す. I : 区間, I ⊃ A とする. {χA の不連続点 } = ∂A. よって定理 8.9 より |∂A| = 0 のとき χA は可積分. (=⇒) を示す. χA : 可積分より ∀ ε > 0, ∃ ∆ s.t. ∑ (Mi,j − mi,j )|∆i,j | < ε S(χA , ∆) − s(χA , ∆) = i,j ∑m これより Mi,j − mi,j = 1 となる ∆i,j 全体を {Ij }m とすると j=1 |Ij | < ε. ここで j=1 ( ) ( ) ∑ ∂A ⊂ ∪j Ij ∪ ∪i,j ∂∆i,j かつ |∂∆i,j | = 0 より |∂A| ≤ m j=1 |Ij | < ε. 定義 8.13 (広義分割). 以下を満たす ∆ := {δi }ni=1 を I の広義分割という. δi : 面積確定, I = δ1 ∪ · · · ∪ δn , δiint ∩ δjint = ∅ (i ̸= j). d(∆) := max {diam δi }, 1≤i≤n diam δi := sup{|(x, y) − (x′ , y ′ )| | (x, y), (x′ , y ′ ) ∈ δi }, Mi := sup f (x, y), mi := inf f (x, y), δi δi e δ) := S(f, n ∑ Mi |δi |, se(f, δ) := n ∑ i=1 mi |δi |, i=1 GI := {I の広義分割全体 }, ∫ ∫ f e δ)}, f dxdy := inf {S(f, s(f, δ)}, f dxdy := sup {e I ∆∈GI ∆∈GI I ∫ ∫ 定理 8.14. f : I 上可積分 ⇐⇒ e I f dxdy = f dxdy = (∗) I さらにこのとき以下が成立する. ∫ n ∑ f dxdy = (∗) = lim f (ξi , ηi )|δi | ((ξi , ηi ) はδi の代表点). I d(∆)→0 i=1 Proof. 定理 7.8(ダルブー) において S や 明方法は同様). [6]p241 参照. ∫ ∫ を → S や e に変えたものが成立する (証 注意 8.15. I ⊃ Ω : 面積確定のとき GΩ := {{δi ∩ Ω} | {δi } ∈ GI } とする. このとき Ω の ∆ := {δi }ni=1 ⊂ GΩ による広義分割に対して定義 8.13 と同様 に過剰和, 不足和, 上積分, 下積分を定義すると定理 8.14 において I を Ω に代えたも のが成立する. 33 9 重積分と逐次積分 I := [a, b] × [c, d]. ∀ y ∈ [c, d] に対し y を固定したときの x の関数 f y (x) := f (x, y) を f (x, y) の y 切片という. 定理 9.1 (Fubini). f : I 上可積分. ∀ y ∈ [c, d] に対し f y (x) が [a, b] 上可積分. ∫ b ) ( ∫ b y f (x, y) dx は [c, d] 上可積分で f (x) dx = =⇒F (y) := a a ∫ d(∫ b ∫ ) f (x, y) dx dy. f (x, y) dxdy = I c a Proof. I の分割 ∆ により a = x0 < x1 < · · · < xm = b : x 軸の分割∆x , c = y0 < y1 < · · · < yn = d : y 軸の分割∆y , と定める. m n (∑ ∑ s(f, ∆) = j=1 ) mi,j (xi − xi−1 ) (yj − yj−1 ). i=1 ここで ∀ y ∈ [yj−1 , yj ] に対し mi,j := inf{f (x, y) | (x, y) ∈ [xi−1 , xi ] × [yj−1 , yj ]} ≤ mi (f y ) := inf{f y (x) | x ∈ [xi−1 , xi ]} より ≤ m ∑ ∫ b mi (f )(xi − xi−1 ) = s(f , ∆x ) ≤ y y f y (x) dx = F (y). a i=1 よって ≤ inf{F (y) | yj−1 ≤ y ≤ yj } = mj (F ). (9.1) へ代入して s(f, ∆) ≤ n ∑ ∫ mj (F )(yj − yj−1 ) = s(F, ∆y ) ≤ d F (y) dy c j=1 両辺の sup をとり, また, 上積分についても同様の議論を行うと ∫ ∫ f (x, y) dxdy ≤ I ∫ d F (y) dy ≤ c ∫ d F (y) dy ≤ c f (x, y) dxdy. I f は I 上重積分可なので左右の辺が等しい. これより全て等しい. 34 (9.1) 定理 9.1 と同様にして以下が得られる. 系 9.2. IN −1 := [a2 , b2 ] × · · · × [aN , bN ], IN := [a1 , b1 ] × IN −1 , f は IN 上可積分, ∀ x e := (x2 , · · · , xN ) ∈ IN −1 に対し f xe(x1 ) := f (x1 , x e) は [a1 , b1 ] 上可積分. ∫ b1 =⇒F (e x) := f (x1 , x e) dx1 は IN −1 上可積分で a1 ∫ ∫ (∫ b1 f (x) dx = IN IN −1 ) f (x1 , x e) dx1 de x. a1 定理 9.3. g(x) : [a, b] 上可積分, h(y) : [c, d] 上可積分 =⇒f (x, y) := g(x)h(y) は I := [a, b] × [c, d] 上可積分で ∫ ∫ b ∫ d f (x, y) dxdy = g(x) dx h(y) dy. I a c Proof. 