X-ray DSC と Cu Kα1 光学系を用いた 医薬品の未知結晶構造

B-XRD 1079
X-ray DSC と Cu Kα1 光学系を用いた
医薬品の未知結晶構造解析
はじめに
医薬品は有効性、安全性、安定性の観点から全ての結晶多形について評価を行う必要があります。しかし、医薬品
は分子量が大きく結晶構造も複雑で、湿度や温度などの条件により多くの結晶多形が存在します。そこで、X線回折
測定とDSC測定を同時に行うことができるX-ray DSCアタッチメントを用いて、高温下で生じる結晶相の存在を明ら
かにし、その結晶相について、キャピラリー高温アタッチメントを用いて結晶構造解析を行いました。
測定・解析例
医薬品の一種であるアシクロビルは非環状側鎖を有するプリン骨格の抗ウイルス剤であり、ヘルペス群ウイルスに
特異的な活性を示します。以前から複数の結晶多形の存在が知られていましたが、その一部は結晶構造がわかっ
ていませんでした。この試料をX-ray DSCを用いて室温から180°Cまで昇温し、その後再び室温に戻したところ、新
たな結晶相が存在することがわかりました(図1)。新たな結晶相である無水物 Form 4 についてキャピラリー高温
アタッチメントを用いて結晶構造解析を行ったところ、粉末試料から結晶構造を解析することができました(図2)。
+00 Temperature/C
200.0 140.0
30.0+00
85.0
From: 2 To:50 Step: 1
300000
280000
80.0
260000
75.0
240000
70.0
30 ˚C
65.0
220000
60.0
Intensity[cps]
200000
55.0
180000
50.0
160000
45.0
相転移
164 ˚C
140000
120000
40.0
35.0
180 ˚C
100000
30.0
相転移
25.0
80000
15.0
20000
30 ˚C
10.0
14.0
18.0
22.0
2Theta[deg]
2θ (deg)
26.0
30.0
35.0
+00
DSC
脱水
TEMP
40000
0
5.0
20.0
93 ˚C
60000
無水物
Form 2
無水物
Form 4
無水物
Form 3
?
?
10.0
5.0
0.0
2.0
0.0
-2.0
+00 Heat Flow/mW
2/3水和物
図1 アシクロビルのX-ray DSC測定結果
測定温度:210˚C
空間群
P 21/c, Monoclinic
Intensity (counts)
a = 11.1646(8) Å
格子定数
b = 11.4001(7) Å
c = 8.4355(5) Å
β = 111.767(2)˚
X線
空気
2θ (˚)
図2 アシクロビルForm 4の未知結晶構造解析結果とキャピラリー高温アタッチメント
試料ご提供 : 東邦大学 薬学部 寺田勝英 教授
参考文献
: Takayuki Konya, Katsuhide Terada et al, IWPCPS-15, June 24-27, 2013
推奨装置
► 全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLab
► キャピラリー高温アタッチメント
► X-ray DSC
► 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXL
(K0213ja)