地方の〝公共交通機関〟として担う役割増す/「交通空白地」

を最高として、す
べて平均以下とい
うのが実情だ。こ
れは何を意味して
タクシーといって
いるのか。つま り、
タクシー事業者にとって、交通
空白地を埋めるための地域公共交
性を開く可能性がある。特に地方
るだけでなく、事業の新たな潜在
活の足〟の切り札的な存在になれ
るということだ。特に過疎地は個
都市圏でしか成立しなくなってい
り、流し営業は大
れている実態があ
疎地とに階層化さ
方都市、さらに過
と、 万円台の地
たことで過当競争を引き起こした。
加を招き、過度の供給過剰が生じ
で、新規参入による車両台数の増
状況となっている。
にあった営業収入は再び急落して
加わり、当時、一時持ち直し傾向
けようと 年に、タクシー事業適
ー業界の規制 緩 和は、需 要が減
法)で規制緩和から一転、規制強
正化・活性化特別措 置法(特措
36
Zaikai Kyushu / FEB.2015
地方の
〝公共交通機関〟
として担う役割増す
タクシー
輸送機関として機動性を生かせる特性は、新たな市場
創出につながる可能性がある。
化・再生法を受け、鉄道、バスとともに新たに公共交
通として役割を担うことになったタクシー。特に個別
大都市圏と地方との
収入格差が鮮明に
「交通空白地」
に新たな商機見いだせるか
地域の
のように確保していくのか、交通政策基本法の一つと
して2014年11月に施行された改正地域公共交通活性
も、 日 車 営 収 が
での厳しい事業環境にあるタクシ
人タクシーでは営業が成立できて
それに伴い日車営収は激減してい
位の京都 府以下、九州では
しまった。この事態に歯止めを掛
こうした背景にあるのは相次い
だ法改正などの影 響で業界が振
2
退していた 年に実施されたこと
02
11
葉県( 万8234万円)までで、 り回されてきた点がある。タクシ
6
変 わっていく
人口減少が続く地方を中心にして公共交通の空白地
が広がるなか、買い物など交通不便者の移動手段をど
通機関の役割を果たすことは、地
万円台の大都市
ー会社にとってその苦境を救う可
も法人では成立しにくい。現実的
域社会を維持していくための〝生
タ ク シ ー 業 界 の 置 か れ てい
る 現 況をみると、2013年 度
能性がある。
車 当 た りの 運 送
日
ったが、 年のリーマンショックが
収 入( 日 車 営 収 )の 平 均 額 は
位の東 京
万8133円で、これを上回
っている都 道 府 県は
( 万3384円)から 位の千
1
08
1
2
位の福岡県( 万5471万円)
2
09
の実 働
にはひとくくりにするのは困難な
4
1
2
4
7
BUS
TAXI
RAILWAY
一般的な
「流し営業」
は九州でも福岡都市圏ぐらいでしか成立しなくなっている
九州・沖縄の乗合タクシーの現状(13年3月末)
福岡県
佐賀県
長崎県
九州 熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄 沖縄県
主的な減車が進められ、日車 営
化へとかじが切られたことで、自
なる交通空白地で、乗車 定員
が進み、生活の足の確保が必要と
に言及する。というのも同改正法
った。
収の減少にも一定の歯止めが掛か
型も含めて全国で1268事業者、 が選ばれることになってしまう」
タクシーは、
年 末 現 在、都 市
の需 要に応じて運行を行 う 乗合
人以下の車両を用いて、地元住民
を挙げなければ有償運送やNPO
に参画できるため、
「タクシーが手
運送、NPOなども地域交通計画
はタクシーではない、自家用有償
年 月には改正特措法が施
行され、
競争の激しい都市部を「特
3568コース、約
そういった潜在性をさらに高め
ていくことができるのが、改正地
域の足として重宝されている。
た動きもあったからだ 家用有償運送の拡大に意欲をみせ
だ。実際、佐賀県では前知事が自
として、危機感を募らせているの
定地域」に指定し、各地域の事業
( 年 月現在)が運行され、地
のなかで、タクシーも公共交通機
域公共交通活性化・再生法といえ
月に成立した交通政策基本法
ができるタクシーが交通空白地で
そもそも 時間365日の稼
働が可 能で、機 動 的に動 くこと
域交通の再整備計画に参画する
公共交通機関として、積極的に地
ので、タクシー事業者にとっても
共交通網の再構築に取り組むも
となり、街づくりの一環として公
生法である。これは市町村が中心
が改正地域公共交通活性化・再
