報道関係者各位 2015 年 2 月 12 日 ボストン コンサルティング グループ (本資料は 2015 年 2 月 10 日に米国で発表されたプレスリリースの抄訳です) 【参考資料】 産業用ロボット導入の急拡大により、製造業で大幅な人件費削減が可能と予測 現在から 2025 年までの予想人件費削減率は 1 位韓国(33%)、2 位日本(25%) ~BCG 調査 自動化できる業務のうちロボットが担う割合は現在の約 10%から 2025 年には約 25%に上昇 ロボットの低コスト化/高機能化により製造業の常識を変える可能性 2015 年 2 月 10 日シカゴ発―― 経営コンサルティングファームであるボストン コンサルティング グループ(以下、 BCG)は、産業用ロボット導入の急拡大が世界の製造業の競争力に与える影響についての調査結果を発表しま した。高機能ロボットの普及により、人件費削減や生産性向上が見込まれるのみならず「安価な労働力を求めて 生産拠点を移転する」「大規模工場で生産コストを低く抑える」などの今までの製造業の常識が覆されつつあると 考えられます。 産業用ロボット導入の急拡大による人件費削減率は、主要輸出国 25 カ国平均で 16%と予測 (2025 年) 高機能ロボットが幅広く導入されることで、主要輸出国 25 カ国の製造業の人件費は、2014 年から 2025 年にか けて平均で 16%低下すると予測されます。人件費の削減率が最も高いのは韓国で 33%、次いで日本 25%、カ ナダ 24%、アメリカ 22%、台湾 22%、イギリス 21%、ドイツ 21%と続きます(図表 1)。これにより、労働者 1 人当 たりの生産性は 10~30%向上し、世界の製造業のコスト競争力にも影響を与えると考えられます(図表 2)。 図表1: 産業用ロボット導入の急拡大による人件費削減率 (2014年と2025年の比較) (%、生産性調整後の人件費ベース) 40 33 25 24 22 22 21 21 20 18 18 16 20 25カ国平均 ~16% 14 13 9 10 9 9 8 8 8 7 7 7 6 3 0 0 0 インドネシア 5 4 4 メキシコ 5 オーストリア 5 スペイン 4 オランダ 5 ブラジル 5 スウェーデン インド ロシア 6 ベルギー 6 イタリア 4 フランス 8 スイス 8 ポーランド 5 カ国平均 9 25 タイ チェコ 6 中国 0 ドイツ 0 0 オーストラリア イギリス 0 21 15 12 10 12 10 6 カナダ 47 40 35 32 33 30 41 39 34 35 30 24 26 30 29 27 26 14 25 24 23 22 19 7 保守的 韓国 台湾 アメリカ 日本 積極的 シナリオ 1) 1 2025年までに、自動化できる業務の23%はロボットが担うと予測される 注1: 中国は揚子江デルタ地域のデータ 出所: STAN Bilateral Trade Database、米国労働統計局、BCG分析 -1- Copyright © 2015 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. 30 図表2: 製造業の生産コスト競争力にロボット導入が与える影響 (アメリカの生産コスト=100として各国の生産コスト競争力1)を指数化、2014年から 2025年までの変化) 産業用ロボット導入の急拡大が生産コスト競争力 に影響を与える割合 (%ポイント) 10 2 2 2 2 オランダ 2 タイ 2 スウェーデン 2 ベルギー アメリカに 対して 不利になる国 0 1 1 1 スイス アメリカに 対して 有利になる国 3 3 3 4 4 4 4 0 -2 -4 -10 注1: インドネシア 6 1 メキシコ 2 1 インド 1 1 スペイン 0 1 ロシア 1 (2) (2) 2 (0) 0 1 0 0 1 0 0 オーストリア (11)(12) (3) (5) (4) (2) 0 0 (6) 1 (5) 1 (4) (0) (1) (0) 0 (1) 0 (0) (0) (0) (0) 1 ブラジル ポーランド 消極的 オーストラリア イタリア フランス 台湾 イギリス アメリカ チェコ 日本 カナダ 中国 韓国 ドイツ シナリオ 積極的 6 1 7 2 7 2 BCG生産コスト競争力指数は、主要輸出国25カ国の生産コストの競争力を指数化したもの。 アメリカの生産コスト=100とした場合の、各国の生産コストを指数化。詳細は「主要輸出国25カ国の 生産コスト比較:世界の生産拠点の勢力図の変化」(http://www.bcg.co.jp/documents/file172753.pdf)を参照 出所: STAN Bilateral Trade Database、米国労働統計局、 BCG分析 Copyright © 2015 by The Boston Consulting Group, Inc. All rights reserved. -6 -1 -1 -1 産業用ロボットへの投資額の伸び率は現在の年 2~3%から、今後 10 年間で年 10%へと急増。ロボット購入台 数の 8 割を、中国、アメリカ、日本、ドイツ、韓国が占める 購入台数の 8 割を上位 5 カ国が占める現在の傾向は今後 10 年間続くとみられます。 産業用ロボット急拡大の要因は低コスト化/高機能化。今後は中小企業でのロボット普及も進むと考えられる ロボット導入のコストは急低下しています。