計算流体力学(第1回資料) 計算流体力学 2014年9月26日 計算流体力学(Computational Fluid Dynamics)における各種離散化解析手法 について理解する。なお,講義に関連した演習を随時行う予定である. 1.流れの支配方程式とその特徴 第1回 流れの支配方程式とその特徴・離散化解析手法 第2回 有限差分法(1):差分近似(空間・時間の離散化) 第3回 有限差分法(2):安定化手法 第4回 有限差分法(3):一般化座標 第5回 有限体積法(1) 第6回 有限体積法(2) 第7回 有限要素法(1):移流拡散方程式 第8回 有限要素法(2):Navier-Stoke方程式 第9回 有限要素法(3):安定化有限要素法 第10回 有限要素法(4):直接法と分離型解法 第11回 有限要素法(5):要素の近似特性 第12回 乱流モデル、自由表面流れ 第13回 連成問題 第14回 並列計算法、可視化手法 第15回 期末試験 評価:出席(50%),レポート・期末試験(50%) 参考書:土木学会編「いまさら聞けない計算力学の常識」丸善(3,200円+税) 流体の分類 力学的に重要な流体の性質:圧縮性と粘性 →応力成分に関係 圧縮性(compressibility):圧力によって体積が変化する性質 粘性(viscosity):せん断変形速度に抵抗する性質 マッハ数:0.3程度 (流速が音速の0.3倍) 1.1 流れと物質の移流拡散問題(13話、14話) 流れの記述法 未知変数と支配方程式-保存則(質量、運動量、エネルギー) 流れ・物質の移流拡散問題の物理現象の特徴 1.2 支配方程式の型と特徴(13話) 偏微分方程式の型と特徴 物理法則に従った離散化の必要性 3 流れの記述法 Euler的方法:空間の各点各瞬間の流体の状態量(流速・圧力 密度)を固定座標系の位置と時間(x, y, z, t)の関数として記述 する方法。(ある固定した視点から流れを観察する立場) Lagrange的方法:ある流体粒子の時々刻々の位置を追跡し、 これをその粒子の最初の位置と時間の関数として記述する方法。 (ある流体粒子の視点から流れを観察する立場) Euler的方法 Lagrange的方法 4 流れを記述する未知変数と方程式 5 6 保存則 運動学的状態を表す未知変数:u,v,w(速度成分) 内部状態を表す未知量:p(圧力), ρ(密度) J 流体の力学的変化を記述する方程式(支配方程式) ・質量保存則(式1本) ・運動量保存則(式3本) ・エネルギー保存則(式1本) n 未知数5つに対して、式が5つ成立するので未知数を決定することができる 非圧縮性流体の場合には、密度が一定なので未知数が4つになる →質量保存則と運動量保存則のみで未知数を決定することができる 流れの支配方程式 7 保存則 質量保存則 Gaussの発散定理 運動量保存則 エネルギー保存則 :微分形の保存式 J・n 支配方程式の導出(微視的見方) 流れの支配方程式の導出(微視的見方) 連続式の導出(2次元) dt時間内に微小四辺形内に運ばれる流体の質量 ( u ) ( u ) dxdydt y x 面ABをdt時間内に通過する流体の質量 dx ( u ) M AB u dydt (1) 2 x dt時間内における微小四辺形内の流体の質量の増加量 ( dxdy) dt dxdydt t t 面CDをdt時間内に通過する流体の質量 dx ( u ) M CD u (2) dydt 2 x軸に垂直な面を通してdt時間内に微小四面体に運び込まれる流体の質量 dx ( u ) dx ( u ) M AB M CD u dydt u dydt 2 x ( u ) dxdydt x 2 x (3) y軸に垂直な面を通してdt時間内に微小四面体に運び込まれる流体の質量 ( u ) M BC M AD dxdydt (4) y 流れの支配方程式(微視的見方) 質量 (7) 質量保存則(オイラーの連続方程式) ( u ) ( v) 0 t x y (8) 非圧縮性流体の場合( 一定の場合) u v 0 x y (9) 外力(質量力,圧力,粘性力) p dx p dx Fx dxdyX p dy dy p x 2 x 2 dx dx x x dy dy x x x 2 x 2 (1) m : 質量, : 加速度,F : 外力 m dxdy ( u ) ( u ) dxdydt dxdydt y t x 流れの支配方程式(微視的見方) Newtonの運動の第2法則 m F (6) (5)=(6) x (5) (2) xy dy dy dx xy xy dx xy y 2 y 2 xy p dxdyX dxdy x dxdy dxdy y x x 加速度 u u u v dt u ( x udt , y vdt , t dt ) u ( x, y, t ) u y t x