Vol.25 特集「統括拠点としてのドバイと中東諸国」

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vol.25
特集「統括拠点としてのドバイと中東諸国」
新興国ビジネス最新情報
HOT TOPIC 「統括拠点としてのドバイと中東諸国」
• タイ 新しい投資促進方針と基準を発表
2014年11月、タイ国投資委員会
(BOI)は、税制面、非税制面及び
成果ベースでの優遇措置を含む
新しい投資推奨政策を承認しまし
た。これは2015年1月以降に提出
されるすべての投資申請に 適用
され、ハイテク産業、電子経済の
発展に資するサービス産業、への
投資を促すことを目的としています。
ド バ イ 空 港 は 2014 年 に ロ ン ド ン の ヒ ー ス ロ ー 空 港 を 抜 き 、 世 界 一 の ハ ブ 空 港 に な り ま し た 。
「アラブの春」以降に治安が悪化した中東地域の中で、比較的安定したドバイには他の国や地域での
ビジネスも視野に入れて拠点を設置する企業が増加しています。
アラブ首長国には支店や駐在事務所を含めると200社を超える日系企業が進出しています。
しかし、ビジネスの対象国をアラブ首長国連邦のみを対象として活動している企業は限定的です。
多くの企業は主に中東最大のハブ港湾となるジュベラリ港にあるジュベラリ・フリーゾーンやドバイ
空港の近くにあるドバイ・エアポート・フリーゾーンに設立した会社からサウジアラビア、エジプト、
• 中国 外国投資法の草案を公開
2015年1月、中国商務部は同年2
月17日をパブリックコメントの期限
とする外国投資法のディスカッショ
ンドラフトを公表しました。
当ドラフトは、中国への海外投資に
関し、現行の海外投資関連法案に
代わり、適用されることを示唆して
います。
• 南アフリカ 企業内転勤労働ビザ申請
今後、特定の2年間企業内転勤労
働ビザの保持者は、母国に戻らず
南 アフリカで延長申請が可能に
なる予定です。当該取扱いの変更
は、現在有効なビザを有し、かつ、
2014年5月以前に付与されている
ものに適用されます。
新興国セミナー開催情報
2015年3月17日(火)/27日(金)
2015年度シンガポール予算案
及び税制改正セミナー
(EY シンガポール/シンガポール)
お問合せ先:[email protected]
2015年3月18日(水)
グローバル人材育成のための英文会計
~海外子会社のガバナンス
強化のために~
(EY Japan/大阪)
2015年3月19日(木)
インド2015年予算案セミナー
(EY Japan/東京)
※詳細はWebsiteにてご確認下さい。
EY Middle East and North Africa
(EY MENA) ドバイ事務所
マネージャー
森田 奈保
略歴
日本にてクロスボーダー
を含む会計・監査業務の
経験を経て、ドバイの邦銀
にて中東北アフリカ地域
の日系企 業への 銀行 業
務や与信等に従事。現在
はEYのドバイ事務所で同
地域の日系企業をサポー
ト。米国公認会計士。
イランやイラクといった周辺国も含めてビジネスを展開
しています。2020年の万博に向けて開発が進み、これ
らのフリーゾーン以外にも新空港の近くに新しいフリー
ゾーンが開設され、ドバイでのビジネスにおける選択肢
は増々広がっています。
さらに、特定の産業や取引を除き、幅広く課税がなされ
ないタックスメリットを考慮して企業を設立するケースが
多く存在しますが、統括拠点として他国と取引を行う際
には税制度や実務などについて留意が必要です。近年、
中東諸国ではエジプトやカタールをはじめ、移転価格税
制の整備が進んでおり、現在導入されていない国でも
今後は整備される可能性があります。また、実際に拠点を構えていなくても、サービスを提供している
国は、各国のPE(恒久的施設)としてみなされて課税されるリスクがあります。
税務リスク以外では、会社の設立場所や形態によって取引や資本制限などがあるとともに、制度や
実務の急な変更にも留意が必要です。最近では、ドバイやアブダビ市中の支店や駐在員事務所が
独立した財務諸表の提出を当局から求められ、対応できないと罰金が課されるケースなどがあります。
これは法律上で従来より規定されていました。これまでは支店や駐在員事務所には要求されてきませ
んでしたが、厳格に適用されるようになったためです。しかし、このような制度に対し、具体的な手続き
やフォーマットが定められていないことが多いため、ビジネスや会社形態などに沿った柔軟な対応が
求められます。当該地域は地政学リスクが高くなっていますが、現在、中東諸国は石油依存の体制か
ら多様な産業体制の確立を目指し、企業誘致の政策や開発が進んでおり、ビジネスチャンスが広がっ
ています。同時に、石油価格が下落している現在、公共プロジェクト だけでなく、投資環境や制度に
影響を与える可能性も否めません。そのため、新規参入時だけでなく事業拡大の際には現行の制度
とともに、実務についても考慮して検討する必要があります。
(注)企業数は下記の総領事館の2013年のデータを参考にしています。