ていかなければならない」と話し、 役割の重要性は増していくものと
回る意気込みで、積極的に仕掛け
地域のタクシー協会がご用聞きに
ー経営者は、
「市町村ごとにその
ルが必要となる。福岡県のタクシ
そ上に載せてもらうためのアピー
クシーにとっては、まずは計画の
う捉え方がなされてこなかったタ
やバスと違って公共交通機関とい
していく方針だが、これまで鉄道
ていくことでそうした部分を補完
じてさまざまなアドバイスを行っ
が多い。国は各県の運輸支局を通
の担当者が置かれていないケース
さな自治体にはそもそも都市交通
ことになるが、市町村のような小
ツードアの輸送を担うタクシーの
送が求められている。このドアー
確保、すなわちドアツードアの輸
齢者を中心に個々の人々の移動の
る」とし「マスの移動よりも、高
らその発想を転換させる必要があ
通は従来の大量輸送機関の偏重か
な地域づくりにおいては、公共交
齢化社会で求められるコンパクト
せる役割について「人口減少・高
通産業社長)は、タクシーの果た
担当している田中亮一郎氏(第一交
員長として地域公共交通問 題を
全国ハイヤー・タクシー連合会
の副会長で地域交通委員 会の委
公共交通機関として
交通計画策定に参画
ことが可能になった。
果たせる役割は非常に大きい。実
自覚している」と話す。また、自
タクシー活用のための認知度向上
14
「マス」
での移動から変化
高まるタクシーの重要性
関の一つとして位置づけられるこ
けた。こうした流れのなかで 年
万548台
者で作る協議会が減車を義務づ
10
る。同法では市町村主導による地
1
13
とになり、この基本法のなかの一つ
3
域交通の再構築が検討されていく
13
1
として 年 月に施行になったの
13
14
12
際に過疎化などで路線バスの撤退
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37
11
24
コース数
計
169
89
55
212
230
76
149
過疎 都市 空港 観光 福祉 その他
123
1
38
3
4
57
18
13
1
21
27
6
1
177
19
1
12
3
227
3
68
1
7
149
団地
運輸局 都道府県
ママサポートタクシー(第一交通産業)
介護タクシー
(第一交通産業)
シー業界全体で地域交通の担い手
ーが走っている実績も含め、タク
所以上、デマンド型の乗合タクシ
念を示し、すでに全国で100カ
らない地域になってしまう」と懸
バーに持っていかれ、タクシーのい
しいからと対応しなければ白ナン
方権限委譲を踏まえ、
「経営が苦
家用有償運送と運転代行業の地
走らせるとすると、 社でやると
えば、ある路線で乗合タクシーを
とも必要だとする。田中社長は
「例
のタクシー業界の意識を変えるこ
いくことが肝心だ」と、これまで
して交通計画にしっかり参画して
ってはならない。プロの事業者と
事実で、
「事業者側は無関心であ
に関わっていない現状があるのも
地元タクシー会社が地域に積極的
軟に対応することが可能なサービ
地域住民の多様な生活需要に柔
料運搬、深夜のコンビニ待機など、
活用した災害時の状況確認、食
宅配貨物の運搬、タクシー無線を
クシーは病院の予約や買い物代行、
クシーなどがある。例えば便利タ
ートフォンを使った配車、便利タ
ー代行や育児支援タクシー、スマ
ーや救援・救急タクシー、タクシ
万の赤字が出てしまうが、これ
方を示す一つの形といえる。
過疎地のタクシー事業者の経営を
る枠組みをタクシー業界が作るべ
渡すのではなく、複数社で協働す
者の早期発見と保護のための協力
県警、北九州市と認知症の高齢
また、北九州タクシー協会(田
中亮一郎会長)は 年 月に福岡
安定化させていく意味でも、タク
きだ」とも話している。
乗客を乗せて走るのが仕事ではな
く、 時間対応が可能なタクシー
の機動性を生かして「地域に対し
てどんなことができるのか知恵を
協定を締結し、タクシーと地域と
年
月末)
の新たな関わり方を示した。北九
州市は高齢化率(
が ・ %と高く、そのうち認知
制も整っているとし、タクシーの
が一の事故に備えた補償などの体
有償運送やNPO法人と違い、万
期待している。また、運賃の安い
市場の創出につながるものとして
タクシー事業者にとっては新たな
ない」
(田中社長)と訴え、地方
として対応していかなければなら
の工夫を生かしたサービスを展開
国のタクシー会社はそれぞれ独自
味合いの方が強い。同社を含め全