v v v v( x udt , y vdt , t dt ) v( x, y, t ) u v dt y t x (3) (4) x lim u Du u u ( x udt , y vdt , t dt ) u ( x, y, t ) u u v dt 0 t x y Dt dt (5) xy p dxdy X x y x x v v Dv v( x udt , y vdt , t dt ) v( x, y, t ) v y lim u v dt 0 t x y Dt dt (6) p xy y Fy Y y x y dxdy (7) (8) 流れの支配方程式(微視的見方) xy u u u p u v X x x y x x y t (9) v p xy y v v u v Y y x y x y t (10) 粘性応力 偏微分方程式の型と特徴 判別式 x 2 u x v y 2 y v u xy x y (11) 2u 2u 1 p u u u u v X 2 2 x x y t x y (12) 平衡問題のように閉じた境界条件が関係する問題(定常問題) ・・・・楕円型 伝播問題のように開いた境界条件が関係する問題(非定常問題) ・・・・放物型or双曲型 2v 2v v v v 1 p 2 2 u v Y y t x y x y (13) Q: なぜ型を意識するのか? A: 型により解の特徴が異なる→ふさわしい数値解法が異なる Navier-Stokesの運動方程式 放物型方程式 楕円型方程式 Laplace方程式 u 2u t x 2 0 x 2 y 2 2 2 境界条件:板の境界で温度が 単調(直線的に)増加 y t=0.001 (t 0, x ) t=0.003 初期条件: u ( x,0) ( x) ( x ) y l 境界条件: u (, t ) 0 (t 0) 2 P y 0 x 0 x l x 特徴: 任意の点における楕円型方程式の解は,その周辺の点の値の平均値になる →差分法、有限体積法では中心差分近似,有限要素法ではGalerkin法が ふさわしい 多くの定常の場の問題 u 拡散方程式 T u u ( x, t ) 山の高さは 1 2 t e x 4t 1 2 t e 1 x ( )( ) 2 4 t t=0. 01 t=0.1 x t に反比例して小さくなり,山の裾は t に比例して広がる 特徴:1)解の空間的広がりに方向性がない→差分法・有限体積法では中心 差分近似,有限要素法ではGalerkin法がふさわしい 2)解の時間的変化は領域全体にわたり,時間に関して指数関数的 (瞬時)に拡散する →陰的方法が望ましい 熱伝導問題,拡散問題,地下水流れなど まとめ 双曲型方程式 波動方程式 2 2u 2 u c x 2 t 2 u u c 0 (t 0, x ) t x ( x ) 初期条件: u ( x,0) ( x) 厳密解: u u ( x, t ) ( x ct ) u u2 u2 t u1 解の空間的、時間的特徴 u1 x 特徴: 1)解の空間的広がりに方向性があり,与えた伝播速度で形を保ちながら伝わる →空間の離散化には差分法・有限体積法では風上差分近似,有限要素法では 安定化有限要素法(Petrov-Galerkin法)を用いる 2)解の時間的変化は,局所的であり,領域全体にわたらない →陽的方法を有効に用いることが可能となる ふさわしい離散化 楕円型 周辺の値の平均値になる 中心差分近似,Galerkin 有限要素法 放物型 ・方向性がない ・大域的な時間的変化 中心差分近似,Galerkin 有限要素法 陰解法 双曲型 ・方向性がある ・局所的な時間的変化 風上差分近似,安定化有限要素法 陰解法、陽解法 波動問題,流れ問題など 方程式の共通性(混合型方程式) 物質の移流拡散問題 拡散方程式 (放物型) 移流拡散方程式 移流項が卓越:双曲型 拡散項が卓越:放物型 拡散項 拡散現象 移流方程式 (双曲型) 類似性が強い 移流項 移流現象 非圧縮性粘性流体解析(Navier-Stokes方程式と連続式) 移流拡散方程式 (混合型) 移流項 移流項が卓越:双曲型 粘性項が卓越:放物型 拡散項 移流拡散現象 流れ問題 流れ問題 Laplace方程式 (楕円型) Stokes方程式 (放物型) ・・・・粘性流体(遅い流れ) 粘性項 Euler方程式 (双曲型) ・・・・非粘性流体、渦あり流れ 移流項(非線形項) Navier-Stokes方程式 (混合型) ・・・・粘性流体 移流項 圧力のPoisson方程式 (楕円型) ・・・・非圧縮性粘性流体 粘性項 (Fractional Step法) 完全流体で、静止状態から発生した流れは渦なし流れ (非粘性なので流体粒子を回転させる力が生じない) 非圧縮粘性流れ(Navier-Stokes方程式) 慣性力項(双曲型) 