並行な二本のフェライト棒を伝搬する表面波の研究

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並行な二本のフェライト棒を伝搬する表面波の研究
明利, 敏巳
静岡大学大学院電子科学研究科研究報告. 3, p. 65-66
1982-03-15
http://hdl.handle.net/10297/1373
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氏名1(本籍)
明 利 敏 巳
学位の種類
工 学 博 士
学位記番号
工博甲第 8 号
学位授逗の目付
昭和65年3月28日
学位授与の要件
学位規則第5条第1項該当
(宮崎県)
電子科学研究科 電子応用工学専攻
学位論文題目
論文審査委員
並行な二本のフェライト棒を伝搬する表面波の研究
(蓑貝毒)松本欣二
教 授 水晶静夫 教 授 高崎 宏 助教授 岡本尚道
論文内容の要 旨
軸方向に磁化された一本のフェライト棒を伝搬する電磁表面波は広く研究されており,ダイナミ
ック,サーフェイス,ボリュームと言う三種の表面波モrドの存在が既に明らかにされている。ダ
イナミックモrドはフェライトが単なる誘電体と見なせる周波数域で存在し,forwardwaveであ
る。サーフェイスとポリュrムモrドは,各々,フェライト棒の表面近く又は中心部に電力が集ま
るモrドで,主にbackward waveである。これらのモrドの内,サーフェイスモrドは共振器
に,又ポリュrムモードは遅延線やファラデー回転子に応用されている。
本研究では,軸方向に磁化された並行な二本のフェライト棒を伝わる電磁表面波の特性を理論的
に明らかにし,実験により確認した。そしてそれらの表面波モrドの有用な応用例を提示した。
まず,相反定理から導かれた新しいマトリクス法と静磁近似法とを使って,一様な甫流磁界分布
を持つ,無限に長い二本のフェライト棒を伝わる表面波を解析した。表面波は,二本のフェライト
棒の横断面内の界分布が各フェライト棒の中心を結ぶ線分の二等分点に対し,点対称性を持つ偶モ
rドと反対称性を持つ奇モrドの対を成して伝搬する。表面波モrドの中から特に,最低次サrフ
ェィスモrド1eと1。とについて,二本のフェライト棒の中心間距離dと棒の半径βの比がd/クコ−
2.2,3,4の場合に,分散曲線と電磁界分布を明らかにした。直流磁界の向きに位相伝搬するサr
フェイスモrドの電磁界分布を,ある瞬間にフェライト棒に沿って描くと,左ネジの様に振れてい
る。サrフィイスモrドは,この振れの最も弱い,表面波のカットオフと振れの最も強い/∠=0に
おけるカットオフとの間で存在する。ここで恒はフェライトのテンソル透磁率の対角要素である。
次に,有限な長さしのフェライト棒を使って,モrド1eと1。による二種類の共鳴吸収を観測し
た。一つはフェライトを伝搬するモード1。と1。の半波長完在波共鳴であり,他の一つはフェライ
トの磁気モーメントがフェライト棒に沿って同相で歳差運動する一様モrド共鳴である。有限長フ
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ェライト棒のZ軸に沿う内部直流磁界分布は非一様である為に,フェライト棒に沿ってサーフェイ
スモードが伝搬すると,その波数βはZの関数として変化し,サrフェイスモードの伝搬はlzl<
Zc(<L/2)の区間に限られる。ここで,内部直流磁界は,外部直流磁界とSommerfeld表現式の
反磁界そして多結晶YIGフェライト材料中の細かな穴などにより生ずる約300eの内部反磁界の
和で計算した。定在波の場合は,フェライト棒のZ点での波数βとして,一様な直流磁界分布を持
つ棒の理論分散曲線の値を使い,区間IZl<Z。に沿って半波長定在波が立っ為の条件,JIPIdZ=TT
から共鳴周波数を求めた。一様歳差モードの場合はフェライト棒に沿う波の伝搬が無い(刷=0)
為に,区間2Zcにおける平均内部直流磁界と同じ強さで一様な直流磁界を持っフライト棒の静磁近
似分散曲線の波数β=0における周波数で共鳴周波数を近似した。
共鳴吸収実験は,長さLが3.0,3.5,5.6,7.0,10,13,15,20,25mmの9種類の有限長多結
晶YIGフェライト棒を方形導波管とbelowcutoffの空胴の中に置いて行った。モrド1eと1。に
よる一対の一様歳差共鳴吸収は,方形導波管中のフェライト棒をその軸に沿って一様なTEl。導波
管モrドの外部高周波横磁界で励振した。その結果励振された共鳴は,18と1。モードの完在波が
生じない程短かいフェライト棒を使っても観測できた為に,一様歳差モrドによるものと認められ
た0モード18とloによる一対の半波長完在波は,方形導波管にフェライト棒の長さの半分を挿入
するか,又は,空胴中の約3mmの電流ループを使用して,フェライト棒の軸に沿って非一様な外
部高周波横磁界で励振した。以上の実験結果は理論値とよい一致を示し,フェライトの内部直流磁
界分布の評価が妥当であることを示した。
分散曲線上で,理論値と実験値を直接比較したいが,有限長のフェライト棒の内部直流磁界分布
は一様でない為に困難である。従って,定在波の平均波数β=汀/(2Z。)を定義した。理論値は,フ
ェライトの区間1ZL<Zcにおける平均内部直流磁界と同じ強さの一様な直流磁界を持っフェライト
棒の近似分散曲線の平均波数βに対する周波数である。理論値とはよい一致を示し,フェライト棒
の平均波数に対する近似分散曲線がbackwardwave特性を持っ事が確認された。
サーフェイスモード1eとloとを使う応用例として方向性結合器を試作し,約20dBの方向選択
度を得た。この方向性結合器は,フェライト棒に印加した直流磁界の強さを変えると動作周波数が
変わる特徴を持つ。しかし,同軸モードとサrフェイスモード間の効率の良い変換器を使用してい
ないので,モード励振法を改良すると,有用なデバイスになると思われる。
以上の結果,本論文は,二本のフェライト棒に沿って伝搬する電磁表面波の内,サーフェイスモ
ード1gとloの特性を理論的に明らかにし,且つ実験的に理論分散曲線を検証して,18と1。モー
ドの存在を確認した。更に,1eと1。モrドを利用した方向性結合器を試作し,その動作を実証す
ることにより,モード1eとloの実用例を示した。一様モrドをサーフェイスモー再=0のにお
ける極限として厳密に扱うことは今後の重要な問題である。
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