沖縄トラフ伊平屋北海丘で実施された掘削同時検層の概要

沖縄トラフ伊平屋北海丘で実施された掘削同時検層の概要 ○斎藤実篤・真田佳典・モーキョー・木戸ゆかり・濱田洋平・熊谷英憲・高井研・鈴木勝彦(海洋研
究開発機構),CK14-04 航海乗船者一同 1 2014年7月9~26日の18日間,戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) の課題「次世代海洋資源
調査技術」における「海洋資源の成因に関する科学的研究」の一環として、沖縄トラフ伊平屋北海丘
において地球深部探査船「ちきゅう」を用いた科学掘削調査 (CK14-04航海) が実施された。本調査
航海では掘削同時検層(logging while drilling: LWD)を用いて熱水溜まりや随伴する鉱化帯の
空間的広がりを把握することに主眼を置き、LWDにより得られた物理データの解釈をもとにコア採
取が行われた(高井ほか, 本シンポジウム;野崎ほか, 本シンポジウム)。本発表では今回導入し
たLWDによって計測された温度異常と堆積物の物性について報告する。 本航海で導入したLWDはarcVISION(下位)とTeleScope(上位)を含む全長約30mの掘削編成で、
arcVISIONは比抵抗と自然ガンマ線の計測を、TeleScopeは各種掘削パラメータとarcVISIONのデー
タ伝送を行う。またarcVISIONとTeleScopeの双方には掘削流体の温度と圧力を計測するAnnular pressure while drilling (APWD) が装備されており、深度の異なる2ヶ所で計測された孔内の温
度と圧力の計測値はTeleScopeによってリアルタイムに船上へ伝送される。本調査ではLWDツールの
耐熱温度である175℃を超える高温の熱水溜まりの存在が予想されていたため、ドリルパイプの接続
時にも掘削水循環による冷却を絶やさないシステム(Non Stop Driller)を導入した。 LWDは伊平屋北オリジナルサイトの周囲5か所 (C9011~C9015) 、およびアキサイト1か所 (C9016) の
計6か所において実施され、全長 1,351 mの掘削が行われた。このうち掘削点C9012では、海底下234m
で84℃に達する温度異常がarcVISIONで検出された。ここではわずか1mの区間内で15℃から84℃まで
上昇したのちに17℃まで降下した。この温度異常はドリルビットが海底下248mの硬い層(高比抵抗層)
を掘り抜いた時にarcVISIONが検知しており、7m上位のTeleScopeでは明瞭な温度異常は捉えられてい
ない。一方、掘削点C9016では海底下80mで39℃に達する温度異常がarcVISIONで検出された。これらの
温度異常データと掘削水の注入量により帯水層の厚さと原位置温度を推定することができる。 本航海で実施したLWDにより6地点で良好なデータが取得された。比抵抗と自然ガンマ線の計測値
から岩相変化が推定可能であり、掘削点C9016(アキサイト)において最も特徴的に岩相変化を読
み取ることができる。海底面から自然ガンマ線の値が増加し、7-18mと23-31m付近で500gAPIを超え
る極めて高い値を示す。その下位31-40mの区間では自然ガンマ線の値が100gAPIに減少する一方、
比抵抗値が海水よりも低い0.2 ohm-m付近の極小値を示す。さらにその下位の41-48mの区間は最大
で10 ohm-mに達する高比抵抗値で特徴付けられ、自然ガンマ線は50 gAPI以下の極小値を示す。以
上のように、上位から高ガンマ線帯(A帯)、低比抵抗帯(B帯)、高比抵抗/低ガンマ線帯(C帯)の組
み合わせが認められ、これらはそれぞれ、Kに富化する変質帯、硫化鉱物の濃集帯、粘土成分に乏
しい硬岩と解釈される。一方、回収された掘削コアの岩相層序との対比が可能であり、A帯は変質
粘土層に相当し、B帯では閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱が観察される(野崎ほか, 本シンポ
ジウム)。以上から、掘削同時検層によって岩相を推定した後にコア取得を行うことにより、硫化
物濃集層を効率良く回収することが可能であり、掘削同時検層は海底下熱水鉱床の探査に不可欠な
ツールであることが示された。今後は、検層データとコア分析データの詳細な対比により鉱化帯の
認定法を確立し、さらなる掘削調査に取り組んでいく予定である。 1
高井研・熊谷英憲・久保雄介・斎藤実篤・野崎達生・山本啓之(海洋研究開発機構),山崎徹(産業
技術総合研究所),河地正伸(国立環境研究所) ,Moe Kyaw Thu・福島朋彦・髙見英人・荒井渉・Frederic Sinniger・正木裕香・中嶋亮太・宮崎淳一・川口慎介・高谷雄太郎・猿橋具和・杉原孝充・真田佳典・
木戸ゆかり・新田末広 (海洋研究開発機構) ,堤彩紀・戸塚修平(海洋研究開発機構/九州大学)