一般性を失わずに g(x), h(y) > 0 としてよい. (なぜなら, ge := g +M > 0, e h := e h+M > 0 なる M を選び ge, h に対して示せば, (g +M )(h+M ) = gh+M g +M h+M 2 に対して示されたことになる. M g, M h, M 2 に対して示すのは容易であり, これより gh について示されたことになる.) ∀ ∆1 : a = x0 < x1 < · · · < xm = b, ∀ ∆2 : c = y0 < y1 < · · · < yn = d, によって I の分割 ∆ を定める. mi,j (f ) = inf{g(x)f (y) | xi−1 ≤ x ≤ xi , yj−1 ≤ y ≤ yj } ( )( ) = inf g(x) inf h(y) xi−1 ≤x≤xi yj−1 ≤y≤yj より s(∆, f ) = s(∆1 , g)s(∆2 , h). よって ∫ f dxdy ≥ s(∆, f ) = s(∆1 , g)s(∆2 , h). I 両辺 sup∆1 , sup∆2 をとると ∫ ∫ f dxdy ≥ a ∫ ∫ I ∫ g dx a ∫ b h dy = c b f dxdy ≤ ∫ d g dx I 同様に ∫ b a ∫ d h dy = c h dy c ∫ b g dx a (上式の左辺) ≤ (下式の左辺) より全ての辺が等しい. 35 d g dx d h dy c 定理 9.4. φ1 (x), φ2 (x) : [a, b] 上連続, φ1 (x) < φ2 (x) (a < x < b), A := {(x, y) ∈ R2 | a ≤ x ≤ b, φ1 (x) ≤ y ≤ φ2 (x)}, f (x, y) : A 上連続 ∫ b(∫ ∫ =⇒ φ2 (x) f (x, y) dxdy = A a ) f (x, y) dy dx. φ1 (x) Proof. I ⊃ A, fe : f の I 上への 0 拡張とする. 系 8.10 および定義より f は A 上可積 分, fe は I 上可積分で ∫ ∫ f dxdy = fedxdy. A ∀ I x ∈ [a, b] を固定すると fex (y) = fe(x, y) は c ≤ y < φ1 (x) 0, x fe (y) = f (x, y) φ1 (x) ≤ y ≤ φ2 (x) 0, φ2 (x) < y ≤ d. より [c, d] 上可積分. よって定理 9.1 より F (x) := ∫ fe(x, y) dxdy = I ∫ ∫d c ∫ b(∫ b fex (y) dy は [a, b] 上可積分で φ2 (x) F (x) dx = a a ) f (x, y) dy dx. φ1 (x) 定理 9.4 と同様にして (ただし系 9.2 を用いる) 以下が得られる. 系 9.5. φ1 (x), φ2 (x) : [a, b] 上連続, φ1 (x) < φ2 (x) (a < ∀ x < b), A := {(x, y) ∈ R2 | a ≤ x ≤ b, φ1 (x) ≤ y ≤ φ2 (x)}, ψ1 (x, y), ψ2 (x, y) : A 上連続, ψ1 (x, y) < ψ2 (x, y) (∀ (x, y) ∈ Aint ), B := {(x, y, z) ∈ R3 | (x, y) ∈ A, ψ1 (x, y) ≤ z ≤ ψ2 (x, y)}, f (x, y, z) : B 上連続 ∫ =⇒ ∫ (∫ ψ2 (x,y) f (x, y, z) dxdydz = B ) f (x, y, z) dz dxdy. A ψ1 (x,y) 例 9.6 (回転体の体積). f (x) ≥ 0 : [a, b] 上連続, Ω := {(x, y, z) | a ≤ x ≤ b, y 2 + z 2 ≤ {f (x)}2 } のとき ∫ b |Ω| = π {f (x)}2 dx. a 36 Proof. a ≤ x ≤ b に対し D(x) := {(y, z) | y 2 + z 2 ≤ {f (x)}2 } とすると, 系 9.5 より ∫ |Ω| = 1 dxdydz Ω ∫ ∫ ∫ √ 2 2 b {f (x)} −y f (x) √ = −f (x) a ∫ − 1 dzdydx {f (x)}2 −y 2 b π{f (x)}2 dx. = a 定理 9.7. f (x, y) : I = [a, b] × [c, d] 上連続, F (x) := ∫d c f (x, y) dy とすると (i) F (x) は [a, b] 上連続 (ii) ∫ ∫ ∫ b(∫ b f (x, y) dxdy = d F (x) dx = I a a ) f (x, y) dy dx c これは x, y の役割を交換しても成立するので, 以下も成立. ∫ b(∫ ∫ ) d d (∫ b f (x, y) dy dx = a (iii) さらに ∂ f (x, y) ∂x c c ) f (x, y) dx dy が I 上連続ならば F (x) は [a, b] 上微分可で d F (x) = dx ′ ∫ ∫ d d f (x, y) dy = c c ∂ f (x, y) dy. ∂x 注意 9.8. 