クシー事 業の潜在性を広 げる意
れらも収益というより、将来のタ
なサービスを展開しているが、こ
の旅 客 輸送に付随したさまざま
の最大手でありながら、タクシー
その田中社長が率いる第一交通
産業(北九州市)はタクシー業界
域交通の新たな担い手として、乗
こうしたタクシーだからできる
ことに焦点を合わせることで、地
なる取り組みといえる。
すことで、社会問題解決の一助と
ているタクシーが見守り役を果た
おり、 時間365日街中で走っ
る高齢者も少なくないといわれて
れる。そのうち行方不明で亡くな
24
症の高齢者数は約 万人いるとさ
有益性を指摘する。
11
3
合タクシーだけでなく、多様なタ
絞り交通空白地の公共交通機関
14
14
している。例えば妊婦応援タクシ
2
多様な生活需要に対応
認知症の見守りなども
シーが単なるA地点からB地点に
4
スであり、地方の地域交通のあり
として対応していくべきだと強調
する。
1
を 社でやれば 万円の赤字で
特にタクシーは営 業区域 内で
しか営業できないため、地方都市、 済む。有償運送やNPOに市場を
20
5
一方で、地域によってはこれまで
27
24
3
38
Zaikai Kyushu / FEB.2015
九 州 初 の 乗 合 タク
シー(八女市)
北九州を走る
「おでかけ交通」
の年間利用者数はは6万2000
で一日平均260人が利用。 年
乗合タクシーは利用者にとって
好評だ。定員8人のタクシー 台
様の手続きをとる。
はという見方は強い。
るため、利用者は少なくなるので
く自家用車に乗ることが考えられ
になる人は所持者が多い。より長
高齢者は普通自動車免許を持た
増え続けるかは未知数だ。現在の
人を超えた。
同市地域支援課は
「八
クシーの機能性を打ち出すことは、 つき、300円である。帰りも同
今後検討される地域交通政策で
女市の地理的条件に合った交通手
また、乗 合タクシーが民 業を
圧迫しているという声もある。以
九州初の乗合タクシー
地域特性に適して好評
─福岡県八女市
内の六つのタクシー会社、バス会
予約の受け付けは八女市商工
会が行うが、タクシーの運行は市
とも良い面だ」と話した。
費用が安いこともあって、そちら
しかし、乗合タクシー開始以降は
タクシー料金に消えていたという。
かった。そのため、年金の多くが
タクシーを利用をする高齢者は多
ない人が多いが、これから高齢者
も、タクシーの存在感を高めるこ
段だと思う。一緒に乗った人たち
前は路線バスのバス停が遠いため、
とにつながっていくものといえる。
の間でコミュニケーションが増すこ
福岡県八女市は 年に周辺2
町2村を合併し、人口約7万人、
社に委託されている。一定収入が
にシフトしている。これに運転代
一方、交通空白地を埋めている
タクシーの乗合交通の現状をみて
面積が約4万8000平方㌔の自
見込めるので、タクシー会社にと
みる。
治体となった。従来から路線バス
っては貴重な収入源だ。
市内に 社あったタクシー会社は
社に減った。
13
の移動を原則として、平日に限り
年に本格運行に切り替え
型乗合タクシーの実証 運行を開
九州で初めてドアツードアの予約
商店街の利用者も増えるなど中
クシー利用者が増えると同時に、
会実験を行った。これにより、タ
クシーチケット2枚と交換する社
し、シールを300枚集めるとタ
2月まで、地元商店街で買い物を
かる。たとえば、数日間利用がな
回るため、頻度の高い利用者がわ
祉だ。各タクシーは同じエリアを
も期待されている。その一つが福
他方、乗合タクシーは移動手
段だけではない、新たなサービス
た。現在、市内にある エリア内
始、
1日8便が運行されている。
国土交通大臣表彰を受賞した。
シーは利用者の家まで迎えに行き、
ただ、課題は残されている。今
後、乗合タクシー事業の利用者が
脇道を利用して移動する重要な
道路がすべて通行止めになる中で、
起きた北部九州豪雨の時も幹線
としての活用だ。また、2年前に
ければ、様子を見に行くこともで
たい人は事前に登録。乗りたい時
に電話で 分前までに予約。タク
年度の地域公共交通優良団体
心市街地活性化にも一役買ってい
10
る。こうした取り組みは評価され、 きる。こうした
「見守りサービス」
11
同市の乗合タクシー利用の仕組
みは以下の通りだ。まず、利用し
13
行サービスなどの台頭も加わって、
はあったものの、広大な山間地域
を抱え、高齢化が進む中で、バス
商店街との連携で相乗効果も
停までの移動の負担軽減を考えて、 生まれている。 年 月から 年
