田畑 務

田畑
務
三重大学医学部・ 産婦人科
略歴
三重県伊勢市出身
1986 年
1991 年
1995 年
1998 年
2001 年
2003 年
三重大学医学部卒業
三重大学大学院医学系研究科修了( 医学博士)
山田赤十字病院・ 産婦人科
癌研究会附属病院・ 婦人科
三重大学医学部・ 産婦人科・ 助手
三重大学医学部・ 産婦人科・ 准教授
現在に至る 。
婦人科悪性腫瘍における 分子標的治療
田畑
務
三重大学医学部・ 産婦人科
悪性腫瘍における 治療戦略は、こ れま で、手術、放射線療法、化学療法であっ たが、近年、
こ れに分子標的治療が加わっ た。 分子標的治療と は、 ある 特定の分子を 標的と し て、 その機
能を 制御する こ と によ り 治療する 方法である 。 主に抗体医薬品と 低分子医薬品がある 。 さ ら
に、 免疫療法も その効果が証明さ れ、 本邦でも 保健適応さ れた薬剤も 現れた。
抗体医薬品の体表的なも のがベバシ ズマブ( ア バスチン ®) である 。 こ れは血管内皮増殖
因子( VEGF) 阻害薬である ヒ ト 化抗体であり 、 新生血管を 阻害し 、 癌そのも のの異常血管
を 修復し 抗癌剤の到達を 促す作用があり 、 腫瘍の増殖や転移を 押さ える 。 現在、 卵巣癌に対
し て保健適応がなさ れている 唯一の分子標的治療薬であり 、 今後、 子宮頸癌に対し ても その
効果が期待さ れている 。
現在、 世界各国で臨床試験が行われている のが、 PARP( Poly ADP-ribose polymerase) 阻害
剤である 。 PARP は DNA の一本鎖が切断さ れた場合、 塩基除去修復によ っ てこ れを 修復す
る 。 一般に、 PARP を 阻害する と 一本鎖切断は修復さ れなく なる が、 その切断は二本鎖切断
へと 変化し 、 相同組換えによ っ て修復さ れる 。 し かし 、 BRCA 1 ま たは BRCA 2 欠損細胞の
よ う に、 相同組換えが行えない細胞において、 PARP 機能を 阻害する と 、 遺伝子の不安定化
が起こ り 死にいたる 。 多く の卵巣癌は BRCA 1, 2 の不活性化が認めら れており 、 PARP 阻害
剤によ り 、 抗腫瘍効果がも たら さ れる 。 現在、 進行卵巣癌に対する PARP 阻害剤である オラ
パリ ブ の有効性が示さ れており 、 本邦でも 保健適応が待ち 望ま れている 薬剤である 。
抗 PD-1 抗体は癌に対する 新たな免疫療法剤と し て注目さ れている 。 PD-1 は、 腫瘍細胞を
排除する 役割を 担う T 細胞の表面に発現する 受容体である 。 腫瘍細胞の中には PD-L1 と い
う PD-1 に結合する リ ガン ド を 持っ ており 、 PD-L1 の作用によ り 、 T 細胞の働き が弱ま る 。
抗 PD-1 抗体のニボルマブ ( オプ ジ ーボ®) は、 本邦では悪性黒色腫に対し て保健適応さ れ
たばかり であり 、 卵巣癌に対し ても その治療効果が期待さ れている 。
本講演では、 婦人科悪性腫瘍に対する 分子標的療法なら びに免疫療法について、 主に臨床
的な側面から の講演を 行う 予定である 。