定義域を I の代わりに「x について単純な図形」に, も成立. ただし (9.2) については ∫ b(∫ ∫ ) φ2 (x) d (∫ ψ2 (y) f (x, y) dy dx = a (9.2) a φ1 (x) c ∫d c を ∫ φ2 (x) φ1 (x) に代えて ) f (x, y) dx dy ψ1 (y) とし, 定義域も「x および y について単純な図形」とする. Proof. (i) について, 有界閉集合上連続なので f は一様連続であり, さらに |F (x) − F (x )| = ′ ∫ d f (x, y) − f (x , y) dy ≤ |d − c| sup |f (x, y) − f (x′ , y)| ′ y c より明らか. (ii) については, 定理 9.4 より. 37 ∂ (iii) について. g(x, y) := ∂x f (x, y) とすると, g は [a, b] × [c, d] 上連続. y ∈ [c, d] を d 固定したとき dx f (x, y) = g(x, y) は x ∈ [a, b] 上連続. よって微分積分法の基本公式 より ∫ x [ ]x g(x′ , y) dx′ = f (x′ , y) a = f (x, y) − f (a, y). 両辺を ∫d c a dy で積分すると ∫ d c (ii) よりこの左辺は F ′ (x). 10 (∫ x ′ ′ ) g(x , y) dx dy = F (x) − F (a). a ∫x ∫d ∫d d ′ ′ ( g(x , y) dy) dx に等しい . ここで をとると g(x, y) dy = dx a c c 重積分の変数変換 定理 10.1. Ω, D ⊂ R2 , 有界領域, Φ : Ω ∋ (u, v) 7→ (x, y) := (x(u, v), y(u, v)) ∈ D : 全単射, C 1 級, J(u, v) := det ∂(x, y) ̸= 0 (∀ (u, v) ∈ Ω) ∂(u, v) Ω1 : 面積確定, Ω1 ⊂ Ω, D1 := Φ(Ω1 ) ∫ =⇒ D1 も面積確定, |D1 | = |J(u, v)| dudv. Ω1 さらに f (x, y) : D1 上可積分, F (u, v) := f (x(u, v), y(u, v)) とすると ∫ ∫ =⇒ f (x, y) dxdy = F (u, v)|J(u, v)| dudv. D1 Ω1 注意 10.2. N 変数の場合も同様. Proof. (Step 1, 線形変換と区間の像の面積) Ω1 := [u0 − a, u0 + a] × [v0 − b, v0 + b], ) )( ) ( ( u − u0 α 1 β1 x − x0 = Φ: v − v0 α 2 β2 y − y0 のとき ( ) α β 1 1 |D1 | = |Ω1 | α 2 β2 38 を示す. 平行移動により面積不変なので (u0 , v0 ) = (x0 , y0 ) = (0, 0) の場合のみ示せ ばよい. 図より ( ) ( ) a 0 |Ω1 | = 4 × = 4ab, 0 b ( ) ( ) aα bα2 1 × |D1 | = 4 = 4ab|α1 β2 − α2 β1 |. aβ1 bβ2 これより明らか. (Step 2, 変換 Φ と区間の像の面積) Ω1 := [a, b] × [c, d], 定理の仮定の Φ に対し ∫ |D1 | = |J(u, v)| dudv Ω1 を示す. (u0 , v0 ), (u, v) ∈ Ω1 に対して平均値の定理 (つまり定理 (3.11) の m = 1 の場合) より x(u, v) − x(u0 , v0 ) = xu (ξ0 , η0 )(u − u0 ) + xv (ξ0 , η0 )(v − v0 ), y(u, v) − y(u0 , v0 ) = yu (ξ0′ , η0′ )(u − u0 ) + yv (ξ0′ , η0′ )(v − v0 ), (10.1) (10.2) をみたす (ξ0 , η0 ), (ξ0′ , η0′ ) が (u, v), (u0 , v0 ) を結ぶ線上に存在. ここで Φ と線形変換と の x, y に関する誤差を Rx := |x(u, v) − {x(u0 , v0 ) + xu (u0 , v0 )(u − u0 ) + xv (v − v0 )}|, Ry := |y(u, v) − {y(u0 , v0 ) + yu (u0 , v0 )(u − u0 ) + yv (v − v0 )}| とおくと (10.1), (10.2) および Schwarz の不等式より Rx ≤|xu (ξ0 , η0 ) − xu (u0 , v0 )|(i) |u − u0 | √ ≤ ( (ii) (i) ) 2 + |xv (ξ0 , η0 ) − xv (u0 , v0 )|(iii) |v − v0 | √ 2 (iii) ) +( )2 + ( ( (I) (iv) (ii) )2 (iv) ここで xu , xv は Ω1 で一様連続なので ∀ ε > 0, ∃ δ > 0 s.t. |(ξ0 , η0 ) − (u0 , v0 )| < δ (II) =⇒ (I) √ < ε/ 2. よって |(u, v) − (u0 , v0 )| < δ のとき ε Rx < √ |(u, v) − (u0 , v0 )|. 