www.dubai.uae.emb-japan.go.jp/dubai%20info_general_j.htm
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新興国M&Aニュース
新興国ビジネス分析
増える、初めての海外買収・新興国企業出資
Dynamics Issue10
3月決算最終四半期(1~3月)は、契約締結や取締役会決議などの
意思決定が集中する時期です。今期中に決断し、来期からの成長
戦略へ反映するためのものであり、株主総会を見据えたタイミングと
もいえます。最近は、初めての海外企業買収を検討している先が急速
に増え、特に新興国が中心になっています。タイミングは重要ですが、
じっくり粘り強く検討することを推奨します。買収後に、例えば、「許認
可は継続されるのか、再取得のおそれはないか、既存顧客との契約
解除はないか、会計処理の見直しはないか、決裁権限などの内部
統制に問題はないか」など、通常のデューデリジェンス(DD)と価値
算定以外でも検討する項目が多いからです。DDの段階で看過でき
ないリスクや懸念が見つかれば、法務DD、内部統制DDなどのDDの
範囲を拡げる交渉と確認を粘り強く行うことが肝要になります 。
セルサイドのディールプロセスや時期に合わせたり、自社の意思決定
タイミングに拘り過ぎてしまわないことがポイントです。
パブリックセクターでは、課題やセクターリーダーを取り上げる
Dynamics誌を半期に一度発行しています。第10号のトピック
スは、“Nigerian know-how”: アフリカ経済で経済発展著しい
ナイジェリアのNgozi Okonjo- Iweala財務相・経済相へのイン
タビューや “Next stop, Brussels”: 将来
のEU加盟を目指すセルビアの交渉チーム
を率いるTanja Miscevic氏へのインタ
ビューです。 “Under the Tanzanian
sun”: 15歳で最初のビジネスを立ち上げた
Patrick Ngowi氏は、タンザニア拠点の
太陽光発電会社、Helvetic Solar
Contractorsを率い、起業家支援の大切さ
を強調しています。
ここが知りたい!新興国税務会計
新興国専門家からのワンポイント
【タイ編】
「ミャンマーにおけるITベンダー事情」
Q. タイ歳入法(税法)に規定される「タイ国内源泉
所得」の範囲について教えて下さい。
ミャンマー現地のITベンダーは現在数十社ありますが、ITコンサルタントの
レベルは全体的にまだ低いと言えます。言い換えれば、プロジェクト・マネー
ジメントを行えるような人材はいない、あるいは、たとえ育ったとしても給与の
高いシンガポール等の海外に移ってしまうことが多いようです。したがって、
SAP等、基幹システムの導入は現地の人材だけでは行えず、導入・運用を
考える外資企業が自国のコンサルタント等を頼っているのが現状です。同じ
ことはハード機器の調達・据え付け、導入後の維持・メンテナンスについても
言えます。一方、今後のオフショアを考え、日本のIT企業の進出も近年増え
ているのも事実です。
A. タイ国内における労働や資産等に起因して生じた
所得のことです。受領の場所がタイ国内か国外で
あるかは問いません。すなわち、日本人駐在員が
タイ国内で受領した給与のみならず、日本本社に
おいて受領する給与についても基本的にこれに
含まれることに留意が必要です。また、家賃補助
や運転手の費用、更には給与の差額保証に伴う
タイにおける個人所得税の会社負担額も、原則と
してこの所得に含まれることにも留意が必要です。
EYアドバイザリー株式会社
新日本有限責任監査法人
シニアマネージャー 宮前 達朗
Email: [email protected]
シニアパートナー 中込 昭弘
Email: [email protected]
• 略歴
これまで寄せられた新興国の“聞けそうで聞けない”質問を 当コーナー
で回答していきます。
編集後記
新日本監査法人にて会計監査を経験後、海外経済協力基金
(現JICA)に出向したことを経緯にODAコンサルティングに従事。
2010年より現職、日本国公認会計士。
※本ニュースレターは2015年2月時点の情報を基に作成しております。
【新興国相談会を始めました】
これまで一部の地区事務所で開催していた「新興国相談会」を、2014年1月より東京事務所でも始めました。
新興国コンサルティング室の国別専門家や、新興国での駐在経験のある公認会計士、または、税務やM&Aの
プロフェッショナルによる、無料の個別相談会です。インドネシア、ミャンマー、カンボジア、タイ、マレーシア、
ベトナム、フィリピン、中国、インドなどへの投資に関する疑問や課題をお持ちの方はぜひご活用頂ければと
思います。
詳細につきましては、御社担当の弊法人会計士まで、お問い合わせ下さい。
新日本有限責任監査法人
新興国コンサルティング室
藤田 建二
*詳細は www.shinnihon.or.jp/services/emerging-markets/index.html にてご覧いただけます。
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