例えば、スポット溶接ロボットの導入・運用にかかる費用は、2005 年の 18.2 万ドルから 2014 年には 13.3 万ドルと、27%低下し、2025 年までにはさらに 22%低下すると推定されます。 一方、ロボットの機能(スピード、対応の柔軟さなど)は、毎年約 5%の向上が見込まれます。長年、ロボット導入 の大きな障壁となっていた価格と機能の制約が急速に改善されることにより、今後 5~10 年の間に、大企業だけ でなく中小企業にもロボット導入が進むと考えられます。 自動車/輸送機器、コンピュータ・電子製品、電機製品・部品、機械の 4 産業を中心に導入が進み、2025 年の ロボット稼働台数の約 75%を占める ロボットが急速に普及するタイミングは、賃金、生産性、労働規則、業務内容などの要素に左右されるため、国や 産業により異なります。平均的には、ロボットの導入・運用のコストが従業員を雇うコストよりも 15%以上低くなった 場合に、ロボットの導入が急速に進むと推定されます。 現在、ロボットの導入台数が最も多いのは自動車/輸送機器業界です。アメリカの自動車業界のスポット溶接のコ ストは、ロボットを使うと 8 ドル/1 時間、労働者が行うと 25 ドル/1 時間となっており、既にロボットの普及が急速に 進むポイントを超えています。 産業用ロボットのさらなる普及により、製造業の常識が変わる可能性がある 筆者らは、今後、以下の点に注目し、製造業のロボット導入急拡大によるグローバル製造業全体の変化を捉える べきだと考えています。 -2- 多くの産業において、安価な人件費を求めて生産拠点を海外に動かす時代は終わると考えられる - 既に自動車/輸送機器、コンピュータ・電子製品業界でこの兆候がみられる ロボットの導入により小ロットでの生産や、プログラムの柔軟な変更が容易になり、経済性を重視した工場の 大規模化は、今までほど重要ではなくなる - また、変更の難しい従来型の生産ラインを持たなくなる業界/企業もでてくると考えられる 工場は小規模化し、地域のニーズに合わせカスタマイズした生産も行えるようになる - 一度プログラムを構築すれば、プログラムの複製により世界中に同様の工場を作ることも可能になる ロボットへの初期投資は 2 万 5,000 ドル程度に抑えられ、中小企業もロボット導入を検討するようになる 労働者は、今までと全く異なる技能を求められるようになり(例:プログラミング、高度な機械工学の知識)、新 たなトレーニングも必要になる 企業は、今後の動きを注視する必要がある - 競合がロボット導入に踏み切るタイミングを見極めるため、業界や各国における動きに注意する必要が ある - 長期的な視点でのロボット導入、生産技術の向上、労働者の再研修プランを考えていく必要がある 詳しい資料は SlideShare でご覧いただけます http://www.slideshare.net/TheBostonConsultingGroup/robotics-in-manufacturing(英文)。 このレポートは製造業の米国回帰を提唱した「メード・イン・アメリカ 再び」シリーズから続く「世界の製造業の競 争力の変化」シリーズの最新の研究です。 参考:BCG が米国の経営層に対して行ったアンケート調査では、売上 10 億ドル以上の企業の 72%が、今後 5 年のうちにオートメーションや先端ロボットの導入に投資する予定があると回答しました(2014 年 10 月 23 日発表、 http://www.bcg.com/media/PressReleaseDetails.aspx?id=tcm:12-174453)。 ■ 日本における担当者 東海林 一 パートナー&マネージング・ディレクター 一橋大学経済学部卒業。ロチェスター大学経営学修士(MBA with Honor)。 株式会社日本興業銀行を経て現在に至る。 BCG ハイテク・メディア・通信 グループの日本リーダー。監訳に「組織が動くシンプル な 6 つの原則」(ダイヤモンド社)。 大平 正秀 パートナー&マネージング・ディレクター 慶應義塾大学経済学部卒業。ミシガン大学経営学修士(MBA)。東京ガス株式会社を 経て現在に至る。 BCG オペレーション グループの日本リーダー。 ■ ボストン コンサルティング グループ(BCG)について BCG は、世界をリードする経営コンサルティングファームとして、政府・民間企業・非営利団体など、さまざまな 業種・マーケットにおいて、カスタムメードのアプローチ、企業・市場に対する深い洞察、クライアントとの緊密 な協働により、クライアントが持続的競争優位を築き、組織能力(ケイパビリティ)を高め、継続的に優れた業績 をあげられるよう支援を行っています。 -3- 1963 年米国ボストンに創設、1966 年に世界第 2 の拠点として東京に、2003 年には名古屋に中部・関西オフ ィスを設立しました。現在世界 45 ヶ国に 81 拠点を展開しています。http://www.bcg.co.jp/ bcg.perspectives サイトでは、様々な業界・分野に関する BCG の知見をまとめたレポート、記事およびインタ ビュー映像などをご紹介しています。https://www.bcgperspectives.com/ ■ 本件に関するお問い合わせ ボストン コンサルティング グループ マーケティング 伊原 Tel :03-5211-0600 / Fax :03-5211-0333 Mail: [email protected] -4-
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