2 (10.3) ε Ry < √ |(u, v) − (u0 , v0 )|. 2 (10.4) 同様に 39 (n) 0 ここで, Ω1 の各辺の n 等分による分割を ∆(n) , (u0i,j , vi,j ) : ∆i,j の中心, n : d(∆(n) ) < δ (n) なるよう十分大とすると各 ∆i,j 上で (10.3),(10.4) が成立. (n) 0 0 0 ), yi,j := y(u0i,j , vi,j ) とし線形変換 Di,j := Φ(∆i,j ), x0i,j := x(u0i,j , vi,j 0 0 0 x − x0i,j = xu (u0i,j , vi,j )(u − u0i,j ) + xv (u0i,j , vi,j )(v − vi,j ), 0 0 0 0 y − yi,j = yu (u0i,j , vi,j )(u − u0i,j ) + yv (u0i,j , vi,j )(v − vi,j ), (n) による ∆i,j の像を Ei,j (平行四辺形), Ei,j (λ) : Ei,j を中心を変えずに λ 倍したものと する. √ 0 Rx2 + Ry2 ≤ ε max |(u, v) − (u0i,j , vi,j )| (u,v)∈∂∆i,j なので Ei,j (1 − ε) ⊂ Di,j ⊂ Ei,j (1 + ε). (n) ここで J(u, v) ̸= 0 と陰関数定理より ∆i,j の四辺の像は滑らかな曲線であり注意 8.8 と定理 8.12 より Di,j は面積確定. これより ∑ ∑ ∑ (1 − ε)2 |Ei,j | ≤ |Di,j | ≤ (1 + ε)2 |Ei,j |. i,j i,j i,j (n) 0 Step 1 より |Ei,j | = |J(u0i,j , vi,j )||∆i,j | であることに注意して d(∆(n) ) → 0 とすると ∫ ∫ 2 2 (1 − ε) |J(u, v)| dudv ≤ |D1 | ≤ (1 + ε) |J(u, v)| dudv. Ω1 Ω1 ここで ε → 0 とすることにより題意が得られる. (Step 3, 変換 Φ と Ω1 の像の面積) 定理の仮定の Φ, Ω1 に対し |D1 | = Φ(Ω1 ) : 面積 ∫ 確定, D1 = Ω1 |J(u, v)| dudv を示す. n : 十分大, R2 を一辺 2−n の正方形に分割, Ωn1 : Ω1 に含まれる正方形全体の和, Ωn2 : Ω1 と共通部分を持つ正方形の和とすると, Ωn1 ⊂ Ω1 ⊂ Ωn2 ⊂ Ω, Ω1 が面積確定なので lim |Ωn1 | = lim |Ωn2 | = |Ω1 |, n→∞ ∀ ∃ ε > 0, n0 s.t. n > n0 =⇒ j = 1, 2 に対し Djn := |Ωn2 Φ(Ωnj ), \ Ωn1 | D1n n→∞ < ε, ∫ ⊂ D1 ⊂ D2n , (Step 2) より |Djn | = Ωn j J(u, v) : Ωn2 上連続より∃ M s.t. |J(u, v)| < M (∀ (u, v) ∈ Ωn2 ). ∫ ∫ n n |J(u, v)| dudv |J(u, v)| dudv − |D2 | − |D1 | = Ωn Ωn 1 2 ∫ ≤ |J(u, v)| dudv ≤ M |Ωn2 \ Ωn1 | < εM. n Ωn 2 \Ω1 よって lim |D2n | = lim |D1n |. n→∞ n→∞ 40 |J(u, v)| dudv, D1n ⊂ D1 ⊂ D2n より |D1n | ≤ |D1 | ≤ |D2n | よって ∫ ∫ n |D1 | = lim |D1 | = lim |J(u, v)| dudv = n→∞ n→∞ Ωn 1 |J(u, v)| dudv. Ω1 最後の等号は J の Ω1 上の可積分性を用いた. (Step 4) 「f (x, y) : D1 上可積分 =⇒ F (u, v) := f (x(u, v), y(u, v)) : Ω1 上可積分」 を示す. ∀ e ∆) − se(f, ∆) < ε. ε > 0, ∃ ∆ = {wi }ni=1 : D1 の広義分割 s.t.S(f, δi := Φ−1 (wi ) とすると (Step 3) より ∫ ∂(u, v) |δi | = det dxdy. ∂(x, y) wi ∆′ := {δi }ni=1 は Ω1 の広義分割であり e ∆′ ) − se(F, ∆′ ) = S(F, n ∑ (Mi − mi )|δi |. (10.5) i=1 ただし Mi := sup F (u, v) = sup f (x, y), (u,v)∈δi (x,y)∈wi mi := inf F (u, v) = (u,v)∈δi inf f (x, y), (x,y)∈wi とした. ∂(u, v) ( ∂(x, y) −1 ) K := max det <∞ = max det ∂(x, y) ∂(u, v) (u,v)∈Ω1 (x,y)∈D1 とおくと |δi | ≤ K|wi | より (10.5) ≤ K n ∑ e ∆) − se(f ∆)) < Kε. (Mi − mi )|wi | = K(S(f, i=1 よって F (u, v) は Ω1 上可積分. ∫ ∫ (Step 5) 「 D1 f (x, y) dxdy = Ω1 F (u, v)|J(u, v)| dudv 」を示す. (u, v) ∈ δi に対し mi ≤ F (u, v) ≤ Mi なので se(f, ∆) = n ∑ i=1 mi |wi | ≤ n ∫ ∑ i=1 F (u, v)|J(u, v)| dudv ≤ n ∑ δi e ∆). Mi |wi | = S(f, i=1 (10.6) f : D1 上可積分より d(∆) → 0 とすると (10.6) の両辺 → ∫ 辺 → D1 f (x, y) dxdy. 41 ∫ D1 f (x, y) dxdy. よって中 定理 10.1 をそのまま用いることが出来ない場合であっても, 面積 0 の集合上での み仮定が満たされて無い場合については以下の議論を行うことにより適用できる. 例 10.3 (極座標変換). Φ : [0, R] × [0, 2π] ∋ (r, θ) 7→ (r cos θ, r sin θ) ∈ B R (0), f : B R (0) 上有界かつ可積分 (例えば B R (0) 上の連続関数なら OK), ∫ ∫ =⇒ f (x, y) dxdy = f (r cos θ, r sin θ)r drdθ. B R (0) (10.7) [0,R]×[0,2π] e : Ω := (0, R) × (0, 2π) → BR (0) \ [0, R) × {0} : 全単射, C 1 級. Proof. Φ ( ) cos θ, −r sin θ J(r, θ) = det = r ̸= 0 (∀ (r, θ) ∈ Ω). sin θ, r cos θ e 1 ) とすると定理 10.1 よって ∀ ε > 0 に対し Ω1 := (ε, R − ε) × (ε, 2π − ε), D1 := Φ(Ω が適用できて ∫ ∫ f (x, y) dxdy = D1 f (r cos θ, r sin θ) rdrdθ. Ω1 これより ∫ ∫ |(10.1) の左辺 − 右辺 | = f dxdy − ∫ f dxdy + B R (0) ∫ f (r cos θ, r sin θ) rdrdθ [0,R]×[0,2π] f (r cos θ, r sin θ) rdrdθ D1 Ω1 ∫ f dxdy + f (r cos θ, r sin θ) rdrdθ B R (0)\D1 [0,R]×[0,2π]\Ω1 ∫ ∫ 1 dxdy + M ≤M 1 drdθ → 0 (ε → 0). − ∫ ≤ B R (0)\D1 [0,R]×[0,2π]\Ω1 よって (10.7) の左辺 = 右辺. 11 広義積分 この節では Ω : R2 の領域, ∀ R > 0 に対し BR (0) ∩ Ω は面積確定, K := {K ⊂ Ω | 有界閉, 面積確定 } とし, f は ∀ K ∈ K 上有界かつ 非負 とする. 定義 11.1. f の Ω 上の広義積分とは ∫ ∫ f (x, y) dxdy := sup f (x, y) dxdy Ω K∈K とし, この値が有限のとき広義積分可という. 42 K 注意 11.2. Ω : 有界, f : Ω 上有界かつ可積分なとき, 上の定義は通常の重積分と同値. Proof. f ≥ 0, K ⊂ Ω より ∫ f dxdy ≤ sup K∈K ∫ f dxdy K Ω は明らか. 逆向きの不等式を示す. Ω は面積確定なので ∀ ε > 0, ∃ ∆ s.t.|Ω| − |K| < ε ただし K は Ω に含まれる ∆i,j の和集合とした. これより ∫ ∫ f dxdy ≤ M (|Ω| − |K|) < M ε. f dxdy − Ω K ∫ ∫ よって f dxdy + M ε. f dx < sup Ω K∈K K ε → 0 とする. 定義 11.3. {Km }∞ m=1 ⊂ K がΩの近似列. def ⇐⇒(i)K1 ⊂ K2 ⊂ · · · . (ii)∀ K ∈ K, ∃ m0 ∈ N s.t. K ⊂ Km0 . 例 11.4. Ω := {(x, y) ∈ R2 | x ≥ 0, y ≥ 0}, Km := {(x, y) ∈ Ω, | x2 + y 2 ≤ m2 }, Lm := {(x, y) ∈ Ω, | |x| ≤ m, |y| ≤ m}, とすると {Km }.{Lm } は Ω の近似列. 定理 11.5. Ω のある近似列 {Am } に対して, am := ∫ Am f dxdy とすると a := lim am < ∞ m→∞ が存在 ⇐⇒ f は Ω 上広義積分可. ∫ さらにこの極限の値は近似列の選び方に依存せず a = Ω f dxdy が成立. Proof. ⇐= について示す. ∀ m ∈ N に対して Am ∈ K なので ∫ ∀ m ∈ N, am ≤ sup f dxdy < ∞ K∈K 43 K さらに, 明らかに am は単調増加なので ∫ a := lim am ≤ sup m→∞ f dxdy < ∞ K∈K が存在する. =⇒ について示す. (11.1) K ∫ a ≤ sup f dxdy. K∈K K ここで, ∀ K ∈ K に対し ∃ m0 s.t. K ⊂ Am0 なので ∫ ∫ f dxdy = am0 ≤ a. f dxdy ≤ K Am0 よって ∫ f dxdy ≤ a. sup K∈K (11.2) K さらに (11.1), (11.2) より ∫ ∫ f dxdy = a = sup K∈K 例 11.6 (ガウス積分). ∫ f dxdy. K Ω ∞ e √ π dx = . 