混合型 無次元化 放物型 楕円型 双曲型 渦あり流れ ・・・・完全流体、渦なし流れ 流体と熱の数理モデル化 放物型 渦なし流れ 混合型 圧力項 物体力項 粘性力項(放物型) 流れの発生により生じる項 Navier-Stokes方程式の特徴 Reynolds数とは 慣性力 と 粘性力 の大きさの比を表す無次元のパラメータ 小さい 遅い流れ、ねばねばした流れ Re 大きい 速い流れ、さらさらした流れ 1)Re数の大きさにより方程式の性質が変化する 2)Re数の大きさにより境界層厚さが変化する 3)Re数の大きさにより渦の大きさが変化する 4)Re数が大きくなると3次元性が容易に現れる Navier-Stokes方程式の特徴 Navier-Stokes方程式の特徴 2)Re数の大きさにより境界層厚さが変化する 境界条件 u (0) 1, u (1) 0 慣性力項(双曲型) 圧力項 物体力項 粘性項(放物型) u 厳密解 Re=100 1 Re=50 Re=10 1)Re数の大きさにより方程式の性質が変化する Reynolds数が小さい→放物型方程式の特徴を呈する Reynolds数が大きい→双曲型方程式の特徴を呈する この場合注意→風上化の必要性 Re : 小 Re : 大 0.5 0 0 粘性流れの場合:境界層厚さが薄くなる 0.2 0.4 0.6 0.8 1 x Navier-Stokes方程式の特徴 Navier-Stokes方程式の特徴 有限要素分割図 円柱近傍の有限要素分割図 u = fre e ,v = 0 16h u=1,v=0 円柱周り; u=v=0 計算条件 u = fre e ,v= 0 Re=50,500,5000 Δt=0.005 32h 総節点数;11924 総要素数;23424 最小メッシュ幅;0.00548h Navier-Stokes方程式の特徴 Navier-Stokes方程式の特徴 Re=50 Time=100 双子渦の形成 Re=500 Time=100 規則的な後流渦 Re=50 Re=500 Re=5000 1 Re Reが大きくなると境界層厚さが薄くなる →壁付近で細かい要素分割が必要になる Re=5000 Time=100 後流渦に乱れ Navier-Stokes方程式の特徴 Navier-Stokes方程式の特徴 3)Re数の大きさにより渦の大きさが変化する 1次元を仮定: u u x Re=1,000 速度の一つのフーリエ成分 または外部的に与えられた撹乱 1 2 非線形項の働きにより,振幅 u は u 2 波数 k は 2k 高周波成分を作り出す Re=10,000 小さな渦の発生 Navier-Stokes方程式の特徴 4)Re数が大きくなると3次元性が容易に現れる Navier-Stokes方程式の特徴 円柱周りの流れ解析 u=v=w=free u=1, v=w=0 16D u= w= fre e , v= 0 u= w= fre e , v= 0 8D 24D Re 103 Re 105 3D pe rio dic bo nda ry pe rio dic bo nda ry Navier-Stokes方程式の特徴 Re=100 Navier-Stokes方程式の特徴 2次元計算の結果を鉛直方向に 積み重ねて3次元計算を行った Re=100 2.0 CD C D and C L 1.0 CL 0.0 2D cal. 3D cal. -1.0 -2.0 100 Navier-Stokes方程式の特徴 140 160 Time 180 200 Navier-Stokes方程式の特徴 2次元計算の結果を鉛直方向に 積み重ねて3次元計算を行った Re=1,000 2.0 CD 1.0 C D and C L Re=1,000 120 CL 0.0 2D cal. 3D cal. -1.0 -2.0 100 120 140 160 Time 180 200 Navier-Stokes方程式の特徴 Navier-Stokes方程式の特徴(まとめ) 抗力係数 3.0 exp.: Cantwell 2D cal. 3D cal. 2.5 CD 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1 10 102 10 3 104 Re 105 106 107 1)Re数の大きさにより方程式の性質が変化する (Re大:双曲型,Re小:放物型) 2)Re数の大きさにより境界層厚さが変化する (Re大:境界層厚さが薄くなる) 3)Re数の大きさにより渦の大きさが変化する (移流項は小さい渦を発生させる働きがある) 4)3次元性が容易に現れる(Re>200) この特徴の理解は,離散化とメッシュ生成を行う上で重要
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