14
10
11
目的地まで送る。利用料は1回に
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13 12
30
13
12
2013年度タクシー輸送実績
(実働日車運送収入順)
25,493
東京
43,384
11
福岡
25,471
2
神奈川
34,901
12
三重
24,176
3
埼玉
31,258
13
宮城
23,973
4
大阪
29,970
14
静岡
23,654
5
愛知
29,136
15
沖縄
23,574
6
千葉
28,234
16
高知
23,458
7
京都
26,155
17
広島
23,358
8
兵庫
26,045
18
長崎
22,918
枝光やまさか乗合タクシー
1
に上る。
であることが実証されている。現
った。このように災害時にも有効
手段となったのは乗合タクシーだ
北九州市の乗合タクシーで先駆
運休に追い込まれた。
う。 年には桜丘(小倉北区)が
になっているのがほとんどだとい
として、数十万から数百万の赤字
事業としては赤字」(運行事業者)
るわけではないので、実質的には
ただ、
「赤字額がすべて補填され
街にとって、これまでは商圏外だ
果をもたらした。枝光本町商 店
用されているが、これが思わぬ効
現在も安定的に利用されてお
り、主に地元商店街の買い物に利
げなど、事業運営は楽ではない。
ぐなど工夫しているが、運賃値上
るように回転数で利用客数を稼
字の際に赤字額の一部を助成する。 は150円)だった。採算が取れ
月現在)
。同市の人口の %
け的存在と知られるのが枝光に本
高齢化率が高い北九州市では、 社を置く光タクシー(石橋孝三社
市内の高台や路線バスが廃止にな
長)が運行する「枝光やまさか乗
的に商店街に活気をもたらすこと
の後継者も戻り始めたことで結果
った高台の住民が買い物に来るよ
たことで、平地に工場、住宅地は
所操 業 開始以降、人口が急増し
続は商店街のにぎわいに直結する
店街にとっても乗合タクシーの存
うになったことで客が増え、商店
合タクシー」である。スタートは
につながったのだ。そうなると商
クシーが活躍している。 年から
心とした「おでかけ交通」が始ま
高台や斜面部に建てられていった。 ので、乗合回数券の販売やイベン
人乗りのジャンボタクシーを中
っている。現在( 年 月 日)
00
った地区の生活の足として乗合タ
年。枝光地区は官営八幡製鉄
年
在、会員数は1万2251人(
乗合運行で足確保のほか
地元商店街の集客に寄与
─おでかけ交通
14
18
1
の 地区で展開している。また、
地区対策)
「大蔵」
(門司区、同)
区、同)
「枝光」
(八幡東区、高台
東区、同)
「恒見・喜多久」
(門司
幡西区、同)
「田代・河内」
(八幡
同)
「木屋瀬・楠橋・星ヶ丘」
(八
事業主体となり、商店街や住民、
題となった。そこで光タクシーが
の住民の生活交通手段の確保が課
元々バス路線がなかった高台地区
止路線対策)
「平尾台」
(小倉南区、 とともに高 齢 化(当時の高 齢 化
ところが、製鉄所の合理化の流れ
る役割を示した好例といえる。
クシーが地域との関わりで果たせ
影響として返ってくるわけで、タ
面で狭い道が多かったこともあり、 地元が元気になれば社業にも好
率は %を超える)も進み、急斜
タクシーは地域の足として今後
とも地域の交通網を支えながらも、
こしの一助でもあるが結果として
る。光タクシーにとっては地域お
ト収益などで積極的に支援してい
開始時に要する費用として最大
異なる。市は交通事業者が運行
(デマンド)など各地域によって
時刻表を設けているものや、予約
行が始まった。 ルートで 日
シー 台による乗合タクシーの運
員会」が組織され、ジャンボタク
かさ乗合ジャンボタクシー運行委
自治会が一体となった「枝光やま
旅客を主体とした運行のあり方か
機動性を生かしたサービス展開で、
輸送機関としての生き残りを懸け、
りそうだ。
ら変化していく可能性も大いにあ
400万円の助 成や車 両 更新時
62
北海道
03
6
は「合馬・道原」
(小倉南区、廃
14
便、当時の料金は100円(現在
1
10
12
に最大300万円助成、収支が赤
5
25,883
08
36
2
奈良
9
7
9
順
実働 1 日 1 車
位 都道府県名 運送収入 ( 円 )
40
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