2 −x2 0 Proof. 例 11.4 の Ω, {Km }, {Lm } を考える. 極座標変換 (例 10.3) と定理 9.4 より ∫ e −(x2 +y 2 ) ∫ π/2 ∫ m dxdy = Km 0 e−r r drdθ = 2 0 よって定理 11.5 より ∫ ∫ −(x2 +y 2 ) e dxdy = lim m→∞ Ω ∫ かつ lim m→∞ e−(x e−(x 2 +y 2 ) dxdy = LM 0 m e 0 これより題意を得る. 44 dxdy = Km さらに定理 9.3(あるいは定理 9.4) より ∫ ∫ m ∫ −(x2 +y 2 ) −x2 e dxdy = e dx LM 2 +y 2 ) π 2 (1 − e−m ). 4 −y 2 π , 4 π . 4 (∫ m dy = 0 )2 2 e−x dx . 例 11.7. ∫ ∞ Γ(s) := 0 e−x xs−1 dx (s > 0) ガンマ関数, ∫ 1 xp−1 (1 − x)q−1 dx (p, q > 0) ベータ関数. B(p, q) := 0 (i) Γ(1) = 1, (ii) Γ(1/2) = √ π, (iii) Γ(s + 1) = sΓ(s) (s > 0), (iv) Γ(n) = (n − 1)! (v) B(p, q) = ∫ (vi) 0 π/2 (n ∈ N), Γ(p)Γ(q) , Γ(p + q) 1 (p + 1 q + 1) cosp θ sinq θ dθ = B , 2 2 2 (p, q > −1). 注意 11.8. x = y 2 や x = cos2 θ と変数変換すると ∫ ∞ 2 Γ(s) = 2 e−y y 2s−1 dy, 0 ∫ π/2 cos2p−1 θ sin2q−1 θ dθ. B(p, q) = 2 0 ∫∞ Proof. (i) について. Γ(1) = 0 e−x dx = [−e−x ]∞ 0 = 1. ∫ ∞ s −x ∫∞ s −x ∞ (iii) について. Γ(s + 1) = 0 x e dx = [−x e ]0 + s 0 e−x xs−1 dx = sΓ(s). (iv) について. n ≥ 2 のとき (iii) を代入すると Γ(n) = (n − 1)Γ(n − 1) = (n − 1)(n − 2)Γ(n − 2) = · · · = (n − 1)!Γ(1). (v) について. ∫ n ∫ n 2 −x2 2p−1 Γ(p)Γ(q) = lim 4 e x dx e−y y 2q−1 dy n→∞ 0 ∫0 (11.3) −(x2 +y 2 ) 2p−1 2q−1 = lim 4 e x y dxdy n→∞ Ln ただし Ln := {(x, y) | 0 ≤ x ≤ n, 0 ≤ y ≤ n}, Kn := {(x, y) | x, y ≥ 0, x2 + y 2 ≤ n2 }. これらは {(x, y) | x, y ≥ 0} の近似列であり, 定理 11.5 より ∫ 2 2 (11.3) = lim 4 e−(x +y ) x2p−1 y 2q−1 dxdy n→∞ ∫ Kn π/2 ∫ n e−r (r cos θ)2p−1 (r sin θ)2q−1 rdrdθ 0 0 ∫ n ∫ π/2 −r2 2(p+q)−1 = lim 2 e r dr × 2 cos2p−1 θ sin2q−1 θ dθ = lim 4 2 n→∞ n→∞ 0 0 = Γ(p + q)B(p, q). 45 (vi) は注意 11.8 より明らか. ( Γ(1/2) (ii) について. (v) と注意 11.8 より Γ(1) )2 ∫ π/2 (1 1) =B , =2 dθ = π. 2 2 0 例 11.9. RN の半径 a の球 Ba の体積 |B a | と単位球 B1 の表面積 ωN を求めよ. Proof. 演習 13 より極座標変換のヤコビアン JN (r, θ1 , · · · , θN −1 ) = rN −1 sinN −2 θ1 sinN −3 θ2 · · · sin θN −2 . これより ∫ |B a | = 1 dx1 · · · dxN ∫ Ba a = r N −1 ∫ π dr × N −2 sin 0 0 ∫ π θ1 dθ1 N −3 sin ∫ θ2 dθ2 · · · 0 ∫ π sin θN −2 dθN −2 0 2π 1 dθN −1 0 = aN /N × ωN . (本講義では面積を定義していないが, ここでは上式の 読み進めて欲しい.) これより ∫ · · · を ωN の定義だと思って (1 ) (1 N − 1) (1 N − 2) B , · · · B , 1 · 2π , 2 2 2 2 2 1 N −1 1 N −2 1 Γ( )Γ( ) Γ( 2 )Γ( 2 ) Γ( )Γ(1) = 2 N 2 ··· 2 3 2π N −1 Γ( 2 ) Γ( 2 ) Γ( 2 ) ωN = B Γ(1)Γ( 12 )N −2 2π N/2 = , = 2π Γ( N2 ) Γ( N2 ) |Ba | = ωN 12 aN π N/2 π N/2 = N N = N aN . N Γ( 2 ) Γ( 2 + 1) 2 線積分とグリーンの定理 (ベクトル解析入門) 定義 12.1. x(t) : I = [a, b] ∋ t → x(t) ∈ RN を有向曲線といい, a → b を向きとい う. x が I 上微分可なとき ∫ b ℓ(c) := |x′ (t)| dt a を曲線の長さという. 