2014 年度「ファイナンス保険数理特論」 レポート問題 出題日 2014 年 6 月 1 日,高岡浩一郎∗ 【このファイルは3頁分です. 】 以下の問1∼問6のうち4問以上に答えて,7 月以降,8 月 5 日(火)14:00 までに商学研究室 (第2研究館1階)に提出してください. 締切後に解答をホームページにアップロードします. [ 問 1 ] ゼロ以上の整数に値をとる確率過程 X = {Xt }t≥0 は,以下の4つの性質をもつと仮定 する.ただし λ は正定数である. • X0 = 0 • X は独立・定常増分過程である • 確率 1 で,X の経路は非減少かつ右連続 [ ] P Xt+δ − Xt = 1 ∀t ≥ 0, lim = λ かつ δ↓0 δ • [ ] P Xt+δ − Xt ≥ 2 lim = 0 δ↓0 δ このとき,以下の誘導に沿って,X が強度 λ の Poisson 過程であることを示しなさい. (i) [ ] pk (t) := P Xt = k と定義するとき,ゼロ以上の各整数 k および各 t ≥ 0 と δ > 0 に対 して, pk ( t + δ ) = k ∑ pj (t) pk−j (δ) j=0 を示しなさい. (ii) 上式を変形し δ ↓ 0 の極限を考えることにより,k = 0 のときは各 t に対して d p0 (t) = −λ p0 (t) dt が成り立ち,また k ≥ 1 のときは各 t に対して d pk (t) = −λ pk (t) + λ pk−1 (t) dt が成り立つことを示しなさい. (iii) pk (t) = (λt)k −λt e を示しなさい. k! ∗ 一橋大学大学院商学研究科.E-mail: [email protected] 1 [ 問 2 ] ある会社の現在株価 S0 は 400 円である.今後株価 S は下図のような変動をすると仮 定する. 現在 t = 0 200 ✟✟ ❍❍ t=1 ✟ ✯ ✟✟ ❍❍ ❍ ❥ 400 100 t=2 ✯ ✟ ✟✟ ✟ ✟ ❍❍ ❍❍ ❥ ❍ ✯ ✟ ✟ ✟ ✟ ✟ ❍❍ ❍❍ ❥ ❍ t=3 ✯ ✟ ✟✟ ✟ ✟ ❍❍ ❍❍ ❥ ❍ ✯ ✟ ✟ ✟ ✟✟ 800 200 ❍❍ ❍❍ ❥ ❍ ✯ ✟ ✟ ✟ ✟✟ 50 ❍ ❍❍ ❍ ❥ ❍ 1600 400 100 25 標本空間およびフィルトレーションとして妥当なものは何か. (i) (ii) 金利はゼロと仮定するとき,満期 T = 3 で次のようなペイオフを持つデリバティブ3種類 それぞれの,現在価値および複製方法を求めなさい. 2. (300 − S3 )+ つまり行使価格 300 円のヨーロピアン・プット ( )+ max0≤t≤3 St − 300 3. S1 +S2 +S3 3 1. (iii) 上の問題 (ii) において,金利がゼロではなく安全債券価格 B が 1 → 変動するとき,答えはどうなるか. 5 4 → ( 54 )2 → ( 45 )3 と [ 問 3 ] 離散時間の設定を考える.株価過程を S と記し,安全債券価格過程を B と記す.実数 ( ) c と2つの可予測過程 ϕ = {ϕt }t=1,··· ,T , ψ = {ψt }t=1,··· ,T の組 c, ϕ, ψ に対し,以下の3つの 性質は全て同値であることを示しなさい: 1. 2. 3. ϕt St−1 + ψt Bt−1 = c + ϕt St + ψt Bt = c + t−1 ∑ t ∑ ϕ ∆S + ϕ ∆S + t−1 ∑ t ∑ ψ ∆B, ψ ∆B, t = 1, 2, · · · , T. t = 1, 2, · · · , T. c = ϕ1 S0 + ψ1 B0 , かつ ϕt St + ψt Bt = ϕt+1 St + ψt+1 Bt , 2 t = 1, 2, · · · , T − 1. また,この同値性の証明には,2項モデルの特性や安全債券価格 B が確定的に変動していること を全く使っていないことを確かめなさい. [ 問4 ] { Wt }t∈[0,T ] を1次元 Brown 運動とする.次の5つの問に対して,それぞれ (a) マル チンゲールの定義に沿った方法 (b) 伊藤の公式を使う方法の2通りで答えなさい.ただし 1 につ いては (a) の方法だけでよい. (i) (ii) 確率過程 Wt がマルチンゲールであることを示しなさい. 確率過程 Wt2 − t がマルチンゲールであることを示しなさい. (iii) 確率過程 Wt3 − 3 t Wt がマルチンゲールであることを示しなさい. (iv) 確率過程 Wt4 + α t Wt2 + βt2 がマルチンゲールになるように,2つの定数 α と β を定め なさい. (v) 確率過程 exp(σWt + µt) がマルチンゲールになるためには,2つの定数 σ と µ がどのよ うな関係式を満たせばよいか. [ 問 5 ] 配当の無い株式を原資産とする,満期 T, 行使価格 K のヨーロピアンコールオプション を考える.Black-Scholes 評価式によると,時刻 t でのオプション価格(ただし 0 ≤ t < T )は C(St , t) d± = = St Φ(d+ ) − K e−r(T −t) Φ(d− ), log ( St K e−r(T −t) √ ) ± 1 2 2 σ (T − t) σ T −t である.これについて次の問に答えなさい. (i) (ii) (iii) (iv) Black-Scholes 価格モデルから出発し,マルチンゲールを用いた方法で上記の価格式を導 出しなさい. ∂C ∂S = Φ(d+ ) を示しなさい.また上記の Black-Scholes 式が Black-Scholes 偏微分方程式 ∂C 1 ∂2C ∂C + σ 2 s2 + rs − rC = 0 を満たすことを示しなさい. ∂t 2 ∂s2 ∂s lim C(St , t) = (ST − K)+ を確かめなさい. t→T ∂C ∂σ > 0 を示しなさい.また,St と t の値を固定したうえで lim C(St , t) および lim C(St , t) σ→∞ σ→0 をそれぞれ求めなさい. [ 問 6 ] Poisson 過程 {Nt }t≥0 が,経路の連続性に関する Kolmogorov’s criterion を 満たさな い こと,つまり4つの正定数 α, β, C, ϵ をどのように選んでも 「 |t − s| < ϵ を満たす各 s > 0, t > 0 に対して [ ] E |Nt − Ns |α ≤ C|t − s|1+β 」 (∗) が成り立たないことを示しなさい.また,Brown 運動 {Wt }t≥0 は Kolmogorov’s criterion を満た すこと,つまり上記 (∗) を満たすような4つの正定数 α, β, C, ϵ が存在することを示しなさい. 3
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