注意 12.2. 46 • 長さはパラメータの選び方に依らない. t が別のパラメータ s と次ののよう に関係付けられているとする. つまり t = ϕ(s), s ∈ J := [c, d], ただし ϕ ∈ e : C 1 (J), ϕ(c) = a, ϕ(d) = b, ϕ′ (s) > 0 (∀ s ∈ J) とする. このとき, 曲線 C x e(s) := x(ϕ(s)), s ∈ J の像と曲線 C : x(t), t ∈ I の像は同じであり, 合成関数 の微分や変数変換の公式より ∫ d ∫ d ∫ b ′ ′ ′ e ℓ(C) = |e x (s)| ds = |x (ϕ(s))|ϕ (s) ds = |x′ (t)| dt = ℓ(C). c c a • I の分割 ∆ : a = t0 < t1 < · · · < tn = b とし, リーマン和と平均値の定理を利 用すると ℓ(C) = lim |∆|→0 n ∑ |x(tk ) − x(tk−1 )| k=1 |tk − tk−1 | |tk − tk−1 | = lim |∆|→0 n ∑ |x(tk ) − x(tk−1 )| k=1 が成立する. これは図の折れ線の極限であり直感的な意味での曲線の長さと一致する. 定義 12.3. 曲線 C : x(t), t ∈ I = [a, b], x(t) は I 上微分可, f : C 上の関数に対し ∫ ∫ b f (x) dxj := f (x(t))x′j (t) dt (j = 1, · · · , n), (12.1) C a ∫ ∫ b f (x) dσ := f (x(t))|x′ (t)| dt (12.2) C a を C に沿った f の線積分という. dσ = |x′ (t)| dt などと書き, これを線素と呼ぶ. 注意 12.4. • (12.2) で f ≡ 1 とすると曲線 C の長さ. • 図のように, (12.2) はカーテンの面積, (12.1) はカーテンの xj 軸への射影の面 積を意味する. 以下, Ω ⊂ R2 : 有界領域, ∂Ω : 区分的になめらかな曲線 (つまり有限個のなめらか な曲線の和). ∂Ω には内部が左側となるよう向き付けされているものとする. 定理 12.5 (グリーンの定理). f, g : Ω を含む開集合上の C 1 級関数 ∫ ∫ =⇒ f (x, y) dx + g(x, y) dy = −fy (x, y) + gx (x, y) dxdy. ∂Ω (12.3) Ω 注意 12.6. 例えば図のような場合 ∂Ω = C1 ∪ C2 ∪ C3 . Proof. ∫ ∫ f dx = ∂Ω ∫ −fy dxdy, (12.4) gx dxdy, (12.5) Ω∫ g dy = ∂Ω Ω 47 を示せばよい. (12.4) のみ示す. 図のように Ω は有限個の x または y について単純な 図形の和に分割出来て (この部分は自明ではない. 証明が必要であるがここでは省略 する.), それぞれ重なる辺上の積分値は打ち消し合う. よって Ω が x について単純な 図形の場合のみ示せばよい. つまり, 図のように ∂Ω が C1 ∪ C2 ∪ C3 ∪ C4 の場合を考 える. C1 : x = t, y = φ1 (t), t ∈ [a, b], C2 : x = b, y = t, t ∈ [φ1 (b), φ2 (b)], C3 : x = −t, y = φ2 (−t), t ∈ [−b, −a], C4 : x = a, y = −t, t ∈ [−φ2 (a), −φ1 (a)]. C1 上 dx/dt = 1, C3 上 dx/dt = −1, C2 , C4 上 dx/dt = 0 より ∫ ∫ b f dx = f (t, φ1 (t)) × 1 dt, C1 a ∫ ∫ φ2 (b) f dx = C2 f (b, t) × 0 dt = 0, φ1 (b) ∫ −a ∫ f dx = ∫−ba C3 = f (−t, φ2 (−t)) × −1 dt f (t′ , φ2 (t′ )) dt′ , b ∫ ∫ −φ1 (a) f dx = −φ2 (a) C4 f (a, t) × 0 dt = 0. よって ∫ ∫ b f (t, φ1 (t)) − f (t, φ2 (t)) dt ∫ n ∫ φ2 (t) = −fy (t, y) dt a φ1 (t) ∫ = −fy dxdy. f dx = ∂Ω a Ω 定義 12.7. u : RN の部分集合 → RN をベクトル場という. { ∂u1 2 + ∂u (N = 2) ∂x ∂y div u := ∇ · u := ∂u1 ∂u2 3 + ∂y + ∂u (N = 3) ∂x ∂z ∂u2 − ∂u1 (N = 2) rot u := curl u := ∇ × u = (∂x∂u ∂y∂u ∂u 3 ∂u2 3 − ∂z2 , ∂z1 − ∂u , − ∂y ∂x ∂x 48 ∂u1 ∂y . ) (N = 3) . 系 12.8 (二次元のガウスの発散定理). Ω : 定理 12.5 と同じ. u : Ω を含む開集合上 の C 1 級関数. ∫ ∫ =⇒ div u dxdy = u · n dσ. (12.6) Ω ∂Ω ただし n は ∂Ω の外向き単位法線ベクトル (長さ 1 で境界の接線に垂直). Proof. 系 12.8⇐⇒ 定理 12.5 を示す. u = (u1 , u2 ) := (g, −f ) とすると div u = gx − fy よって (12.3) の右辺 =(12.6) の左辺. 一般になめらかな曲線 C が (x(t), y(t)) とあらわされるとき ((x′ (t), y ′ (t)) は接ベク トル. よって 1 n= √ (y ′ (t), −x′ (t)). {x′ (t)}2 + {y ′ (t)}2 (12.6) の右辺 ∫ = u · n dσ ∂Ω ∫ √ ( ) 1 {x′ (t)}2 + {y ′ (t)}2 dt = u1 (x(t), y(t))y ′ (t) − u2 (x(t), y(t))x′ (t) √ ′ 2 ′ 2 {x (t)} + {y (t)} I ∫ = g(x(t), y(t))y ′ (t) + f (x(t), y(t))x′ (t) dt ∫I = g(x, y) dy + f (x, y) dx = (12.3) の左辺 ∂Ω e : Ω を含む開集合, u(x, t) : Ω e × (a, b) → 例 12.9. Ω : 定理 12.5 の仮定を満たす. Ω 2 R, C 級で以下を満たす. ∂u = △u, ∀ (x, t) ∈ Ω × (a, b), (熱方程式) ∂t Dn u := ∇u · n = 0, ∀ (x, t) ∈ ∂Ω × (a, b) (断熱境界条件) このとき以下が成立. ∫ d u(x, t) dx = 0, (熱量保存) dt Ω ∫ ∫ 1d 2 |u(x, t)| dx + |∇u(x, t)|2 dx = 0. 2 dt Ω Ω (12.7) (12.8) Proof. 始めに (12.7) を示す. 熱方程式の両辺を積分し △u = div(∇u), 系 12.8, 境界 条件を用いると ∫ ∫ ∫ ∂u dx = div(∇u) dx = ∇u · n dσ = 0. Ω ∂t Ω ∂Ω 49 よってあとは左辺の微分と積分の順序交換が可能であることを示せばよい. t ∈ (a, b) を固定し, t ∈ [a′ , b′ ] ⊂ (a, b) なる a′ , b′ をとる. u, ∂u は Ω × [a′ , b′ ] 上連続なので, 定 ∂t 理 9.7 と注意 9.8 より微分と積分の順序交換可. 次に (12.8) を示す. 一般に u, v ∈ C 1 に対し v△u = v div ∇u = div(v∇u) − ∇v · ∇u が成立. これより ∫ ∫ ∫ ∫ 1 ∂ 2 ∂ u dx = u u dx = u△u dx = div(u∇u) − ∇u · ∇u dx 2 Ω ∂t ∂t Ω Ω Ω ∫ ∫ = (u∇u) · n dσ − |∇u|2 dx. ∂Ω Ω ∂ u2 , ∂t (u2 ) が Ω × [a′ , b′ ] 上連続なので, 定理 9.7 と注意 9.8 より微分と積分の順序交換 可能であり, 右辺第一項は系 12.8 と境界条件より 0 となり (12.8) を得る. 13 最後に ベクトル解析に関しては詳しくやる時間が無かった (特に曲面や面積分をやる時 間が無かった). これらの内容は幾何や数理物理の講義で学習する場合もあるがベク トル解析のみに特化した講義や本で学習するような機会はほとんど無い. 微分積分 の本でも少し説明されてあることが多いが, もう少し詳しい本として [2] を上げてお く. この本は, 代表的な非線形偏微分方程式の 1 つである Navier-Stokes 方程式への 応用やフーリエ解析 (3 年の後期に学習する) についても書かれてあり, この春休みに 読むのにおすすめである. ちなみに Navier-Stokes 方程式の滑らかな解の時間大域存 在は Clay 研究所のミレニアム問題 (いわゆる 100 万ドル問題) の 1 つとなっている. また, 面積や積分論に興味を持った人には [1] を春休み中に読むことをおすすめす る. ルベーグ積分は 3 年の前期に学習するが, この半期だけでちゃんと理解するのは 難しい. この本をある程度読んでおけば習得がスムーズになるだろう. また, この本 の後半部分には掛谷予想などの実解析の近年の問題にも触れてあり興味深い. 参考文献 [1] 新井 仁之著, ルベーグ積分講義—ルベーグ積分と面積 0 の不思議な図形たち, 日 本評論社 [2] 垣田高夫, 柴田良弘 著, ベクトル解析から流体へ, 日本評論社 [3] 黒田成俊 著, 微分積分, 共立出版 [4] 小平邦彦 著, 解析入門 I, II, 岩波書店 50 [5] 杉浦光夫 著, 解析入門 I, II, 東京大学出版会 [6] 鈴木武, 山田義雄, 柴田良弘, 田中和永 著, 理工系のための微分積分 I, II, 内田老 鶴圃 51
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